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補遺 4. 2.3 生活満足度に関する調査研究

5.4 フランス・スティグリッツ委員会と新指標作成の動向

5.4.3 スティグリッツ報告書の発表以降の統計改革の概要

(1) フランス国立統計経済研究所(INSEE)による取組

スティグリッツ委員会は、2009年9月に報告書を発表した時点以降、実質的に解散して おり、委員会による提案事項を具体的に実現する任務は、サルコジ大統領の命により、持 続可能な発展省と国立統計経済研究所(INSEE)に委ねられた。スティグリッツ報告書は、

今後の統計改革に向けた大枠の方針を示したものであり、具体的な新指標案などは提示さ れていない。従って、スティグリッツ報告書の提案を取り入れた指標がどのようなものな のか、その具体例を知るには上記2機関より発刊されている資料の精読が必要となる。

以下、INSEEが2011年の時点までに行ってきた統計改革と、今後の予定を以下に概観す

る。INSEEは、スティグリッツ報告書の3部構成の内容(第一章 GDPにまつわる古典的問

題、第二章 生活の質、第三章 環境と持続可能性)に準拠した3分野ごとに、調査すべ き内容を定めたロードマップを2009年12月に作成しており、2012年1月現在も研究およ び統計改革を推進中である。その内容の概要は、次の通りである。

A.フランス国立統計経済研究所(INSEE)の統計改革のアジェンダ

①GDPの補完、改善

スティグリッツ委員会の提案事項

1)生産よりも、収入と消費について注視すること。

19会議は、フランスの持続可能な発展省、INSEE,OECDの共催で開かれた。

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2)収入と消費と同時に、富のストックを考慮すること。

3)家計の視点を強調すること。

4)収入、消費、富の分配について、これまで以上に重視すること。

5)収入についての指標を、市場外での活動にまで適用すること。

スティグリッツ委員会の提案事項

・2009年、2010年には、世帯間の収入格差に関する報告書が刊行された。2012年には、

さらに都市・地方間の格差について調査する予定である。2012年上半期予定。

・家計の資産内容に関する5つのカテゴリー別の分析を行う。(生活水準、年齢、職業、都 市、地方別の分析)2012年上半期予定。

・家計における収入、消費、資産の10年間の変化についてカテゴリー別の分析を実施する。

2012年以降。

・職業的資産と非物質的資本に関して把握するためのアンケートを2009-2010年に実施し た。

・画期的な調査として、家庭内における活動(家事、子供の教育‥)のGDPに対する貢献 についての研究を「時間の使い方」のアンケート調査結果より行う。

―1998年のアンケート結果より→2011年3月報告書公刊済。

―2010年のアンケート結果より→2013年初頭予定。

・2010年に公刊した「高額所得者」についての報告書の結果を受けて、生活格差の指標を 地方レベルにも適用する目的で、高額所得者を引き続き注視する。2013年以降予定。

②生活の質

スティグリッツ委員会の提案事項

1)統計当局は、アンケート調査において、各自の人生や経験についての自己評価及び優先 順位を調査するための質問を取り入れること。

2)健康状態、教育水準、個人的活動、政治生活への参加、社会的関係、環境条件、安全へ のリスクに関する定量評価の計測方法を改善すべきである。

3)生活の質に関する指標は、あらゆる範囲におけるグローバルで包括的な不平等について の情報をもたらすものでなければならない。

4)アンケート調査は、生活の質の種々の側面の相互関連性を評価しうるべきであり、その 際得られた情報は公共政策の場において活用実施計画されるべきである。

5)統計当局は、種々の指数開発を可能とすべく、生活の質の異なる分野における重みづけ についての必要な情報を供給すべきである。

・「劣悪な住環境」についての把握

-住居の周辺的環境についての報告書→2010年秋公刊済

-住居費の世帯間不平等について、「フランスのソーシャルポートレート」公刊済

-住居問題の改善に貢献しうるデータの一覧、2010年秋公刊済

・物質的条件(住居、消費)から計測した生活の質、経済的困難、健康、教育、勤労条件、

政治生活と社会生活への参加、経済的物理的に安全でないこと

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-上記の諸分野における概観、2010年「フランスのソーシャルポートレート」公刊済

-社会的参加 2010年11月公刊済

-社会活動への参加 2010年末公刊済。

・主観的幸福度の評価

-家庭内における活動の選好調査、2011年末。

-家庭内における活動と自己評価

1998年のアンケート調査に基づいた調査→2011年3月公刊済。

2010年のアンケート調査に基づいた調査→2012年末。

③持続可能な発展と環境

スティグリッツ報告書の提案事項

1)持続可能性の評価は、厳選された指標群に基づくものでなければならない。

この指標群は、人間の福祉を規定するストックの変動を読み取ることができるもの でなければならない。

2)持続可能性の金融指数は指標群に含まれ得るとしても、現段階の知見においては経済的 持続可能性に限ることが望ましい。

3)環境の持続可能性については、注意深く選択された物理的指標群により、別途調査を続 けるべきである。

・2010年7月に、国家持続可能な発展戦略に対応した15のハイライト指標と4つのコン テキスト指標の一覧が持続可能な発展省より刊行された。2011年以降、毎年指標の結果 が国会で報告される。

・家庭内におけるCO2排出の内訳の評価が実施される。2011年末。

・フランス初の、水の債務の計測が実施された。2011年3月公刊済。

・調整済み純貯蓄と他の持続可能性指標についての報告書が2009年11月に公刊済。

・ソーシャルキャピタルの計測が、家庭内の生活水準についてのアンケート調査より実施 された。2010年11月公刊済。

・人的資本の計測については、OECDのグループワークにINSEEが参加している。

B.フランス国立統計経済研究所(INSEE)の国際的取組み

①欧州レベルにおいて

・欧州におけるスティグリッツ報告書内容の具現化において、INSEEはEUROSTATの協力の もとで、主導的役割を果している。

・INSEEとEUROSTATは、協働でEU加盟国27か国中15か国の参加を得て、「欧州スポンサ ーシップ」(sponsorship européen)と呼ばれるネットワークを形成しており、2010年5

月にはOECDとUNECEが新たに参加した。この協働作業の目的は、欧州に存在する他の政

治的イニシアティヴ(Europe 2020、欧州持続可能な発展戦略‥)にスティグリッツ報告 書の内容を適用させることで、2011年11月に各国統計当局の責任者の会合が開催され 最終報告書が刊行された。

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②OECDレベルにおいて

・OECDは、フランスと加盟国におけるスティグリッツ報告書の提案内容の具現化を推進し ている。

・INSEEは、OECDの人的資本の計測グループに参加している。

・2010年3月:OECD加盟国数か国における家計調査を、INSEEの過去のアンケート調査の 結果を参照して実施するための国際タスクフォースが結成された。

・INSEEは、2007年からOECDが実施している「社会の進歩の計測国際プロジェクト」の一 部に参加している。

④ 連レベルにおいて

・2010年2月に国連本部でスティグリッツ報告書についての発表が実施された。2011年に は、スティグリッツ報告書の実施に関する会議が国連において参集された。2012年6月 に開催予定のリオ2012(国連持続可能な発展会議)において、フランスはスティグリッツ 報告の内容を反映させた新指標の普及を議題として提出する予定である。

(2) フランス持続可能な発展省の取組み

スティグリッツ報告書の内容の実現に向けた取組を、INSEE と共に担当するもう一つの 機関が、持続可能な発展省である。フランスでは、EUの持続可能な発展計画と協調する形 で、2000年以降、国家レベルで持続可能な発展戦略を段階的に改定しつつ進めてきた。

フランスの環境政策はEU諸国の中では、今世紀初頭には比較的遅れていたとされる。し かし、2007年の大統領選において、積極的な環境政策を掲げる対抗勢力であった左派陣営 に対し有利な選挙戦を展開する必要性のあったサルコジは、大統領選挙公約として環境に 特化した法案を創設することを謳っていた。その公約が実現され、環境グルネル法が民意 参加型の公開討論の過程を経て2009年に制定された。また、細則を定める第二グルネル法 が2010年に追加的に制定された。 これらの法律は、スティグリッツ委員会の設立と、さ らにはその後の新指標策定の過程における法的根拠としての役割を果すことにもなった。

フランス政府は、持続可能な発展省を中心として2009年秋に、「2009年~2013年持続可 能な発展9つの戦略」を立案した。持続可能な発展省では、この持続可能な発展戦略の進 捗状況を評価するためのツールとして、政策項目毎に対応する指標を選定する方針を決定 した。前述のINSEEが新たに作成した新指標群と、スティグリッツ委員会以前から既に開 発されていた指標群を合わせた候補の中から、実用化する指標を選定する作業は、「ガバナ ンス5」と呼ばれるステークホルダー参加型による合議の場に委ねられた。5 つのステー クホルダーとは、①企業、②労働組合、③地方公共団体のリーダー、④政府、⑤NGO や消 費者団体である。彼らに加えて、⑥オブザーバーとして専門家が参加する「参加型の政策 立案プロセス」として2010年1月20日にフランスでは初となる国民議会が開催された。

このような民意を聴取するプロセスを経た効果として、環境政策が国際競争力の低下につ ながるのではないかと懸念していた経済界も今では積極的な姿勢を見せるようになってい るという。環境に配慮した経済は、もはやハンディ・キャップではなく、持続可能な社会・

発展に向けた新たな過程の一つであると捉えるべきであると持続可能な発展省では主張し ている。