の寄与が限定的になることを示唆している。
0 5 10 15 20 25 30
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05
図2-9(b)に示すSn-Ag系平衡状態図の共晶組成3.46wt%Ag、Ag3Sn相組成73.2wt%Agの値から、
Agがβ-Snに固溶せず、室温でのAg3Sn相とSnの密度をそれぞれ9.99g/cm3[2-23]、7.285g/cm3[2-24]
と仮定すると、重量比は、
Ag3Sn:Sn=3.46 : (73.2-3.46)=3.46 : 69.74 体積比は、
Ag3Sn:Sn=(3.46/9.99) : (69.74/7.285)=0.346 : 9.573
Ag3Sn相の体積率は、0.346/(0.346+9.573)=0.035、と計算される。図2-21が示すようにAg/Sn膜 厚比 0.02 の場合に得られた約0.05 の体積率は平衡状態図に従う析出量より大きな値である。図
2-9(b)に示す平衡状態図の亜共晶側の液相線を共晶温度以下に外挿すると約10ºCの過冷度を与え
る点が5wt%Agの組成に相当する。この組成において共晶反応が起こると仮定した場合にAg3Sn
相の体積率は0.05と見積もられる。実際にSn-2.3wt%Ag、Sn-3.5wt%Ag組成のBGA半田ボール を用いた凝固過程の観察により約10ºCから20ºCの過冷度が報告されており[2-20]、Ag3Sn相の体 積率が高く見積もられる理由は過冷却に起因することが示唆される。従って、図 2-21 と図 2-19 の半田バンプ断面観察結果から、Ag/Sn膜厚比が0.02以下の場合には亜共晶組成のSn-Ag半田バ ンプが形成されたと考えられる。また、図2-12に示すSn/Ag積層膜のDSC測定により得られた 溶融開始温度のAg/Sn膜厚比依存性は、共晶組成が得られるAg/Sn膜厚比が0.03から0.04の範 囲にあることを示しており、大きな Ag3Sn相の析出が観察された図 2-19 の結果と合わせると、
Ag/Sn膜厚比が0.04以上の場合には過共晶組成のSn-Ag半田バンプが形成されると結論される。
以上の結果から、Sn/Ag電解めっき積層膜をリフロ熱処理することによりSn-Ag合金を形成す る半田バンプ形成プロセスを確立し、Ag/Sn膜厚比を0.04より小さい範囲に制御することにより 共晶組成付近から亜共晶組成領域のSn-Ag希薄組成合金の半田バンプを形成できることが実証さ れた。
2-7.Sn-Cu希薄合金組成の半田バンプ形成
図 2-9(c)に示す Sn-Cu 系平衡状態図の共晶組成 0.7wt%Cu、金属間化合物 Cu6Sn5 相の組成 39.1wt%Cuの値から、Cuがβ-Snに固溶しないと仮定すると、Cu6Sn5相の析出量比は、
Cu6Sn5:Sn=0.7 : (39.1-0.7))=0.7 :38.4
より、(0.7/(0.7+38.4))×100 = 1.79%、と見積もられ、Sn-Ag共晶合金のAg3Sn相の重量比4.73%
より低い。従って、希薄Cu組成のSn-Cu合金は、Sn-Ag合金より金属間化合物相の析出強化の 効果が小さく高い展延性が期待できるためにLow-k多層構造のCPI低減に望ましいバンプ材料と 考えられている。予め半田組成を Sn-0.7wt.%Cu に調整したペースト印刷による半田バンプと 10μm厚以上のCu電解めっきによるUBM層の界面固相反応やSn-0.4wt%Cu組成の半田ボールと Cu基板に無電解Niめっきを修飾した表面の界面固相反応に関する研究事例は報告されているが
[2-25,2-26]、電解めっきによるCu希薄合金組成のSnCu半田バンプ形成プロセスについては十分
な研究が行なわれておらず、量産化も普及していない。その要因は、安定したSn-Cu合金めっき 液を得ることが難しいことにある。25ºCの水溶液中における標準電極電位Eº(V)の値は、電位の 低い反応から高い反応へ自発的に電子の授受が進む向きに化学変化が起こる指標となる[2-8]。
Sn-Cu合金めっき液中では、
Sn2+ → Sn4++ 2e− Eº= +0.15V 2Cu2++ 2e− → 2Cu+ Eº= +0.159V より、酸化還元反応
4Cu2++ 2Sn2+ → 2Sn4++ 4Cu+ が進む。
同時に、
4Cu+ → 4Cu2++ 4e− Eº = +0.159V O2+ 4H++ 4e− → 2H2O Eº = +1.229V により、
4Cu++ 4H++ O2 → 4Cu2++ 2H2O
の反応によるCu+の酸化が進むためにCu2+の自己還元によるSn4+の生成が自発的に進行する。
さらに、
Sn2++ H2O → SnO2+ 4H++ 2e− Eº = +0.125V Sn4++ 2e− → Sn2+ Eº = +0.15V
の反応により、SnO2の析出が進みめっき液中のSnイオン濃度が低下する。このような液の不安定 性のために、Sn-Cu合金めっきによる半田バンプ形成プロセスを量産工程に導入しようとすると、
頻繁なSn金属成分の補給とめっき液の組成分析が必要になり、著しい生産性の低下を招いてしま う。さらに、Sn-0.7wt%Cuの共晶組成及び亜共晶の希薄合金組成の安定制御が可能な実用的な Sn-Cu合金めっき液は市販化されておらず、依然として電解めっきによるSn-Cu合金半田バンプ形 成プロセスを検討する素地は十分に整っていない。
本項では、Sn/Cu電解めっき積層膜の熱処理の合金化挙動を応用したSn-Cu合金半田バンプ形成 を確立し、Cu希薄組成制御の有用性をLSIデバイスのLow-k多層配線構造に適応した低応力FC接 合のCPI低減効果により立証する。
2-7-1.Sn/Cu電解めっき積層膜の合金化挙動とSn-Cu合金組成制御
2-5.及び2-6.の試料作製手順及びバンプ形成プロセスと同様に、熱酸化膜が形成され た200mm径のSiウェハ表面に、超高真空マグネトロンスパッタ装置を用いてTi(200nm)、Ni(600nm)、
Pd(40nm)の順に連続成膜したPd/Ni/Ti積層膜をUBM層として形成し、次に、リソグラフィ工程に より65µm膜厚のネガレジストに形成した125µm径の八角形の開口部にUBM層を給電層とする電 解めっき埋め込みをCu、Snの順に行なった。Cu電解めっきは硫酸銅浴と純度99.99%のCu陽極円 盤を使用し、Cu金属濃度38g/ℓ、めっき液温22ºC、電流密度25mA/cm2、Sn電解めっきはアルカン スルホン酸浴と純度99.99%のSn陽極円盤を使用し、Sn金属濃度60g/ℓ、めっき液温20ºC、電流密度
30mA/cm2のめっき条件によりSn/Cu積層めっき膜を形成した。レジスト剥離、UBM層のウエット
エッチング除去後に図2-6に示すウェハリフロ装置を用いた熱処理を行い、Sn/Cu積層膜を球状化 することにより半田バンプを形成した。
Sn(50µm) /Cu(1.0µm)の膜厚の積層膜がピーク温度260ºC、保持時間30sec、冷却速度4ºC/secのリ フロ熱処理を経て、バンプ高さ90µm、バンプ径130µm、バンプピッチ200µmの半田バンプに変化 した外観SEM観察像とリフロ熱処理前後の半田バンプ断面SEM観察像を図2-22に示す。
10µm 10µm
50µm
Before reflow After 260ºC reflow Sn-Cu alloy
Cross sectional SEM images of Sn/Cu bumps SEM images of Sn/Cu bumps
After 260ºC reflow Before reflow
図2-22. Sn(50µm)/Cu(1µm)電解めっき積層膜のリフロ熱処理による半田バンプ
50μm
SEM image Sn EDX map Cu EDX map
図2-23. Sn(50μm)/Cu(1.0μm)積層膜の260ºCリフロ後の半田バンプ断面観察とEDX分析
さらに、半田バンプ断面のEDX分析によるSn、Cuの二次元元素分布像を図2-23に示す。260ºC リフロ熱処理後の半田バンプとUBM層の界面に観察される反応相に対応してCu原子が偏在して いることが分かる。この結果はSn/Cu積層膜の熱処理においてCu原子はSn-Cu合金形成だけでなく UBM層上の反応相形成にも消費されることを示唆している。
先ず、Sn/Cu積層膜の合金化挙動を調べるために熱分析を行った。Sn膜厚を50µmに固定し、Cu 膜厚を0.2µm、0.4µm、1.0µmと変化させてSn/Cu積層膜を形成したSiウェハから5mm×5mmの試料 を切り出した。昇温速度10ºC/minで270ºCまで加熱した後に、100ºCまで5ºC/minの速度で試料を冷 却し室温まで徐冷し、再度、昇温、冷却を繰り返し、同じ試料について3回のDSC測定を行なった。
いずれの測定においても単一な鋭い吸熱ピークのみを示すDSC曲線が得られ、観測された吸熱反 応開始温度を表2-2にまとめた。図2-9(c)のSn-Cu系平衡状態図では過共晶側のCu組成が1wt%Cu高 くなると融点が約40ºC上昇するほど融点はCu組成変化に敏感であるため、表2-2に示す230ºC付近 の溶融開始温度は共晶組成付近から亜共晶側の合金組成に対応していると推察される。Sn/Cu積層 膜は1回目のDSC測定の270ºC熱処理によりSn-Cu合金に変化するが、2回目の熱処理による溶融開 始温度がCu/Sn膜厚比にほとんど依存しない結果から、Cu膜厚が増加してもβ-Sn相との合金形成 に消費されるCu原子が限定的であることが考えられる。
表2-2. Sn/Cu積層膜のDSC測定昇温時における吸熱反応開始温度のCu/Sn膜厚比依存
Cu/Sn Thickness Ratio (Cu/Sn Thickness)
1st Scan 2nd Scan 3rd Scan
0.004
(0.2μm/50μm) 230 231 231
0.008
(0.4μm/50μm) 229 231 231
0.02
(1.0μm/50μm) 230 230 229
Temperature(ºC)
3回目の熱処理においてもSn-Cu合金の溶融開始温度に変化が無い結果は、1回目の熱処理によ り図2-22に観察された反応相が一旦形成されると再度の熱処理後もSn-Cu合金と反応相を構成す るCu原子の分配に変化が無く、Sn-Cu合金組成が熱的に安定であることを示唆している。
次に、Sn/Cu積層膜のリフロ熱処理後の半田バンプのCu組成とCu/Sn膜厚比の関係を調べるため
に、表2-3に示す膜厚条件のSn/Cu積層膜を260ºCリフロ熱処理することにより半田バンプを形成し た。図2-24の黒丸(●)はCu/Sn膜厚比と260ºCリフロ熱処理後の半田バンプのCu組成の関係を示 す。Siウェハに垂直に露出した半田バンプ断面をFIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)加工し た分析面において中央部付近の20μm径程度の領域に電子線を照射し、WDX(Wavelength Dispersive X-ray Spectroscopy:波長分散型X線分光)によるEPMA測定値を半田バンプのCu組成とした。同図中 の白抜き四角(□)はリフロ後のSiウェハ上の全ての半田バンプを王水に溶解した試料溶液を用 いてICP(Inductively Coupled Plasma:高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析により求めたCu組成 を示す。ICP分析の試料溶液はSiウェハ上の全てのCu原子を含むために、ICP分析の結果はCu/Sn 膜厚比が0.004、0.008、0.012、0.02まで増大するとCu組成はそれぞれ0.4wt%Cu、0.6wt%Cu、1.0wt%Cu、
1.8wt%Cuまで単調に増加しており、図中の点線で示すバルク密度と積層膜厚から見積もられるCu 組成とほぼ一致している。
表2-3. Cu/Sn膜厚比の変動範囲
Cu Thickness (μm)
Sn Thickness (μm)
Cu/Sn Thickness Ratio
0.2 50 0.004
0.4 50 0.008
1.0 65 0.015
1.0 50 0.020
1.0 35 0.029
3.0 50 0.060