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3D 計測装置による素材寸法検査の効率化および高精度化

ドキュメント内 技報65 (ページ 69-75)

図 2 3D 計測装置(HDS6100)本体外観

図 1 手作業による寸法検査

表 1 3D 計測装置(HDS6100)の仕様 3D 計測装置による素材寸法検査の効率化および高精度化

1. 緒  言

鍛鋼品の寸法検査は調質前形状または納入形状確保の 可否を確認するだけではなく、製品の余肉分布を統計的に 管理することで、外部品質の時間的変化やバラツキを把握 し、製造過程における課題および問題点の発掘と、その早 期解決を図る上でも重要である。しかしながら、現状の寸 法検査は図 1 に示す様に定規やテンプレート等を用いた手 作業による方法で行われているため、測定精度は作業者の 技量に依存し、また時間的な制約から測定点数には限界が ある。さらに、余肉のバラツキが最小となるときの中心線、

所謂 最良芯 を見出すために複数回の測定を余儀なくさ れており、特に原子炉圧力容器用ヘッド部材など複雑な形 状の製品では作業に多大な時間を要している。そこで、効 率的な計測システムを構築するために 3D 計測装置を導入 した。

本報では 3D 計測装置を活用して寸法検査を行う際の最 適な作業方法と、データ処理のシステム化、並びに寸法測 定精度と作業効率における 3D 計測装置の有用性について 紹介する。

2. 3D 計測装置の仕様と計測原理

導入した 3D 計測装置(ライカジオシステムズ社製 HDS6100)

の仕様を表 1 に概観を図 2 に示す。本装置はレーザの位 相差検出方式(Phase  Shift)であるが、これは複数に変 調させたレーザ光を照射し、対象物に当たって戻ってきた 反射波の位相差により、測定対象物との距離を求める方法 である。垂直方向に回転するミラーと水平方向に回転する本 体の角度情報をエンコーダより得ることで、測定ポイントの 座標を得ることができる。レーザの発射時間と反射波の到 着時間との時間差から距離を算出する飛行時間型(Time of  Flight)と比較して近距離の範囲を高精度かつ高速にスキャ ンすることが可能な方法である。また、本装置の分解能レ ベルは 5 段階に分かれており、必要に応じて使い分けが可 能である。

レーザスキャナの原理上、測定物の裏側などレーザの届 かない箇所の計測はできない。従って、測定対象物の全体 像を得るためには複数視野からスキャンを行い、それぞれ の計測点群を合成する作業が必要となる。この合成の基準 となるのが、図 3 に示す灰色と白色の領域の境界が十字と なる模様の描かれた合成用ターゲットである。計測時には 反射率も同時に記録しているため白と黒の交差中心を半自 動的に認識し、これをデータ合成の基準点として指定する ことができる。

複数の視野で測定したデータ点群から 1 つの 3D モデル を構築するには、計測時の視点の違いを補正するために、

回転と並進で表される剛体変換を施す必要がある。ある 2 つ の視野から測定した点群に含まれる、1 つのターゲットの 3 次 元座標をそれぞれ 01とすると、以下の式が成り立つ。

…(1)

…(2)

ここで、 は 3 × 3 の回転行列、 は 3 ×1 の平行移動 ベクトルである。

図 3 合成用ターゲット外観

図 4 3D 計測概略

図 5 測定手順

図 6 測定データの分割

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3D 計測装置による素材寸法検査の効率化および高精度化

2 つの点群データを一意に位置合わせするためには、す べての回転自由度を拘束する必要があるため、上記のよう なターゲットの対応を取るための式が 3 つ必要となる。す なわち、ターゲットを各視野で 3 個以上共有することで初 めて、剛体変換を一意に求めることができる。そして共有 するターゲットの数は多ければ多いほど、剛体変換を精度 良く推定することが可能となる。

3. 計測とデータ処理

図 4 に 3D 計測装置を使用した計測の概略を図 5 に測 定手順を示す。まず計測する視野を予め決めておき、ター ゲットはその各視野の中に必要数入るように設置する。タ ーゲットは基準点位置を中心として自在に回転できるので、

スキャナー本体に正対させて計測を行う。計測は初めに 対象物の概観を低分解能の Preview で測定した後、必要 な範囲を指定して高分解能の測定を行う。当然、分解能 レベルが上がるほど測定時間も増すことから、測定対象物 までの距離を考慮して必要最低限の測定精度が確保でき る分解能を選定することが望ましい。室蘭製作所で製造さ れる大型鍛鋼品であれば、分解能は High または Highest が計測精度と効率の両面から見て最適である。

測定後は専用ソフトである Cyclone を使用して測定デ ータの合成と、測定対象物以外の背景部分のデータ削除 を行う。その後、汎用ソフトである PolyWorks を使用 して測定結果と目標形状の CAD データの比較を行い、余 肉分布を算出する。この際、CAD データの位置合わせに は PolyWorks に搭載されている ベストフィット機能 を 用いることにより、最良芯における余肉分布の比較を容 易に行うことができる。ただし、この機能は計測データと CAD データの形状に大きな寸法差異がある場合には使用 できないため、その際には一旦相似的に大きくした CAD データを用いてベストフィットを行い、その後に元の CAD データと置き換えるといった処理が必要となる。

計測データは膨大な点群の集合体であることから、これを そのまま品質管理用のデータとして使用するには不便である。

そこで、図 6 に示す様に測定データの分割を行い、各分割範 囲における最小余肉量を品質管理用のデータとして用いること とした。計測データを分割する際は、マクロ機能を活用して自 動で処理することによりデータ処理の効率化を図った。

図 7 Conical Shell の外観

図 8 手作業と 3D 計測装置の測定余肉量比較 表 2 計測精度

表 3 手作業と 3D 計測装置の所要時間比較 3D 計測装置による素材寸法検査の効率化および高精度化

4. 従来計測方法との比較

4.1 測定精度比較 

本 3D 計測装置における計測誤差は、表 2 に示すターゲ ット捕捉精度と黒皮鍛鋼品の反射率から 5mm 程度と考え られるが、3D 計測装置で測定した寸法成績を基に品質管 理を行うためには、従来の手作業による測定結果との差異 を把握する必要がある。そこで、図 7 に示す Conical Shell を対象として調質前形状に対する余肉量の測定結果を比較 した。

同 一 の 箇 所 で 余 肉 量を比 較 するため、 予め Conical  Shell の外周面に 4 点× 8 方位の比較ポイントを白くマーキ ングした。さらに同一芯で余肉量を比較するため、3D 計測 装置にて算出した最良芯に対して垂直となる水平ラインを罫 引き、これを手作業で測定する際の基準とした。

図 8 に測定した余肉量の比較結果示す。測定余肉量の 差は最大で 4mm 程度であり、3D 計測装置による測定は 手作業による測定と遜色ない精度であることが分かった。

4.2 所要時間比較 

3D 計測装置による作業効率の改善効果を把握するた め、計測の所要時間についても同様に Conical  Shell を 対象として比較した。手作業で測定する場合の所要時間 は作業人数によって異なるため、作業時間と作業人数を 乗算した値にて比較した。

表 3 に比較 結果を示す。手 作 業による測定では 13.7 時 間・人を要したのに対し、3D 計 測 装置 では 10.0 時 間・人となり、所要時間短 縮・人員削減に効果をもたら す結果となった。一方で、3D 計測装置を使用した場合、

ターゲットの配置など事前準備に 1.0 時間・人、計測後 のデータ処理に 6.0 時間・人を要しており、これらが、さ らに時間効率を改善する上でボトルネックとなることが明 らかとなった。

5. 測定作業とデータ処理の効率化 合成 用ターゲットの設 置は前述した様に、 複 数のタ ーゲットが各視野で互いに共有されている必要があるた め、設置位置の検討に時間を要する。また、ターゲット を使った位置合わせでは、各視野で撮影されたターゲッ トの対応付けを人手で行うため、これに時間を要するば かりか、対応付けを誤ると正しい合成像を得ることが出 来なくなる。さらに、測定データから不要部分を除去す る後処 理にも多大な時間を要する。これらの課 題を解 決するため日本ユニシス株式会社と共同で技術開発を行 った。

5.1 ICP アルゴリズムによる

   ターゲットレス自動位置合わせシステム

ICP(Iterative  closest  point)アルゴリズム(1)、(2)はター ゲットレスな位置合わせの代表的な手法の一つであり、「最 近点による対応付け」と「対応点からの剛体変換の推定」

の二つの処理を交互に繰り返す事で、データ点群を基準と なるモデル点群に位置合わせする手法である。ICP アルゴ リズムを活用し、事前に測定した工場内の環境を基準とし て計測点群の位置合わせを行い、さらに位置合わせした点 群から工場環境部分を除去することで、測定対象の形状の みを容易に抽出することができる。

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