第 1 章 農産物直売所の最近の動向
第 2 節 農産物直売所の大規模化
前節では、2000年代後期から直売所が成熟期の段階に入ったことと、直売所の運営の特 徴を運営主体別に示した。主な特徴として、JA運営直売所は1カ所当たりの平均売場面
5.4%
15.5%
25.1%
32.2%
10.7%
5.7% 3.0% 2.4% 20%以上拡大
10%~20%未満拡大 5%~10%未満拡大
5%未満拡大~5%未満減少(横ば い)
5%~10%未満減少 10%~20%未満減少 20%以上減少 その他
76.3
54.2 50.5
31.9
19.8 13 12.3 9.1 5.7 1.5
0 10 20 30 40 50 60 70 80
(%) 90
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積が大きく、300㎡弱の売場面積が多いこと、また直売所全体の傾向として、特にJAで 強くみられたが、主に地域住民が利用者であること、品揃えも野菜や果実、花き・花木等 の生鮮農産物中心ではあるが、徐々に農産加工品やその他一般食品が増えていることが明 らかにされた。さらに、周辺の直売所や地域内のスーパーとの競争を意識する直売所が1
~2割あることも示された。
本節では、2000年代を通じたJA、道の駅、民間企業を中心とした直売所の大規模化に より2000年代後期に寡占化が進展したことと、その結果、どの程度の規模格差が生じた のか、規模別にみた直売所の特徴を整理するとともに、大規模直売所が規模拡大を進める 理由を経営規模と効率化の観点から分析する。
1 大規模化の進展
2000年代を通じた直売所の大規模化の進展により、売上高規模別にみた直売所数割合が どう変化してきたのか、農林水産省の2003年度、2006年度、2009年度の直売所調査を 比較検討する。2003年度の農林水産省(2005b)の直売所調査は、調査対象が市区町村(第 3セクターを含む)とJA直売所であり、市区町村、第3セクター、JAに加えて生産者お よび民間企業直売所を調査対象とした農林水産省の2006年度および2009年度調査結果と 直接の比較はできない。農林水産省(2008)では、2006年度調査結果の一部と2003年度 との対比表を作成しているが、その際、2006年度の調査から市区町村、第3セクター(以 下、両者合わせて市区町村)とJA運営直売所を抽出して組替集計し、2003年度と比較し ている。
表Ⅰ-7で、まず、市区町村・JA直売所の2003年度から2006年度の3年間の規模変化 をみると、売上高3億円以上の直売所が2003年度の4.4%から2006年度には7.4%に増え、
売上高1~3億円の直売所でも3年間で16.7%から22.1%に増加し、その結果、売上高1 億円以上の直売所が2003年度の2割から2006年度3割へと増加している。大規模直売 所が新設されるとともに、売上高1億円未満の小規模直売所が併合や合併されたものと考 えられる。
また、2006年度の市区町村・JA直売所を抽出した数値と、生産者及び民間企業等が含 まれた全体結果の数値を比較すると、市区町村とJA直売所の規模の大きさが歴然として いる。市区町村・JA直売所では売上高1億円以上が2006年度に3割以上を占めていたの
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に対し、生産者・民間企業等を含めた全体では1割弱にすぎない。
表Ⅰ-7 売上高規模別直売所数構成比 2003年対2006年度、2006年度対2009年度
(出所)農林水産省(2008;2011b)より作成
(注1)*2003年度調査はJA、市区町村(第3セクター含む)及びJA運営直売所が調査対象であり、比
較のために、2006年度調査から市区町村、第3セクター、JA運営直売所を抽出して組替集計した。
(注2)2003年度には不明1.2%、2009年度には不明0.2%がある。
さらに、2006年度と2009年度を比較すると、生産者や民間企業等運営を加えた直売所 全体でも、3億円以上、1~3億円、および5千万~1億円の売上高規模のすべてで直売所 数の割合が増えている。逆に、売上高5,000万円未満の直売所はどの売上規模の層でもす べて直売所数の割合が減少しており、小規模直売所の大規模直売所への統合や規模縮小、
淘汰が生じていると考えられる。
表Ⅰ-8 売上高規模別開設年次別の直売所数構成比 2009年度
(出所)図Ⅰ-2に同じ
2003 2006* 2006 2009
5億円以上 0.5 0.9 1.8
3~5億円 3.9 6.5 1.4
3億円以上 4.4 7.4 1.8 3.2
1~3億円 16.6 22.1 7.9 10.1
5千万~1億円 16.7 14.7 7.1 8.7
5千万円未満 61.1 55.9 83.3 77.9
3000万~5000万円 6.5 6.1
1000万~3000万円 20.8 19.5
500万~1000万円 17.1 15.0
500万円未満 38.9 37.2
合計 100 100 100 100.0
JA、市町村開設 JA、市町村、生産者等
売上高規模別 1993年以前 1994~1998 1999~2003 2004年以降
5億円以上 11.7 11.7 26.4 50.3
3~5億円 12.1 35.1 40.9 11.9
1~3億円 8.4 21.1 34.2 36.2
5000万~1億円 9.5 18.8 34.7 37.1
3,000~,5000万円 10.1 26.2 35.3 28.4
1,000~3,000万円 30.7 18.2 23.5 27.6
500~1,000万円 32.3 18.0 22.6 27.0
全体 24.2 20.1 27.2 28.4
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大規模直売所の開設がどの時期に集中していたかを表Ⅰ-8でみると、売上高5億円以上 は2004年以降の開設が5割を占め、3~5億円規模では1994年~2003年までに開設が集 中して8割弱を占めている。1~3億円の売上高規模では1994年以降に年代にあまり偏り がなく開設されている。直売所の大規模化が2000年代に進展したことが示されている。
また、1直売所当たり経営規模を表す指標は、表Ⅰ-9のとおり、市区町村・JA直売所は 2003年度から2006年度にかけて売場面積が1.3倍に、売上高が1.2倍に、従業員数が1.2 倍に規模拡大している。参加農家数はほぼ横ばいであるが、地場農産物は増加しており、
地場産割合は64%から69%に高くなっている。
表Ⅰ-9 1直売所当たり運営の特徴 2003年対2006年度、2006年対2009年度
(出所)図Ⅰ-2に同じ
2006年度から2009年度への直売所全体での規模拡大は売場面積が1.1倍、売上高が 1.5倍になり、参加農家数も増加しているが、従業員数や地場産割合はほぼ横ばいである。
2 直売所業界の寡占化
大規模化の進展の結果、表Ⅰ-10に示すように2009年度には売上高3億円以上の直売所 が直売所数では529カ所、3%にすぎないが、売上金額では40%のシェアを占めており、
直売所の業界構造の寡占化が進展している。売上高3億円以上の直売所529カ所のうち、
JAが211カ所(40%)、民間企業が170カ所(32%)となり、この規模ではJAと民間企 業運営が多くなっている。
JA、市町村、生産者設置直売所 2003 2006 2006/2003 2006 2009 2009/2006
1億円以上販売の (%) 21.0 29.5 9.7 13.3
直売所割合 1直売所当たり
販売金額 (万円) 7,462 8,870 1.2 3,387 5,214 1.5
参加登録農家数 (人) 167 174 1.0 68.9 87 1.3
売場面積 (㎡) 185.5 236.2 1.3 119 131 1.1
従業者数 (人) 7.2 8.3 1.2 7.4 7.1 1.0
同一地域内 (%) 67.9 69.8 1.0 66.7 58.6 0.9
利用者割合*
地場産割合 (%) 63.8 69.4 74.3 73.2
JA、市町村設置直売所
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表Ⅰ-10 売上規模別直売所数及び売上高構成比 2009年度
(出所)図Ⅰ-2に同じ
売上高1億円~3億円未満の直売所数は1,700カ所となるが、その運営主体は、多い順 にJAが547カ所(32%)、生産者が570カ所(34%)、民間企業が425カ所(25%)、自 治体・第3セクターが129カ所(8%)であり、生産者直売所も多くなってくる。
他方、売上高3億円未満の直売所をみると、直売所数では97%であるのに対し、売上金 額では6割のシェアしかなく、その中でも売上高が1,000万円未満の直売所は、直売所数
では8,800カ所弱で5割強と多いが、売上高シェアでは3%強にすぎない。運営主体は生
産者が6,800カ所弱と8割弱を占めている。
表Ⅰ-11 売上規模別運営主体別直売所数構成比 2011年度
(出所)農林水産省(2013)「6次産業化総合調査結果(2011年度)」より作成
売上金額 直売所数 累積 売上金額 累積 第3セクタ 生産者 JA 女性部 民間企
構成比 (億円) 構成比 ー自治体 グループ 青年部 業等
5億円以上 299 2,684 27 41 87 5 139
1.8% 1.8% 30.6% 30.6% 4.3% 0.4% 4.6% 1.1% 4.4%
3~5億円 230 840 32 43 124 3 31
1.4% 3.2% 9.6% 40.2% 4.9% 0.4% 6.5% 0.7% 1.0%
1~3億円 1,700 2,945 129 570 547 27 425
10.1% 13.3% 33.6% 73.8% 19.8% 5.3% 28.8% 6.4% 13.5%
5,000万 1,464 1029 110 542 351 27 435
~1億円 8.7% 22.0% 11.7% 85.5% 16.8% 5.1% 18.5% 6.3% 13.8%
1,000万円 4,316 973 195 2,727 584 137 673
~5,000万円 25.7% 47.7% 11.1% 96.6% 29.9% 25.5% 30.7% 32.1% 21.4%
1,000万円 8,780 296 158 6,761 186 228 1,446
未満 52.2% 98.8% 3.4% 100.0% 24.3% 63.3% 9.8% 53.4% 45.9%
不明 26 0 ー 2 2 22 -
-0.2% 100.0% 0% - 0.02% 1.1% -
-合計 16,816 8,768 653 10,686 1,901 427 3,149
100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
売上規模別運営主体別直売所数 売上規模別直売所数・売上金額
規模別直売所数 運営主体別直売所数
売上金額 直売所数 累積 第3セクター 生産者/ JA 民間企業
構成比 自治体 グループ 等
3億円以上 434 41 56 192 143
1.9% 1.9% 6.3% 0.3% 10.7% 5.2%
1~3億円 1,468 142 454 501 371
6.4% 8.3% 21.9% 2.6% 28.0% 13.5%
5,000万~1億円 1,422 127 513 310 480
6.2% 14.5% 19.5% 2.9% 17.3% 17.5%
1,000~5,000万円 4,914 187 3,264 524 928
21.4% 35.9% 28.7% 18.4% 29.3% 33.7%
1,000万円未満 14,743 153 13,493 263 828
64.2% 100% 23.5% 75.9% 14.7% 30.1%
合計 22,980 650 17,780 1,790 2,750
100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
41
表Ⅰ-11は2011年度の売上規模別直売所数構成比を示しているが、2009年度と比較す ると、売上高3億円以上の直売所が3.2%から1.9%に減少、売上高1~3億円未満の直売
所も10.1%から6.4%に減少し、売上高1,000万円以上の直売所がすべて減少しているの
に対して、売上高1,000万円未満の直売所が52%から64%に増加している。その増加は すべて生産者直売所である。2011年度の直売所調査結果が生産農家の個人運営や小規模生 産者直売所を捕捉して増加したことを反映している。
3 大規模直売所の分類
売上高3億円前後以上の直売所は採算事業として組織運営されている。表Ⅰ-12の直売 所収益構造モデルで示すように、売上高が3億円前後になると直売所の費用(販売経費や 施設維持費)が賄われて利益がブレイク・イーブンとなり、売上高が3億円前後以上から 利益が創出される。売上高3億円前後未満では採算事業として直売所の利益が見込めず、
直売所の運営目的が直売所の事業採算性確保より、生産者の収入拡大や地域活性化・地域 農業振興が主目的となる。
表Ⅰ-12 直売所の収益構造モデル
(出所)香月ほか(2009)、AS直売所資料より作成
(注1)*包装資材費、宣伝広告費等
(注2)**精算事務手数料、原価償却費等の施設費用、施設整備準備金(レジや棚等の更新費用)等
(注3)ASモデルの売上高は仕入商品や食堂売上を含み、直売所売上高が86%のため、手数料収 入比率が高くなる。
生産者モデル(AS)
(百万円) (%) (百万円) (%) (百万円) (%)
売上高 327 100.0 507.8 100.0 272 100
手数料収入 49 15.0 81 16.0 58 21.2
費用
人件費(パート人件費) 23 7.1 33 6.5 34 13.3
直接事業費* 4 1.1 6 1.1 7 2.6
施設管理費等** 21 6.4 33 6.4 16 6.2
小計 48 14.6 71 12.4 57 22.1
利益 1 0.4 10 2.0 1 0.5
売場面積(㎡) 495 825 300
店舗要員数(8時間換算:人) 7 13 11
香月JAモデル(3年め)
42
したがって、本研究では図Ⅰ-10のとおり、売上高3億円前後以上を大規模直売所、3 億円前後未満を小規模直売所に分類する8)。さらに小規模直売所の中でも、売上高1,000 万円未満の直売所を零細規模直売所(以降、零細直売所)と分類すると、2009年度の売上 高構成比では、大規模直売所は40%、小規模直売所は57%、零細直売所3%となる。
売上高3億円前後 売上高1,000万円
―利益がブレイク・イーブン
図Ⅰ-10 大規模直売所の分類
(出所)表Ⅰ-12の収益構造モデル、業界専門機関、直売所への聞き取り調査より筆者作成 (注)( )内の構成比は農林水産省(2011b)の直売所売上金額構成比
4 大規模化と販売効率
表Ⅰ-13 売上高規模別1直売所当たりの経営規模を示す指標 2009年度
(出所)図Ⅰ-2に同じ
JAと民間企業が大規模化を推進してきた目的は、経営規模の拡大による販売効率の向 上を目指したからである。表Ⅰ-13で売上高規模別の1直売所当たりの経営規模の指標を みると、売上高規模が大きくなるにつれて、年間を通じた営業になっていき、生産農家数、
零細直売所 ( 3% )
• 採算事業として 組織運営
• 利益が創出される
• 直売所の利益が 見込めない
• 運営主目的は事業 採算性確保でない 大規模直売所( 40% ) 小規模直売所( 57% )
• 運営目的は生産者 の収入拡大や地域 活性化
1直売所当たり 零細 小規模 大規模
1,000万円未満 1,000~5,000万円 5,000万~1億円 1億~3億円 3億円以上 年間平均販売金額(万円) 337 2,248 6,998 17,276 66,404
農家数(戸) 29 65 138 267 492
営業日(日) 142 270 319 345 335
売場面積(㎡) 68 126 183 250 573
従業者数(人) 5.1 7.0 8.4 10.4 26.7