第 5 章 SWNT 電子状態の考察 78
5.2 エネルギーバンドと Kataura plot に関する考察
5.2 エネルギーバンドと Kataura plot に関する考察
5.2.1 Kataura plot
の比較(a)
0.5 1 1.5 2
0 1 2 3
Tube diameter [nm]
Energy separation [eV]
(b)
0.5 1 1.5 2
0 1 2 3
Tube diameter [nm]
Energy separation [eV]
(c)
0.5 1 1.5 2
0 1 2 3
Tube diameter [nm]
Energy separation [eV]
Fig. 5.2: Various Kataura plots, (a) zone-folding graphene, (b) cylindrical SWNT, and (c) optimized SWNT.
様々な条件により
tight-binding
近似計算を行 ったKataura plot
をFig. 5.2
に示す.(a)
はzone-folding
により求めたプロット,(b)
はシリンダー 構造のSWNT
より求めたプロット,(c)
は最適 化構造のSWNT
により求めたプロットである.すなわち,
(a)
と(b)
は曲率の影響の違い,(b)
と(c)
は構造最適化の影響の違いである.各
E
iiラインを見ると,(a)
に比べて(b), (c)
はライン下側が稲穂のように垂れ下がった形を している.ライン下側はK→M
方向のカッティ ングライン上のJDOS
ピークであり,ラインの 中央がarmchair,
ライン外側がzigzag SWNT
のJDOS
ピークである.それゆえ曲率の影響によ り,zigzag SWNT
のK→M
方向ピークが大き く下がり,各ライン下側のファミリーパターン[46]
が垂れ下がった形になると考えられる.ま た,(c)
のプロットのみ各E
iiラインが大きく広 がった形をしている.それゆえ各E
iiラインの開 きは構造最適化の影響によるものであると考え られる.ただし,(b)
のプロットもE
iiラインは 多少開いているため,曲率の影響により構造最 適化が起こり,曲率により多少開いたE
iiライン が構造最適化によりさらに開く方向に変化した,と考えるべきである.
次に,
mod 0
のSWNT
のバンドギャップにつ いて考察する.zone-folding
による解析により,mod 0
の全てのSWNT
ではバンドギャップが0
eV
であることが知られている[9]
.これは,mod
0
のSWNT
のカッティングラインが全てギャッ プ0 eV
のK
点を通るからである.Fig. 5.2(a)
に おいてもそのことが確認できる.しかし,曲率を 考慮した(b)
,さらに構造最適化した(c)
では一 部を除き全てバンドギャップ存在する.曲率や構 造最適化を考慮してもなお金属性であるSWNT
はカイラル角30
◦のarmchair SWNT
のみであ る.それゆえ,(n, m)SWNT
はn = m
を満たすSWNT
のみ金属性を示し,n 6= m
であるSWNT
は全て半導体性を示す.5.2.
エネルギーバンドとKataura plot
に関する考察81 5.2.2 1
次元エネルギーバンドの比較K
M
*1 *2
Fig. 5.3: Brillouin zone of graphene and cutting lines of (8,0) SWNT.
SWNT
の1
次元エネルギーバンドの比較を行 う.Fig. 5.4
にzigzag
の(8,0) SWNT
のエネル ギーバンドを示す.まず曲率の影響を考察する ため,Fig. 5.4(a)
のzone-folding
とFig. 5.4(b)
の シリンダー構造のエネルギーバンドを比較する.Fig. 5.4(a)
に*1, *2
で示したバンドが,Fig. 5.4(b)
では大きく下がっていることが分かる.*1, *2
のπ
∗バンドはFig. 5.4
に示した2
つのカッティング ライン上のバンドに相当し,K→M
方向のバンド である.それゆえ,曲率の影響により,K→M
方向 付近のエネルギーギャップが大きく下がっている と考えられる.次に構造最適化の影響を考察する ため,Fig. 5.4(b)
のシリンダー構造とFig. 5.4(c)
の最適化構造のエネルギーバンドを比較する.構 造最適化の影響は曲率の影響ほど顕著ではないが,
*1, *2
のπ
∗バンドがシリンダー構造よりさらに下がっていることが分かる.なお,本研究による計算では
(5,0) SWNT
は金属性にはならなかった.Fig. 5.5
に(5,0) SWNT
の最適化構造の直接計算によるエネルギーバンドを示す.これはLDA
やGW
近似に よる過去の研究とは一致しないが,Miyake
らによるtight-binding
近似計算の結果[25]
とは 一致している.Fig. 5.6
にarmchair
の(5,5) SWNT
のエネルギーバンドを示す.Fig. 5.6(a)→(b)
の曲率の 影響としては,JDOS
ピークを取る波数が全体的に左側(SWNT
エネルギーバンドでのΓ
点 方向)
にずれていることと,K
点を通るバンドのエネルギー変化が大きいことが挙げられる が,zigzag SWNT
ほどその変化は大きくない.また,Fig. 5.6(b)→(c)
の構造最適化の影響 はグラフからはほとんど見ることができない.Fig. 5.7(a)
に(11,0) SWNT
のJDOS
ピークでのエネルギーギャップの変化を示す.エネル ギーの変化はzone-folding
の状態を基準にして,シリンダー構造,最適化構造のSWNT
で のJDOS
ピークのエネルギーギャップ値の変化を示している.zigzag SWNT
である(11,0) SWNT
では,zone-folding
からシリンダー構造へ曲率が変化することにより,E
44のエネル ギーギャップが大きく下がっている.mod 2
の(11,0) SWNT
ではE
44はK→M
方向のカッ ティングライン上のピークであり,前述のK→M
方向でπ
∗軌道が大きく下がるという現象に 対応していると考えられる.シリンダー構造から最適化構造への構造最適化による変化ではK→M
方向のE
22, E
44ピークのギャップが小さくなり,K→ Γ
方向E
11, E
33ピークのギャッ プが大きくなるといったように,M
点方向かΓ
点方向かで変化は逆になる.これはKataura plot
の考察での,曲率と構造最適化の影響が重なり合ってはじめてKataura plot
のE
iiライ ンが大きく開くことに対応していると考えられる.Fig. 5.7(b)
に(6,5) SWNT
のJDOS
ピークでのエネルギーギャップの変化を示す.armchair SWNT
に近い(6,5) SWNT
では(11,0) zigzag SWNT
に見られた,M
点, Γ
点方向依存性は なく,エネルギーギャップの変化はK
点からの距離にほぼ比例している.また,その変化の大きさも
zigzag SWNT
よりかなり小さいものとなっていることが分かる.5.2.
エネルギーバンドとKataura plot
に関する考察82
(a) (b) (c)
−2 0 2 4
Γ X
Energy [eV]
*1
*2
−2 0 2 4
Γ X
Energy [eV]
zone−folding cylinder
−2 0 2 4
Γ X
Γ X
Energy [eV]
cylinder optimize
Fig. 5.4: Energy bands of (8,0) zigzag SWNT, (a) zone-folding graphene, (b) SWNT direct calculation with cylin-drical structure, (c) SWNT direct calculation with opti-mized structure.
−2 0 2 4
Γ X
Γ X
Energy [eV]
cylinder optimize
Fig. 5.5: (5,0) SWNT energy band with op-timized and cylindri-cal structure.
(a)
−2 0 2 4
Γ X
Energy [eV]
(b)
−2 0 2 4
Γ X
Energy [eV]
zone−folding cylinder
(c)
−2 0 2 4
Γ X
Γ X
Energy [eV]
cylinder optimize
Fig. 5.6: Energy bands of (5,5) zigzag SWNT, (a) zone-folding graphene, (b) SWNT di-rect calculation with cylindrical structure, (c) SWNT didi-rect calculation with optimized structure.
(a)
−0.6
−0.4
−0.2
0 E11
E22 E33
E44
zone−folding cylinder optimized
Change of energy gap [eV]
(b)
−0.6
−0.4
−0.2
0 E11
E22 E33 E44
zone−folding cylinder optimized
Change of energy gap [eV]
Fig. 5.7: The change of JDOS peak enegy gap. (a) (11,0) SWNT and (b) (6,5) SWNT.
5.2.
エネルギーバンドとKataura plot
に関する考察83 5.2.3 2
次元エネルギーバンドの比較本研究ではカイラル対称性を考慮した
tight-binding
近似でSWNT
のエネルギーバンドを 求めている.カイラル対称性を考慮した計算の場合,zone-folding
の計算と同様に円周方向の 周期境界条件を明示的に考慮しなければならない.このことはすなわち,円周方向の周期境 界条件を無視することが可能であることを表す.周期境界条件を無視した場合,エネルギー バンドはグラフェンと同様の2
次元エネルギーバンドとなる.Fig. 5.8
に,K
点の周りのπ
∗軌道とπ
軌道のエネルギー準位の差の分布を示す.(b)
は最 適化構造の(7,0) SWNT
,(c)
は最適化構造の(4,4) SWNT
,(d)
はグラフェンである.(b)
〜(d)
の分布は(a)
に示した通りK
点を中心になるよう表示している.ここで逆格子における 各点の位置は,グラフェンの基本逆格子ベクトルb
1,b
2を用いてΓ : 0
K : 2b
1+ b
23 M
1: b
12 M
2: b
22 M
3: b
1+ b
22
と定義した.構造最適化を行った
SWNT
では格子の歪みに対応して基本逆格子ベクトルb
1,b
2も歪むが,ベクトルの係数として逆格子空間を定義することで,カッティングラインと各 点の位置関係をグラフェンと等しくなるようにしている.ただし,Fig. 5.8(b), (c)
ではその 歪みは取り除いている.すなわちBrillouin
領域がグラフェンのように正六角形になるよう補 正して表示している.Fig. 5.8(d)
のグラフェンはK
点周りの3
回対称性が見られるが,(b)
の(7,0) SWNT
はM
2 方向のエネルギーギャップがとても小さくなっている.一方(c)
の(4,4) SWNT
は(7,0) SWNT
ほどの極端な変化は見られないが,全体的にエネルギーギャップが小さくなっており,かつM
3方向のギャップがM
1,M
2方向に比べて小さくなっていることが分かる.(7,0) SWNT
のM
2方向のエネルギーギャップが小さくなる現象は,1
次元エネルギーバンドで見られたK→M
方向のπ
∗軌道エネルギー準位の大きな低下や,Kataura plot
で見られた各E
iiライン下部の ファミリーパターンの垂れ下がりとも対応していると考えられる.Table. 5.1
に,グラフェン,(7,0) SWNT
,(4,4) SWNT
におけるK
点とM
点のエネルギー ギャップの値を示す.M
点に関してはどれもグラフェンのM
点におけるギャップよりは小さ いが,その中でもzigzag SWNT
のM
2方向バンドギャップの値のみ他と大きく異なっている.また