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補遺 4. 2.3 生活満足度に関する調査研究

5.1 EU の「 Beyond GDP 」

5.2.1 GGI とは

グリーン成長指標(GGI)とは将来のグリーン成長の推進に向け、その進捗状況をモニ タリングする指標のことである。GGIは、そもそも「成長」とは何か、「成長」をどのよう に測定するべきかという考えに端を発しており、グリーングロース(緑の成長)への移行 にともなって「成長」の質や構成を見直すことが目指される。元来、Green Economy とい う名称で示されていた新たな経済のあり方が、加盟国の経済大臣らの意向でGreen Growth

Economy に変更されることとになり、経済的側面だけではなく、社会的側面や環境的側面

を含めた指標を用いて、新しい成長を指向するようになった。また、GGIはGDPが人間の 健康、安全保障等の生活の質を形付ける領域に対して、完全な指標ではないことを強調し つつ、GGI が今日議論されている生活の質(QoL)を図るための一つの概念的・経験的な研 究に反映されることが期待される。ここでは初めに、OECDによるグリーン成長指標の理解 を深めるため、OECD環境指標(Environmental Indicators)の概要と経緯について、OECD (2008)の報告書の抄訳を基に、以下簡単に触れる。

アプローチと結果:環境指標に関するOECDのプログラムは、1989年に開始され、OECD諸 国との連携によって実施されてきた。この作業については、OECD では、環境局環境成果・

情報課(当時)が担当してきた。なお、そのワーキンググループの議長として同課を長年 にわたって支えてきたのが、森口祐一氏(東京大学環境学研究系客員教授、経済協力開発 機構(OECD)環境情報・アウトルック作業部会議長)である。このようなOECDの取組みは、

調和的な概念や定義付けに結びつくような指標群の開発の先駆的な取組みとなっており、

指標開発については、次の二つの前提が設けられている。

① 唯一の指標群というものは存在しない。指標の適切性は、それらが用いられる場合 や状況によって異なる。

② 指標はツールの一つである。そのため、あらゆる文脈において解釈・判断される必 要がある。

また、OECDの取組みは次のようなOECD諸国との同意のもとに行われている。

改定・更新

1~2 定期的に改定・更新(1~2年に一度)

Ir 不定期的に改定・更新 N 改定・更新は見られない n/a 適用不可

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① The pressure-state-response (PSR) モデルを共通の参考フレームワークとして用 いる。

② 指標は、それぞれの政策関連性、分析的な安定性、測定可能性などに基づいて判断 される。

③ 各国の状況に適合させることにより、国家レベルでのOECDによるアプローチを図 る。

目的:三つの主な目的が存在する。

① 環境的な進捗やパフォーマンスを測定する。

② 政策統合をモニタリングし、促進する。また、交通やエネルギー、農業などの様々 な分野において政策が施されるときには、特に環境負荷を考慮し、同時に、そのよ うな環境負荷を統合して経済政策に組み込むことが求められる。

③ 経済成長から考えられる環境負荷、デカップリングなどを測定することによって、

持続可能な発展に向けたモニタリングを行う。

政策分析における使用:OECDの環境指標は、定期的にOECDの活動の中で公表され、用い られている。それらは、各諸国の環境パフォーマンスの評価やOECDの環境戦略をモニタリ ングする上で用いられる。このような評価やモニタリングは、量的目的(目標、基準、義 務)との関連によって、あるいは人間活動の効率性や自然資源の持続可能性などの質的目 的と結びつけて行われる。更には、指標内容の解釈を簡易にするために、具体的な国家レ ベルの指標やデータと結びつけることにより、政策分析における指標が用いられる。この ようにシステマティックな分析作業を行うことによって、指標の実際的な政策関連性や分 析的な安定性に関する有益なフィードバックが可能となる。

国家的・国際的なイニチアティブとの連 関:OECDの環境指標の開発は、これまで のOECDによる環境情報や報告、また加盟 諸国からの強力な支持や環境情報とアウ トルックに関する OECD ワーキンググル ープの代表者によって果たされてきてい る。

OECDによる取組みの結果、特に概念的枠 組みに関しては、国際機関や各国におけ る同様の活動に対して影響を与えてきて い る 。 国 連 統 計 局 (UN Statistical Division)、国連持続可能な発展委員会

(UN CSD)や国連の各関連機関、国連環

境計画(UNEP)、世界銀行、欧州連合(欧

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州評議会、欧州連合統計局、欧州経済領域)、そして数多くの国際機関やOECD加盟国では なくとも、中国、チリ、ロシアなどとの継続的な協力関係が続けられている。OECDによる 取組みは、いくつかの指標のカテゴリーを含んでおり、それぞれは具体的な目的やフレー ムワークに相当している。

環境的な進捗状況やパフォーマンスの追跡:環境的な進捗やそこに含まれる要因の追跡、

また同時に、環境政策を分析するに当たってコア環境指標(CEI)が用いられる。それら は、OECDのコア環境指標群に含まれ、OECDの利用法に関する加盟諸国の合意のもとで、定 期的に公表されることとなる。約50の指標を含むコア環境指標群は、主にOECD諸国にお ける環境問題に対応している。これは、環境勘定や分野ごとのコア指標を組み込んだもの であり、指標は次のようなPSRモデルに基づいて分類される。それらは、1)直接的・間接 的な環境負荷に関する指標、2)環境状態に関する指標、3)社会的反応を表す指標である。

国民への情報発信:OECD の環境大臣により是認されたキー環境指標(KEI)は、コア指標 群から選ばれた指標であり、コミュニケーションを目的としている。KEI は一般国民への 情報発信や政策決定者に対する重要な示唆を与える。

政策統合のモニタリングと促進:分野別環境指標(SEI)は、分野ごとに政策が形成され、

実施されるに当たって、環境負荷が懸念されるように、環境負荷の統合を推し進めること を図るものである。それぞれの指標群は、具体的な分野(交通、エネルギー、家庭の消費、

観光、農業)に対して焦点が当てられている。指標は、分野ごとの環境上の重要性や環境 に対するプラス(マイナス)効果を含んだ相互性、また経済的や政策的な検討事項との関 連性などに対応したPSRモデルに沿って分類される。

環境勘定に基づく指標:この指標は、環境負荷を経済や資源マネジメント政策に統合する ことを図るものである。主に環境支出勘定、自然資源の持続可能な管理に関する自然資源 勘定、物質資源利用の効率性や生産性と関連した物質的フロー勘定に焦点が当てられてい る。

持続可能な発展に向けた進捗のモニタリング:デカップリング環境指標(DEI)は、経済 活動からの環境負荷というデカップリングの水準を測定することが目的である。OECD諸国 において評価される指標と併せて、DEI は、それらの国々が、持続可能な発展に向けて軌 道に乗っているかを確かめるためには有益なツールとして用いられる。ほとんどのDEIは、

他の指標群によって算出され、構造的変化や下部の推進要因などに対応するために、更に 分類される。

以下、図5.2.2はOECDによって用いられる環境指標の全体的な構図である。

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5.2.2 OECD環境指標の構図 出典:OECD (2003,2008)

このような環境指標の研究が継続的に続けられ、OECDは2009年6月に「OECDグリーン 成長宣言」を発表し、2010年5月と11月にはそれぞれグリーン成長指標に関する中間・

統合報告書を発表した。OECDは、この頃からグリーン成長指標という形で、環境問題に対 する指標の先駆的な方法論・手段の枠組みを示すとともに、GGI の具体的な内容を進めて きている(OECD 2010)。グリーン成長指標の測定枠組としては、以下図5.2.3が示す通り、

その活用は大きく4つのパートに分類される。第一に、環境と資源生産性であり、生産過 程におけるエネルギーや炭素の把握である。第二に、自然資本ベースで再生可能な資源の ストックや生物多様性および生態系システムに関する測定・モニタリングを行う。第三に、

生活の質として生産過程や自然資源から得られる財・サービスを消費する過程において健 康やアメニティなどの指標分析が行われ、第四に、経済的機会と政策対応としてイノヴェ ーションや技術移転、また能力開発等、研究関連開発費や環境事業を推進する企業への投 資額などによって算定される。

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5.2.3 グリーン成長指標の測定枠組

出典:OECD(2011c)