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改善がすすみ、人材が育ち、新たな組織文化が形成される

ドキュメント内 T P S   (トヨタ生産システム)と会計評価 (ページ 119-125)

‑ ‑京

第 3 節 現場力がもたらす数値的効果、組織文化形成効果

3  改善がすすみ、人材が育ち、新たな組織文化が形成される

図表 39は、現場における TPS適用が、その企業全体の教育体制とあいまって、人材を 育成し、ひいては当該企業の組織文化を形成していく過程を示した概念園である。あわせ て、それら全体を支える、企業としての経営理念の重要性をも示している。

TPSの導入により、ムダがわかり、流れがつくられ、さらに、異常がわかることにより、

それらの問題が解決でき、さらには、問題が起こる前に、その可能性の段階で、取り組む べき課題として抽出して改善できるだ、けの人材が育ってして。逆にいえば、TPSにおいて、

究極の目的は、改善が続くための「人材を育成する」ことであるということができる。

さらに、そのためには、単に現場において改善を実施するだけではなく、全社的しくみ としての、教育体制が同時に必要とされる。図表 39の右側が、これにあたる。その企業 の課題にあわせた、広範で、体系的な教育体制の構築が望まれる。

ところで、このような全社的なしくみは、もはや現場の努力で達成できるレベルを超え て、当該企業全体の、全社的な経営課題として取り組むべきものとなってくる。図表 39 の一番下にある、 トヨタウェイ 15)  (経営方針)というのが、それにあたる。各企業がこ のような根本的な経営方針に基づいて、その上で、個別の改善を積み上げる時、最終的に は、これらの上に、人が育ち、さらには、それらの人が形成する、当該宗射哉の文化そのも のが、形成、変容していくのである16)TPSというシステムを理解し支える人的資源の重

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要性は、従来から指摘されてきた17)ものではあるが、ここにおいて、その重要性を改め て指摘しておきたい。

企業体質の強化・組

ものづくり 人づくり の教育 の教育 新人教育 階層別 現場教育 教育

(OJT)  生涯プラン (OFFJT) 

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(五大任務)

図表39 TPS適用と教育体制による人材育成、企業組織文化形成への概念図 資料出所:筆者作成

※ただし、図表左側部分、改善のニーズへの流れについては、 石井正光 「トヨタの元工場 責任者が教える 入門 トヨタ生産方式J,中経出版, 2005年,巻末資料 「図l トヨタ生 産方式jを参考にしている。

第 4 節 お わ り に

本章では、時系列を超えて、時代を超えて共通する、 TPSの概念の本質を抽出するとと もに、なぜ、 TPSが、企業文化そのものにまで影響を与える、広義のシステム足りえるの か、という点について、その手段と概念の関係性を検討してきた。そこで明らかになった のは、社会状況や景気変動にも柔軟に対応できる適応力を内包した、システム自体の柔軟 性と、それらを支える人的資源の重視としづ、 TPSのもうひとつの重要な基盤で、あった。

トヨタウェイが提唱する「人間性の尊重」とは、まさに、この部分に直接現れてくる。

この点において、 TPSは、企業の持続可能性に大きく貢献するイノベーションであると 規定することができる。なぜなら、それは、個別の現場改善に始まり、しかし、そこにと どまることなく、人材育成という大きな企業の組織課題を経て、当該企業の組織文化その ものにまで関わりを持つ、経営的規模のシステム改善であるからである。

TPSは、規模の経済のロジックに対して、質の経済というべき、新しい戦略たりえる可 能性を持っている18)。そして、昨今の厳しい状況下においても、持続可能性は、地球規 模での今日的課題である。それは単に環境問題にとどまらない、社会全体の最重要課題で ある。この点において、 TPS導入は、最も効果的で重要な経営戦略のひとつであり、 21世 紀のグローパノレスタンダードのひとつと位置付けられる可能性を内包していると考えるの である。

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)門田安弘「トヨタプロダクションシステムーその理論と体系一」ダイヤモンド社, 2006  年, 539'"'‑'545ページによれば、研究方法としてのケーススタディとして、以下の3つの アプローチが示されている。

①仮説発見的ケーススタディ (exploratorycase studies) 

特定テーマについて、単一事例を研究して、その実務の背後にある因果関係の一般的な 理由を探求する。その結果はあくまでも「仮説Jにとどまると考えられ、その後の厳密 な統計学的検証による一般化を前提とする。

②説明的ケーススタディ (explanatorycase studies) 

特定の観察企業や観察業種においてその技法が採用されていることの論理的な合理性 (論理的な因果関係)を、その特定観察対象に特殊的に当てはまる説明理論として提供 する。優れた企業の実務を論理的な因果関係を明らかにして説明できたならば、そのシ ステムを他企業にも使うときに説得力を増す。このケーススタディは、実験科学の立場 に立っている。事件は特定の現象についての単一の観察しか提供しないが、その単一の 観察結果が特定の理論によって説明できるかぎり、その理論は認められる。もしその単 一の観察結果を理論が説明しえない場合には、その理論は訂正されなければならないこ

とになる。

③規範的ケーススタディ (normativecase  study) 

特定の経営管理システムに関する優れた実務上の技法を集約するために、多くの企業を 観察し、そこから高業績をあげている成功企業群の「ベスト」な実務をKJ法によって帰 納法的に集約・体系化して標準的な規範的技法や規範的モデルを導く。門田教授が考案

した方法。

今回の事例分析は、初期のトヨタのほかに、現代の導入事例としては、ミヤノ一例のみ であり、広範な実証研究、伝統的な経験的研究方法 (empiricalresearch) という視点 からは、データ蓄積が不十分である。しかし、本稿第1章における 2つの事例研究は仮 説検証型としてではなく、むしろ仮設設定型として有効であると考える。これは、上記

①のアプローチに相当する。この際に、特に、時系列の異なる 2事例に基本概念におけ る共通点を見出した点に、今後の研究に対する意義があると考える。また、これらの分 析から得られた仮設を検証するための、広範な実証研究については、別途、今後の課題

としたい。

なお、本稿第2編では、今度は内部の視点から、 TPSの財務効果の理論的分析を試みて いるが、これは、上記アプローチのうち、②のケースに相当するものと考えている。

2) Womack].  P., Daniel T.  Jones, Daniel Roos, ThechineTha t Changed The Wor1  d‑The  Story of Lθan ProductIo ,n Macmillan Publishing Company, 1990 (沢田博訳『リ ーン生産方式が世界の自動車産業をこう変える』 経済界, 1990年)

Womack J.  P., Daniel T.  Jones, Lθan thInkIng  banISh wastθand creatθWθa1th  In your corporatIon, Simon & Schuster UK Ltd., 1996 (稲垣公夫訳『リーン・

シンキング

J

日経BP社, 2003年)

Womack].  P., Daniel T.  Jones, Lean So1utIons.'How CompanIes and Customers Ca

仕 目 白 均1uθandWea1 th Togθ訪 問 Simon

Schuster UK Ltd., 2005 (生田 えり子,

山下優子訳『リ}ン・ソリューション』 日経BP社, 2008年)

3)佐武弘章

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整流Jによるもの造りートヨタ生産方式を導く八つの原則一』東洋経済新 報社, 2005年, 27'"'‑'52ページ。

4) さらに、季節変動や景気変動にも対応できるための、「平準化」生産の考え方も重要と される。したがって、「かんばんJ導入は、 TPS導入の初期段階では、かなり難しい課題

であることが多い。

5) リードタイムとは、広義には、顧客の発注から納品までの全ての期間を指す。企業全体 の競争力を考える場合、本来は、このトータルリードタイムで考えるべきである。通常、

製造現場でいわれる場合には、リードタイム=製造リードタイムを意味する。これは、

狭義のリードタイムの定義であると考えることができる。本章では、製造現場から生み 出された基本概念としてのTPSの本質を考察している。したがって、ここでは、後者で ある、狭義のリードタイムを意図している。

また、 TPSの別の原則である「売れるものだけを製造する」が成立する場合には、製造 リードタイムは、限りなく、製造・販売リードタイムに近いものになるとみなすことが 可能である。本章では、その前提にたっている。本稿におけるリードタイムの概念につ いては、改めて、第2編第4章で定義する。

日)大野耐一『トヨタ生産方式一脱規模の経営をめざして-~ダイヤモンド社, 1978年、 円田安弘『トヨタプロダクションシステム その理論と体系-~ダイヤモンド社, 2006  年。

7) この点に注目したのが、ゴーノレドラットのTOC(制約理論)である。

エリヤフ・ゴールドラット『ザ・ゴーノレ』ダイヤモンド社,2001年,370"‑'371ページ(原 著GoldrattE.  M. &] eff Cox, 昂θ σ'oal‑AProcθssof

, o

'goingImprovθ'ment, The North  River Press, 1984)

8)その点において、製品 l個を完成するまでつくり、それが終わってから次の l個をつく る、というセル生産で、は、直接的にその製品の製造リードタイムを短縮する結果につな がるとし1える。

9)書籍のネット販売でよく知られている、「アマゾン・ドット・コム」は、自宅のパソコン から気軽に注文できるという点もさることながら、その注文から自宅に届くまでの早さ において、圧倒的な人気を誇り、業績が伸び続けている。

「インターネット通販大手のアマゾン・ドット・コムは (2008年 12月)26日、全世界 での年末商戦の売上高が 1995年の創業以来、過去最高となったと発表した。具体的な売 上高は発表していないが、 12月 15日のピーク時に世界で630万件以上を受注、 l秒当た

り72.9点が売れた計算となる」勢いである。

2008年 12月27日20時 17分読売新聞オンラインニュース。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20081227‑0YT1T00560.htm?from=navr。 また、主にオフィスを対象に、事務用品などの翌日(場合によっては即日)デリパリー を謡う「アスクノレ株式会社」は、最近の株価低下の情勢においても、三菱UF]銀行が投 資判断を引き上げるという評価を受け、 2008年 12月四日現在で、東証l部値上がりラ

ンキング13イ立に浮上している。

2008年12月 19日10時18分毎日新聞オンラインニュース「毎日 jpJ。 http://mainichi.jp/life/money/kabu/nsj/news/20081219130736.html。

10)通常 17つのムダ」といわれるが、 8つのムダを挙げる説もある。いくつあるかより も、それだけ「たくさんのムダ」がある、という考え方が重要となる。

Womack].  P., Daniel T.  ]ones, Op.  cit.1996、大野耐一、前掲書。

1 1)通常それは、「自働化Jという概念用語であらわされている。

1 2)藤本隆弘「能力構築競争一日本の自動車産業はなぜ強いのか」中央公論新社, 2003年, 40"‑'50ページ。

3)藤本隆宏『現代経営学講座9 生産・技術システム』八千代出版, 2003年, 13ページ。

14) ものっくり大学名誉教授、

J

コスト研究所所長田中正知氏へのインタビュー (2007年 12月、 2008年8月実施)による。

5)  ~The Toyota Way2001~ トヨタ自動車, 2001年、 トヨタ自動車HP。これは、 トヨタ の場合であるが、このような、企業の根幹にかかわる経営理念、経営方針が、各々の

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