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Ni 基超合金の熱間鍛錬方法の最適化

ドキュメント内 技報65 (ページ 64-69)

図 1. Ni 基超合金の各工程の時間比率内訳

図 2. 八角押し作業の模式図

図 4. マイナス押しの模式図

図 3. 八角押し作業時間の内訳

図 5. 上下平金敷による鍛伸の模式図

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Ni 基超合金の熱間鍛錬方法の最適化

2-2.  問題点

図 2 に Ni 基超合金の八角押し作業の模式図を示す。八 角押し作業では、材料をマニプレーターによりハンドリング し、上下 2 面を順次圧下することで材料全体を鍛造してい る。材料を八角形状に成形するためには少なくとも 4 方向 から圧下する必要があるが、圧下方向の変更には、トング による材料の掴み直し作業が生じる。

一方、八角押し作業では、圧下方向と 90 度方向の横膨 らみ量の予測が困難であるため、所定の形状へ成形するた めに圧下パス数の増加とそれに伴う掴み直し作業の発生に より鍛造時間が増加している。図 3 に八角押し作業時間の 内訳を示すが、掴み直し作業が全鍛造時間の約 40% を占 めており、八角押し作業時間の短縮には圧下パス数の低減 が必要である。

2-3. 改善案

八角押し作業において圧下パス数を低減するためには、

パス毎に次パスの横膨らみ量を予測し、目標寸法よりも順 次小さく圧下(以下、マイナス押しと称す)する圧下パスス ケジュールを設定する必要がある。図 4 にマイナス押しの 模式図を示すが、横膨らみ量を過小評価した場合、最終 目標寸法を逸脱するリスクが発生するため、高い予測精度 が求められる。

3. 横膨らみ率の予測式検討

3-1. 予測式の定式化

図 5 に上下平らな金敷を用いた鍛伸工程の模式図を示 す。鍛伸時の横膨らみ率(= i/ 0)を予測する式として 次式1)がある。

i/ 0 =(1/γ)s          

 …(1)

 =0.14+0.36(β /W0)-0.054(β / 02    …(2)

0:圧下前巾( 0= i-1

i:圧下後巾

  γ:圧下前後の厚み比( i/ 0

0:圧下前厚み

i:圧下後厚み  β:金敷掛巾(図 6)

上式は矩形断面を対象としているため、八角押し作業の ように圧下パス毎に金敷と材料の接触面積が変化する場合 に上式を適用すると、差異が生じることが考えられる。ま た、上式は Ni 基超合金の温度依存性を考慮した変形抵抗 挙動の再現可否が不明である。

図 6. 金敷掛巾の定義

図 7. 解析モデルの一例

図 8. 圧下パススケジュールの一例 表 1. 解析条件

慮した変形挙動を正確に再現するために、熱間加工再現試 験装置を用いた円柱圧縮試験より求めた変形抵抗曲線を使 用している。

鍛造時の材料の温度分布は熱伝導解析により求めた。

材料の初期温度は均一、周囲の雰囲気温度を 20℃として、

八角押し作業の平均的な鍛造時間を考慮して熱伝導解析 を実施した。なお、解析結果の材料の表面温度が、実機 の表面温度と合致するよう熱伝達係数を補正している。

3-3. 予測式の定義

本報では FEM 解析結果を基に、四角押し作業まで 3 パス、八角押し作業までさらに 2 パス、合計 5 パスで八角 押し作業を完了するものとして、それぞれの圧下パスにおけ る(4)式の係数 i, 及び iを導出した。さらに、これらの 予測式を実機に適用するために、図 8 に示すように圧下パ ススケジュールの最適化を図った。

Ni 基超合金の熱間鍛錬方法の最適化

そこで、本報告では四角押し及び八角押し作業を計 5 パ スで完了させることを目的とし、圧下パス毎に金敷接触面積 の変化を考慮した横膨らみ率の予測式を立案した。

横膨らみ率に影響を及ぼす因子は変形抵抗、温度分布、

金敷掛巾、金敷掛巾率(金敷掛巾 / 初期径)及び圧下率 である。また、これらの因子が互いに影響を及ぼすため、

これらを考慮して定式化する必要がある。横膨らみ率には 以下の傾向がある。

①金敷掛巾(β)が大きくなるにつれて横膨らみ率が大きく なる。

②圧下前厚み( 0)が小さくなるにつれて横膨らみ率が大 きくなる。

③圧下率(1-γ)が大きくなるにつれて横膨らみ率が大きく なる。

本報では、これらの傾向を考慮した横膨らみ変数 を以下 のように定義した。

   = β / 0(1- γ)       …(3)

(3)式で定義した横膨らみ変数 x を独立変数として、任 意の圧下パス i における横膨らみ率( i/ 0)を次式に定 義した。

   i/ 0= i 2+ i  +1.0        …(4)

ここで i及び iは各圧下パス毎の係数である。

3-2. FEM 解析条件

本報で提案した横膨らみ率の予測式では、圧下パス毎 の金敷接触面積や変形抵抗の影響を係数 i, 及び iによっ て表している。この係数 i,  及び iの導出のために、上下 平らな金敷を用いた八角押し作業における FEM の弾塑性 解析を実施した。初期の矩形断面を 2 条件、初期温度を 1000℃〜 1200℃の 3 条件、及び圧下率を 1 又は 2 条件と した。表 1 に解析条件をまとめて示す。

図 7 に解析モデルの一例を示す。対称性を考慮して 1/4 領域をモデル化している。Ni 基超合金の温度依存性を考

図 9. 横膨らみ率の予測式と実績値

図 11. 鍛造時間の割合の比較

図 10. 補正予測式と実績値 図 12. Ni 基超合金(同一材)の鍛造終了時の

サーモグラフィ写真比較(同一加熱温度)

(a)従来品 (b)適用品

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4. 実機鍛造への適用

4-1. 予測式の精度

最適化した圧下パススケジュールを用いて、Ni 超合金の 実機の鍛造を実施し、予測式の精度を確認した。材料の 圧下寸法及び横膨らみ寸法はプレスストローク及び外パス にて測定し、表層温度をサーモグラフィによって常時モニタ リングした。

図 9 に横膨らみ率の予測式と実績を比較して示す。実機 の鍛造の適用範囲において、予測式は横膨らみ率を 3% 以 内の誤差で実機を模擬できることが明らかとなった。一方、

横膨らみ変数の増加に伴い誤差も増加する傾向があるが、

誤差はいずれもプラスサイドであっため、横膨らみ量を過小 評価することによって最終目標寸法を逸脱するリスクは無か った。

図 10 に実績を加味して予測式を補正した結果と実績を 比較して示す。今後、補正した予測式を用いることにより 横膨らみ変数の大きい領域でも更に良好な精度(2% 以内)

で予測可能と考えられる。

4-2. 鍛造時間

最適化した圧下パススケジュールを実機鍛造に適用した 結果、下記の効果が得られた。

(1)マイナス押しが可能となり、計画通り 5 パスで鍛造を完了 することができた。

(2)圧下パス数が低減したことにより、トングによる材料の掴 み直し作業時間が減少した。

図 11 に実機鍛造の鍛造時間を従来の鍛造時間と比較し て示す。予測式を用いた圧下パススケジュールを適用した 結果、総鍛造時間が従来と比較して約 46% 低減できるこ とが明らかとなった

4-3. 疵取重量ロスの低減

図 12 に鍛造終了時のサーモグラフィ写真を示す。予測 式によって圧下パススケジュールを最適化した結果、従来品 よりも高温で鍛造を終了していることがわかる。

おのおのの圧下パスの材料温度が高くなった結果、延性 の低下に伴う割れ疵の発生も低減され、疵取り重量ロスが 改善された。図 13 に材料の初期重量に対する鍛造終了時 の重量の割合(歩留係数と定義)を従来と比較して示す。

疵取りによる重量ロスが低減した結果、歩留係数が従来と 比較して約 33% 改善した。

図 13. 歩留係数の比較

Ni 基超合金の熱間鍛錬方法の最適化

4-4. 工程削減

従来 2 ヒートに分割していた工程を 1 ヒートで鍛造可能と なった。これに伴い、仕上り工程の 1 ヒート当たりに付与可 能な鍛造比を従来の 1.5 倍に増加することに成功した。そ の結果、結晶粒の微細化の効果が著しく改善した。

5. 結  言

本報告では Ni 基超合金の八角押し作業における横膨ら み率予測式を定式化した。Ni 基超合金の実機の鍛造に予 測式を適用した結果、予測式は 3% 以内の精度で横膨らみ 量を再現可能であった。

また、予測式を用いた八角押し作業の圧下パススケジュ ールを最適化した結果、鍛造時間、疵取重量ロス及び工程 数の観点から大幅に改善を図ることができた。

参 考 文 献

1)   Tomlinson,  A.  &  Stringer,  J.D. :  Trans.ISIJ,  193    (1959), 157-162.

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