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現場管理における「原単位 J 指標応用の提言

ドキュメント内 T P S   (トヨタ生産システム)と会計評価 (ページ 155-165)

第 4 節 f リ}ドタイム短縮」がもたらす利益

5  現場管理における「原単位 J 指標応用の提言

最後に、「リードタイム短縮Jをはじめとする、主に時間を短くすることを主眼とした、

改善を実施した場合の効果測定について触れる。その改善効果を、誰もが簡易に計算でき るための数値指標として、生産現場で、すぐに使える 「原単位」の活用、 応用を提言する。

「原単位」とは、実際の製造現場において、生産を管理するために必要とされる、様々 な数値である。狭義には、「部品 1個当りの生産に必要な原材料等の使用量66)Jを指す。

この使用量を、原料だけでなく、用役にまで広めたり 67)、工数(時間)も含む68)など、 実際には、生産現場が必要とする数値の実情にあわせた、様々な運用がみられる。

したがって、本稿では、「原単位」を広義の概念として、「製品をつくるために投入する 何らかのリソースを、管理上必要な単位ごとに測定、把握したものであり、現場の生産管 理における基本的数量である」と定義する。

生産現場では、まず工程能力を把握するために、この 「原単位」の特定が欠かせない。 これがなければ、そもそも、正常異常の判断基準となるべき数値が存在せず、それでは、 現状把握も、改善効果の測定もできなし1からである。

原 価 原 単 位 ×  単 価

単価=原材料などの重量や体積や時間当たりにかかる費用

図表

47

r 原単位Jを用いた、部品原価の計算式

資料出所:青木幹晴 『全図解 トヨタ生産工場のしくみj], 日本実業出版社, 2007年, 142 

‑‑‑‑145ページより、 筆者作成

また、「原単位Jというのは、改善の結果を反映して、改定されていく ところに大きな意 味がある。たとえば、図表 47は、 部品原価の計算式をあらわす。原価低減活動において

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は、このように、部品原価を 「原単位J["単価(原材料などの重量や体積や時間当たり にかかる費用)Jに分解して、そのいずれかを下げるとしづ手順ですすめるのである69)

この手法に、広義の「原単位J概念をあてはめる、すなわち、時間当たりの、貨幣額単 位による「原単位」を想定するのである。 具体的には、その工程でかかる加工費トータル と、総稼働時聞から、単位時間当たり(たとえば、1分当たり)の加工費の「原単位」を、

あらかじめ定めておく。改善により、時間短縮が実現したら、その効果測定の簡易版とし て、「時間当たり加工費×短縮した時間J(図表48)でその効果金額を算定する。もちろん、

投入リソースそのものが削減できた場合には、「原単位」そのものも、見直していく。

改善効果金額=時間当たり加工費×短縮した時間

(改善効果の原単位)

図表48

r

原単位」を用いた、時間短縮改善効果算定の計算式 資料出所:筆者作成

総加工費 時間当たり加工費 x かかった時間

(原単位)

図表49

r

原単位j を用いた、総加工費の計算式 資料出所:筆者作成

このようにして、改善が続く限り、 「原単位」としての、「時間当たり加工費×かかった 時間J(図表49)という式の分解要素が、競って小さくなっていく。これは、「リードタイ

ム短縮」の効果を、リアルタイムで「視える化」することに他ならない。その結果を、た とえば、生産進捗管理板などに、生産にかかった時間と一緒に、金額としても表示するこ とにより、現場における原価低減意識のさらなる徹底を図ることができるのである。

ただ、し、リードタイムは、各工程の機械稼働時間の単純な合計ではないため、これらの 式は、実は、正確なものとはいえない。また、特定の製品、部品の製造に「かかった時間」

を、どのように特定するのか、という技術的な問題もある。つまり、これらの計算式は、

あくまでも、改善効果数値の目安として、主に現場で利用するためのものである。

ここで、根拠となる単位時間当たり加工費には、労務費や設備稼働費のほかに、厳密に は、他部門からの配賦額なども含まれるべきであるが、これらは、当該企業の実情と、そ の厳密度に対する要望度合いに応じて、検討、設定する必要がある。「原単位」の算出に時 間と手間をかけすぎていては、「コスト・ベネフィット」の考え方からは、望ましくないが、

一方で、製造予算管理との連動も視野にいれた、発生費用の細かい把握をするまでになれ ば、企業経営上の課題を統一的に把握できる可能性を高めることになるからである。

さらに、本来であれば、財務諸表作成および、財務数値算定のためにも適用できるよう な原価計算のしくみとして、これらの、現場指標(この場合は、「原単位J)を利用できる ことが、最も望ましい。これについては、会計理論、会計規則全体を検討してはじめて、

その可能性がひらけてくる大きな課題である。本稿では、現場とリンクした会計が、原価 管理における、会計の「あるべき姿」であると指摘した上で、その具体的指標の提言は、

今後の重要な課題とする。

ところで、今述べた、改善効果測定のための「原単位」算定方法は、現場の数値を足し ていく、いわば「加算法」である。このような、現場で算定でき、現場でそのまま使用す るための、ミクロの効果算定方法とは別に、当該企業全体を考えた時に、企業業績全体の 改善

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となるべき、改善効果測定の「原単位」の必要性もあわせて指摘する。これにつ いては、終章第2節で、改めて取り上げる。

155 

第 5 節 お わ り に

以上述べてきたように、 TPS導入企業において、「リードタイム短縮」の改善効果を、財 務効果として数値で示すためには、いくつかの現行会計システムの前提条件に関わった見 直しが必要であることがわかった。また、会計理論において、時間軸の重要性は、すでに 意識され、研究もなされているものの、財務分析全体に適用できるまでの理論構成は、実 現していないという課題も明らかになった。ここでは、以下の3点を強調して本節のまと めとする。

l 原価計算の配賦に関連した問題で、は、現行のルールに則った差異分析等の手続きや全部 標準原価計算をそのまま行うのではなく、 TPSが変えた前提条件、たとえば明らかな必要 時間の短縮、また、それによるスループρツト増大等の変更内容を考慮、変更した上で、財 務数値を算出することが、必要かっ重要なポイントである。この場合、迅速、かつタイム

リーな基準数値の改定が、特に必要とされる。

2 その上で、広義の財務効果測定としての、現場における改善効果指標の必要性を重視す べきである。これには、

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コスト」をはじめとする新しい試みの、さらなる発展が必要で あるが、一方で、現場ですぐにでも使える指標という点で、従来から、生産現場において は、すでに一般的である「原単位」の再評価を行った。なお、これらをさらに進めた、会 計上の「原単位」の提言および、財務数値と結びついた概念としての、利益ポテンシャル、

収益性評価指標、リソース別利益率などの可能性については、終章第2節で改めて述べる。

3 利益増大をもたらす、いずれのアプローチにおいても、結果がそのまま財務数値にあら われないことも多い。このようなケースでは、単純化モデルで示した以外の様々な要因が からむことが想定される。これについては、一方で、その効果を取り出すべく、 2で指摘

したような、各種指標計算を試みるとともに、もう一方では、財務効果の阻害要因を見つ け出し、それをもあわせて改善対象とするという、次の段階の改善アプローチの必要性・

重要性を示唆する。この点については、今後の課題としたい。

157 

)河田信「ジャストインタイム管理会計一トヨタ生産方式と整合する管理会計フレームJ

『企業会計~ Vol. 57,No. 12, 2005年, 37'"'‑'38ページ。

河田信『トヨタシステムと管理会計一全体最適経営システムの再構築をめざして』中央 経済社, 2004年, 161'"'‑'164ページ。

2)  トヨタの元生産管理次長、宮元幸雄氏HP、「トヨタ生産方式(TPS)用語集」。

http:// w2a.biglobe.ne. jp/~qpon/toyota/kanban/yougo/index.html

3)先に述べたように、 TPSの別の原則である「売れるものだけを製造する」が成立する場 合には、製造リードタイムは、限りなく、製造・販売リードタイムに近いとみなすこと が可能なのである0

4) この「在庫低減」については、次章で検討する。

5) 前掲、宮元氏HP。

日)もともとの意味において、「サイクノレタイム」は、何らかの製造が、ひとまわり終わる までの時間の意味であり、それを、人の作業でとらえるか、製品ができるまででとらえ るかの違いである。この考え方を拡大すれば、機械による加工がひとまわりする時間な どという定義も可能になることになる。

7)向上HP

8)水島多美也「時間短縮の効果想定方法に関する一考察J~曾計』第 174 巻第 5 号, 2008  年, 100'"'‑'113ページ。

9) トヨタでも、時期により、部署により、用語の定義が異なっているともいわれる。

10) 実際原価計算の場合には、かかった金額、標準原価計算の場合にはあらかじめ、かか ると設定された金額を使用する。

1 1) もちろん、これらの「ムダな時間」を全て排除するのがTPSの「あるべき姿」である が、実際には全くムダ時間がない製造現場というのは難しい。

12) さらに標準原価計算であれば、 1か月聞かけて、ゆっくり製造しても、固定配賦レー トがあるため、いったんは同様の製造原価となる。ただし、この場合は、月次あるいは 年次等の単位で、差異分析がなされ、その差異分のみは、売上原価、あるいはたな卸資 産に配賦される。

3) 

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・・・日本の代表的な製造大企業において、

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やスルーフ。ット会計を導入してい る所は驚くほど少ない。トヨタ自動車の場合も、現場における活動量(たとえば段取替 え時間)の把握やスルーフ。ット意識・キャッシュフロー意識は徹底しているにも関わら ず、こと原価計算方式に関しては伝統的な全部原価計算を堅持している。日本の大手自 動車メーカーはいずれも同様である。」藤本隆宏「もの造り論から見た原価管理J~剛RC Discussion Paper~ No.93, 2006年, 5ページ。

14) 同上論文, 5ページ。

5)会計概念上、この問題は発生主義と実現主義のいずれを選択するかという問題と密接 に関係する。しかし、 TPSでは、「売れた(売れる分)だけをつくる」としづ大原則が あり、この原則が成立する限り、費用、収益ともに「発生=実現」としづ関係が成り立 つのである。したがって、本稿では、発生主義、実現主義の違いにかかわらず、 TPSの あるべき姿のもと、という条件下での検証を行うものである。

16) TPSの7つのムダのなかで、も、筆頭とされる、最もしてはならないムダである。

1 7)  ~トヨタ生産方式一脱規模の経営をめざして一』ダイヤモンド社, 1978年, 108'"'‑'109  ヘーン。

18) これについては、第l編第3章で、すでに述べている。

1 9)需要が増えていく時代には、「生産能力」向上を基礎として、売上増による利益増大 を主眼とし、反対に重要が減ってし、く時代には、リソース減としての「省人化」その他 を行うことで原価低減による利益増大を主として図る、という使い分けを前提に、それ だけではない、決め細やかな対応が必要とされるのである。

ドキュメント内 T P S   (トヨタ生産システム)と会計評価 (ページ 155-165)