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結果と考察

ドキュメント内 技報65 (ページ 60-64)

新設 150tonESR で製造した大型鋼塊の内部品質

5.  結果と考察

5.1 マクロ組織観察

図 4 に単一電極方式の ESR 鋼塊縦断面のサルファープ リントを示す。ホットトップ開始時のメタルプール深さは約 810mm と見積もられた。図 5 に鋼塊縦断面の一次晶組織 を示す。ホットトップ開始以前の領域においては、鋼塊縦 断面の軸心部では等軸晶は確認されず、Bottom  からプー ル底にかけて柱状晶が Bottom 端面に対して垂直に伸びて いた。また、鋼塊上部にブローホールに起因する空隙状欠 陥が多数認められた。ブローホールの発生原因としてはホ ットトップ開始時に Fe-S を添加したことで H2S または SO2

が発生したことによるものと考えられる。

図 6 に単一電極方式の ESR 鋼塊の PT 欠陥分布を示 す。鋼塊最底部の表層およびスタータープレートとの溶着 部ではスラグの巻き込みによる PT 欠陥が観察された。鋼 塊上部および最底部の欠陥検出範囲を除くと PT 欠陥は検 出されなかった。

図 7 に電極交換方式の ESR 鋼塊縦断面の一次晶組織 を示す。定常溶解領域においては、表層から軸心上部へと 柱状晶が伸びているのが確認された。電極交換時のプー ル形状に沿って細かい一次晶が認められ、メタルプール形 状が確認された。ホットトップ部では Fe-W を投入した影 響によりメタルプール底近傍に細かい一次晶組織が認めら れ、メタルプール形状を観察することが出来た。マクロ組 織観察により確認されたメタルプール深さは電極交換時で は 980mm、ホットトップ開始時では 1,135mm であった。

図 7 電極交換方式 ESR 鋼塊の縦断面の一次晶組織

図 9 単一電極方式 ESR 鋼塊の軸方向 C 濃度分布

図 10 単一電極方式 ESR 鋼塊の軸方向 O 濃度分布

図 8 電極交換方式 ESR 鋼塊の縦断面の PT 欠陥分布

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図 8  に電極交換方式の ESR 鋼塊の PT 欠陥分布を示 す。試材中央付近に PT 欠陥が検出されたが、これはホ ットトップ開始時のメタルプール底近傍に位置し、添加し た Fe-W の影響により欠陥として検出されたものと推定さ れる。また、鋼塊 Top でも PT 欠陥が検出されているがホ ットトップが不良のため二次パイプが形成されたと推測され る。一方、電極交換位置では PT 欠陥は検出されず、電極 交換による内部品質への影響は認められなかった。

5.2 化学成分分析

図 9 に単一電極方式の ESR 鋼塊の C の軸方向分布を、

図 10 に O の軸方向分布を示す。軸心での C はホットトッ プ域で微量の増加が見られたが、ホットトップ開始以前の 領域では大きな変動はなかった。軸心での O はホットトッ プ域となる鋼塊底部から 1,500mm 以上の位置では 20ppm を超える値であった。ホットトップ開始時に Fe-S を添加し たことによる影響で増加したものと考えられる。ホットトッ プ開始以前の領域では 20ppm 以下と旧 100tonESR で製 造した 1,850mmESR 鋼塊と同等の O レベルであり内部品 質に悪影響はないと考えられる。

図 11 に電極交換方式の ESR 鋼塊の C の軸方向分布を、

図 12 に O の軸方向分布を示す。軸心 C は電極交換前後 となる鋼塊底部から 1,145mm と 1,245mm の間で変動は見 られず、その後のホットトップまでの領域でもほぼ変動が見 られなかった。その他の元素についても電極交換部位を含 むホットトップ開始以前の領域では成分変動は認められず、

電極交換部位では健全な組成であることが確認された。鋼 塊底部から 1,845mm 位置の軸心では大きくC が増加して いたが、ホットトップ開始時のメタルプール底から約 90mm 上部の位置であり、ホットトップ開始時に Fe-W を添加し た影響であると考えられる。鋼塊底部から 2,145mm より上 部では軸心 C が高くなっていたが、これはホットトップで の成分濃化によるものと考えられる。O は電極交換前後で は大きな変動は見られず、電極交換による影響は確認され なかった。2 本目の電極は電極交換前に予熱されており表 面が酸化していたことが考えられるが、電極交換以降の O ピックアップに至るほどの酸化ではないと考えられる。ホッ トトップ開始時のメタルプール底から 10mm下部となる鋼塊 底部から 1,745mm 位置およびメタルプール底から約 90mm 上部の 1,845mm 位置では Fe-W 添加の影響と思われる酸 素の増加が認められた。その後、O 濃度は低下したものの 鋼塊底部から 2,345mm より上部ではホットトップによる成 分濃化と考えられる O の上昇が認められた。

図 11 電極交換方式 ESR 鋼塊の軸方向 C 濃度分布

図 12 電極交換方式 ESR 鋼塊の軸方向 O 濃度分布

図 14 鋼塊軸心のデンドライト二次アーム間隔および冷却速度 図 13 鋼塊径方向の冷却速度

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5.3 デンドライト二次アーム間隔測定と冷却速度 デンドライト二次アーム間隔を測定し、次式により冷却速 度を計算した(3)

       …(1)

ただし、εは冷却速度(℃ /min)、Sはデンドライト二 次アーム間隔(μm )、n と a は材質で決まる定数である。

図 13 に新 150tonESR で製造した単一電極方式 ESR 鋼塊 の径方向の冷却速度を示す。合わせて 140ton、180ton の VCD(Vacuum  Carbon  Deoxidation)鋼塊の径方向の冷 却速度を示す(3)。VCD 鋼塊に比べ単一電極方式 ESR 鋼 塊は冷却速度が大きく、凝固に伴う種々の偏析軽減に有利 であると結論付けられる。前述のように鋼塊内部は連続的 な凝固であり PT 欠陥が検出されていないことおよび成分 変動に問題がないことも考慮すると、新 150tonESR で製 造したφ 2,200mmESR 鋼塊の内部品質は良好であると考 えられる。図 14 に鋼塊軸心のデンドライト二次アーム間隔 および冷却速度を示す。単一電極方式 ESR の鋼塊軸心部 では鋼塊 Bottom から Top 側へ行くに従ってデンドライト 二次アーム間隔が大きくなり、冷却速度は遅くなっていた。

デンドライト二次アーム間隔および冷却速度は、ホットトッ プ開始時のプール底に該当する Bottom 〜 1,500mm まで

一定になっていないことから、本鋼塊は定常溶解域に達し ていなかったと考えられる。

電極交換方式の ESR 鋼塊では電極交換後に一時、デン ドライト二次アーム間隔が増加し、冷却速度は遅くなってい た。これは電極交換後に溶解が安定するまで電源出力を上 げており、一時的にメタルプールの温度が上昇し冷却速度 が遅くなったものと考えられる。この電極交換後のデンドラ イト二次アーム間隔および冷却速度の変動は早期に交換開 始前の状態に回復しており、電極交換による熱影響の範囲 はごく狭い領域に限られることが確認された。実製品では 鍛造、熱処理が施され、5.2 で述べたように成分の変動が 認められなかったことも考慮すると、電極交換部位は機械 的特性に影響しないものと推測される。デンドライト二次ア ーム間隔および冷却速度の変動が交換開始前の状態に回 復した後、大きな変動はなく推移した。このことから、5.1 で述べた電極交換方式 ESR のホットトップ域でのメタルプ ール深さが定常溶解域でのプール深さであると推測される。

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6. 結  言

150tonESR 装置およびφ 2,200mm のルツボを導入した ことから、これら設備を使用して単一電極方式および電極 交換方式の ESR を行い、製造した鋼塊の解体調査を行っ た。その結果、旧 100tonESR でルツボ径φ 1,850mm を 使用して製造した鋼塊と同程度の酸素レベルであり品質上 問題なく、低周波電源の影響は認められなかった。単一電 極方式の ESR 鋼塊では鋼塊ホットトップ域および鋼塊最 低部の領域を除き PT 欠陥は検出されず、電極交換方式の ESR 鋼塊でもホットトップ上部と Fe-W の影響域を除き健 全な内部品質であった。また、冷却速度は 140ton および 180ton の VCD 鋼塊と比較し ESR 鋼塊の冷却速度は大き く、凝固に伴う種々の偏析軽減に対する ESR の優位性が 認められた。更に、電極交換位置では成分の変動は認め られず、電極交換による熱影響の範囲はごく狭い範囲に限 られることから、実製品を製造する場合に機械的性質に影 響しないものと推測された。

近年、大型 ESR 鋼塊の製造数が増加しており、電極交 換方式 ESR など操業条件の更なる最適化が急務となって いる。今回の大型鋼塊の試作と解体調査の知見を基に品 質向上および生産性向上とコスト低減を追及し顧客満足が 高い鋼塊を製造していく所存である。

参 考 文 献

(1)柏木佑介:日本製鋼所技報、第 63 号(2012)、P.54

(2)Alok Choudhury:Proc 6th Int Vac Metall Conf Spec     Melting(1979)、P.785

(3)浅野岩生:鉄と鋼、Vol.81(1995)、T16

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