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第 6 章 小規模成長直売所の商品差別化政策

第 2 節 N 直売所の独自商品開発

1 N直売所の特徴

N直売所は、JA所有施設の前テナントが経営不振で撤退した場所を2007年8月に直 売所に転換して開設された。N直売所の設立目的は、運営母体のJAが2000年に設立し た1号店では市場出荷をしていた専業農家主体の直売所であるため、市場出荷経験がない 農家が現金収入を獲得する機会と野菜の栽培技術を磨く場を作るためであった。

N直売所の開設は生産農家31人(全員女性)が自家用の余り野菜を持ち寄ることから スタートし、翌年から転作田やビニールハウスで直売所向け野菜の栽培を始めた。設立以 降、リーダーの生産農家がJAから実質運営を任されて店長となり自主運営している。

図Ⅵ-1 N直売所の売上高推移 (出所)N直売所資料

(注)2007年度は半年間の売上高。年平均成長率の算出は2倍して年換算

N直売所は2012年度売上高3,244万円の小規模直売所であるが、売上高は図Ⅵ-1のよ

7.7

21.1

29.2 28.7 30.4 32.4

0 5 10 15 20 25 30 35

2007 2008 2009 2010 2011 2012年度

133

うに成長しており、売上高年平均成長率は2007年度から2009年度の期間は38.0%と極 めて高く、2009年度から2012年度の同成長率は3.3%である。2010年度に売上高が停滞 しているが、図Ⅵ-2の月別売上高推移をみると、2010年2月~9月にやや停滞したものの、

2010年10月以降成長軌道に回復している。

図Ⅵ-2 N直売所の月別売上高推移

(出所)図Ⅳ-1に同じ

表Ⅵ-1 N直売所の概要

(出所)N直売所資料、聴き取り調査より作成

(注)*期間は2004年度~2009年度、2009年度~2012年度

N直売所の概要は表Ⅵ-1に示すように、売場面積99㎡、2012年度の売場面積1㎡当た り売上高は33万円であり、利用者数は1日170人、年間約5万人で、固定客が2011年 以降増えてきて約7割を占めている。売上構成比は野菜が8割で生鮮農産物が95%と高い。

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000

20078 10 12 20082 4 6 8 10 12 20092 4 6 8 10 12 20102 4 6 8 10 12 20112 4 6 8 10 12 20122 4 6 8 10 12

2009年度 2012年度  2012年度売上構成(%)

設立 2007 野菜 80

売上高(百万円) 29 32 果物 10

年平均成長率*(%) 38.0 3.3 米、キノコ類等 0

売場面積(㎡) 99 花き 5

1㎡売上高(万円) 29.5 32.8  生鮮農産物計 95 利用者数(万人) 不明 5(推定) 豆・加工品・漬物 5

1日利用者数(人) 不明 170 その他 0

客単価(円) 不明 649 合計 100

品目数(野菜) 20~

134

単価が安い野菜主体のため客単価は649円と低い。登録生産者数は当初の31人から2012 年度37人(出荷実績では33人)に増加しており、出荷実績を持つ生産者1人当たり売上 高は2008年度68万円/人から2012年度98万円/人に増加している。

2 4Pからみた伸長要因

(1)商品

N直売所の商品差別化の特徴は、第1に100%地場産(朝採れ・高鮮度)、第2に利用 者のニーズに基づいて新規品目を毎年継続的に数品目・品種導入、第3に2008~2009年 から新規導入したイタリア野菜が好評で、店の独自商品に育った点が挙げられる。

商品の特徴の詳細は以下のとおりである。

①品揃え:品目数は多くない。店長1人で20品目(50品種)を出荷しており、他の32 人も店長と同様な品目の出荷が多く、50品目~60品目と推定される。

ア、新規品目・品種導入:表Ⅴ-2のように、2007年に地元特産品や伝統野菜2~3品目 を導入以降、利用者やレストランのニーズに応じて会員33人(出荷実績者)中15人が毎 年新規品目・品種に挑戦して、4~8品目・品種を導入してきている。自分が食べて良いと 思う野菜を仲間や店員にも食べてもらい、良ければ新規栽培したり、種苗メーカーから勧 められたりする場合もある。

表Ⅵ-2 N直売所の新規品目・品種の導入例と推定導入数

(出所)N直売所の聴き取り調査

(注)*イタリア野菜。**レストランニーズから導入。大項目が品目で、そのサブ項目(・~)が品種

2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 導入例: 1 プチベール キク芋 つぼみ菜 ザーサイ わさび菜 チーマデラーパ* ミニきゅうり

2 (地元特産品) ヤーコン(芋) カリフラワー* カブ からし菜 フェンネル* 黒トマト 3 体菜 にんじん  ・ロマネスコ  ・アヤメカブ 白菜とう(花) レタス* サボイキャベツ*

4 (冬伝統野菜)  ・金時  ・紫  ・聖護院かぶら ルッコラ  ・ハンサムグリーンポロネギ*

5  ・紫  ・オレンジ  ・あやめ雪かぶ  ・セルバチコ* ・ハンサムレッド

6 アピオス**  ・あつみかぶ 辛味大根  ・ロメインレタス

7 落花生 ヤマクラゲ** ビート(ゴルゴ)*

8 ベビーにんじん

9 紅芯大根

推定導入数 2~3 4~5 5~6 3~4 7~8 7~8 4~5

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イ、独自商品育成:イタリア野菜は2008~2009年から新規に導入し、高品質(味や形 状の良さ)と安さが2011年の秋頃から新潟市内のレストランのオーナーシェフに認めら れて指名予約が始まった。2012年から新規品種の導入が増え、その後口コミで販売が増加 している。たとえばルッコラは形の良さ、柔らかさ、香りが良いと好評である。

②鮮度:地場産割合が100%で朝採れである。8割を占める野菜を含めて生鮮農産物が95%、

その他5%も豆・加工品・漬物の地場産原材料の加工品であり、地場産以外は野菜の種や

野菜缶詰程度にすぎない。

③高品質・味:自家用野菜のみの栽培で市場出荷の経験もなく、当初は栽培技術が高くな いため、価格はすべて1パック100円レベルから始めた。店長が県の普及所担当員に質問 したりすることで栽培技術を学び、仲間に率先して教えたり、仲間同士で教え合ったりし て栽培技術を高めてきた。現在も出荷後は直売所内のテーブルに生産者が集まり、栽培方 法等の情報交換を行っている。

④安全性:残留農薬検査は年2回保健所が検査する。直売所のテーブルに農薬ガイドも置 いている。栽培履歴は作物ごとに出荷前に紙で提出する。

⑤周年供給:冬期はほぼ全員がビニールハウスで葉ものを生産して出荷する。商品供給が 少なくなるのはむしろ田植えや稲刈りで忙しい時期である。

⑥午後の補充:午前中に随時商品の搬入が行われる。開店の9時半にはまだ半分弱の出荷 である。12時頃に午前中の商品の搬入が終わると、店長が当日の売上高を予測して必要な 品目・品種と量を見積もり、午後の補充候補者に電話する。したがって、午後に補充した 商品でも売れ残りは少ない。また、午後にも商品が売り場にあるため、午後も利用者が来 店し、店内は活気がある。

(2)価格

N直売所は栽培スキルと品質の向上とともに、当初の1パック100円から2010年頃に 110~120円、2012年末に130~150円と価格を値上げしてきた。2012年末の値上げは他 店の価格に合わせて値上げしたのだが、「3月以降露地物が出始める少し前に値下げする」

(店長)予定であり、競争店の価格を意識した価格設定を行っている。

N直売所から5㎞商圏内にある直売所3店とUスーパーとで価格を比較すると、表Ⅵ-3 のとおり、N直売所の価格は7品目中4品目で最安値である。残り3品目でもブロッコリ ーは地場産では最も安い。

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表Ⅵ-3 N直売所と周辺競合店の100g単価比較 2013年3月1日(金)

(出所)各店の野菜の小売価格調査と重量測定により算出

(注1)網掛けは最低価格と 2 番目に安い価格。*県外産

(注 2)インショップは商圏外の近隣市にあり参考として提示

(3)場所

N直売所はN市の駅前から約20㎞、車で20分程度である。国道403号線交差点角の マクドナルドと同じ敷地にあり、駐車場台数は30台と店規模の割には大きい。

図Ⅵ-3 N直売所と10㎞商圏の競合店

(出所)聴き取り調査と地図より作成

N直売所 S直売所 B直売所 D直売所 Uスーパー インショップ

大根 9.2 11.8 22.8 14.0 15.6

*

24.4*

にんじん 22.5

売り切れ

24.1 27.8 33.5

*

36.9*

長ネギ 18.4 38.0 34.4 33.7 48.1

*

32.5

ほうれん草 50.2 59.1 52.2 56.0 89.1 39.4

小松菜 54.6

売り切れ

51.1 46.6 43.6

*

43.2*

キャベツ 21.1 19.4 16.4 17.0 12.0

*

15.1

ブロッコリー 88.9 - 39.3

*

136.9 43.5

*

99.2

ピーマン - - - - 103.9

*

82.9*

137

N直売所は5~10㎞を商圏とみており、10㎞商圏には、図Ⅵ-3のように、Hスーパー、

Uスーパーセンター、Tスーパーの3店と、直売所5店の合計8店の競合店があり、競合 密度は高い。Uスーパーセンターは地場農産物コーナーを導入している。しかし、N直売 所は、地場産+新規品目導入・独自商品による商品差別化が明確であるため固定客も多く、

直接競合は少なく、棲み分けている。

(4)販促

小規模店であり、生産者も当番でパート店員(2人が週3日制で交替)と2人で販売を 行うため、販促は生産者が会話で商品の特徴を説明したり、調理方法を教えたりすること が主体である。当番でない生産者も午前中に随時商品を搬入した後に店奥のテーブルで生 産者同士で情報交換を行っており、生産者が消費者と会話する機会が多い。店長もほぼ毎 日朝・昼・夕方の3回来店する。生産者が常連客に挨拶をしたり、お勧め商品を紹介した り、利用者との交流が活発で、利用者からも「アットホーム」だと口コミで評判が広がっ ている。

POPでは珍しい野菜の紹介や調理方法が説明されているが、その数は少ない。イベント は7月と11月の秋の収穫感謝祭の年2回で、7月は味噌汁や野菜スープ、漬物の試食やめ だかすくい、11月はとん汁試食やもちつき等が行われる。日常ミニイベントも多く企画さ れ、夕顔(うり)の重量当てクイズで賞品は野菜のユニークな例もある。

(5)まとめ

N直売所の4Pからみた伸長要因は、表Ⅵ-4のように整理される。最大の伸長要因は「地 場産の商品差別化」であり、生鮮農産物が95%で残りの5%もほぼ農産加工品で、しかも 100%地場産(高鮮度、朝採れ)であることが最大要素であるが、さらに、利用者のニーズ に合った新規品目・品種を毎年継続的に4~8品目・品種導入していることと、高品質の イタリア野菜の独自商品を育成していることが差別化要素として追加され、一層強固な商 品差別化が確立している。商品に関しては、品揃えの品目数は少ないものの午後にも商品 が補充され、冬期にもハウス栽培で葉ものが出荷され、周年供給と午後補充の点は従来の 伸長要因に則っている。

周辺の競合店数が8店と競合密度は高いが、商品差別化が強固な上に低価格であるため、

価格競争に巻き込まれにくく、たとえ一部で巻き込まれても価格競争力を持っている。し