補遺 4. 2.3 生活満足度に関する調査研究
5.6 まとめ ( 今後の課題等 )
161
162
然るべき体制・組織のもとで対応していくべきであろう。その際には、政府機関担当者や 専門家・研究者等の一部の者が、限られた関心事項や、重要事項を中心に指標の設定を行 っても、国民生活の各側面での定着を考えると効果が期待できない。いかに国民参加のプ ロセスを適切に確保し、現状の理解のみならず将来に及ぶ責任を各々が認識した上で、指 標を設定していくことができるかが重要となる。この点に関しては、先ほどのPOINTプロ ジェクトにおいて得られた研究成果は、今後我が国において適切な指標研究を進めていく ためにも、度外視することはできない内容である。とりわけステークホルダー・ワークシ ョップの開催は、これまであまり重要視されてこなかった指標の分析評価に対して、従来 の閉鎖的な意思決定ではなく、より民主的なプロセスとして、我が国に限らず、世界的に 求められる社会的潮流として捉えることができる。この点に関しては、フランスにおいて サルコジ大統領の主導の下に主要社会セクターの代表者からなるグルネル会議が設けられ、
徹底討議の機会が設けられたことについても注目すべきである。
そう遠くない将来に予見される資源・エネルギー制約は、対応を間違えると国民生活へ の大きな混乱をもたらしたり、国家間の緊張状態を生じさせるなど深刻で重要な課題であ る。資源・エネルギーはその供給や消費などに関して、現在のように市場原理のままに任 せておくのでは、投機的な資金による価格の乱高下が懸念されるし、価格が高くなればな るほど、逆に需要が高まり、資源の枯渇が進む恐れを指摘する研究もある。将来世代に対 し、地球の恵みを適切に引き継ぎ発展の可能性を確保するためには、国際的にいかにして、
将来世代との間で衡平性を実現していくのか、という、おそらく人類史的にも重要な意味 を持つ倫理感を醸成し、共通の行動基準としていく必要があろう。これまで人類が経験し たことのない、まだ見ぬ将来世代に対する責任についての問題であり、そのあり方や適切 な分担、果たし方など今後、深めるべき研究課題は多い。
163 参考文献・引用文献
・伊藤薫 (2004) 「生活水準の構成要素について」 日本計画行政学会第27回全国大会
・鬼頭宏 (2010) 人口・文明と地球環境問題 上智大学現代GP 持続可能な社会への挑戦
上智大学GP事務局
・経済企画庁国民生活局編 (1992)「新国民生活指標PLI (Peole’ s Life Indicators)」
・幸福度に関する研究会 (2011)「幸福度に関する研究会報告―幸福度指標試案―の概要」
・ダスグプタ・パーサ:植田和弘他訳(2008)『経済学』岩波書店
・森田恒幸 植田和弘編(2003)「環境政策の基礎」岩波講座環境経済・政策学第3巻 岩 波書店.
・中村雅治(2004)「地域研究としてのフランス研究」『新・地域研究のすすめ』上智大学 外国語学部シリーズ
・諸富徹(2011)「持続可能な発展と新しい指標開発の必要性」環境研究 2011 No.161 (http://www.env.go.jp/policy/keizai_portal/F_research/f-14-02.pdf)
・EC (2007)
Beyond GDP: Measuring progress, true wealth, and the well-being of nations
. 19-20 November 2007.・EC (2009)
Communication from the Commission to the Council and the European Parliament: GDP and Beyond Measuring progress in a changing world
’. 20. 8. 2009.COM (2009) 433 final
(http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=COM:2009:0433:FIN:EN:PD F)
・INSEE (2009)
Le Rapport Stiglitz
:Quelle conséquence pour le statistique public
? L’Économie française,édition 2009.・OECD (2003)
OECD Environmental Indicators: Development, Measurement and Use
.・OECD (2008)
Key Environmental Indicators
・OECD (2009)
Sustainable Development: Draft Guidance on Sustainability Impact Assessment.
SG/SD (2009)2・OECD (2010a)
Guidance on Sustainability Impact Assessment.
・OECD (2010b)
SIA Screening of the Interim Report of the OECD Green Growth Strategy
. SG/SD (2010)8・OECD (2011a)
A review of impact assessment systems in selected OECD countries and the European Commission.
SG/SD(2011)6・OECD (2011b)
Comment la vie?
・OECD(2011c)
Towards Green Growth: Monitoring Progress
- OECD Indicators (http://www.oecd.org/dataoecd/37/33/48224574.pdf)・POINT (2009)
Deliverable report: Process and results of analytical framework and typology development for POINT
. June 15 2009・POINT (2010a)
Deliverable report: Report covering the findings of workshops from T 6.1 to T 6.7
. 20, September 2010・POINT (2010b)
Deliverable report: Report on the use and influence of SDIs in Finland,
164
Malta, Slovakia and the European Union sustainable development strategy
. October 2010・POINT (2011)
Deliverable report: A Synthesis of the Findings of the POINT project
. 1st April 2011・Stiglitz, E.Joseph ; Sen, Amartya; Fitoussi, Jean-Paul.et al. (2008)
Rappor de la Commision sur la mesure des performances économique et du progrès social,
(www.stiglitz-sen-fitoussi.fr).
・Van de Kerk, Geurt, and Arthur Manuel (2010)
Short Survey of relevant indexes and
sets of indicators concerning development towards sustainability
. AMSDE.165 補遺
5.1「(持続可能性に関する政策)影響評価」における持続可能性
OECD主要国・EUにおける「影響評価」制度レビュー(抄訳)
注)以下では、標記報告書より第2章、オーストラリア、韓国、オランダ、EC部分を抄 訳、また第3章の抄訳である(第2章では、原典から順序を変え、先進的で最も示唆に富 むと思われるECを冒頭に置いた。原典との比較のため、パラグラフ番号は維持した)。
第2章 IA(Impact Assessment)における持続的発展の観点統合に関する各国の動き
欧州委員会(EC)
「影響評価」システムの発展と方向性
128.2003 年、欧州委員会は政策提案の影響を評価するための包括的なシステムを開発し
た。欧州委員会のIAプロセスの特徴の一つは、それが広範に適用されることである。この ことは、IAは規制とガイドラインだけを対象とするのではなく、計画と政策(programmes
and policies)(例:白書)にも適用されることを意味している。
129.当該システムは2005年と2009年の二度にわたり改正された。第一の改正では、欧州
理事会と欧州議会が自ら、欧州委員会提案を踏まえた修正を現実に行っているかどうか、
IAを実施し、議会もIA実施のための能力構築を始めた(すなわち、包括的な契約によっ て、委員会のIA実施の支援を請け負う)(Jacob et al. 2011: 17)。
130.2009 年の第二の改正によって、評価対象となる領域の拡大が図られた。これ以降、
政治主導によるものや「欧州委員会法制・作業年間計画」の中で言及された法制度の提案 だけでなく、そこには列挙されていない、また加盟国との連携の中で展開してきたプロジ ェクトもまたIAの対象となった。これまでに、400以上のIAが実施された。
131.欧州委員会において、IA は法制の質を高めるものとしてだけでなく、SD(持続可能
な発展)の3つの側面である経済、環境そして社会についての法制の結果をより良く熟考 するためのツールと見なされている。IA は「(中略)委員会の政策と条約目標を伴う一貫 性と、「リスボン持続可能な発展戦略」(EC 2009: 4)のような高いレベルの目標の一貫性 の確保に資する」とIA実施のためのガイドラインに述べられている。
166 プロセス
132.欧州委員会のIAプロセスの明確な特徴は、政策展開と並行して行われることである。
政策提案を行う担当局は、IAの実施にも責任を有する。にもかかわらず、IAプロセスには、
すべての重要な観点が十分に分析されるよう、提案に関連する全総局の代表者で構成され る作業部会(の設置)が含まれる。
133.さらに、「ロードマップ」も導入されている。それらのロードマップは予定表の概要
があるだけでなく、どのようにIAが実行されるか、また完全なIAは必要でない理由につ いても予め述べられている。これはすでに、規制案の大まかな分析を要求していることに なる(ECA 2010: 5 and 66; Jacob et al. 2011: 18)。
134.加えて、欧州委員会は良質のIAを確保するために、IAを支援し実施することに多額
の資金を充ててきた。現在、全総局はIA支援ユニットを有し、行政官はIAトレーニング を受ける。特定の課題の調査のために、例えば、研究は委託され、モデルを発展させるた めのコンサルタントや調査官とともに包括的な契約が実施されている。欧州委員会・調査 センター共同部局も同様に、それがIAの高度な見識を提供するいくつかの作業部会を含む ため、IAプロセスを支援している(Jacob et al 2011: 17ff)。
135.良質のIAを確保するために、IA委員会(IAB)が設置されている。IA草案の質を審
査し、それについて意見を公表する5人の高官によって構成されている(EC 2011: 5ff)。 IA報告書がIABの勧告にしたがって改訂され、その報告書が「College of Commissioners」
に提出される前の段階で、「業務間協議会(Inter-Service consultation)」が行われる。
136.概して、全体のプロセスは外部者が含まれているため透明性が極めて高い。例えば、
TEP評価によるとIAの90%で関係者による協議が行われたという。IAの結果は、欧州委 員会のウェブサイトから一般に利用可能である。結果の概要も含む完全な評価結果は、当 初の提案とともに公表されている。内部的な質の確保に関する調査結果も公表されている
(TEP 2007: 47f)。
137.しかし、イギリスとは対照的に、例えば、その結果は規制案が起草されるより前には 公表されず、規制案と同時に公表される(TEP 2007: 99f; ECA 2010: 30)。
方法
138.IA プロセスは個別のチェックリストやモジュールを含まない。その代わり、一つの
過程の中に全ての観点とIAに必要な評価事項が統合されている。このアプローチ方法は、
評価において、着実にSDの3つの全ての側面が等しく検討されることを目指している。SD に関してはスクリーニング・プロセスの助けとなるよう、IAの実施ガイドラインに、経済
167
的、環境的、社会的影響に分類された、起こりうる影響や重大な問題のリストが示されて いる。このリストは、最終的なものでも暫定的なものでもなく、手引きとしての役割を果 たすために作成されている。経済影響領域(「第三国と国際関係」部門、例えば選択は発展 途上国に調整コストを課すかどうかを問うこと)や社会影響領域(「第三国への社会的影響」
部門、例えば意見は発展途上国の貧困を増加させるか、また最貧人口の収入に影響を与え るかを問うこと)という二組の重要な設問は、直接的に第三国で起こりうる影響に言及し ている(EC 2009: 32ff)。
139.方法論的仕様書は存在しないが、その代わりに政策行政官は、目前の課題に適切な分 析的形態を求められる。IAガイドラインの付録3は、異なったIA段階のための様々な方 法を紹介している。それらの中では、問題樹形分析だけでなく、モデル化影響のための高 度な道具(例:マクロ経済的または環境的モデル)といった単純な方法がとられている。
欧州委員会は、複雑な社会、経済、環境の相互作用を分析でき、同時に長期計画対象期間 を有する統合評価モデル開発のための一連の調査プロジェクトを契約してきた。これらの モデルは、実践的に適用されれば、(SD)影響の統合的な分析結果を説明できる可能性を有 する。
140.小・中型の企業テストや発展途上国における影響考慮テストのような特定の影響テス トを実行することについての情報もまた提供されている。EC は CBA、「コスト効率分析」
(CEA)と「複合基準分析」を政策選択比較に最も適したツールとした。
141. 欧州監査裁判所(ECA)は、2010 年の評価で、導入以来、IAsが量的にも増えてき
ており、また質的な改善も見られるとした。
142. ECが2007年に行った、IAプロセスに関するこの他の評価も存在する。これによる
と、IAは改善がみられるものの、ECの政策提案と政策判断に際する効果的な支援という面 では、その潜在的な可能性の最大の水準に到達していないとした(TEP2007)。The Evaluation Partnership(2007)によれば、その原因は、タイミング、質的管理方法、支援 方法、ガイダンス(すなわち訓練の提供、IAの方法論に関する調整と展開、詳細なガイド ラインとデータ)にあるとした。
143. 総じて、ECではIAの重要性が引き続き認識されている。IAは、政策提案準備にお
ける主要なプロセスとなり、その正当性を示すうえで、重要な役割を演じている。持続可 能な発展に関する様々な観点がIAに盛り込まれている。しかしECAは、持続可能性の観点 は、まだバランスよく考慮されていないとした。特に、社会的な側面が十分には考慮され ていないとした。ある種の観点については、改善が可能であるとしている。例えば、議会 や理事会は、IA プロセスに適切に関与していない(Jacob et al 2011)。ECA(2010)は、
IAのパブリックコメントに向けた草案公表は、プロセスを強化し得ると結論付けた。
144. これらの結果から、雇用・社会関係総局は、行動を改善するため、独自のツールキ