第 2 章 SWNT 電子状態の計算 19
2.4 SWNT の tight-binding 近似によるエネルギー計算
2.4 SWNT の tight-binding 近似によるエネルギー計算
カイラル対称性を取り入れた
SWNT
結晶格子においてtight-binding
近似エネルギー計算 を適用する方法を説明する.2.4.1 tight-binding
近似を用いたSWNT
の波動方程式ユニットセルがグラフェンと同じ構造のため,
SWNT
の波動方程式もグラフェンのものと 同じ形になる.SWNT
の波動関数Ψ(r)
はグラフェンと同じくブロッホ軌道Φ
αj(r)
の線形結 合として以下の通りに表すことができる.Ψ(r) = X
α=A,B
X
4j=1
C
jαΦ
αj(r) (2.106)
ただし,グラフェンでは平面状の格子であったが,
SWNT
は円筒状の格子であるため,2p
軌 道の方向はr, θ, z
方向を取ることになる.各ブロッホ軌道Φ
αj(r)
はΦ
αj(r) = 1
√ N X
NRα
e
ik·RGαφ
αj(r − R
α) (2.107)
となる.ここで指数部分の位置ベクトルに,展開図での
2
次元位置ベクトルR
Gα を用いてい る.波数ベクトルk
は第2.2.4
節で述べた通り展開図上での2
次元ベクトルであり,円周方向 の周期境界条件Eq. (2.39)
によってk = kK
2+ µK
1(µ = 0, 1, · · · , N, − 1
2 < k < 1 2 )
ただし,
K
1= (2n + m)b
1+ (n + 2m)b
2N d
RK
2= mb
1− nb
2N
と制限されているのであった.解くべき波動方程式はグラフェンと同様
"
H
AAH
ABH
BAH
BB#
C
1A.. . C
4B
= E
"
S
AAS
ABS
BAS
BB#
C
1A.. . C
4B
(2.108)
という
8 × 8
の一般化固有値問題となり,H
jjαβ0,S
jjαβ0 を計算すれば電子のエネルギー準位を 計算できる.2.4. SWNT
のtight-binding
近似によるエネルギー計算41 2.4.2
行列要素H
jjαβ0, S
jjαβ0 の導出行列要素
H
jjαβ0, S
jjαβ0 もグラフェンと同様の計算により求められる.すなわちクーロン積分は,H
jjAA0= X
NRAA
e
ik·RGAA× h
jj0(R
AA) (2.109)
H
jjAB0= X
NRAB
e
ik·RGAB× h
jj0(R
AB) (2.110)
H
jjBA0= ³ H
jAB0j´
∗(2.111)
H
jjBB0= H
jjAA0(2.112)
となる.原子軌道同士のクーロン積分
h
jj0(r)
を位相因子とともに和を取ればよい.ここで波 数と内積を取る格子ベクトルはR
GAAと,仮想的な2
次元平面での位置ベクトルであるので,グラフェンと同じく,整数
n
1, n
2に対し,R
GAA= n
1a
1+ n
2a
2(2.113)
R
ABG= n
1a
1+ n
2a
2+ a
B(2.114)
と計算できるベクトルの集合について和を取ればよい.ただし,同じ原子との積分を重複し て足し合わせないよう,
R
Gに対応する3
次元円筒座標(r, θ, z)
について,−π ≤ θ < π
の範 囲にある原子のみを考慮する.重なり積分も同様なので省略する.
2.4.3
原子軌道同士の積分h
jj0(R), s
jj0(R)
の導出h
jj0(R), s
jj0(R)
の計算も基本的にグラフェンと同様であるが,グラフェンでは2p
軌道の 方向が直交座標系でのx, y, z
方向であったのに対し,SWNT
は円筒座標系でのr, θ, t
方向で あるため,2p
軌道の+
成分の方向ベクトルr
jがグラフェンの場合と異なるものを用いること となる.また,ポテンシャル関数を計算する場合の原子間の距離は,仮想的な
2
次元平面での位置 ベクトルR
Gではなく実際の3
次元位置ベクトルR
について,その絶対値|R|
を用いなけれ ばならない.その他はグラフェンの場合と同様に計算をすればよい.2.4. SWNT
のtight-binding
近似によるエネルギー計算42 2.4.4 h
jj0(R), s
jj0(R)
の具体的な積分式以下に
h
jj0(R), s
jj0(R)
の全成分を具体的に導出しておく.展開図における原点R
G0= (0, 0)
あるA
原子と,R
Gj にある原子の間の積分を求める.それぞれの原子の3
次元直交座標での 位置はR
0= ( d
t2 , 0, 0), R
j= ( d
t2 cos θ, d
t2 sin θ, t)
と表せるので,
R
0からR
j方向への位置ベクトルR
と2
原子間の距離R
は,R = R
j− R
0= ( d
t2 (cos θ − 1), d
t2 sin θ, t) ≡ (x, y, z) (2.115) R = |R| =
q
d
2t(1 − cos θ) + t
2(2.116)
と求められる.
R
方向の単位ベクトルe
Rの成分を(x
e, y
e, z
e)
とすると,e
R= (x
e, y
e, z
e) = ( x R , y
R , z
R ) (2.117)
である.また,位置
R
jにおける各2p
軌道の方向を3
次元直交座標で表現すると,r
方向: e
2= (cos θ, sin θ, 0) (2.118)
θ
方向: e
3= (− sin θ, cos θ, 0) (2.119)
t
方向: e
4= (0, 0, 1) (2.120)
で,
R
0での各2p
軌道の方向はr
方向: e
02= (1, 0, 0) (2.121)
θ
方向: e
03= (0, 1, 0) (2.122)
t
方向: e
04= (0, 0, 1) (2.123)
となる.
a) 2s
軌道同士の積分Eq. (2.72)
より,h
11(R) = h
ss(R) (2.124)
と求められる.
2.4. SWNT
のtight-binding
近似によるエネルギー計算43 b) 2s
軌道と2p
軌道の積分Eq. (2.74), Eq. (2.76)
より,h
12(R) = (e
2· e
R)h
sp(R) = (x
ecos θ + y
esin θ) h
sp(R) (2.125) h
13(R) = (e
3· e
R)h
sp(R) = (−x
esin θ + y
ecos θ) h
sp(R) (2.126) h
14(R) = (e
4· e
R)h
sp(R) = z
eh
sp(R) (2.127) h
21(R) = −(e
02· e
R)h
sp(R) = −x
eh
sp(R) (2.128) h
31(R) = −(e
03· e
R)h
sp(R) = −y
eh
sp(R) (2.129) h
41(R) = −(e
04· e
R)h
sp(R) = −z
eh
sp(R) (2.130)
と求められる.c) 2p
軌道同士の積分e
Rに垂直な2
つのベクトルe
R0, e
R00はグラフェンの計算と同様にEq. (2.92)
やEq. (2.93)
で 与えることができる.h
jj0(R) (j, j
0= 2, 3, 4)
は,各軌道の方向ベクトルe
j, e
0j0 とe
R, e
R0, e
R00 を用いて,Eq. (2.81)
にて求められる.ただし,具体的な表式は複雑になるため省略する.44
第 3 章 SWNT 電子状態を用いた様々な計算
前章では
tight-binding
近似を用いてグラフェンやSWNT
の電子状態を計算する方法を説明した.本章では電子状態を用いて計算を行う構造最適化計算と,次章以降での解析で用い る
SWNT
の分子軌道法について説明する.なお,電子状態からKataura plot
を求める方法 については文献[20]
と同様なので省略する.
ドキュメント内
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(ページ 40-44)