2-7-2.Sn/Cu/UBM層の熱処理による界面反応挙動
図2-22、図2-23で観察されたPd(40nm)/Ni(600nm)/Ti(200nm)積層のUBM層上の界面反応相の生成 挙動を明らかにするために、表2-3のCu/Sn膜厚比0.004、0.008、0.02の条件によるSn/Cu積層膜の 260ºCリフロ熱処理後の半田バンプ断面においてUBM層を含む反応相領域の組成分析と結晶構造 解析を行った。反射電子像(BSE:Back Scattered Electron)、対応する領域のEDX分析によるSn、Cu、
Niの二次元元素分布像と反応相領域の組成分析結果を図2-25に示す。
Cu/Sn膜厚比が0.004((Sn(50μm)/Cu(0.2μm)積層膜)の場合、図2-25(a)の元素分布像は、260ºCのリ フロ熱処理によりほとんどのCu原子がSn-Cu合金形成に消費され、UBM層上にUBM層のNiとSn との反応相が形成されたことを示している。Niの元素分布像が示すように、UBM層界面付近に輝 度の高い層が不連続に存在しており、ほとんどのNi原子は反応相内に分布していることから、
UBM層のNiは反応相の形成に消費されたと考えてよい。反応相領域(A点)の組成は30at%Ni、
7.7at%Cu、0.7at%Pd、61.6at%Snであり、Ni格子サイトにCu、Pdが置換した(Ni,Cu,Pd)3Sn4の金属 間 化 合 物(IMC:Intermetallic Compound)が 形 成 さ れ た と 仮 定 し たSn組 成 は51.2at%(=4/3× (30+7.7+0.7))であり分析結果の61.6at%Sn組成と乖離がある。従って、この結果は、観察された界 面反応相の領域ではNi3Sn4基のIMC相とβ-Sn相の二相が共存していることを示している。
図2-25(b)に示すCu/Sn膜厚比が0.008((Sn(50μm)/Cu(0.4μm)積層膜)の場合、リフロ熱処理後も多 数のCu原子は界面反応相内に分布しており、UBM層のNiも反応相の形成に消費されているが、
Ni元素検出強度が高くスパッタNi膜が連続膜を維持している部分が認められる。図中のAに示す 領域の組成は33.6at%Cu、20.3at%Ni、0.6at%Pd、45.5at%Snであり、Cu、Ni、Pdを合わせた組成と Snの組成比はほぼ6:5((33.6+20.3+0.6):45.5=54.5:45.5)であることから、図中Aの領域にはCu格子サ イトにNi、Pdが置換したCu6Sn5基のIMC相が形成されていると考えられる。図中のBに示す反応 相領域の組成は38.8at%Ni、12.1at%Cu、0.8at%Pd、48.3at%Snであり、Sn組成に相当するNi3Sn4基 のIMC相が形成されたと仮定し、さらに、Cu、PdがIMCの結晶粒界や微小ボイド周辺に局在する と仮定すると、対応するNi組成は36.2at%Ni(=3/4×48.3)と見積もられほぼ分析値のNi組成に等し い。従って、観察された反応相はCu6Sn5基のIMC相とその下のNi3Sn4基のIMC相の二層で構成され
ていると考えてよい。
(a)Cu/Sn膜厚比0.004
1µm
BSE image Sn EDX map Cu EDX map Ni EDX map
Composition(at%) at A Sn Ni Cu Pd 61.6 30.0 7.7 0.7
1µm A
(b)Cu/Sn膜厚比0.008
A B
Composition(at%) at A Sn Ni Cu Pd 45.5 20.3 33.6 0.6
Composition(at%) at B Sn Ni Cu Pd 48.3 38.8 12.1 0.8 1µm
BSE image Sn EDX map Cu EDX map Ni EDX map
(c)Cu/Sn膜厚比0.02
1μm
A
Composition(at%) at A
Sn Ni Cu Pd
44.5 5.1 49.0 1.4
BSE image Sn EDX map Cu EDX map Ni EDX map
図2-25. Sn/Cu積層膜の260ºCリフロ熱処理後の半田バンプとUBM層界面のEDX分析
図2-25(c)に示すCu/Sn膜厚比が0.02((Sn(50μm)/Cu(1.0μm)積層膜)の場合、図中のAに示す領域の 組成は49.0at%Cu、5.1at%Ni、1.4at%Pd、44.5at%Snである。Cu、Ni、Pdを合わせた組成とSnの組 成比はほぼ6:5((49.0+5.1+1.4):44.5=55.5:44.5)であることから、観察された反応相はCu格子サイト にNi、Pdが置換したCu6Sn5基のIMC相と考えられる。図2-25(a)(b)と異なり、反応相内のCu元素分 布強度は一様に高く、ほとんどのCu原子が反応相形成に消費され、Ni元素分布像から260ºC熱処 理後もUBM層のNi膜が完全な連続膜を維持していることが分かる。
次に、図2-25で観察された同じ反応相の結晶構造の同定と結晶方位解析を行った。個々の結晶 粒の情報が得られるEBSD(Electron Backscattering Diffraction)測定を行った。SEM装置内で半田バ ンプ断面を試料表面とする分析面を70ºに傾斜させて電子線を照射し、後方散乱電子により得られ る菊池線回折図形を解析した。図2-26にSn/Cu積層膜の260ºC熱処理後の半田バンプ断面の結晶方 位分布像を示す。個々の結晶粒の色調は図中の六方晶のステレオ投影三角形の色表示に従う結晶 方位を表す。図2-25(a)で観察された反応相のEBSD測定により単斜晶のNi3Sn4相に相当する菊池線 回折図形が得られ、組成分析の結果と合わせてNi3Sn4相が反応相を構成することが明らかとなっ たが、結晶粒が微細であり明瞭な結晶方位分布像は得られなかった。図2-25(b)(c)で観察された反 応相のEBSD測定の結果は、結晶構造が六方晶のCu6Sn5相に相当することを示している。図2-26(b) の最下段に幾つかの結晶粒から得た菊池線回折図形と対応する六方晶格子の向きを示した。
EBSD測定を行った範囲ではCu6Sn5相の結晶粒が特定の結晶方位に優先配向する現象は観測され
ていない。
図2-25(c)及び図2-26(b)に示されるような針状のIMC相の成長形態に関して、リフロ熱処理の冷 却速度が大きくなると結晶核が成長する時間が無いために層状の結晶成長が抑制されると考えら れている。Sn-Cu合金半田ボールとCu基板の無電解Niめっき修飾表面の界面反応におけるIMC相 の成長形態の研究報告例から[2-27]、本項の3~4ºC/sec程度の冷却速度は針状のIMC成長を促進す る条件と見做すことができるために、Sn/Cu積層膜の溶融、凝固過程においてもIMC相が針状に成 長したと推察できる。
1µm
Image Quality
ND RD 1µm
Image Quality
ND RD
(a)Cu/Sn thickness ratio of 0.008 (b)Cu/Sn thickness ratio of 0.02
ND: 半田バンプ断面の法線方向, RD:半田バンプ断面内のSi基板法線に平行な方向 .
図2-26. Sn/Cu積層膜の260ºCリフロ熱処理後のUBM層上のCu6Sn5相の結晶方位分布像
さらに、Sn/Cu積層膜のリフロ熱処理による合金化においてCu原子がSn-Cu合金形成とCu6Sn5相
の形成に分配されることが判明したため、リフロ熱処理温度と半田バンプのCu組成の関係を調べ た。図2-27にCu/Sn膜厚比が0.02のSn(50μm)/Cu(1.0μm)積層膜から形成した半田バンプのCu組成の リフロピーク温度依存を調べた結果を示す。同時に、半田バンプ断面のUBM層界面近傍のSEM観 察像を示す。
リフロピ-ク温度が240ºCから300ºCまで上昇すると半田バンプのCu組成は1.0wt%Cuから
0.6wt%まで減少する一方、UBM層上に形成されるIMCの析出量は増加した。比較のために図中の
黒四角(■)は図2-9(c)のSn-Cu系平衡状態図における溶融Sn中のCu固溶限を示す。平衡状態図の
予測と異なり、リフロ熱処理温度の上昇に伴いSn-Cu合金化に寄与するCu原子の量は減少するこ とが判明した。図2-27の結果はリフロ熱処理過程においてCu原子のSn膜中への拡散とIMC相の形 成が競合していることを示しており、昇温時に多数のCu原子がIMC相の形成に消費されれば、
Sn-Cu合金化に寄与するCu原子は少数となる。従って、リフロ熱処理温度の上昇に伴い熱的に安 定なIMC相の形成が熱活性的に優位になれば、Snとの合金化に寄与するCu原子の拡散が抑制され 半田バンプのCu組成が低減すると考えられる。
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5
220 240 260 280 300 320
Cu含有量[wt.%]
240 260 280 300 320
220