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「在庫低減 J の評価の 2 側 面

ドキュメント内 T P S   (トヨタ生産システム)と会計評価 (ページ 169-179)

する必要はなく、それらの在庫が工程内で使われ、次工程へ流れていくまで、上流の生産 をストッフOする、などという手段を取ることも多い。したがって、「廃棄損」という、会計 上の損失は必ずしも発生しない。

ケース③は、さらに、工程内での様々な改善活動の結果、ものの流れがスムーズになり、

滞留がなくなった結果、工程内外の在庫が自然に減ってくることを意味する。すなわち、

②および③、特に③こそが、 TPSの改善過程で重要、かつ、どこまでも高低続、発展させて いくべき「在産低減」であるといえるのである。

なお、

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における「同期化」には、「後工程引き取り(プルシステム)Jが有効な手段 となる。「かんばん」は、そのための道具である。この場合にも、上記のような、もののっ くり方の「標準化」や、同期して生産できるための進捗状況の「視える化Jが必要となる。

それを行わずに、ただ、「かんばん」だけを導入しでも、その効果はあらわれない。

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導 入が形だけに終わるケースにおいて、陥りがちな誤りである5)

こうして、全てのものが、常に必要な速さで、途中で停滞することなく流れ、合流して いく状態が「ジャスト・イン・タイム」である。これは、

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本柱のうちのひとつで あり、この状態が実現すればするほど、結果として、在庫は激減していき、また、リード タイムが短縮されてし、く 6)ことになるのである。

物的側面において、もうひとつ重要なことがある。在庫が減るということは、それによ って、ものの流れがよく見える、というだけではなく、ものの流れを阻害する要因もまた、

よく視えるようになる、という点である。

一般に、「在庫低減」に反対して、「在庫の効用」としてあげられるのは、以下のような 点である。すなわち、工程に不具合があった場合に、予備としての「在庫」を、工程に投 入することにより、その不具合が後工程に与える影響、ひいてはお客様に与える影響を抑 えるというものである。これは、短期的視点のみでいえば、確かにメリットと受け取るこ ともできる。しかし、それは、結果として、改善すべき不具合が表面化しない、という点 において、長期的に見ればデメリットである。つまり、改善において、在庫は「逆機能」

として働くリスクが存在するのである。

同じような例として、お客様からの急な注文に対しても、在庫があれば、すぐに応えら れるということも、よく主張される。これもまた、急な注文に起因する欠品という不具合 に対して、在庫で対応している、と考えることができる。そうであれば、先の工程内の不 具合への対策と同じように、短期的視点でのメリットが、長期的にみると、問題を隠すと いうデメリットになる、という構造は同じであるといえる。

これとは逆に、「在庫低減」が達成された工程では、何か不具合があると、すぐに製造ラ

イン(ものの流れ)がストップする。その結果、むしろ、その工程の問題点がはっきりす るという「効果Jがもたらされるのである。 TPSにおける「視える化」とは、単に、目の 前の状況を見えるようにするのではなく、このような長期的視点にたって解決すべき本質 的問題点を視えるようにするものであり、だからこそ、改善を継続するにあたっての必須 条件となるのである。

ここで、実務上陥りがちな問題点をひとつ指摘したい。この改善過程は、短期的に見れ ば「納入遅れ」などの痛みを伴う。したがって、そのリスクのみを現場に指摘すれば、当 然の結果として、現場ではリスクを回避しようとするため、在庫は、むしろ増えてし1く。

このリスクを、単なるマイナス要因ではなく、長期的視点で、あくまでも、改善の必要な 過程である、と認識することは、実は、非常に難しいことなのである。

製造現場において、納期は当然守るべきものであり、それを守るために様々な工夫をし ている。「在庫低減」によるリスクの大きなひとつが、この大切な納期を守れない、という 可能性なのである。現場だけに任せていては、このリスクが「在庫低減」の「逆機能」と して働くことは、十分に想定され得るし、無理もないことである。したがって、最も大切 なのは、「在庫低減」実現のためには、それを現場任せにするのではなく、あくまでも長期 的視点で、しっかり改善をすすめる、という強い意思を、当該企業の経営サイドがどれく

らい持てるかという点である。

さらに、それを、どれくらい製造現場に徹底できるか、また、製造現場だけでなく、営 業、販売部門なども含めた、その企業内全体に認知させられるか、という点も非常に重要 である。その努力を伴ってこそ、「在庫低減」は、最終的な製造力強化、ひいては企業価値 増大にまで結びついてし、く。そして、そこにまで至れば、結果として、企業競争力が強化 され、その結果として、売上増大、あるいは、コスト削減といった会計的効果が現われて くるようになる。これが、 TPSの指導場面でよくいわれる、「結果(数字)は後からついて くる」ということの実際の展開であり、次に述べる、貨幣的側面としてのー要素にもなっ てくるのである。

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2 会計的側面‑

r

資本回転率」と在庫の「資産性

J‑

次に、会計的側面を考える。先に述べたように、死蔵品の処分は、損失計上に直接つな がるものであるが、これは、あくまでも一時的な現象であり、また、これを一時的現象に 留めるためにも、改善は継続されなければならない。むしろ、「在庫低減」の会計上の影響 は、一時的な「在庫低減J=在庫処分ではない、工程改善の結果としての、「在庫低減」に おいて重要であり、詳しく検討されるべきである。以下、「在庫が減った」結果、会計上で 何が起こるのか、という点を考察していく。

まず、最もわかりやすいのは、直接的な経費削減効果である。それまで、必要で、あった、

在庫管理上の経費がなくなる、あるいは減っていく。つまり、倉庫代、スペース代、それ らの在庫管理を行うための人件費を含む諸経費が不要となるのである。これらについては、

従来から多くの指摘がなされている7)。また、在庫に投入した資金が、借り入れによるも のであった場合、それに対する支払金利という経費もかかっている。在庫が減れば、もち ろんこの部分も減少する8)

しかし、それ以上に大きいのが、キャッシュ・フロー、この場合特に、営業キャッシュ・

フローの改善という効果である9)。それまでは、ものづくりの始点で投入された資金が、

回収されずに「在庫」のかたちで滞留していたので、ある。それが、改善により、すみやか に流れ、回収されるようになってし1く。キャッシュ・フローの観点からみれば、その効果 には劇的なものがある。これを、キャッシュ・フロー計算書の計算様式にあてはめて考え れば、数字の違いは明らかである。

図表 53は、在庫(=棚卸資産)とキャッシュ・フローとの関係を示している。現在認 められている 2種類の計算方法10)それぞれの、計算項目を、加算・減算項目ごとに列挙 している。まず、「間接法」では、当期の利益額からスタートして、間接的に営業キャッシ ュ・フローを計算する。その場合、棚卸資産の減少額が加算される。これがすなわち、在 庫(=棚卸資産)が減れば、営業キャッシュ・フローがその分増える、ということである。

次に、「直接法Jでは、減算項目のひとつである、「原材料又は商品の仕入支出」が、棚 卸資産と関係している。仕入支出の計算は、図表 54に示す通りである。この2つの式の 組合せと、図表 53の構造から明らかなように、ここでも、棚卸資産が減ると、 当期仕入 支出が減ることにより、結果として、営業キャッシュ・フローが増えるのである。

つまり、間接法でも、直接法でも、「在庫低減」がされる、すなわち、棚卸資産が減ると、

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営業キャッシュ・フローがよくなる。別の表現をするならば、「在庫が少なければ、その分、

運転資金が少なくてすむ」ということになる。ここに 「在庫低減Jの数値的効果とその意 義を見出すことができるのである。

当期買掛金=(期末棚卸資産+売上原価)一期首棚卸資産 当期仕入支出=(期首買掛金+当期買掛金)一期末買掛金

図表54

r

キャッシュ ・フロー」計算、直接法における

「原材料又は商品の仕入支出(当期仕入支出)Jの算出計算式

資料出所:鎌田信夫『新版第 2版キャッシュ・フロー会計の原理J],税務経理協会, 2006  年, 49ページ

また、「在庫低減」の結果として、在庫回転率が上昇するのはもちろんであるが、それに

より、さらに資本回転率も上昇する点も注目すべきである。最終的には、投下資本の資本 利益率上昇という効果が期待できることになる。売上に対する利益率ではなく、その企業 全体の投下資本に対する利益率、すなわち、投下資本の回収力という点にこそ、「在庫低減」

は貢献しており、ここにこそ、 「在庫低減」の大きな会計的意義が見出せるのである。

さらに、本稿では、もうひとつ、重要な会計的意義を追加したい。先に 「物理的側面」

において述べた、競争力強化、企業価値向上により、 「将来キャッシュ・イン・フロー」の

増大がもたらされる、という視点である。すなわち、「在庫低減jの影響により、現在の会 計数値だけでなく、将来の会計数値もまた、改善されるという点である。

これは、「在庫低減」の会計的評価にとって、重要な視点であることはいうまでもないが、

特に、最近の「資産負債アプローチ」において、この点を検討する場合、資産の概念とも 関連する重要な論点として、より深く検討すべき必要性を指摘することができる。このよ

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