4 期 9
第 5 節 T P S による財務改善への影響
トヨタ生産システムを通じて、ミヤノが目指したもの→想定財務効果
‑品質管理の強化による、
コストダウン
‑部品ユニットの共有化 や内製化の促進
. ' J ¥ ロット生産方式の推 進による、製造リードタ イムの短縮
生産性 向
上
資料出所I株式会社ミヤノ「有価証券報告書J
品質向上に よ る 、
CS(顧 客満足)向 上
コスト低減に よる、原価率 低減
部品製造の 効率
UPによ る、回転率 上昇 部品コスト低 減による、原 価率低減 回転率上昇
ROA( 総資本利益率 )UP
想定される財務効果←波及効果
営業利益 UP
T P S
導入による想定財務効果( 2 0 0 6
年1 2
月期) 図表24資 料出所:生産性向上=株式会社ミヤノ『有価証券報告書』第64期 想定財務効果=筆者作成
営業利益・経常利益の増加傾向とその要因 2
図表 25は、ミヤノの単独決算における、利益率の推移を示 す。左側が、実際の利益率 推移であり、右側は、仮に産業再生機構の金融支援がないとした場合の利益率推移を試算
したものである27)。
2006年、 2007年と伸び悩んでいる総資本回転率は、 資本変動の影響を除けば、伸び続け てきたことがわかる28)。その影響を受けて、同時期のROAも若干だが、上昇傾向にある。
各利益率 (単位,%)
90.00%
80.00%
70.00%
60.00%
50.00%
40.00%
30.00%
20.00%
10.00%
0.00%
‑10.00%
単独 ミヤノ利益率推移 III{単位,%)置産自転事
60.00%
50,0帥6
40.0田6
30.0田6
20.0帥6 2凹1年2002年2凹3年2凹,!手 2叩5年2叩6年2007年2叩8年
噌F営業利益率 ー←経常利益率 .....ROA (総資産利益率)"*"総資産回転率
ー←当期純利益(損史)率 4田原価率
図表25 単独 ミヤノ利益率推移
各朝益事 {単位:'16)
単独 ミヤノ利益事推移 韓責産回転車(車桂'16)
10,00%
0,00%
‑10.00%
噌由営業利益率 →ー経常利益率 .....ROA (総資産利益率)‑!I!・総資産回転率
120,00陥
110,00出
IOQ,OC尚
90,00%
80.00%
70.00%
60,00%
50,00%
40.00%
30.00%
20,00%
4・当期純利益(損失)率 4・原価率
資料出所:株式会社ミヤノ平成 18年 8月『新株式発行並びに株式売出目論見書j,
同『有価証券報告書』第64"'‑'65期,同『半期報告書』第66期
同 平 成20年 11月20日『平成20年度12月期 業績予想及び配当予想の修正に関するお 知らせ』
※ただし、右側のグラフについては、産業再生機構の金融支援による資本の増減および、
その影響による特別損益を逆仕訳して、金融支援の影響 (ただし支払利息の影響を除く) を控除した上で、 筆者が試算したもの。
85
( 単 位 : % ) 単 独ミヤノ対 単 独 業 界 全 体 利 益 率 比 較
20.00%
15.00%
10.00%
5.00%
0.00%
‑5.00%
‑10.00%
2001
年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
ー世田ミヤノ単独営業利益率 ・企・ 業界平均営業利益率 一 ←ミヤノ単独経常利益 ー・ー 業界平均経常利益 ー+ーミヤノ単独当期純利益率 園。ー 業界平均当期純利益率図表
26 ミヤノ対業界全体利益率比較資料出所:株式会社ミヤノ平成18年8月『新株式発行並びに株式売出目論見書』、
同『有価証券報告書』第64'""'‑'65期、同『半期報告書』第66期、
同 平 成20年11月20日『平成20年度12月期 業績予想及び配当予想の修正に関するお 知らせ』
社団法人日本工作機械工業会 『工作機械工業経営状況調査~ 2007年度
図表 26は、ミヤノの利益推移を工作機械業界全体のデータ29)と比較したものである。
2005年、 2006年の営業利益、経常利益の伸び率が明らかに大きい。これらも、 TPS導入に
よる生産性向上の結果のひとつとして考えることができる。ただし、 2004'"'‑'2005年の当期 純利益の変動は、産業再生機構の支援や、その後の会計基準変更に伴う特別損益の変動の 影響を受けているため、そのまま比較できない点に留意すべきである。
もうひとつ、最近の経済状況変化に伴う特徴にも注目したい。 2006'"'‑'2007年にかけて、
業界全体の利益率は、実は、すでに下降をはじめていた。これは、先に述べた、最近の景 気下降局面の前兆としてとらえることもできる。受注は減っていなくても、その収益状況 はわずかずっとはいえ、悪化傾向になっていたのである。
具体的にみると、 2007年の段階で、工作機械工業会加入の全31社のうち、個別企業ベ ースにおいて、前期に対して売上高が増加したのは22社、減少したのは9社である。しか し、この増減を、利益でみた場合、営業利益については、増加が 13社、減少が 18社とな る。さらに、経常利益では、増加が 10社、減少が21社と、減少の方が倍以上を占めるよ うになる。当期純利益でも、増加12社、減少19社で、これも減少している企業の方が多 い30)。しかも、これは利益実額での比較であり、売上高の方は、前期に比べ増加してい ることを考慮すると、利益率でみれば、さらに減少した企業が増えるものと推定されるの である。その結果が、業界全体での利益率低下となってあらわれることになる。
その中で、業界全体の下降傾向に比べて、ミヤノの利益率は、営業利益率、経常利益率 については、ほぼ横ばいを保ち、当期純利益率については、むしろ上昇傾向にある。景気 後退局面においても、
T P S
導入効果が続いているとみることもできょう31)。また、図表27は、ミヤノと業界全体の原価率を比較している。
T P S
導入後、ミヤノの原 価率が急激に下がっていることがわかる32)。また、固定資産回転期間においても、ミヤノのそれは、 2007年時点で、業界全体に比べ約66%である33)。
これらはもちろん、ミヤノ本来の製造力を示すものでもあるが、その急激な圧縮には、
T P S
の影響を示唆することもできる。87
(単位:%) 100.00%
90.00%
80.00%
70.00%
60.00%
50.00%
ミ ヤ ノ 対 業 界 全 体 原 価 率 比 較
. 帽 ー ー 圃 . . . . . . . . . . . .
ー‑‑・‑‑‑‑・‑‑‑‑・
2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
『 ・ ー連結原価率 c : : : a = = a 単独原価率 ー ・ ー 業界平均原価率
図表27 ミヤノ対業界全体原価率比較
資料出所:株式会社ミヤノ平成 18年 8月『新株式発行並びに株式売出目論見書j, 同『有価証券報告書j64'"'‑'65期、同 『半期報告書』第66期、
社団法人日本工作機械工業会 『工作機械工業経営状況調査j2007年度
3 キャッシュの創出と有利子負債減少
図表28は、ミヤノの連結ベースでの借入金とキャッシュ・フローの推移を示している34)。
まず、顕著な特徴として、借入金の急激な減少が挙げられる。有利子負債を営業キャッシ ュ・フロー何年分で返済できるか、というキャッシュ・フロー対有利子負債比率をみると、
2005年段階では、 5.4年で、あったものが、 2007年では、1.6年にまで、下がっている。これ だけの勢いで有利子負債が減るということは、その分の支払利息負担も減っていることを 意味する。その結果は、経常利益以降の利益改善に効いてくるのである。
(単位:千円) 8,000,000 7,000,000 6,000,000 5,000,000 4,000,000 3,000,000 2,000,000 1,000,000
。
連結 ミヤノキャッシュフロー・ 借 入金推移
2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
国 営業キャッシュフロー ロ フリー・キャッシュ・フロー ・ 借入金
図表28 ミヤノ(連結)キャッシュ・フロー借入金推移
資料出所 :株式会社ミヤノ平成 18年 8月『新株式発行並びに株式売出目論見書Jl, 同 『有価証券報告書Jl64"'65期、同 『半期報告書』第66期
営業キャッシュ・フロー、フリー・キャッシュ・フロー35)については、 2004年に突出 した36)後、 2005"'2006年にかけては、増加傾向になっている。2007年に減少するのは、
主に、為替差損が増大してきていることと、 2006年に、いったん減った売上債権が、再度 増加したことが主な要因である37)。外部環境が厳しくなってきた兆候を、ここにもみる
ことができる。
なお、ここでは、営業キャッシュ・フローに影響を与える項目内訳のうち、利息および 配当金の受取額が増えてきており、逆に、利息の支払額は減ってきている38)ことにも注 目したい。前節、図表 7でもふれたように、 TPS導入により、増加した利益からくるキャ
89
ッシュを、有利子負債返済にあて、それにより、支払利息の負担が減り、その結果、経常 利益以降の利益を増加させ、その増えた分のキャッシュを、さらに本業への投資にまわす
ことが可能になる、という好循環、財務体質の強化をみることができるのである。
このことは、従来TPSの強みとされてきた、売上増大、原価低減による売上総利益増大 等の直接的な影響だけにとどまらない、 TPSが財務に与える波及効果としての、もうひと つの大きなポイントである。
4 企業価値の向上
ここで、 TPS導入時期にみられる、企業価値39)全体の伸びをみておきたい。
図表29は、従業員 1人当たりの経常利益をミヤノと業界全体で比較したものである40)。 業界全体に比べ、実額、伸び率ともに優っていることがわかる。図表 26でみた、経常利 益全体の推移以上に、 l人当たりの経常利益の伸び率において、ミヤノの方が伸びている のである41)。また、 2006,.....̲,2007年の下降局面では、逆に、業界に比べて、下降率が少な い。ここにも、従業員l人当たりが稼ぐ力の差を、はっきりとみることができる。
おなじく図表 30では、従業員 l人当たりの付加価値42)および、付加価値率43)を業界 全体および、製造業全体の数値と比較している。
日本の製造業全体の付加価値の伸びは、ほぼ横ばいであるのに対し、工作機械業界のそ れは、 2006年まで順調に伸びていることがわかる。それにも増して、ミヤノはさらに伸び 率が著しく、特に、 TPS導入直後の2005年には、顕著な伸びを示している。その結果、付 加価値率も、 2006年時点で、業界全体に比べ8ポイント以上高い水準となっている44)。
逆に、 2007年の減少局面では、業界全体に比べ、ミヤノの方が、これも、落ち込みが少 ない。つまり、外部要因による、付加価値の減少への影響を、ここでも、最小限にくい止 めているのである。