第 2 章 大規模直売所の 2009 年以降の停滞とマーケティングの 4P からの分析視点
第 1 節 大規模直売所の 2009 年以降の停滞の実態
2000 年代後期には大規模直売所間やスーパーとの競合が激化していることは先行研究 でも指摘されていたが、競争激化が具体的に直売所の運営にどう影響しているのかはこれ まで明らかにされてこなかった。本研究で、業界専門家や専門誌で優良店として紹介され
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た直売所や、地元で評判が良い個別直売所10カ所に対して2012年8月~9月に実態調査 を実施し、さらにJC総研への聴き取り調査や売上高20億円以上の直売所への電話インタ ビューを行ったところ、2009年頃を境に大規模直売所の停滞が見られることが判明した。
1 JA運営大規模直売所「ファーマーズマーケット」の停滞
経営・マーケティング改善の共同研究を行う JA大規模直売所(ファーマーズマーケッ ト1))の会員組織がある。2012年6月現在の会員は38店で、平均売上高は7.8億円であ る。主催するJC総研は会員の店舗実態を毎年調査して経営改善に活用しており、JA直売 所の中でも優良直売所といえる。
そのファーマーズマーケットの売上高伸び率の実績が 2009 年度以降減少してきた。
2008年度22 店平均の前年売上高伸び率は12%と高かったが、2009年度23店平均の伸
び率は6%に低下し、さらに2011年度の38店中前年比較が可能な30店平均の前年売上
高伸び率はマイナス1%に落ち込んだ。図Ⅱ-1は、2011年度の30店の売上高と売上高前 年伸び率の分布である。JAファーマーズマーケットの停滞傾向は2009年秋から始まって いる。2009年3月末の22店中設立後3年以上の店15店で、2009年10月以降、売上高・
利用者数の前年同月比が100を割る月が増加している2)。
図Ⅱ-1 JAファーマーズマーケット30店の2011年度売上高と前年伸び率 (出所)JC総研聴き取り調査より作成(2012年8月)
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30 35
0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
2 0 1 1 / 2 0 1 0 年 度 売 上 高 伸 び 率
(%
)
2011年度売上高(百万円)
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2011 年度の 30店の売上高前年伸び率は、表Ⅱ-1のとおり、0~5%未満の微増・横ば いが最も多く13店、次いでマイナス成長が10店で、プラス5%以上は7店に過ぎない。
伸びているのはいずれも新設後3年以内の店が多いといわれる。また、前年伸び率の分布 を売上高規模別にみると、売上高10億円未満の21店では前年伸び率が5%以上、0~5%
未満の微増・横ばい、マイナス成長の店が混在しているが、売上高10億円以上の9店は5%
以上の伸長店はなく、0~5%未満の微増・横ばいが5店、マイナス成長が4店となってい る。
表Ⅱ-1 JAファーマーズマーケットの売上高規模別前年伸び率別店舗数 2011年度
(出所)図Ⅱ-1に同じ
2 売上高20億円以上の大規模直売所の成熟化・停滞
JC総研によれば、売上高20億円以上の大規模直売所は5店程度であり、表Ⅱ-2のとお り売上高1~4位は、①福岡県I直売所、②和歌山県M直売所、③愛媛県S直売所、④愛 知県H直売所である。
表Ⅱ-2 売上高順位1~4位の大規模直売所
(出所)各直売所資料、電話聴き取り調査
(注1)*は2007~2009年度 **はJAが100%出資の株式会社を設立し、職員を移籍させた。
(注2)I直売所の年平均成長率は電話聴き取り調査による。
2011年度売上高 合計
5%以上 0~5%未満 マイナス
20億円以上 0 1 1 2
15~20億円未満 0 2 0 2
10~15億円未満 0 2 3 5
5~10億円未満 5 5 5 15
5億円未満 2 3 1 6
合計 7 13 10 30
前年伸び率
県 運営主体 開設年 売場面積 2012売上高
(㎡) (億円) 2002~2009 2009~2012 1.I直売所 福岡県 JA 2007.4 1,268 35.0 5%以上 0~5%未満 2.M直売所 和歌山県 JA 2000.11 967 25.6 8.6% -1.7%
3.S直売所 愛媛県 JA 2007.4 1,855 20.4 20%* 5.6%
4.H直売所 愛知県 JA出資企業** 2000.12 735 20.1 7.3% 0.2%
年平均成長率
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I直売所は2007年の開設から3年目までは毎年売上高前年伸び率が5%以上で成長して いたが、2009年頃以降は前年伸び率が0~5%未満に低下している。また、図Ⅱ-2はその 他の3店の売上高推移であるが、2000年開設のM直売所、H直売所は2010年度をピー クに売上高が停滞しており、2009年~2012年度の年平均成長率は各々マイナス1.7%、
0.2%である。S直売所は2007年設立のため同期間の年平均成長率は5.6%と比較的高い
が、JC総研は、JA大規模直売所では開設後5年以上の店は売上高が成熟化・停滞する傾 向が見られるため、6年目となる2013年度以降は伸び率が鈍化する可能性が高いと指摘 している。
したがって、売上高20億円以上の上位4位の大規模直売所でも、開設後5年以上経過 して成熟化もあり、2009年度~2012年度の売上高年平均成長率が1店はマイナス成長、
2店は横這いまたは微増で3店が停滞しており、2007年新設のS直売所のみが同期間成長
率5.6%で成長している。
図Ⅱ-2 M直売所、S直売所、H直売所の売上高推移
(出所)表Ⅱ-2に同じ
3 直売所実態調査での大規模直売所の停滞
筆者が聴き取り調査を実施した直売所10カ所の売上高推移を図Ⅱ-3で見ると、売上高 1.5億円以下の零細・小規模直売所を除いて、売上高2.5億円以上の大規模直売所は2009 年頃以降売上高が減少するか、または微増となっている。
売上高6億円以上の大規模直売所3カ所(JA2店、生産者1店)では、同期間の売上高
0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0 30.0
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012年度
売 上 高
(億 円
) M直売所
S直売所 H直売所
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が大きく減少しているのが顕著である。この3店は神奈川県と千葉県の都市農業地域にあ る直売所で、いずれも業界で優良店との評判である3)。
2.5億円~4億円未満の大規模直売所3店(民間企業1店、生産者2店)では2009~2012 年度の売上高年平均成長率が、売上高が大きい順に1.7%、0.3%、0.4%であり、横ばいま たは微増となっている。この3店もまた山形県、新潟県、長野県で評判が良い。
図Ⅱ-3 個別直売所10カ所の売上高推移
(出所)各直売所資料、聴き取り調査(2012年8~9月および2013年6月、8月)より作成 (注1)K直売所の売上高(6.1億円)は東日本大震災の影響がみられるが、他は影響がない。
他方、売上高1.5億円以下の小規模・零細直売所では、売上高730万円の零細直売所(生 産者)は2009年度~2012年度の売上高年平均成長率がマイナス6.5%の減少となってい るが、その他の小規模直売所(売上高 3,200 万円~1.5 億円)の同期間の年平均成長率は 売上高1.5億円(生産者、和歌山県)の店が10.2%、売上高9,300万円(生産者、新潟県)
の店が10.6%、売上高3,200万円(JA、新潟県)の店では3.3%であり、大規模直売所が
同期間減少したり横這いであったりしているのとは対照的に伸びている。この3店は、都 市農山漁村交流活性化機構の「農産物直売所の経営改善マニュアル」でケース・スタディ として紹介されていた店(和歌山県)と、大規模直売所の実態調査時に当該直売所や地域 住民から周辺地域で伸びている店として好評判の店(新潟県2店)である。
0 200 400 600 800 1000 1200
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012年度
売 上 高
(百 万 円
)
J Y K A T AS KI D N NE
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さらに、全国直売所サミット参加店28店の2012年度売上高前年伸び率をみると、表Ⅱ -3のように微増・横ばいが12店と最も多く、次いで減少が11店で売上高の停滞が多い。
売上高規模別には、売上高5億円~10億円未満は8店中減少(4店)が最も多く、次いで 微増・横ばい(3店)が多い。売上高3億~5億円未満では5店中微増・横ばい(3店)
と減少(1店)が大半であるが、売上高3億円未満では分散しており、16店中微増・横ば い(6店)と減少(7店)が多いが、増加(3店)も見られる。
表Ⅱ-3 全国直売所サミット参加店の売上高規模別前年伸び率別店舗数 2012年度
(出所)第12回全国農林水産物直売サミット参加団体活動紹介書