予測と異なり、リフロ熱処理温度の上昇に伴いSn-Cu合金化に寄与するCu原子の量は減少するこ とが判明した。図2-27の結果はリフロ熱処理過程においてCu原子のSn膜中への拡散とIMC相の形 成が競合していることを示しており、昇温時に多数のCu原子がIMC相の形成に消費されれば、
Sn-Cu合金化に寄与するCu原子は少数となる。従って、リフロ熱処理温度の上昇に伴い熱的に安 定なIMC相の形成が熱活性的に優位になれば、Snとの合金化に寄与するCu原子の拡散が抑制され 半田バンプのCu組成が低減すると考えられる。
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
220 240 260 280 300 320
Cu含有量[wt.%]
240 260 280 300 320
220
図2-24、図2-25及び図2-26の結果は、Sn/Cu積層膜の熱処理によるSn-Cu合金組成が0.4wt%Cu
から0.7wt%Cuの範囲においてUBM層上に形成されるIMC相はCu組成の増加とNi組成の減少
に伴い反応相が(Ni,Cu)3Sn4相から(Cu,Ni)6Sn5相へ遷移することを示している。Sn-Cu 合金半田の
250ºC 溶融槽に Ni 板を浸漬した時の界面反応において溶融半田の Cu 組成を 0.2wt%Cu から
1.0wt%Cuへ変化させるとNi表面に形成されるIMC相が(Ni,Cu)3Sn4から(Cu,Ni)6Sn5へ遷移するた め、(Cu,Ni)6Sn5相の安定形成のためには予めSn-Cu合金半田の組成管理幅を0.7±0.2wt%Cuに設 定することが必要であると報告されている[2-25]。同じ組成管理を実現しようとすれば、Sn/Cu積 層膜のリフロ熱処理によるSn-Cu半田バンプ形成において、Cu/Sn膜厚比が0.015から0.03の範 囲の電解めっき膜厚のプロセス管理に置き換えられるため、特別な工程管理を付加する必要がな い。Sn/Cu 積層膜を熱処理することにより半田合金を形成プロセスは、半田バンプ形成だけでな く、半田端子接合を用いる様々な製造プロセスにおいて生産性向上とコスト低減の利点を生むこ とが期待できる。
2-7-3.半田バンプとUBM層界面の熱的安定性
半田バンプとIMC相を含むUBM層の界面の熱的安定性を調べるために、Cu/Sn膜厚比が0.02 のSn(50μm)/Cu(1.0μm)電解めっき積層膜を260ºCリフロ熱処理することによりSn-Cu合金半田バ ンプを形成した後、同じ260ºC熱処理を5回繰り返し、さらに続いて、150ºCの恒温保持を1000 時 間 ま で 行 な っ た 。UBM 層 に は 超 高 真 空 ス パ ッ タ 装 置 に よ り 連 続 成 膜 し た Pd(40nm)/Ni(600nm)/Ti(200nm)積層膜を用いた。比較のために、同じUBM層上にAg/Sn膜厚比が 0.02のSn(50μm)/Ag(1.0μm)電解めっき積層膜を260ºCリフロ熱処理することにより形成し、Sn-Ag 合金半田バンプに同じ熱負荷を加えた。
熱負荷の進行に従って半田バンプとUBM層の界面を含む半田バンプ断面を観察したSEM像を 図2-28に示す。図2-28(a)に示すように、Sn/Cu積層膜のリフロ熱処理後に更に熱負荷を加えても SnCu半田バンプとUBM層の界面を明瞭に識別することができる。150ºC、1000時間の固相熱処 理後の観察から、UBM層の一部がIMC相の成長に浸食されているがNi膜は連続膜として健全性
を維持していることが分かる。一方、図 2-28(b)に示す Sn/Ag 積層膜は260ºC リフロ熱処理後に UBM層上のNi3Sn4相の形成にNi膜が消費され、引き続く5回の260ºC熱処理によるIMC相の 成長のためにNi膜は島状の不連続膜となる。150ºC固相熱処理の500時間以降にNi連続膜は消 失し、1000時間後にUBM密着層のTi膜の健全性も崩れ、下地との密着性が劣化したことによる ボイドも発生した。
After 260ºC reflow 5 times reflow 150ºC aging for 1000 hrs 1µm Ni
Ti
(Cu,Ni)6Sn5 (Cu,Ni)6Sn5 (Cu,Ni)6Sn5 Sn-Cu Bump
Ti Ti
Ni Ni
(a)Cu/Sn膜厚比0.02
1µm Ni
Ni3Sn4
Ni3Sn4
Ni Ni3Sn4
Ti-Sn void
After 260ºC reflow 5 times reflow 150ºC aging for 1000 hrs Sn-Ag Bump
Ti Ti
(b)Ag/Sn膜厚比0.02
図2-28. 熱負荷による半田バンプとUBM界面の変化
上記の結果から、Sn/Cu 積層膜のリフロ熱処理による SnCu 合金半田バンプ形成において自己 整合的にUBM層上に生成するCu6Sn5基IMC相は熱的安定性が高く、SnとNiの相互拡散抑制層 として機能することが実証された。一方、Sn/Ag積層膜のリフロ熱処理によるSn-Ag合金半田バ
ンプ形成の場合、UBM層にスパッタ成膜の膜厚 1μm以下のNi膜を用いるとNi3Sn4相の生成に 消費されて消失する。Ni3Sn4相の成長の供給源となるSn原子の拡散抑制層が存在しないために半 田バンプとUBM層の界面の熱的安定性が低いことから、Ni電解めっきによる2μm以上の厚膜が 必要になる。この結果はSn-Ag半田バンプに製造コスト低減に限界があることを示している。
5 times 260ºC reflow 150ºC aging for 1000Hrs Cu6Sn5 Cu3Sn
Cu Ni
Ti Void 5μm 5μm
Ni Ti
Cu
Sn-Cu Bump Cu6Sn5
Cu3Sn
図2-29. Cu/Sn膜厚比0.06の積層界面の熱負荷による変化.
Sn/Cu 積 層 界 面 反 応 に お け る Cu 膜 厚 の 影 響 を 調 べ る た め に 、Cu/Sn 膜 厚 比 0.06 の
Sn(50μm)/Cu(3.0μm)電解めっき積層膜に同じ熱負荷を課した。図2-29 に半田バンプ断面のUBM
層付近のSEM観察像を示す。Cu/Sn積層膜の260ºCリフロ熱処理によりCu6Sn5相が生成される が、未反応のCuが残るとCu6Sn5/Cu界面が生まれる。さらに260ºCリフロ熱処理を繰り返すと、
Cu6Sn5/Cu 界面に Cu3Sn 相が生成され、Sn-Cu 合金/Cu6Sn5/Cu3Sn/Cu 界面に変化する。引き続く 150ºC固相熱処理の進行に伴い未反応のCuはCu3Sn相の成長に消費され、未反応のCuとCu3Sn 相の界面にボイドが多発することが分かる。Cu-Sn系IMC中の150ºCにおける拡散係数が整理さ れて報告されており[2-28]、それらの文献値に基づいて図2-29の観察結果が説明できる。Sn中の Cu原子の拡散(D=2.05×10-11m2/s)はSn原子の自己拡散(D=4.70×10-15m2/s)より速いために、リフ ロ熱処理の昇温過程の Sn/Cu 界面に Cu6Sn5 相が初相として生成する。Cu 中の Sn 原子の拡散 (D=4.61×10-27~4.18×10-23m2/s)はCu6Sn5相中のSn原子の拡散(D=6.49×10-16m2/s)より桁違いに 遅く、Cu6Sn5相中を拡散するSn原子はCuへ流れ込まずにCu6Sn5/Cu界面に滞留しCu3Sn相を生
成する。さらに、Cu3Sn相中のSn原子の拡散(D=2.35×10-16m2/s)はCu原子の拡散(D=3.67×10-
17m2/s)より一桁速いためにCu3Sn/Cu界面において未反応Cuを消費しながらCu3Sn相が成長する。
結晶の密度は、Cu3Sn相(11.3g/cm3)、Cu(8.9g/cm3)、Cu6Sn5相(8.3g/cm3)の順に小さく、従って、Cu6Sn5 相/Cu界面においてCuを消費しながらCu3Sn相が生成すると体積収縮によりCu3Sn/Cu界面にボ イドが多発する。この結果は、Sn/Cu積層膜の最初のリフロ熱処理により全てのCu原子がSn-Cu 合金形成とCu6Sn5相の形成に消費され、未反応のCu膜が残らなければ、その後の追加リフロ熱 処理や長時間の固相熱処理を経ても半田バンプとUBM層の界面は熱的に安定であることを示し ている。
2-8.Sn-Cu希薄合金組成の半田バンプによるLow-k多層配線に適応したFC接合
図2-30に示す一般的なFCパッケージ工程では、LSIウェハからダイシングによりLSIチップ に個片化した後、LSIチップ側とパッケージ基板側の半田を溶融、凝固し一体化したFC接合部 を形成する。その後、LSIチップとパッケージ基板の隙間を樹脂で封止し、最後に放熱金属板を 貼り付け、実装面に半田ボールを搭載し、FCBGAパッケージが完成する。
金属リッド 半田ボール アンダーフイル樹脂
○電気特性プロービング
○レーザー溝加工
○ダイシング個片化
○フラックス塗布
○チップマウント
○リフロ接合
○フラックス洗浄
○封止樹脂注入
○リッド装着
○半田ボール搭載
半田溶融・凝固 フラックス
Low-k LSIチップ
パッケージ基板 半田バンプ プリコート半田
図2-30. FCパッケージ工程フロー
(a)
Low-k膜剥がれ(チップ端)
・高Tg
・高弾性率
・低Tg
・低弾性率
半田破壊
■ アンダーフィル樹脂材料物性適正化の困難
Low-k膜剥がれを招く材料要因
・高硬度
・低変形能(低クリープ速度)
・高弾性率
・過冷度小
半田接合部材料の展延性向上が必要
■ FC接合のLow-k多層配線への応力負荷
半田バンプ UBM Low-k膜不良
(b)
Si PKG基板
冷却過程 引張応力増大 半田バンプ接合時 接合温度>半田融点
半田溶融
半田凝固過程
熱収縮の差: Siチップ<PKG基板 バンプ端に引張応力発生
放置過程
半田クリープ変形による応力緩和
図2-31. Low-k多層配線構造の(a)CPI課題と(b)半田接合部形成の模式図
図 2-31(a)に示すように、アンダーフィルは Si チップとパッケージの機械的物性の違いにより
FC 半田接合部に働く応力を緩和する役割を担っているが、ガラス転移温度が高く弾性率の高い 材料はチップ側のLow-k膜剥がれを誘発する。逆の特性を示す材料はパッケージ基板側の半田破
壊の要因となるために、樹脂材料物性の適正化はFC 接合部の高信頼化の重要な課題であるが、
本研究では詳細に立ち入らずSn基半田バンプ材料によるCPI低減を評価した。
2-8-1.Sn基半田バンプのCPI評価
150μmピッチの半田バンプを用いて、表2-4に示すように14.8mm×12.8mmのCPI加速評価チ
ップを42.5mm×42.5mmのビルドアップ基板に搭載し、FC パッケージの信頼性評価を行った。
CPI加速評価チップを作製するために、300mmウェハ上に65nm世代CMOSプロセスにより8層 のCuデュアルダマシン配線を形成し、その最上層にAl-0.5wt%Cu配線層により形成されたボン ドパッドを配置した。Low-k多層配線構造に対するCPIの感度を上げるために、Al配線層の直下
に硬いp-TEOS膜を使うCuグローバル配線層を形成せず、全層Low-k膜を用いた多層配線構造
とした。65nm世代以降のCMOSロジックデバイスで導入されているLow-k多層配線構造に従い、
同じCu配線層の隣接配線間に塗布型Low-k膜を形成し、上下の配線層間にCVD-SiOCのLow-k 膜を形成した。超高真空スパッタPd(40nm)/Ni(350nm)/Ti(200nm)積層膜のUBM層上にCu/Sn膜厚
比 0.02 の Sn(50μm)/Cu(1.0μm)電解めっき積層膜を成膜し、260ºC リフロ熱処理により共晶組成
(0.7wt%Cu)付近のSn-Cu合金半田バンプを形成した。比較のために、現在商用化されて外部加工
委託による入手が容易な、Sn-Ag合金めっきによるSn-Ag共晶半田バンプをCPI加速評価チップ 上に形成した。この場合の標準的なUBM層はスパッタ成膜したCu/Ti上に電解Niめっきを積層 する、電解めっきNi(2μm)/Cu(200nm)/Ti(100nm)積層膜である。いずれのNi膜厚の選択も、半田 バンプとUBM層の界面の熱的安定性を調べた前項2-7-3.の図2-28の結果に基づいている。
CPI加速評価チップ上のSn-Cu合金半田バンプ、Sn-Ag合金半田バンプの接合相手となるパッケ ージ基板側端子のプリコート印刷半田は、それぞれ、Sn-0.7wt%Cu、Sn-3.0wt%Ag-0.5wt%Cuとし た。FC 接合後のチップとパッケージ基板の隙間に注入するアンダーフィルにはガラス転移温度
が100ºCの材料を用いた。CPI加速評価チップ内のAlボンドパッドはCu多層配線の最下層のロ
ーカル配線からWコンタクトプラグに接続するNiサリサイドゲートを経由して別のローカル配 線から最上層の別のAlボンドパッドに電気的に繋がっている。半田バンプにより CPI加速評価