第 2 章 SWNT 電子状態の計算 19
3.1 構造最適化
44
第 3 章 SWNT 電子状態を用いた様々な計算
前章では
tight-binding
近似を用いてグラフェンやSWNT
の電子状態を計算する方法を説明した.本章では電子状態を用いて計算を行う構造最適化計算と,次章以降での解析で用い る
SWNT
の分子軌道法について説明する.なお,電子状態からKataura plot
を求める方法 については文献[20]
と同様なので省略する.3.1.
構造最適化45
で,基底状態では準位の低い方から4
つの軌道が電子で満たされる.すなわちSWNT
の場合 はEq. (3.2)
をE
bs= 1 2 × 1
N
N−1
X
µ=0
Z
12
−12
X
4j=1
E
j(µK
1+ kK
2)
dk (3.3)
と書き換えることができる2.ここで,係数の
1/2
はユニットセル中の2
個の原子の平均であること,
1/N
はBrillouin
領域にあるN
本のカッティングラインの平均値であることを表す.なお,
SWNT
の波数がEq. (2.40)
,すなわちk = µK
1+ kK
2と表されることを用いている.数値計算のため,
Eq. (3.3)
積分記号を離散化する必要がある.K
2をn
等分することを考 え,近似Z
ba
E
j(µK
1+ kK
2)dk ∼ (b − a) × E
jµ
µK
1+ a + b 2 K
2¶
(3.4)
を適用すると,E
bs= 1 2 × 1
N
N−1
X
µ=0
X
4j=1
X
nl=1
Z
ln−12
l−1
n −12
E
j(µK
1+ kK
2)dk
= 1
2nN
N−1
X
µ=0
X
4j=1
E
jµ
µK
1+
µ 2l − 1 2n − 1
2
¶ K
2¶
(3.5)
と離散化することができる.上式を用いて1
原子当たりの電子のエネルギー準位の和を求め ることができる.本研究ではn
の値として,zigzag SWNT
やarmchair SWNT
のようなK
2 のおおきいのものに対してn = 200
程度,K
2の小さいものに対してn > 6
として計算を行っ ている.1
原子当たりの反発エネルギーE
repは原子核同士の反発によるエネルギーの総和であり,一般的には
2
つの原子核の反発エネルギーφ
jj0の総和としてE
rep= 1
N
atomX
j
X
j0(>j)
φ
jj0(3.6)
と表すことができる
.
しかし,tight-binding
近似計算や古典的ポテンシャルを用いた計算で は, E
repの表式が与えられており,計算にはその式を使用することになる.2Eq. (3.3)が成り立つためには,j= 4に当たるπ軌道のエネルギーの最大値max(E4)とj= 5に当たるπ∗ 軌道のエネルギーの最小値min(E5)について,max(E4)≤min(E5)という仮定が成り立っている必要がある.
もしこの仮定が成立せず,互いに異なる2つの波数k,k0についてE4(k)> E5(k0)が成立するなら,E4(k)の 準位に入るはずの電子はよりエネルギーの低いE5(k0)に入ってしまうからである.この場合は,j= 4,5に対す る全準位を求めてからそれらをソートし,値の小さい準位から電子の数だけ考慮する,という計算ステップを踏 むことになる.
しかし本研究における構造最適化計算の結果,すべてのSWNTにつて上記仮定が成立したため,簡単のため にEq. (3.3)を用いて以降の変形を説明する.
3.1.
構造最適化46
3.1.2
構造最適化パラメタとその初期値a)
グラフェングラフェンの構造を決めるパラメタとしては
a
1, a
2, a
Bがあるが,その表式Eq. (2.21)
から
Eq. (2.23)
より,グラフェンの構造はボンド長a c-c
のみによって構造を決定することができる.従って,パラメタ
a c-c
を変化させてグラフェンの全エネルギー計算を行い,全エネル ギーが最小になるパラメタ値を求めたとき,そのパラメタ値がグラフェンの最安定構造を与 える.グラフェンのボンド長は約1.42 ˚ A
になることが知られているので,パラメタa c-c
の 初期値として1.42 ˚ A
を用いればよい.b) SWNT
SWNT
の構造を決めるパラメタは,カイラル指数(n, m)
を除くと,グラフェンと同様a
1, a
2, a
B の3
つのベクトルである.そのうち回転による自由度を考慮すると,SWNT
の 構造はFig. 3.1
に示すパラメタ,すなわち各ベクトルの長さr
1, r
2, r
3と,各ベクトルのなす 角度θ
A, θ
Bで表すことができる.従って,これら5
つのパラメタを変化させてSWNT
の全エ ネルギー計算を行い,全エネルギーが最小になるパラメタ値を求めたとき,そのパラメタ値 がSWNT
の最安定構造を与える.第
1
章で説明したとおり,SWNT
の構造はグラフェンの構造を丸めたものであり,各パラ メタもグラフェンとほぼ同じ値となることが知られている.それゆえ構造最適化計算の初期 値としては,グラフェンの構造から得られる各パラメタr
1, r
2, r
3, θ
A, θ
Bを用いればよい.r
2r
1r
3θ
Aθ
BFig. 3.1: Optimization parameters of SWNT.
3.1.3
最適化手法系の全エネルギーが最小値のときの各パラメタの値を求めるには最適化問題を適用すれば よい.本研究では最適化手法として準ニュートン法を用いた
[21]
.
ドキュメント内
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(ページ 44-47)