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補遺 4. 2.3 生活満足度に関する調査研究

5.5 Point ( Policy Influence of Indicators )プロジェクトの研究動向

5.5.2 Point プロジェクトの概要

EUの「第7次フレームワークプログラム」の一環として行われたPOINTプロジェクトは 約146万ユーロの研究費がEUから出資され、2008年より3年間にわたって実施されたEU のプロジェクトであり、プロジェクト自体は2011年4月に終了している。POINTプロジェ クトでは、6か国9つのコンソーシアムにより、実際に用いられる12の指標研究に対して、

主に文献調査、インタビュー調査、コンサルテーション、ステークホルダー・ワークショ ップなどを通して、それらが政策策定プロセスにおいて考えられる役割(use)と影響

(influence)が検討された。すなわち、「指標」を通じた政策効果の把握や分析、今後の

展開を考える上での論点が明らかになっており、こうした観点は、指標策定時及び策定後 において極めて重要な意味をもってくるため、ここでPOINTプロジェクトについてレビュ ーを行うこととする。

POINTプロジェクトの全体的な構造は、以下の図5.5.1のように示される。全体の流れ

としてはプロジェクトのコーディネートやマネジメントから、指標を用いることによる政 策決定とのコミュニケーションまでのワーキング・パッケージ(以下WP)に分けられてお り、一貫した分析枠組みが設けられている。

5.5.1 POINTプロジェクトの構造

出典:http://www.point-eufp7.info/storage/Point_Flyer1.pdf

151 以下、各WPの概要である。

(1)コーディネーションとマネジメント(WP1)

WP1 は 基 本 的 に オ ー フ ス 大 学 直 属 の 国 立 環 境 研 究 所 (Expertise of National Environmental Research Institute:以下NERI)によって行われた。NERIは科学的知見に もとづくデータや環境政策に対する基本情報を提供しており、主なクライアントは地方や 国際的な政策当局である。またNERIはEUの様々な研究プロジェクトに関与しており、こ のPOINTプロジェクトだけではなく、前述のLIAISE(EP7)にも参画している。

本研究ではNERIに所属するPOINTプロジェクトのコーディネーターの一人であるピア・

フレデリクセン(Pia Frederiksen)教授にインタビュー調査を行い、主にプロジェクトの 全体的な構成について議論を行った。WP1 における主な取組みとしては、プロジェクトの 全体的な運営と資金管理、そしてEUへの報告である。また、その他の関連機関とのコミュ ニケーションやプロジェクトの諮問機関(the Project Advisory Board)との連絡窓口と なり、プロジェクトの結果報告や最終的な国際会議の設定などの総合的な運営がなされて いた。

(2)政策における指標の使用と影響に対する分析枠組み(WP2)

WP2は分析枠組みを開発することを任務とし、その分析枠組みは、WP3からWP5において 取り扱われる具体的な指標の事例検証を実施するための研究手段として活用される。POINT プロジェクトにおいては、それぞれの指標の役割(use)と影響(influence)の分析評価 を進めるに当たっては、次の三つが重要とされる。

1)政策に対する直接的影響を含めた、意図されていない間接的影響の認識

(identify the ways in which indicators influence policy, including the unintended impacts and ‘non-use’)

2) 指標の役割や影響を裏付ける要因の把握

(identify the factors that condition indicator use)

3)指標の役割を高めるための評価手法の推奨

(recommend ways to enhance the role of indicators in supporting policies)

第一に意図されていない間接的影響とは、指標や扱う問題についての認識や情報共有、

又は政策学習などが期待される。このことに関し、インタビュー調査を行ったデンマーク 工科大学のヘンリク・グムンソン(Henrik Gudmundsson)博士は、そもそも指標の役割や 影響が、最終的な指標の「使用者」として考えられる政策決定者によって、十分に認識さ れていない点を問題視している。

第二に、指標の役割や影響を条件付ける要因としては、1)指標要因(indicator factors)、 2)使用者要因(user factors)、3)政策要因(policy factors)の三つが挙げられる。指標 要因に関しては、指標が測定手段やコミュニケーション手段として適切に用いられている かが注視される。また使用者要因とは、使用者の考えや能力などに応じてどのように指標 が用いられているかが考慮される。最後に政策要因とは、政策の対象分野や制度的枠組み

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などの政策的文脈に応じてどのように指標が用いられているかが検討される。このような 様々な要因を考慮することにより、異なる政策の種類や状況において、それぞれどのよう な指標の役割や影響が得られるのかが分かる。これらの要因と指標フローとを合わせたも

のは、図5.5.2のように表わされる。

第三に政策に対する指標の役割として、POINT プロジェクトは以下の三点を強調してい る。これらは政策の策定・評価プロセスのそれぞれの段階において認識される。

① 手段的役割(instrumental role)

政策決定者に対する適切な情報提供や政策決定へ直接的に影響・反映される

② 概念的(啓蒙的)役割(conceptual [enlightenment] role)

指標の開発・評価プロセスにおける議論を通じて、新しい情報や異なる視点の習得とい った学習的機能やネットワークの構築、あるいはそれらを通じて指標に対する間接的影 響がもたらされる

③ 政治的役割(political role)

決定事項などに対する公正性や正当化の確保、あるいは国会答弁や選挙における政治的 戦略としての活用される

フロー: 生産 - 使用 - 影響 - 結果 指数分析の枠組み

ダイナミクス 個人 個人間 集団 指数要因

正当性 信頼性 適時性

使用者要因 地位/役割 信念 価値観 政策要因 選好

政策の種類 機関の形態 意志決定の文化

社会経済的・政治的・文化的な文脈と傾向

5.5.2 指標の分析枠組みと三つの要因

出典:POINT(2009)

(3)具体的な指標の役割と影響(WP3、WP4、WP5)

PONITプロジェクトでは、先述のように、以上の分析枠組みを用いて実際に12の指標研

究が事例検証の対象として取り上げられている。それらは、WP3からWP5において大きく3 つのカテゴリーに分けられる。以下、指標の「役割」や「影響」に関する具体的な分析調

153 査の対象となるWP3からWP5の簡潔に紹介する。

・WP3:指標の用いられる目的が、政策目標や計画の評価など比較的に明確な政策プロセス

(主に国レベルの政策を対象とするが、EUレベルの交通政策の事例も含む)の分析評価が 行われた。

・WP4:国家レベル、EU レベルにおける持続可能な発展戦略の調査を行い、主にそのプロ セスのモニタリングを目的としている指標の分析評価が行われた。

・WP5:それぞれ異なる機関によって用いられる持続可能性の測定をするための複合指標

(composite indicators)に関する調査が行われた(ただし、この場合はWP3、WP4のよう に具体的な戦略や政策に対して用いられる指標に限定されない)。すなわち、複合指標の具 体例としては、エコロジカル・フットプリント(EF)や人間開発指標(HDI)などの広範な 指標が取り上げられている。

 WP3 セクター別の指標

はじめにWP3では4つの事例が取り上げられており、それらは基本的に国内レベルで用 いられる指標に焦点があてられている。それらの指標は、具体的にはデンマークとスロヴ ァキアの農業政策23、スウェーデンの交通政策、イギリスのエネルギー政策に対して用い られた。もちろん、このように本プロジェクトで取り扱っている環境分野の指標研究の結 果が、その他の指標研究に対して適用されることが目指されているわけではない。しかし、

インタビュー調査を通して、ここで得られた結果や分析アプローチなどが例えば健康や教 育といった他分野おいて用いられる指標の基礎研究となることが期待される。WP3 では、

これら3つの環境政策の策定プロセスにおける指標に対して、それぞれ過去から現在にお ける指標の役割と影響の分析評価を行うことが主な目的とされた。そこでWP3では以下の ようなサブ目標(sub-objectives)が提示されている(POINT 2011)。

1) それぞれの政策分野において、過去と現在で用いられてきた指標のマッピング 2) それぞれの政策策定において考えられる指標の役割を明確化(この際、とりわけ次のよ

うな点が考慮される)

・指標策定のプロセス

・指標の質や種類

・コミュニケーション手段としての役割

・指標の「使用者」の認識と政策目的

・社会文化的、制度的、政治的な文脈

3) 指標の開発や影響評価を適切に行うための方法論の勧告

WP3 ではそれぞれの事例において、何らかの指標の役割が見受けられたとされるが、そ

の程度は様々である。例えばイギリスの事例では、2003年のエネルギー白書の内容に追随

23ただし、それぞれの農業政策に関して、スロヴァキアの事例においては生物多様性の保護に焦点があてられ ており、一方でデンマークの事例においては水質環境の保全が強調されている。

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してエネルギー部門の指標が策定されることとなったが、最終的に手続き的役割はほとん ど見られなかった。また、設けられた指標セット(set of indicators)は、エネルギー政 策の関係者によってはほとんど認識されることはなく、概念的な役割としても非常に弱い とされる。ただし、インタビューを行ったマルク・レトネン(Markku Lehtonen)博士によ れば、イギリスの事例では政策策定の正当性や妥当性など、指標の政治的役割は見受けら れたという。

一方、スウェーデンとEUの交通政策の事例に関しては、いずれも指標は大々的に政策策 定プロセスに用いられた。具体的には、スウェーデンの事例においては長期的計画や年度 予算などに対して、またEUの事例においては戦略的政策レビューに組み込まれている。こ のようにイギリスの事例と比べると、交通政策の事例においては比較的に指標による手続 き的役割が確認されている。ただし、同様に概念的な役割に関して実証化することの困難 性を認めつつ、POINT プロジェクトにおける事例研究で用いられる評価手法では不十分で あるとされた。

指標の手続き的役割が最も顕著であったのは、全体的なインタビュー調査の内容からは、

デンマークの水質環境に関する事例と認識されているようであった。このデンマークの事 例において用いられる指標は、年間のモニタリング報告書に取り上げられるだけでなく、

特に重要とされる指標(key-indicators)については「水域環境に対する第三次行動計画」

(AEAP3)における評価手法として組み込まれている。いまだに持続可能な発展や環境政策

と直接的に結びついた事例がほとんど存在しない中で、インタビューを行ったフレドリク セン教授によれば、このデンマークの事例は、指標研究が政策的影響・効果を持つことと なった実践的な取組みとして評価している。

 WP4持続可能な発展指標

WP4では、主に4つ指標研究が取り上げられている。1つはEUレベルの指標であり、そ の他の指標はフィンランド、スロヴァキア、マルタ共和国において用いられた指標研究で ある。EUレベルの指標は、主にEUROSTATが2年毎に公表している「更なる持続可能な欧 州に向けた進捗状況の測定」の2005年版24と2007年版25、また、2009年の「欧州連合にお ける持続可能な発展2009―戦略に関するモニタリングレポート26」などを参考にしている。

その他国家レベルの持続可能な発展指標は、基本的にはOECDやEUなどの報告書を基にし て、独自の国家戦略および持続可能な発展指標に関する報告書を作成している。

WP4では、どのように持続可能な発展指標(以下SDI)がモニタリング機能として用いら れるかが注目され、それぞれ指標レポートや行政職員などの指標の「使用者」にインタビ ューを行うことを通じて分析評価が行われた。まずWP4で得られた結果としては、それぞ れ欧州諸国においてSDIの開発や役割が大きく異なることが明らかとされた。つまり、SDI のような指標は、地理的、文化的、政治的な様々な要因によって形付けられており、その 中でもフィンランドでは比較的によく制度化されたプロセスの下で指標策定が行われ、と りわけ指標の開発・普及が進んでいることが示された。このフィンランドの指標研究の先

24 Eurostat (2005)

(http://epp.eurostat.ec.europa.eu/cache/ITY_OFFPUB/KS-68-05-551/EN/KS-68-05-551-EN.PDF)

25 Eurostat (2007) (http://ec.europa.eu/sustainable/docs/estat_2007_sds_en.pdf)

26 Eurostat (2009)

(http://epp.eurostat.ec.europa.eu/cache/ITY_OFFPUB/KS-78-09-865/EN/KS-78-09-865-EN.PDF)