第 3 章 JA 運営大規模直売所の商品品揃え政策
第 3 節 Y 直売所の 2009 年までの商品政策
図Ⅲ-1はY直売所の2006年3月から2012年8月までの月別利用者数、客単価、売上 高の推移を示したものであるが、2009年10月に利用者数が前年同月比を下回り、11月に は売上高が前年同月比を下回っており、それ以降利用者数、売上高ともに減少している。
Y直売所の 売上高年平均成長率は2006~2009年度の12.6%から2009~2012年度は -6.0%に減少した。1日利用者数は2009年度の1,724人から2012年度1,480人に減少し たが、2012年度でも1㎡当たりの利用者数(1,753人)、売上高(285万円)は高い。
Y直売所が2009年まで高成長を遂げ、高集客力と高売上高を達成してきたのは、Y直 売所のマーケティング、特に商品政策が以下の3点で非常に優れていたからである。
①品揃え:野菜・果物の品揃えを設立当初の120~130品目から、毎年平均約14新規品目 を導入して197品目(2010年度)まで拡大した1)。野菜のみでは140~150品目の品揃え
Y直売所 J直売所 農林水産省 2012 2012 実態調査2009
野菜 41 40 30
果実 7 13 12
米 2 5* 5
花き・花木 17 17 7
農産加工品 12 10 13
肉類 5 4* 16**
その他 16 11 17
また、湘南地域は園芸が盛ん であり、表Ⅲ-3で示すように2 店とも花き・花木の売上高構成 比が高く、野菜構成比も高いた め、2 店の生鮮農産物(野菜・
果実・米、花き・花木)の売上 構成比は各々67%、75%と農林 水産省調査(売上高3億円以上)
の同54%と比較して高い。
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で、利用者に必要な基本野菜約20品目は常時確保している。野菜の品目数はJA大規模直 売所で通常120~130品目を目指しており、140~150品目は多い2)。
図Ⅲ-1 Y直売所の月別利用者数、客単価、売上高推移
(出所)Y直売所資料、聴き取り調査より作成
しかも、利用者のニーズを把握して、直売所が主導して中小種苗企業のカタログ取り寄 せ、種苗企業の講習会開催や営農指導等を行うことで、地場産の新規品目・品種の導入や こだわり商品の育成を行い、地場生産を増加しながら多品目化と商品差別化を進めてきた。
図Ⅲ-2 Y直売所の販売金額別出荷者数構成比推移
(出所)図Ⅲ-1に同じ
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2,000
20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000 90,000 100,000 110,000
2006年3月 5月 7月 9月 11月 2007年1月 3月 5月 7月 9月 11月 2008年1月 3月 5月 7月 9月 11月 2009年1月 3月 5月 7月 9月 11月 2010年1月 3月 5月 7月 9月 11月 2011年1月 3月 5月 7月 9月 11月 2012年1月 3月 5月 7月
客 単 価
(円
) 売
上 高
(千 円
)、利 用 者 数
(人
)
売上高(千円)
利用者数 客単価(円)
43.9%
26.5% 25.3% 22.3% 23.7% 23.8%
47.3%
56.1%
36.7%
21.4% 18.9% 19.5% 18.0% 21.0%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012上期
出 荷 者 数 構 成 比
10万円未満 10~50万円未満 50万円以上 100万円以上 300万円以上
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その間に出荷者数も開設当初の264人から2009年度438人に増加し、さらに、図Ⅲ-2 のように年間50万円以上の出荷者構成比が2006年度の52%から2009年度58%に増加 して、栽培スキル・品質も向上してきた。
②周年供給と鮮度(地場産割合):冬期や端境期の不足品目は仕入も行い、周年供給を高め ている。しかし、地場産で周年供給を増やすために、各出荷者の生産・出荷計画や実績を 直売所が把握して、出荷時期が集中せず長引かせるように生産調整を指導して端境期を少 なくしたり、仕入の上位品目を公表して冬期の仕入品目を営農指導で地場産に代替して増 やす努力を行ってきた。その結果、多品目化と周年供給を進めながら87.5%(2009年度)
の高い地場産割合を達成した。前述したように、農林水産省(2011b)の直売所調査では 売上高3億円以上の大規模直売所の平均地場産割合が69.7%(2009年度)である。
③午後の補充:午前の搬入時に棚の下の箱にも商品を用意する、あるいは午前の搬入時に 商品を見て売行きを予想して午後の持参を依頼しておく、さらに出荷者との会話から情報 収集して出荷可能者に午後補充の電話をする、しかも午後持参の商品は売り切る工夫をす る等、午後の品切れを防ぐ対策を多々考案し、実践してきた。営業開始から午後2時まで とそれ以降の売上高構成比は68%対32%(2009年度)で午後2時以降の売上高割合も比 較的高い。
その結果、大規模直売所では品揃えの多品目化と総合化により仕入が増え、スーパーと 品揃えが似通うことが多いのだが、Y直売所では毎年継続的に消費者ニーズに合った新規 品目を平均14品目前後導入して多品目化と高地場産割合を達成し、商品差別化と高鮮度 を実現して、高成長を遂げた。新規品目・品種では、たとえば、香りの良いジュース向き のにんじん品種生産、老人用非常食としてすぐ火が通るものや糖度を高めた野菜パウダー やドライ野菜を開発する等、利用者のニーズに合い、日々新しい商品の発見や楽しみの提 供を試みている。
販促に関しては、大規模直売所では生産者は常駐せず、パートの販売員が販売を担当す る。したがって生産者との会話は常時はなく、販売員も農産物の知識が多くないため、販 促は、月1回程度の季節イベントで、なすフェア、バラフェア、七夕フェア等を行うこと 以外は、基本はPOPによる販促を重視している。新規に導入した品目・品種やこだわり 商品の提供時に、POPでその商品特徴や美味しい調理方法・レシピを紹介する、お勧め理 由や珍しい商品であることのお知らせを行うことが集客や販促効果として大きい。たとえ ば、なすの1品目でも長なす・米なす・水なす等多くの品種があり、なすの各品種の特徴
84 や美味しい調理方法をPOPで紹介する。
商品棚のレイアウトも主要5パターンを時期に応じて変更したり、売れ筋品目の棚振り 分けを利用者の動線を見ながら日々見直し、利用者が飽きないように売場の新鮮度を維持 する工夫を行っている。
Y直売所は、以上のような野菜の多品目化と高地場産割合(高鮮度)、地場産を中心とし た新規品目・品種を継続導入する品揃え政策と、新規品目・品種の特徴や調理方法のPOP での説明を中心とした販促を通じて、競合店と比較してY直売所ならではの地場産の品揃 えの多彩さと目新しい新規品目・品種を毎年売場に投入して商品差別化を実現し、確固と した商品優位性を築いてきた。