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水素ガス環境における材料の安全性検証試験 水素ステーションに用いられる蓄圧器は、燃料電池自動

ドキュメント内 技報65 (ページ 44-47)

水素ステーション蓄圧器の開発と安全性評価

4.  水素ガス環境における材料の安全性検証試験 水素ステーションに用いられる蓄圧器は、燃料電池自動

車への充てん時の減圧と蓄圧のための加圧が繰り返され る。たとえば水素ステーションにおいて1時間に 5 台の燃 料電池自動車への差圧充てんが行われ、営業時間を 1 日 13 時間と仮定すると、蓄圧器は 10 年間で 237,250 回もの 繰り返し圧力変動を受けることになる。したがって、水素 ガス雰囲気下での安全性を立証するためには、疲労破壊 に対する水素の影響を把握することが重要である。

図 5 には疲労破壊におけるき裂の発生と伝播を模式的 に示したが、これらを材料試験によって求めるには以下の

①〜③の試験を高圧水素雰囲気下で行う必要がある。即 ち、①き裂の発生〜破壊に至るまでの全寿命を求めるた めに平滑試 験片により疲労試 験を行い、繰り返し応力、

破断繰り返し数の関係( - 特性)を求める、②き裂の入 ったブロック試験片を用いて疲労き裂伝播速度(d /d ) を求める、③疲労き裂が伝播し、やがて容器が破壊する 限界荷重と限界き裂寸法を求めるために破壊靱性試験を 行う。③の破壊限界を求める試験では、水素の影響を考 慮して、一定荷重を負荷して静置しておく方法(遅れ割れ 試験)と、一定速度で荷重を負荷していくライジングロー ド法の 2 通りの方法が水素中のき裂進展評価試験方法と して提案されている[13]。以下にはこれらの試験結果の代 表事例について示した。

4.1 水素ガス中の疲労試験

図 6 に疲労試験結果の一例(材料は 440-1 および 435-A)

を示す。尚、疲労試験片の加工にあたっては、加工変質層 の影響を避けるために、表面をエメリー研磨紙にて表面粗 さ max=3.6μm を狙い値として、研磨を行った。これらの 疲労試験の結果、ひずみ振幅の大きい低サイクル疲労域 においては水素による影響が現れているが、振幅が小さく なる高サイクル域では破断繰り返し数は大気中と変わりの ない値を示している[14]。同様の結果は宮本らによっても 報告されている[15]。しかしながら、どのような材料(たと えばこれらより強度レベルが高く、脆化感受性が著しい材 料や、介在物や偏析が顕著な材料)でも高サイクル疲労 域で水素の影響がないとは現段階で断定できず、今後の 高サイクル疲労域での挙動解明のための更なるデータ蓄積 が必要である。

図 7 45MPa 水素ガス中高サイクル疲労寿命におよぼす 機械加工の影響 [16]

図 8 SNCM439 鋼(439)のライジングロード試験法と 遅れ割れ試験法による IHの比較 [20]

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4.3 き裂進展試験

水素ガス雰囲気中でき裂への荷重を増していくと水素脆 性の影響を受けて大気中より低い荷重でき裂が進展を開 始するが、この際の限界荷重(水素助長割れ下限界応力拡 大係数 :  IH)を評価するために、ライジングロード法[17]

と、遅れ割れ試験法[18]  [19]の 2 通りがある。ライジングロ ード法は、ブロックにき裂を入れた試験片に水素中で荷重 を徐々に加えていく(漸増)試験方法である。一方、遅れ 割れ試験法では、試験片にボルトで荷重を加えてき裂を一 定量開口させ、長期間(本試験では 1000 時間)水素中に 暴露する。この間にき裂が進展を開始した後、停止する際 の限界荷重(これを IH-Hと呼ぶことにする)を評価する 試験法である。図 8 に強度の異なる 2 つの SNCM439 鋼 材(439-570,439-610)について、両者の荷重負荷方法によ る進展限界荷重の違いを調べて比較した。なお、遅れ割 れ試験法では、初期に荷重負荷する際、き裂先端が酸化 の影響をうけないよう不活性ガス中(グローブボックス中)

で荷重を負荷し、その後空気に触れぬようにして水素中で 1000h 暴露した。低強度の材料(439-610)では両試験法 に差がでており、ライジングロード試験法で得られる IH-R

は、遅れ割れ試験法によって得られる IH-Hより低い値を 示す。図 8 の高強度の材料(439-570)では、両試験法に よる差は見られなくなる傾向を示す[20]。これらの差は荷重 負荷方法の違いによりき裂先端の塑性状態が異なるためと 考えられている[21]。安全解析で用いるべきき裂進展限界は、

両方の試験法を行って IH-HIH-Rを比較し、いずれか低 い値(これを IHとする)を用いるべきであるが、これらの 結果から判断すると、安全側の評価とするにはライジングロ ード試験の IH-Rを採用すべきと言える。

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4.2 高サイクル疲労寿命におよぼす表面加工条件の影響 試験片表面を注意深く研磨仕上げした疲労試験におい ては、高サイクル域では疲労寿命におよぼす水素の影響で 低下しないことが示されたが、実際上、機械加工を受けた 接ガス表面においては、旋盤の切削加工跡などが残存し ている。そこで水素中高サイクル疲労域におよぼす表面加 工の影響について調べた。図 6 に示した材料(440-1)に ついて、表面加工条件を切削と研磨として、表面粗さを変 えた疲労試験片を準備し、繰り返し応力振幅 =500MPa

( : 応力振幅、荷重制御)、完全両振り( = -1)( : 応力 比)の条件で大気中と 45MPa 水素中それぞれについて疲 労試験を行った。これらの結果について破断寿命比(水素 中 / 大気中)を図 7 に示した[16]。研磨した表面ではいずれ も水素の影響で寿命は低下しないが、切削加工ままの表面 では、いずれの表面粗さであっても、大気中破断寿命に対 する水素中破断寿命の比が大きく低下し、最小で 0.2 まで 低下することが示された。一方、加工後に真空焼鈍して疲 労試験をおこなうと、破断寿命比が若干回復する傾向を示 した。これらの結果より、引張試験では巨視的には水素の 影響が現れない弾性域( max=500MPa,  max : 繰り返し最 大応力)においても、切削加工により加工変質層が残存し ていると、水素中の繰り返し応力(ひずみ)下で早期にき 裂が発生し、破断に至ることが示された。したがって、熱 処理が終了した後に機械加工を受ける部位については、研 磨等により加工層、有害な残留ひずみを除去することが望 ましい。

図 9 水素ガス中における疲労き裂伝播挙動 [22] [23] [24]

Phase  I   :    max >  max0  疲労き裂の発生 Phase  II   :    max <  maxT  水素助長疲労き裂進展 Phase  III  :    max >  maxT  水素助長割れ / 準安定破壊 Phase  IV  :    max >  IC  脆性破壊 / 不安定破壊移行 整理すると、水素中の疲労き裂進展は以下の 4 つの Phase によって特徴づけられる。

同様の整理は Kesten[25]や Suresh[26]らの報告にみるこ とができる。Phase  I 〜 IV の模式図を図 9(c)上図に示 した。松本ら[27]によれば、水素助長疲労き裂進展は、繰 り返しに伴うすべり変形が支配的であり、ある周波数以下

(1Hz 以下)であれば、水素助長疲労き裂進展速度は上限 値が存在することを報告している[15]。この結果はわれわれ の図 9(c)に示す Phase  II 領域の傾向と一致するが、こ の領域でなぜ繰り返し速度にあまり依存しないのか、その 詳細なメカニズムは現時点では明らかになっていない。一 方、Phase  III では繰り返し荷重が増大し、 maxがある 臨界値( maxTIH) 付近に達すると、それ以上の荷重 では、「水素助長割れ」が顕著となり、Phase  II でのすべ り破面(擬へき開破面)から粒界破面が多くみられるよう になる。ここでのき裂進展は、繰り返し回数よりも時間に 大きく依存しながら進展するため、図 9(a)に示した max  -d /d 線図上では、繰り返し周波数が小さいほど単位時 間あたりのき裂進展量(d /d )が大きくなり、1 回あたり

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4.4 疲労き裂伝播試験

図 9(a)には、繰り返し速度を変化させたときの水素中 のき裂伝播速度(d /d )を max-d /d 線図( maxは繰 り返し最大応力拡大係数)で示しているが、 maxが小さい ほど、水素中と大気中の d /d が近づく傾向を示しており、

max0(疲労き裂発生下限界)は、大気中と水素中とでほぼ 同じになることが確認されている。ある max以上の領域で 繰り返し速度が小さくなるほど加速する点(図中の↓)がみら れるが、この点を maxTと呼ぶことにすると、 max maxT

の区間では、どの周波数の条件でもほぼ同じき裂伝播速度 を示し、繰り返し速度の影響が小さい傾向を示す[22]

max  >  maxTでは繰り返し速度が小さくなるほどき裂進 展速度が増大する傾向を示す。詳細は省略するが、SCM 鋼、SNCM 鋼についてこの加速点 maxTを調べた結果、

maxTは前項に示したライジングロード試験によって得られ る水素助長割れ下限界応力拡大係数 IH-Rとほぼ一致する 傾向が確認されている[22]。さらに図 9(b)には、円筒試 験片内表面に半楕円状の疲労き裂を入れておき、外部の水 圧を変動させる内圧 / 外圧疲労試験を行ったときの破面変 化の様子を示した。 maxTより小さい領域の破面は半楕円 形状を保ちながら安定的に伝播していることが分かる。一 方、 maxTを越える加速域まで試験を行い、最終破壊させ た円筒試験容器の破面では、半楕円形状がくずれて容器 長手方向に大きく進展し、破壊に至っている[23]  [24]。以上を

① 疲労き裂発生防止基準による疲労設計

② 疲労き裂伝播寿命基準による疲労設計

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の 進 展 量(d /d ) が 大きくなるものと考えられ る。

図 9(a)ではその先の Phase  IV まで試験を行っていない が、本材料は、疲労き裂伝播速度を行った室温下では IH 

ICであることはあらかじめ確認されており、このような 場合は max  >  ICを超えると水素の有無に関係なく急速 破壊を起こす[28]。また IH  >  ICであるような場合(材料 の ICがもともと低いか、低温の場合など)には、 maxT

での疲労き裂加速現象は見られず水素助長疲労き裂進展 から直接急速破壊に移行する。このように、疲労き裂の伝 播が IHを超えると加速する(き裂が回数に依存せず時間 依存型で準安定的に進展)ことを考慮すると、疲労き裂伝 播解析では、 IHまたは ICのいずれか小さい方を解析の 打ち切り点=容器の破壊限界点とみなす必要がある。

5. 水素の影響を考慮した疲労設計法の考え方

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