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風向変動を考慮した風車後流の解析精度の検証

ドキュメント内 技報65 (ページ 50-57)

Accuracy Validation of Wind Turbine Wake Analysis Including Wind Direction  Fluctuation Correction

鈴木 潤 鈴木 広幸

武藤 厚俊 藤田 泰宏

Jun Suzuki Hiroyuki Suzuki

Atsutoshi Muto Yasuhiro Fujita

室蘭研究所 

Muroran Research Laboratory

技 術 論 文 風向変動を考慮した風車後流の解析精度の検証

近年、日本における風車建設は、風況の良い沿岸の平坦地域がすでに飽和傾向にあるため、山岳地域に高密度に配置 したウィンドファームが主流となりつつある。山岳地域の風況は、地形による影響を受けるため乱流強度が高く、さらに 近接風車の後流の影響により乱れはさらに増大する。高い乱流強度は風車各部に大きな荷重変動を生じ、疲労による機 器の損傷を招く結果となる。また、日本国内では乱流強度や風向変動など国際規格で定められている風況とは異なるこ とが多く、国際規格で定められている手法を適用できない場合が多いと考えられる。本稿では、風向変動を考慮した風 車周辺の気流解析を実施し、観測塔により実測された後流の統計量と比較した結果を示す。得られた結果からは、本稿 で提案した風向変動を考慮した解析手法は、平坦地形において実測値と良好な一致が示された。今後は複雑地形に対し ても適用を試みる予定である。

要   旨

   In recent years, wind farms where wind turbines are densely located in a mountain area have become predominant in  the wind turbine construction in Japan because of the fact that most of the coastal areas with suitable wind conditions  have been fully occupied with the existing wind turbines. In mountain areas, high levels of turbulence are generated by  the terrain, and they are further increased by the wake of neighboring wind turbines. High turbulence intensity gives rise  to a large degree of load fluctuation in each part of a wind turbine and may result in fatigue damages in the equipment. 

In addition, the application of turbulence analysis methods specified by an international standard appears impossible in  Japan, where the turbulence intensity and fluctuation in the wind direction are mostly different from those defined in the  international standard. In this paper, an air flow analysis around a wind turbine was carried out with a correction in light  of fluctuation in the wind direction, and the result was compared with the actual turbulence measured by a met mast on  the site. It was shown that the proposed analysis method has precisely predicted the turbulence intensity at least for a flat  terrain. The same analysis will be attempted for more complex terrains.

Synopsis

図 1 風車/ウィンドファーム建設前の事前評価手順

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1. 背 景

近年、日本国内においては風車建設に最適な沿岸部好 風況地域は既設風車により飽和傾向にあり、新規の建設 は内陸部、特に高風速が期待できる山岳部に集中する傾 向にある。また、ウィンドファームの発電事業性の観点か ら風車を高密度に配置する傾向にある。このようなサイト においては、地形により生成される乱流と、近接風車の 後流による乱流により高い乱流強度が発生する。乱流強 度の増加は、風車の疲労荷重の増加による風車のコスト、

発電量、建設可能エリアの縮小等事業性に関わる多くの 事項に影響を与えるため、精度の高い予測、評価方法が 求められている。しかしながら、複雑地形における風車 後流による乱流強度の有効な評価手法は、未だ提案され ていないのが現状である。

本論文では、複雑地形における予測手法の検討に先立 ち、平坦地形における風車後流の風速及び乱流強度の解 析精度の向上を目的とし、風車後流の実測値と比較検証 した結果について報告する。

2. 風車建設事前評価

一般的に、風車もしくは複数の風車からなるウィンドフ ァームの建設予定地におけるサイト事前評価は、大まかに 以下の手順によって行われる(図 1)。ただし、ここでは 極値風速の検討や大臣認定等の手順は含んでいない。先 述のように、複雑地形である山岳地域に建設する場合に は、地形や近接風車の影響により乱流強度が増加する傾 向があるため、風車の配置再検討や運転条件の再検討を 複数回実施することが多い。

風向変動を考慮した風車後流の解析精度の検証

④ に 示 す近 接 風 車の 後 流による影 響は IEC61400-1  Ed.3 Annex D(1) (式(1)〜式(3))に示される手法によ り算出し、測定、もしくは解析により得られた乱流強度を 補正する。この手法は、現時点において風車に関する国 際規格に記述された、唯一の風車後流による乱流強度の 算出方法である。

      (1)

ここで、各変数は以下の通りである。

   : 有効乱流強度

   : 各風車における風向出現率

   : 風向θにおける周囲及び風車後流による乱流強度    : 対象材料の Wöhler 指数

   : ハブ高さにおける風速 [15 m/s]

各風向の乱流強度は、近接風車が存在しない風向では、

式(2)により算出する。

             (2) 

   

一方、近接風車が存在する風向では、式(3)により算出する。

                (3)

ここで、各変数は以下の通りである。

   : 周辺乱流標準偏差(観測値)

   : 対象となる近接風車のロータ直径により規格化さ      れた近接風車までの距離

   : 定数 [m/s]

先述したように、本手法は国際規格に記述された、風車 後流による乱流強度の算出方法を示した手法であるが、欧 州の平坦地形および洋上環境を基に策定されているため、

複雑地形における適用可能性については確認されていない。

加えて、当社製風車既設サイトにおける風況測定実績から、

山岳地域などの複雑地形における多くの場合、IEC の手法 では乱流強度を過大に見積もる傾向があることが確認されて いる。乱流強度の過大評価は風車建設可能エリアを縮小す るだけでなく、風車構成部材製造及び輸送時のコスト、運 転条件による発電量の低下など、事業性に大きな影響を与え る可能性がある。したがって、複雑地形において乱流強度 を精度よく予測することは、経済的な風車建設の観点からも 重要であると考えられる。本研究では複雑地形において近 接風車の後流により増大する乱流強度の予測精度向上の試 みに先立ち、風況観測塔を有する平坦サイトにおいて風車後 流による乱流強度の予測精度の検証を目的とする。

図 2 JSW 社製風車 J70 -2.0 表 1 解析条件

表 2 J70-2.0 の諸元

出力 2,000kW の風力発電機である。J70 初号機は 2006 年夏に当社室蘭製作所構内に建設され運転を開始し、現 在に至るまで運転を継続している。本論文では通常運転 とは異なり、定格出力を 1,500kW とした運転モードにお けるデータを使用した。風況観測塔は J70 の SSE  方向 262m に位置している。

図 3、図 4 に示すように、J70 風 車近傍の地形は平坦 であり、北西〜北方向は海に面しているが、その他の方 向は 標高 100m 〜 200m の比 較 的 低い山に囲まれてい る。解析領域および解析メッシュを図 5 に示す。解析メ ッシュの座標軸は、風主流方向を 軸、風直角方向を 軸、鉛直方向を 軸とした。解析領域は風車近傍より 約 20,000m 上流側とした。これは流入境界を十分前方と することにより、地表面により形成される大気境界層を正 確に再現するためである。また、解析領域の鉛直方向高 さは、上部速度境界による縮流効果が無視できるように、

3. 風況解析手法

一 般 的に、 風 況 解 析には、 線 形 解 析ソフト WAsP(2) 

(Risø)、非線形定常解析ソフト MASCOT(3)、(4)(東京大 学)、非線形非定常解析ソフト Riam  Compact(5)(九州大 学)などが使用されることが多く、すでに多くの実績を挙 げている。本研究においては、自作コードを追記して地形 上気流および風車後流の数値再現を実施するために汎用 コード ANSYS Fluent 12.0 を用いた。表 1 に解析条件を 示す。

地形データは国土地理院の数値地図 50m メッシュ(標 高)を使用し、地表面粗度は国土交通省の土地利用細分 メッシュデータを利用して決定した。地表面における境界 条件は、式(4)に示す対数則による壁面せん断応力によ り算出した。これにより、地表面粗度を考慮した解析を 可能とした。なお、土地利用と粗度長の関係は文献(8)

に示される値を式(4)に用いて変換した。

      (4)

ここで、各変数は以下の通りである。

   : 地表高さ [m]

   : 粗度長 [m]

   : 地表高さ z における風速 [m/s]

   : 摩擦速度 [m/s]

   : カルマン定数 [ - ]

また、対象領域の上流に対象領域と同じ広さを持つ付 加領域を追加し、それら二つを合わせた領域の周囲に緩 衝領域を設けた領域を解析領域とした(4)

風車後流モデルは、アクチュエータディスク理論(6)に基 づいて算出した運動量欠損を、流れ方向運動方程式のソー ス項として組み込んだ。なお、後流速度 Wは、解析対象 風車の発電量 及びスラスト係数 tより算出した。

解析対象は、風況観測塔を有する、当社室蘭製作所構 内の風 車 J70-2.0(図 2、表 2、以下 J70)を中心とした 地形とした。当社製風車 J70 は、全長 34m の GFRP 製 ブレードと永久磁石による同期型発電機を有する、定格

風向変動を考慮した風車後流の解析精度の検証

図 3 J70-2.0 周辺地形

図 5 解析領域および座標定義 図 4 JSW 室蘭製作所構内の風車及び

風況観測塔(Met mast)の位置

表 3 解析メッシュの詳細

(49)

十分高く(10,000m)設定している。流入 風 速は 10m/s とした。表 3 に解析メッシュの詳細を示す。

風向変動を考慮した風車後流の解析精度の検証

4. 実機による解析モデル検証

4.1 風況観測塔による風車後流の測定

風況観測塔を有する当社構内(室蘭サイト)を解析対象 とし、後流モデルの妥当性検証を実施した。本サイトには 風車が 2 基(J70、J82)設置されているが、風車配置と風 向出現率から、風況観測塔においては J70 風車後流のデー タが多く観測されるため、J70 後流を評価対象とした。ま た、解析風向は J70 の風下に風況観測塔が位置する方位と した。観測高さは J70 のハブ高さに等しい 65m とし、風速 は三杯型風速計、風向は矢羽式風向計により測定した。観 測塔の 65m 高さには超音波型風速計も併設しており、実 測と解析による乱流強度を比較する際に使用した。三杯型 風速計で乱流強度を測定する場合、応答速度により、高 い周波数を測定できないため、解析と比較して値を低く見 積もることが知られている。本検討では、観測塔における 超音波風速計と比較することにより乱流強度の補正を実施 している。実測による風車後流域の風速及び乱流強度は、

後の解析結果と併せて示す。

4.2 風車後流域風速の解析結果

図 6(a)、(b)に解析により算出された対象風車(J70)

周辺の速度分布図を示す。図 6(a)より、十分上空において 風速は流入風速である 10m/s となり、地表面近傍で速度が 減少する通常の大気境界層が再現されており、風車ロータ面 下流では後流モデルにより速度欠損が発生し、流れが減 速されている。また、風速の回復はロータ面上方で早く、

下方で遅いことが確認できる。これは風速の鉛直方向分 布(ウィンドシア)により、ロータ面上方では速度が大きく、

減速域に対する主流からのエネルギ供給が大きいためで あると考えられる。また図 6(b)は、J70 のハブ高さ水平 面( - 平面、 =65m)における速度分布を示している。

風車ロータ直径を とすると、風車後流は 1 〜 2 下流 位置において、幅 1.5 程度の速度欠損領域を示した後、

10 下流位置付近において十分な速度回復を示すことが確 認された。

ドキュメント内 技報65 (ページ 50-57)