• 検索結果がありません。

フェーズドアレイ UT による大型ロ−タシャフトの内部品質評価方法の確立

ドキュメント内 技報65 (ページ 93-99)

図 1 フェーズドアレイ UT の特徴 -1

(ゾーンフォーカス)

図 2 フェーズドアレイ UT の特徴 -2

(セクタ走査)

図 3 探傷器 /DYNARAY

図 4 探触子 /QUAD フェーズドアレイ UT による大型ロ−タシャフトの内部品質評価方法の確立

VGB 検査仕様では垂直探傷に加えて 7°,  14°,  21°,  28°など の複数の斜角探傷が要求される。大型ロータシャフトへヨ ーロッパ検査仕様の適用を想定した場合、検査作業時間に 1 ヶ月間程度を要してしまい、製造工期に大きな影響を与 え、生産性の低下を招いてしまうことが予想される。

そこで、以下に示す特徴を有したフェーズドアレイ UT

(以下、PA-UT)を大型ロータシャフトの検査手法へ適用す ることでこれらの問題の改善が期待できる。

(1) PA-UT では図 1 に示すように超音波を任意の位置へ集束 させることができる。従来 UT では超音波の伝搬距離が 長くなることで超音波ビームが拡がり広範囲の結晶粒界か らの反射波をノイズとして検出することが考えられる。一 方で、PA-UT では超音波の拡がりを制御することができ るため、結晶粒界からの反射波を低減し、欠陥検出能の 向上が期待できる。

(2) PA-UT では図 2 に示すように一つの探触子で複数の角度 へ超音波を入射することができるため、一度に複数の斜 角探傷を実施することが可能であり検査時間の効率化が 期待できる。

そこで本研究では PA-UT を大型ロータシャフトの検査 手法として適用することを目的とし、その評価方法の確立 を行う。

2. 目  標

本研究では前述した従来 UT における問題点を改善すべ く以下の点を満足する PA-UT を用いた大型ロータシャフト の検査方法の確立を目指した。

(1)垂直探傷により、可能な限り表層からロータシャフトの中 心部までの範囲においてφ 0.9 mm EFBH(等価欠陥サイ ズ)、中心部から反対面に相当する底面エコーまでの範囲 においてはφ1.6 mm EFBH を検出できること。

(2) 7°, 14°, 21°, 28°の角度を持つ縦波斜角探傷を一つの探触 子で一度の走査で実施すること。

また、上記の検査方法を自動 UT 装置により実施するこ とを目標とした。自動 UT 装置を使用することで、一度の 走査ですべての探傷データを採取することができ、検査作 業の効率化が期待できる。また、探傷データを画像処理す ることが出来るため、より信頼性の高く正確な検査作業を 行うことができる。なお、本研究では胴径がφ 2,800  mm のロータシャフトを想定した。

3. 使用機器

本研究において使用する機器および主な仕様を示す。

(1) 探傷器

   装置名称:DYNARAY(128/128PR)(図 3 参照) 

   製造者:ZETEC 社

(2) 探触子

   装置名称:QUAD  (図 4 参照)

   製造者:ZETEC 社及び IMASONIC 社

   主な仕様:周波数 /2 MHz、振動子数 /128 ヶ(32 × 4)、 開口寸法 /64 mm x 64 mm

図 5 試験片の概略図

図 6 従来 UT とフェーズドアレイ UT の検出能の比較

(91)

フェーズドアレイ UT による大型ロ−タシャフトの内部品質評価方法の確立

4. 評価方法の確立

4.1 垂直探傷

4.1.1 欠陥検出能の確認

欠陥検出能に対する PA-UT によるゾーンフォーカスの 効果を確認するために図 5 に示す人工欠陥を有する試験片 を用いて、従来 UT と PA-UT による欠陥検出能の比較を 行った。対象とした人工欠陥はビーム路程で 1,294  mm の 位置に加工したφ 1.6  mm 平底穴(以下、FBH)である。

調査結果を図 6 に示す。φ 1.6  mm  FBH からのエコー高 さ(S)とノイズレベル(N)を比較すると S/N 比は、従来 UT では 2 であるのに対して、PA-UT では 20 であった。

この結果より PA-UT を適用することにより、従来 UT に 比べ欠陥検出能を 10 倍程度改善できることを確認できた。

次に、より具体的な探傷条件について検討を行った。

4.1.2 探傷条件

探傷範囲は表層から 2,800  mm と幅広く、この範囲の全 てで目標の欠陥検出能を満足しなければならない。従来 UT では一つの探触子により近距離と遠距離の欠陥検出能 を同時に満足させることは不可能である。しかし、PA-UT は振動子を電子的に制御し超音波ビームを形成することで 任意の深度に超音波ビームを集束させることが可能であり、

使用する振動子の組み合わせにより探傷範囲全てで目標と する欠陥検出能を満足できる可能性がある。そこで、以下 の条件を満足する超音波ビームの形状(フォーカルロー)の 選定を行った。

(1)表層からロータシャフトの中心部までの範囲においてφ 0.9  mm EFBH、中心部から反対面に相当する底面エコーまで の範囲においてはφ1.6 mm EFBH を検出できること。

(2)検出された欠陥のサイズ評価を正確に行えること。

欠陥のサイズ評価は超音波ビームの特性曲線より算出す るが、近距離音場内における超音波ビームの特性曲線は非 常に複雑である。そのため、近距離音場内で欠陥のサイズ を評価することは非常に難しい。この近距離音場の長さは フォーカルローに依存しており、適切なフォーカルローを選 定することで近距離音場の長さを調整することが可能であ る。PA-UT ではフォーカルローを調整することが可能であ るため、適切な条件を選定することで欠陥サイズの評価を 容易に実施することができる。そのため、本研究では上記 の 2 点を満足するフォーカルローの選定を行った。

4.1.3 欠陥検出能の調査

使用するフォーカルローの欠陥検出能を調査するために、

図 5 の試験片に加えて 5 つの試験片(代表の試験片の写真 を図 7 に示す)を用いた。これらの試験片には 5 mm から 1,294 mm の深さにφ1.6 mm FBH が加工されている。

さまざまなフォーカルローの欠陥検出能を調査した結果、

図 8 に示すように各深度に適した 3 種類のフォーカルロー を用いることで深さ 25  mm から 1,294  mm の範囲におい てφ 0.9 mm FBH を明瞭に検出できることを確認した。ま た、実機ロータシャフトの胴部(φ 2,740  mm)の外周面に φ 1.6  mm  FBH を加工し、検出状況の確認を行った。そ の結果、大型ロータシャフトの中心部から胴部反対面に相 当する底面エコーまでの範囲においてφ 1.6  mm  FBH を明 瞭に検出できることを確認した。探傷結果として代表的な 探傷波形および距離振幅特性曲線を図 9 および図 10 に示 す。また、近距離音場が狭くなるようフォーカルローを選定 したことで、深度で 25mm 以降の探傷範囲が近距離音場 内とならないようにすることができ、欠陥のサイズ評価も正 確に実施することができる。

図 7 試験片の概略図

図 8 垂直探傷における超音波ビーム

図 9 垂直探傷の代表探傷波形

図 10 距離振幅特性曲線

表 1 垂直探傷と斜角探傷の感度差 

表 2 斜角探傷の感度差  図 11 斜角探傷の代表探傷波形

* 1: φ 1.6mmFBH とφ 4.0mm SDHにおける超音波ビームの反射率の差 

フェーズドアレイ UT による大型ロ−タシャフトの内部品質評価方法の確立

4.2 斜角探傷

斜角探傷は方向性を有する欠陥を検出することを目的と して、7°, 14°, 21°, 28°の周方向縦波斜角法を用いて実施す る。斜角探傷において目標とする欠陥検出能をφ 1.6mm  FBH を検出できることとし、必要な補正量や欠陥検出能の 検証を行った。検証にはそれぞれの角度においてビーム路 程が 50mm,  500mm,  1,000mm となるφ 4.0mm  横穴(以 下、SDH)を用いた。

超音波ビームに角度を持たせることで生じる超音波ビーム の減衰量の測定を行った。減衰量を表 1、代表的な探傷波 形を図 11 に示す。超音波ビームの角度を 0°から 28°の範囲 に変化させた場合、最大で -5.0 dB の超音波ビームが減衰 することを確認した。この値にφ1.6 mm FBH とφ 4.0 mm  SDH の反射率の違いを加えることで、7°から 28°の斜角探 傷を実施する場合の補正量を決定することができる。

求めた補正量より斜角探傷における欠陥検出能を調査し た結果、表 2 に示すように従来 UT の不感帯幅に相当する 50  mm 深さからφ 1.6  mm  FBH を明瞭に検出できること を確認した。

図 12 -6 dB ビーム幅

図 15 大型ロータにおける MDFS 図 14 大型ロータにおける代表探傷波形 図 13 外周自動 UT 装置(TUROMAN5)

(93)

フェーズドアレイ UT による大型ロ−タシャフトの内部品質評価方法の確立

4.3 走査条件の選定

PA-UT は自動 UT 装置を用いて実 施 するため、 自動 UT 装置による走査条件を定める必要がある。自動 UT 装 置による走査は一定の間隔で行うため、適切な走査間隔を 定めなければ欠陥を正しく評価できない。そのため走査の 条件を -6  dB の超音波ビーム幅に基づいて定めることとし た。-6  dB の超音波ビーム幅とは欠陥からの反射エコーが 最大のエコー高さに対して 1/2 の高さとなる超音波ビームの 幅であり、その範囲では適切に欠陥を検出することが可能 である。そこで探傷に用いる 3 つのフォーカルローの -6 dB の超音波ビーム幅をφ 1.6  mm  FBH を用いて、ロータシャ フトの軸方向および円周方向に一致する方向で測定した。

測定結果を図 12 に示す。軸方向の -6  dB の超音波ビー ム幅はビーム路程で 50 mm となる位置で最小となり、その 幅は 7.5  mm であった。また周方向おいてはビーム路程で 15 mm となる位置で最小となり、ビーム幅は 7 mm であっ た。この結果より、探傷範囲を -6  dB のビーム幅で少なく とも 1 回探傷することを条件とした場合は、自動 UT 装置 による走査条件が「軸方向で 7.5  mm 以下、円周方向で 7  mm 以下の間隔で走査すること」となる。

5. 大型ロータシャフトにおける検証

これまでに定めた探傷条件を用いて、実際の大型ロータ シャフトに対して自動 UT 装置を用いた探傷を行った。下 記の条件に示すように複数の探傷を同時に実施することで、

探傷データの抜けや探傷速度の低下が予想されるため、そ の点を注視し実際の探傷を行った。

探傷条件を以下に示す。

(1)探傷部外径:φ 2,811 mm

(2)探傷チャンネル数 / 垂直探傷:3 チャンネル

  / 斜角探傷:8 チャンネル(7〜2 8°, 時計および反時計方向)

(3)走査条件 / 取り込み周期:7 mm(軸方向)、   :0.2°(周方向)/ 探傷速度:100 mm/sec

(4)自動 UT 装置:ロータシャフト外周自動 UT 装置    (装置名称:TUROMAN5/Actemium Cegelec 社製 図 13)

上記の条件により得られた探傷データを確認した結果、

データ取り込み不良はなく問題ない探傷データが採取可能 であることを確認した。採取した代表的な探傷波形およ び従来 UT による探傷波形を図 14 に示す。探傷波形より 欠陥検出能を示す最小検出欠陥サイズ(MDFS)を算出 した結果、図 15 に示すように、PA-UT では従来 UT より も大幅に欠陥検出能を向上させ、目標とした検出能を満足で きることを確認した。また、垂直探傷および 7°, 14°, 21°, 28°

の斜角探傷を一度の探傷走査で同時に実施しすることが でき、探傷データの取り込みも正常に行われることを確認 した。従来 UT では 9 回の探傷走査を行う必要があるが、

PA-UT では 1 回の探傷走査ですべての探傷を実施するこ とが可能であり、探傷走査回数を 1/9 とし、探傷時間を従 来 UT に比べ 90% 程度削減することができる。

ドキュメント内 技報65 (ページ 93-99)