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第 7 章 結論 108

A.2 tight-binding ポテンシャル関数

A.2.3 環境依存ポテンシャル

環境依存ポテンシャルでは,すべて以下の式が基本となっている.

h(r

ij

) = α

1

R

ij−α2

exp h −α

3

R

ijα4

i (1 S

ij

) (A.28)

ここで

α

1

, · · · , α

4はパラメタであり,関数ごとに

Table. A.7

に示す値が用意されている.ス クリーニング関数

S

ij

(r)

は原子

i

と原子

j

が最近接であれば

0

に近づき,そうでなければ

1

に近づくよう作られた関数であり,以下の形を取る.

S

ij

= exp(ξ

ij

) exp(−ξ

ij

)

exp(ξ

ij

) + exp(−ξ

ij

) (A.29)

ξ

ij は以下の式から求められる.

ξ

ij

= β

1

X

l

exp

−β

2

à r

il

+ r

jl

r

ij

!

β3

 (A.30)

ここで

β

1

, β

2

, β

3はパラメタであり,

Table. A.7

で与えられる.式より,

ξ

ij の値は原子

i

と原 子

j

の距離だけではなく,

3

つの原子

i, j, l

の位置関係にも依存することが分かる.原子

i, j

の間に原子

l

が挟まっているとき,すなわち

r

il

+ r

jl

' r

ijのとき

Eq. (A.30)

の指数の値は

1

に近づき,そうではないときは指数の値は

0

に近づく.原子

i,j

が最近接の場合は間に挟まっ ている原子はなく,最近接でない場合は大抵

2

つの原子の間に他の原子がいるので,

ξ

ijによ り最近接かどうかを調べることができる.そうして求められた

ξ

ijの値により

S

ijの値が決ま る.具体的には

ξ

ij

0

から大きくなるにつれ,

S

ij

0

から

1

まで変化する.

スケーリング関数

R

ij

(r)

は以下の式から求められる.

R

ij

= r

ij

½ 1 + δ

2

· g

i

g

0

g

0

+ g

j

g

0

g

0

¸¾

(A.31)

ここで

δ

はパラメタで

Table. A.7

に示す値を用いる.

g

i

, g

jは原子

i, j

のボンドの数を近似的 に表す値で以下の式により与えられる.

g

i

= X

j

(1 S

ij

) (A.32)

A.2. tight-binding

ポテンシャル関数

121

Table. A.7: Parameters for Tang’s environment-dependent potential

α

1

α

2

α

3

α

4

β

1

β

2

β

3

δ

h

ss

28.9491 0.8910 0.1580 2.7008 2.0200 0.2274 4.7940 0.0310 h

sp

8.3183 0.6170 0.1654 2.4692 1.3000 0.2274 4.7940 0.0310 h

σ

11.7955 0.7620 0.1624 2.3509 1.0400 0.2274 4.7940 0.0310 h

π

25.4860 1.2785 0.1383 3.4490 0.2000 8.5000 4.3800 0.0310 φ 30.0000 3.4905 0.00423 6.1270 1.5035 0.205325 4.1625 0.002168

∆e

λ

0.79881 0.029681 0.19667 2.2423 0.055034 0.10143 3.09355 0.272375

g

i

2.0 0.0478 7.16

また

g

0

g

i

, g

jの基準値で,構造に依存するパラメタである.本研究では理想的なグラファ イトの構造に対して計算した値

g

0

= 3.17678

を用いた.

Eq. (A.32)

S

ij

Eq. (A.29)

によ り計算できるのだが,パラメタ

β

1

, β

2

, β

3

g

i計算用の別のパラメタを用いる.

各原子のエネルギー準位

²

2s

, ²

2pもまた周囲の原子配置に影響を受ける.原子

i

λ

軌道

(λ = 2s, 2p)

のエネルギー準位

e

λ,i

e

λ,i

= e

λ,0

+ X

j

∆e

λ

(r

ij

) (A.33)

により計算する.

e

λ,0は各軌道の基準エネルギー準位で

e

s,0

= −6.041, e

p,0

= 1.024

である.

また

∆e

λ

(r

ij

)

Eq. (A.28)

にて計算を行う.

環境依存ポテンシャルでは,系の全エネルギーが

Xu

ポテンシャルと同様の計算式

Eq. (A.23)

で表される.また反発エネルギーの計算式で

Eq. (A.25)

Eq. (A.27)

を用いることも同様で ある.ただし,関数

φ(r

ij

)

Eq. (A.28)

により計算を行い,

Eq. (A.27)

の係数

c

0

, · · · , c

4の値 は

Table. A.8

に示す値を用いる点が

Xu

ポテンシャルと異なる.

Table. A.8: The Coefficients of the polynominal function f (x) parameter value[eV]

c

0

12.201499972

c

1

0.583770664

c

2

3.36418901×10

−4

c

3

5.334093735×10

−5

c

4

7.650717197×10

−7

122

付 録 B tight-binding 分子動力学法の概説

本章ではでは

tight-binding

近似を用いた,炭素のみからなる系を対象とした量子分子動力 学法の概要について説明する.

tight-binding

ポテンシャル関数は

Xu

らによるポテンシャル

[66]

を使用する.

B.1 分子動力学法の概説

分子動力学法では原子核の運動を古典力学で考える.すなわち,運動方程式に従って原子 核の挙動を計算する手法である.

N

原子系を考え,原子核の位置を

R

j

= (x

j

, y

j

, z

j

)

,各原子 核にかかる力を

F

j,系のポテンシャルエネルギーを

E (R

1

, R

2

, · · · , R

N

)

としたとき,

F

jは 以下の式により求めることができる.

F

j

= −∇

j

E(R

1

, R

2

, · · · , R

N

) = Ã ∂E

∂x

j

, ∂E

∂y

j

, ∂E

∂z

j

!

(B.1)

それゆえ,系のポテンシャルエネルギーを求めることができれば,分子シミュレーションが 可能である.ポテンシャルエネルギーは本来電子状態を考慮して初めて計算できるが,あら かじめポテンシャルエネルギーを原子位置の関数として与えてやれば,電子状態を考慮する ことなくシミュレーションを行うことが可能である.一般に前者は量子分子動力学法,後者 は古典分子動力学法と呼ばれている.

古典分子動力学法では,原子系のポテンシャルエネルギーは原子核位置の関数として表現さ れる.例えば分子間力(ファンデルワールス力)をよく再現するとされている

Lennard-Jones

ポテンシャルは,

2

原子間の距離

r

の関数として,

φ(r) = 4²σ

r

12

µ σ

r

6

)

(B.2)

と与えられる.ゆえに希ガス原子のみからなる系では

E(R

1

, R

2

, · · · , R

N

) = X

j

X

j0(>j)

φ ¡¯ ¯ R

j0

R

j

¯ ¯ ¢ (B.3)

とポテンシャルエネルギーを表すことができ,その微分によって各原子にかかる力も簡単に 求めることができる.古典分子動力学法で用いられるポテンシャル関数(これらは古典的ポ テンシャルと呼ばれる)は,計算時に電子状態を考慮する必要がなく,それゆえ非常に少な い計算量で分子シミュレーションを行うことができるという利点がある.しかし古典的ポテ ンシャルは量子計算の結果をフィッティングした経験的な関数でしかなく,精度があまり良く ない.また,ポテンシャル関数が想定しない形に対して用いられたときに,実際の現象とは 大きく異なる値を与えてしまう可能性が大きいという欠点がある.

B.2.

系の格子と逆格子の定義

123