第 3 章 JA 運営大規模直売所の商品品揃え政策
第 6 節 小括―Y 直売所と J 直売所の 2009 年以降の停滞要因―
以上から、JA運営の大規模直売所の2009年までの伸長要因と、2009年頃以降の停滞 要因を4Pからみて整理すると、表Ⅲ-7のように示される。
表Ⅲ-7 Y・J直売所の4Pからみた2009年までの伸長要因と2009年以降の後退要因
(出所、注)表Ⅲ-4に同じ
J 直売所 A スーパー B スーパー C スーパー D スーパー E スーパー オープン/リニューアル 2002.11 2011.3R 2010.11 2010.10 2010.9R 2011.7R
大根 5.4 11.2 15.6 10.1* 14.0 14.9
にんじん 32.3 26.5* 36.9* 23.1* 53.4* 45.1*
長ネギ 9.3 32.9* 27.5 30.6* 17.3 50.0*
ほうれん草 15.9 36.9 39.2 35.1 44.7* 29.3
小松菜 14.6 42.2 43.6* 28.3 36.2
キャベツ 14.3 12.9* 16.0* 14.1* 8.2 10.5*
ブロッコリー 50.4 27.9* 40.6* 42.7* 43.8* 24.0*
ピーマン 78.7* 63.6* 77.9* 75.0* 84.2* 96.2*
4P 伸長要因
2005~2009年頃 2010年頃以降 2002~2009年頃 2010年以降 商品 品揃え 多品目 120~130⇒197* 209(2011),213(2012) 50~60(野菜) 170(野菜)、260*
出荷者数 264⇒438 453⇒444(出荷実績) 約500 795人(登録者)
生鮮品売上構成 67%(2009) 67%(2012) 75%(2012)
独自・新規 新規品目導入 年平均約14導入 12(2011)、4(2012) 年平均約13品目導入・仕入れ こだわり商品育成 直売所主導の活動 直売所主導減少 生産はJA営農指導が主担当 鮮度 地場産割合(%) 87.5(2009年度) 81.9(74~87) 73(70~75)
高品質・味 栽培スキルの向上 50万円以上増加 50万円以上減少 市場出荷経験少 技術向上 周年供給 端境期を少なく 生産・出荷調整 減少 出荷データに基づく生産調整は不十分
冬期等 仕入品を地場産に 減少 提携直売所から仕入れ主体
午後の補充 電話依頼 情報収集して依頼 減少 平日時々、土日多い。専業農家主体
価格 競合店との価格差 安さを売りに 価格差縮小 低価格設定 2009年10~20円UP
しない 同程度、安め 同程度、強み低下
場所 競合密度と棲み分け 2店 店数は変わらず 1店 2010年から4店増加
特売頻度増加 競争激化
販促 会話、POP POPで新品目紹介 紹介品目小 POP。生産者作成が少ない
棚レイアウトや棚への品目振分等 変更 変更減少 棚への品目振分あり
Y直売所 J直売所
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Y直売所は、2009年までは、直売所が利用者のニーズを把握して生産者の営農指導を主 導して商品生産・販売を管理する優れた商品政策により、地場産の新規品目・品種を継続 導入して品目数を大幅に増加させて多品目化と周年供給、午後補充を達成し、並行して 88%の高地場産割合も実現して「地場産の商品差別化」を確立してきた。すなわち、従来 の直売所の伸長要因では「地場産の商品差別化」が最大の伸長要因だが、大規模直売所で は珍しく、多品目化を進めながら「地場産の商品差別化」を確立・保持していた。価格は 従来の直売所のように大幅に安いわけではないが、商品力の割には安いと評価されており、
商品差別化があるため周辺競合店とも棲み分けて、競争は厳しくない。販促では、生産者 との会話はイベント以外はほとんどないが、新規品目・品種の説明や調理方法などを記述 したPOPが多く展示されており、さらに、新規品目・品種が頻繁に陳列され、棚レイア ウトを変更するなどの売場作りが販促に貢献していた。
しかし、2009年頃を境に、リーマンショック以降の利用者の節約意識やスーパーの特売 攻勢による価格競争の激化の中で、売上高が低下傾向となり、生産者の栽培奨励の動機づ けも困難さを増し、地場産割合が低下し、年間50万円以上出荷する栽培スキルが高い生 産者が減少して、こだわり商品や新規品目導入数等が減少し始め、「地場産の商品差別化」
が徐々に希薄化してきた。「場所」の競合密度では、Y直売所の周辺競合店数は増加してい ないが、競合店の特売頻度が増えて、スーパーとの価格差が縮小してきている。販促も新 規品目・品種の導入数が減少したためその紹介POP数も少なくなり、売場レイアウト変 更もあまり行われなくなり、売場の新鮮度も低下している。
J直売所の事例では、品揃えは非常に多く、競合スーパーよりは地場産が多く新鮮で、
出荷量も多く、しかもかなりの低価格で販売したことが2009年頃までの伸長要因であっ た。J直売所の場合は、従来の直売所の伸長要因が当時のスーパーと比較して「品揃えの 豊富さと地場産の高鮮度」の商品差別化と低価格の面で機能していたといえる。
ところが、登録農家数が当初の約500人から2012年度に795人まで増加したものの、
少量出荷量の生産者も多い。品目数の増加や端境期・冬期の不足品目は提携直売所からの 仕入れ主体で対応しており、地場産割合は目標とする80%まで高めることができていない。
売上高が拡大しても野菜・果物や花き等の生鮮食品の売上構成比が高く、大規模直売所の 中では品揃えの総合化が進まないでスーパーとの品揃えの類似化は少ないものの、競合ス ーパーが地場産コーナーを増加し、野菜売り場の品揃えを充実しており、「地場産の商品差 別化」は希薄化してきている。しかも場所の競合密度に関しては、2010年頃から、周辺の
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スーパーが新設やリニューアルで4店も増加し、生鮮商品や地場農産品コーナーを取り入 れるとともに、低価格競争が熾烈化している。
J直売所は競合スーパーに対して品揃えと周年供給では強いが、J直売所ならではの「地 場産の商品差別化」が希薄化している中で2009年頃の値上げを行い、その後のスーパー 間の低価格競争に巻き込まれてJ直売所の価格競争力も低下した。
以上から、JA大規模直売所の2009年頃以降の停滞要因は、大規模化による品揃え拡大 政策で品目数は増加したものの、従来の直売所の最大の伸長要因である「100%近い地場産 の商品差別化」が多品目の農産物調達のための仕入れで地場産割合が80%前後以下に低下 し、しかも競合スーパーの生鮮食品・地場産コーナーの強化も相まって希薄化したことが 最大の要因といえる。さらに、商品差別化が弱まったことによりスーパーとの棲み分けが なくなり、スーパー間の価格競争に巻き込まれて直売所の価格競争力も低下したこと、す なわち、商品・価格競争力の低下がJA大規模直売所の停滞の主要因である。
注
1.197品目はPOSデータの品目コードをカウントしており、品種も一部はコード化されて
いるため、品目数だけでなく一部品種数も含まれる。大半の直売所が品種も一部コード化 されているため、コード数から品目数をカウントする場合、厳密に品目数のみをカウント することができない。以降、品目数という場合に一部品種も含まれることが多い。
2.JA栃木中央会(2012:36)によれば、平均的な農業地域が、作付体系を転換すること なく直売所をスタートさせた場合、出荷品目は野菜類で70品目程度にとどまるが、消費 者が年間に買い求める野菜類は130品目以上といわれる。したがって、120~130品目以 上を品揃えして谷間のない多品目化が必要とされる。
3. .注1で述べたように品目数の中には品種数も一部コード化されているため、野菜・果
物・花きの品目数には品種数も含まれている。直売所により品目数に含まれる品種数の割 合が異なるため、各直売所の品目数は目安といえる。
4. J Aの組織では一般に生産者への販売指導と営農指導の業務担当が分かれており、直売
所の生産者への営農指導はJAの別部署が担当している。直売所は売れ筋商品の把握や利 用者の購入意向の高い商品を調査して、生産者に販売指導を行うとともに、JAの営農指 導担当にそうした情報を伝えて営農指導業務担当者と連携している。
5. JC総研聴き取り調査(2012年8月)
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