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今後の直売所の事業展開の方向性と取組課題

第 6 章 小規模成長直売所の商品差別化政策

第 3 節 今後の直売所の事業展開の方向性と取組課題

小規模成長直売所の伸長要因の解明から、「100%地場産の商品差別化」と地場特産品や 新規品目・品種の導入、とりわけ独自商品の育成でより強固な商品差別化を実現すること が最大の伸長要因であることと、生産者と利用者の会話等での交流が販促として有効であ ることが再確認できた。

したがって、今後の事業展開に関しては、ある程度の規模までは「地場産の商品差別化」

の特徴を打ち出せば成長できることが明確になった。規模については小規模成長事例から 売上金額では1~2億円程度が想定される。この小規模の段階では、どういう要素で「地 場産の商品差別化」を打ち出すか、事例のようにイタリア野菜の独自商品を育成するか、

高品質の評判を築くか、地場特産物を掘り起こすか等、その商品差別化の特徴により、4P のマーケティング・ミックスをどう行うかがマーケティングの課題となる。また、上述の 1~2億円の規模に近づいた場合、地場農産物の増産を行いながらその後の量的拡大をどの ようにどこまで展開するのかが事業展開の課題となる。

他方、大規模直売所の場合は、従来型のマーケティング戦略や運営管理では地場産の商

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品差別化の希薄化(地場産割合の低下、商品差別化が困難、新規品目・品種導入の停滞)

が生じて、スーパーとの競合の激化に対して商品・価格競争力が低下して行き詰まってき ている。

前節では、大規模直売所の停滞要因を、4Pからみて各伸長要因について成長期と2000 年代後期、特に2009年以降の成熟期を比較して相互に変化した要因を抽出することで、

地場産の商品差別化と価格競争力の低下が主要因であることを明確にし、さらに2009年 頃を境に停滞が生じた要因はスーパーとの競合の激化と大規模直売所の成熟化の2点であ ることを指摘した。

大規模直売所の成熟化は生産者側の諸要因の変化を伴っており、そうした供給側(直売 所・生産者)の要因変化まで考慮に入れて大規模直売所の停滞要因を整理すると、図終-1 のとおりとなる。停滞要因は需要側(市場・競争)・外部要因の変化と供給側(直売所・生 産者)・内部要因の変化に大別され、さらにそれらの外部・内部要因の変化に対して量的拡 大を求めて大規模直売所がこれまでに採った対応策が、大規模直売所の競争力の低下をも たらして停滞したといえる。

図終-1 需要側の外部要因と供給側の内部要因からみた大規模直売所の停滞 (出所)市場・競争環境と業界分析、事例研究より作成

需要側(市場・競争)、外部要因の変化 供給側(直売所・生産者)、内部要因の変化 1.長期の経済不況、特に2008年9月の 1.大規模直売所の成熟化

 リーマンショックによる経済の落ち込み

2.消費者の低価格志向の強まり 2.生産者数、生産量、品目数の増大から頭  打ち、飽和状態(生産者の高齢化も影響)

3.JA直売所などの大規模直売所の 3.生産者数の増大による品質、商品力の

 急増に伴う直売所間の競合激化  低下(量的拡大の負の局面)

4.スーパー(間も)との競合の激化(イン 4.新規品目数・品種、品揃えの停滞  ショップ、地場産取扱、低価格戦略)

外部・内部要因の変化に対する大規模直売所の対応策

1.仕入れによる品揃え、品目数、周年化、総合化、生産量の確保 2.多様な顧客ニーズへの対応:品質、鮮度、価格等

大規模直売所の停滞(競争力の低下)

商品 1.地場産割合の低下(65%~75%)

    2.商品の差別化が困難

場所 3.スーパーや他の直売所との直接競合の激化 価格 4.価格競争力の低下(VSスーパーの低価格)

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まず、需要側(市場・競争)・外部要因の変化は図終-1に示すように4点が挙げられ、

供給側(直売所・生産者)・内部要因の変化としては、前節でも指摘したように、①開設か ら5~7年を経て大規模直売所が成熟化した、②直売所の成熟化と生産者の高齢化もあり 生産者数、生産量、品目数が成長期の増大から成熟期に入り頭打ち・飽和状態に達した、

③量的拡大で生産者数が増大したことにより生産者の育成や商品管理が行き渡らず、品 質・商品力のばらつき・低下が生じた(量的拡大の負の局面)、また、④成熟化と高齢化か ら新規品目・品種導入、品揃えが停滞したことが挙げられる。大規模直売所は、量的拡大 を図るために、①~④の供給側(直売所・生産者)の内部要因の変化に対して供給力を増 大する対応策として仕入れを増やし、生産者の品質のばらつきに対しては低品質・低価格 から高品質・高価格までの幅広い品揃えを行うことで、低価格志向の顧客も含めて多様な 顧客ニーズに対応してきた。

しかし、そうした従来の対応策の結果、大規模直売所は、商品では地場産割合の低下と 商品差別化が困難となり、場所ではスーパーや他の直売所との直接競合の激化、価格では 価格競争力の低下が生じて、特に2009年頃以降のスーパーの低価格戦略に対して商品・

価格競争力が低下して2009年頃を境に停滞した。大規模直売所が停滞を打破して今後の 事業展開を図るためには、量的拡大に対して従来の仕入れでの対応ではなく、地場農産物 の増産体制を強化して、最大の伸長要因である「地場産の商品差別化」が希薄化して商品 競争力が低下しないような水準を保持していくことが重要である。そのための検討課題と して次の2点が挙げられる。

1つは、量的拡大を追求する場合にどこまでの成長が妥当か、「地場産の商品差別化」が 希薄化して商品競争力が低下しないレベルはどこかを見定めて、大規模化の追求と「地場 産の商品差別化」の保持とのバランスを取ることが必要となる。JC総研では、直売所の 売上高成長は「地消地産3」を基本として、地場産加工品も含めて地場産割合80%程度を 維持し、+αとして提携直売所等からの仕入れが望ましいと指摘している。

もし「地場産の商品差別化」を地場産割合80%程度を維持する水準に定めて売上成長と のバランスを取るのであれば、地域の生産者の地場農産物の増産キャパシティから適正売 上規模を設定することが現実的であろう。1店舗の売上規模が適正規模に近づけば、次の 段階の成長は横展開への発展、すなわち隣接敷地等に加工所やレストランを併設する、あ るいは業務用需要の開拓や通販などの販路開拓、更には店舗展開の方向性が考えられる。

2点目は、適正売上規模に近づくまで地場生産の増産体制の整備をどう行うかである。

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直売所を開設して5~7年が経過すると成熟期に入り、生産者数や生産品目・数量の増大 が徐々に緩やかになり、その後頭打ち・飽和の状態に至り、それが供給能力の限界、天井 となるわけだが、生産から販売まで直売所がコントロールすることで増産体制を作りこの 供給曲線を上方にシフトさせる必要がある。増産体制の方策はJA運営のY直売所の2009 年頃までの方法から示唆が得られる。Y直売所では、直売所が利用者のニーズを把握して それを生産者に伝えてニーズのある品目を生産する、あるいは冬期の仕入れの売上上位品 目を生産者に公表して地場生産に代替していく、また、同一品目の生産時期をずらして端 境期が短くなるように出荷調整するなどの生産奨励・誘導、営農指導を直売所が積極的に 行い、生産者の品目数・生産量を拡大して、栽培技術を向上していった。さらに、新規品 目・品種を導入して独自商品の育成や、地場産の加工品を開発・育成する、あるいは地場 産鮮魚や畜産物の品揃えを増やすなどで地場産割合を88%まで高め、その実績から定年就 農や若者の新規就農などが増加して生産者数も増大していった。

直売所が営農指導を積極的に実施して生産から販売までコントロールして地場産割合、

地場産の商品差別化を高めることは大規模直売所にとって、直売所業態が本来持つ商品差 別化競争力を再構築することである。直売所が消費者ニーズを把握してそれに応える品目 生産の営農指導を強化することは、アパレルのZARA、H&M、ユニクロのように小売店 が商品を企画して生産者を主導し、利用者のニーズに素早く対応する、あるいは潜在ニー ズに応える商品を販売するなどのビジネスモデルと同様に、自店の独自性を構築する有力 な方法となる。しかも、直売所の営農指導により、直売所向けの多品種少量生産のスキル を持ち、意欲が高い生産者を育成し、高齢者の生産・出荷継続を支援することは地域農業 の振興、地域活性化にもつながる。地場農産物の増産体制の整備は喫緊の課題であるが、

供給側の要因分析は本研究のテーマではないため、供給側(直売所、生産者)の要因分析 と増産体制の検討は今後の課題としたい。

補論において、零細直売所ではすでに生産者数の頭打ちと高齢化が地場産品の品目 数と量の供給減少として現実化していることを明らかにした。小規模・大規模直売所にと っても近い将来顕在化する問題である。零細直売所は地域活性化のために地域住民から存 続が希望されており、販売量は少なくとも強力な「地場産の差別化商品」を持っている場 合が多い。その生産・供給力を維持強化することも今後の取組課題となる。たとえば、事 例のNE直売所では、今後の地域活性化のために地域住民はNE直売所の存続を希望して、

「地場産のこんにゃく」を独自商品として栽培・育成することに決めた。直売所は単に小