1 在庫の種類
図表 50は 、 製 造 業 の 一 般 的 な 製 造 現 場 で 見 ら れ る 様 々 な 在 庫の種類を 、 在 庫のできる 原 因 別 に 整 理 し 、 そ れ ぞ れ の 在 庫 を 減 ら す た め に 必 要 な 手 段 に つ い てまとめた も の で あ る。
在 庫 の 種 類 在 庫 が で き る 原 因
※ジャスト・イン・タイムになっていない
① 材 料 在 庫 仕入品(購入品)が多い
② 工程 内 在 庫 工程内の流れの中に、ムダがある (仕掛品)
③ 工程 間在庫 ロット生産・工程ごとの能力差 (仕掛品) 工程が分断、 離れている
=
争ものの流れができていない
④ 非 常 用 在 庫 保管ルール(期限・明示方法)が不明確
=争陳腐化リスク
⑤ 運 搬 待ち在 運搬回数が少ない・大ロット運搬
庫 ※そもそも、その運搬は必要か?
⑥ 死蔵品 何のための在庫であるのか不明 必要なものかどうかが不明
図表50 在庫の種類と原因・低減手段 資料出所:筆者作成
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在 庫 低減 のた め に 必 要な手 段
発注点管理・購入リードタイム短縮 工程の流れ改善をする
工程分析をして、 ひとつずつ、つぶしていく 一個流し・標準手持ち・レイアウ ト変更・タクト タイム生産・後工程引取り(かんばん)・最適ロツ
ト
=争標準化・整流化・平準化・同期化
ノレールを定めて、 保管期限・責任者等を明示する
=争先入先出しで常に入れ替え
※安易な安心値としての在庫を持たない 運搬手段検討=宇多回数・小ロット運搬
※全ての運搬はムダという思想が基本 赤札作戦(視える化)=争処分
死蔵品のリスト化=争発生させない『しくみJ
在庫は、まず、工程の流れの各段階で、少なくとも、何のためのものかが判明するいわ ゆる「在庫J(① ⑤)と、すでに、何のためのものかが判明しない、「死蔵品J(⑥)に大 別できる。
i ‑ t
図表
5 1
工程の流れと在庫の所在例 資料出所:筆者作成ゆ 君 主
C 工 程
時間当り 処理陸カ
10個/1H
‑ t =
さらにこれらを、工程の流れの中に示しているのが、図表51である1)(① ⑥の分類は、
図表50と共通)。これらのうち、① ⑤は、目的がはっきりしている在庫である。それら を細分化すると、まず①は、工程に投入される前の在庫であり、伝統的原価計算において は「材料勘定」にあたる。②と③は、工程内と工程外にそれぞれ滞留している在庫である。
滞留している場所は異なるが、会計上でいえば、いずれも「仕掛品勘定」にあたる。⑤は、
製品としては完成しているが、出荷前のものであり、「製品勘定」に相当する。また、④は、
製造途中での、何らかの異常時に対応するための在庫であり、予備的な性格を持つ。勘定 科目としては、「材料JI仕掛品JI製品」のいずれにおいてもあり得る。
⑥の死蔵品に関しては、その意味が異なってくる。これは、ただちに処分されるべきも のであり、会計的には、近い将来、「廃棄損」として計上されることになるものである。
2 r
ものと情報の流れ」の重要性在庫の種類によって、その発生要因、また、それらを低減するために必要な、 TPS上の 手法は様々である。その中で、共通項を見出すならば、ものがつくられてし1く過程に、「流 れ」をつくるという点である。
TPSは、「ものと情報の流れJを重視する。しかもそれは、流れにしたがって、付加価値 が付け加えられていく「価値の流れ」でなければならず、さらに、その流れは、顧客価値 からはじまるものでなければならない。つまり、お客様が欲しいものを、欲しい時に、欲
しいだけの量で提供できるのが「あるべき姿Jなのである。
したがって、通常の製造における時系列的な流れでいえば、その最終到達地点である「顧 客価値」が、価値連鎖に関してはその起点になる、ということになる。 TPSの基本概念の ひとつで、ある、「後工程引き取り (ブワレシステム)Jというのは、実は、ものの流れだけで はなく、この、「イ面値のフ。ノレシステムJ2)という上位概念に包括される。そして、これらの スムーズな流れをつくりだすために、当該企業の状況、レベルに応じた、標準化・整流化・
平準化・同期化などが必要となってくるのである3)。
3
r
在庫を減らすJ
と「在庫が減るJ
図表52は、「在庫低減」を、その目的によって、整理したものである。ひとくちに「在 庫低減」といっても、目の前の「在庫」という「もの」を処分する= I在庫を減らす」と いう意味と、そのような直接的な処分ではなく、あくまでも、 TPSの改善の結果、工程内 外の「在庫が減っていく」という意味の両方があることに留意しなければならない。
図表52における①、②は、ともに、「在庫を減らすJものであるが、これらは、持って いる意味が大きく異なる。一般に、 TPSを導入した企業において、初期段階で在庫を大量 に処分したため、結果として、その会計年度において、多額の廃棄損を出す、というのは、
①のケースに相当する。しかしこれは、あくまでも一時的な、特殊な処置である。したが って、会計上は、営業外損益ではなく、特別損益に計上されることもあり得る。いわば、
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過去における、負の遺産を整理する、という状況である。
施 工程改善の結果、
滞留がなくなる
図表
5 2 r
在庫低減j の意味と改善手段・効果 資料出所:筆者作成麓争力強化
=キ将来キャッシュ・
イン・フロー増加
製造途中であれ、製造後であれ、 放置された在庫は、常に陳腐化リスクを伴い、将来に おいて、「評価損」を計上する可能生を内包するが、ここでは、その段階にとどまらず、全 額が「廃棄損」として計上されるということになるのである。
ここで重要なのは、これが、あくまでも、緊急避難的手段だという点である。 TPSでは、
このような処理をする場合には、同時に、これ以降、同じことを繰り返さなくてすむよう に、「死蔵品をつくらないしくみづくり」をする。そのためにも、標準手持ちなどの在庫管 理のしくみや、工程改善の実施による、ものの滞留をなくす努力が必要とされるのである。 もうひとつ、②のケースは、工程の流れをつくる中で、必要最低限の在庫数を決め、そ れ以外のものを減らす、ということを意味する。この場合は、必ずしも、もの自体を処分
する必要はなく、それらの在庫が工程内で使われ、次工程へ流れていくまで、上流の生産 をストッフOする、などという手段を取ることも多い。したがって、「廃棄損」という、会計 上の損失は必ずしも発生しない。
ケース③は、さらに、工程内での様々な改善活動の結果、ものの流れがスムーズになり、
滞留がなくなった結果、工程内外の在庫が自然に減ってくることを意味する。すなわち、
②および③、特に③こそが、 TPSの改善過程で重要、かつ、どこまでも高低続、発展させて いくべき「在産低減」であるといえるのである。