(a)
岩手県南部(b)
宮城県北部(c)
宮城県南部図 3.27 東北沖 にお ける津波波形 の検証
-10.0 -8.0 -6.0 -4.0 -2.0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0
2011/03/11 14:00 2011/03/11 16:00 2011/03/11 18:00
Tsunami height(m)
date
3.4.2.
市街地における津波 浸水シミュレーション の結果図 3.28~図 3.30 に本解析結果 より得ら れ た各ケース の 浸水プ ロ セスを示 す.いずれの ケースに おいても, こ れらの結 果より 津波発 生後
40
分程度(3 月11
日15
時26
時 ご ろ)で沿岸に到 達,そ の2
分後に は遡上浸 水 しているこ とがわかる .各ケー ス における遡上 プロセス については ,粗度モ デ ルが,海岸 から並行して 遡上して いくのに対し て,震災 前の建物を地 形で考慮 したケース 2では,海 岸と河川 か ら街路を通じ て遡上し ていくことが わかった .また,震 災 後 の 建 物 を 地 形 と し た ケ ー ス 3 で は ケ ー ス 1 と ケ ー ス 2 の 中 間 的 な 遡 上 結 果となってい る.ま た ,各ケース の遡上中 の 水位を比較し てみると ,ケース1 では,遡上に ともない 背後が高くな る傾向に あるが,建物 モデルで は沿岸部で 高くなるが,背後地で は沿岸より大 きくなら ない傾向が得 られた.この結果 の 妥当性につい ては,最 大津波水位の 平面分布 と痕跡値の比 較で後述 する.計 算 開 始40分 後 計 算 開 始42分 後 計 算 開 始44分 後 計 算 開 始46分 後
計 算 開 始48分 後 計 算 開 始50分 後 計 算 開 始52分 後 計 算 開 始54分 後
計 算 開 始56分 後 計 算 開 始58分 後 計 算 開 始60分 後 計 算 開 始62分 後 図 3.28 浸水プ ロセ ス(ケース1 :粗度モ デル)
水 位
(m)
計 算 開 始40分 後 計 算 開 始42分 後 計 算 開 始44分 後 計 算 開 始46分 後
計 算 開 始48分 後 計 算 開 始50分 後 計 算 開 始52分 後 計 算 開 始54分 後
計 算 開 始56分 後 計 算 開 始58分 後 計 算 開 始60分 後 計 算 開 始62分 後 図 3.29 浸水プ ロセ ス(ケー ス
2
:震災前 の建物 を地物 化 )水 位
(m)
計 算 開 始40分 後 計 算 開 始42分 後 計 算 開 始44分 後 計 算 開 始46分 後
計 算 開 始48分 後 計 算 開 始50分 後 計 算 開 始52分 後 計 算 開 始54分 後
計 算 開 始56分 後 計 算 開 始58分 後 計 算 開 始60分 後 計 算 開 始62分 後 図 3.30 浸水プ ロセ ス(ケー ス 3:震災後 の建物を地物 化)
水 位
(m)
図 3.31に本解析結果 より得られた ケー ス
1, 2, 3
の最大津波水 位 の平面分 布を示す.ま た,図 3.32 および図 3.33 に痕跡と計算水 位の比較 箇所とその 結果を示す. なお,沿 岸部における 痕跡値 は6m~9m
とバラツ キが あるが,沿岸部に実際 に来襲 し た津波 水位は 下限値で ある
5m~ 7m
程度で あり,建物 前面で生じた せり上が りにより,局所 的に大 きな値(8m~9m)が痕跡値とし て記 録さ れ た と 考 え ら れる . 本 検討 では ,細 かい 格子 幅 (2m) で 建物 を地形(ケース
2,3)として 扱っている た め市街地 スケールにお ける建物 の せり上が
りは考慮され るが,こ のような局所 的なせり 上がりまでは 再現 は困 難で あると 考えている .そのた め ,沿岸部の 痕跡値で は なく,来襲 した津波 水 位を再現で きていれば再 現性が高 いと判断した .
本解析結果よ り,抵抗 則(マニ ングの粗 度係 数)で建 物の影響 を考 慮したケー ス
1
では,建 物によ るせり上がり を考慮で きないため, 市街地全 体で水位が フラットとな っており ,沿岸部では 過小評価 ,背後地では 過大評価 となること が確認された .また, 震災前の全建 物を考慮 したケース2
では, 沿岸域周辺 で建物によ るせき上 げ の影響で水 位上昇が 生 じ,痕跡値 の再現性 が やや高い.しかしながら ,沿岸か ら離れた背後 地では,建物の抵抗の 影響が大 きくなるた め,水位が 過少評価 と なる.一方 ,震災 後の 残存した建物 のみを考 慮したケー ス
3
では ,ケー ス2
と比較して沿 岸部での 水位上昇が劣 るものの ,背後地で は,ケー ス1
とケ ー ス2
の中 間的な 結 果 とな っている ことが確 認された.ま た,図中には ,津波痕 跡高と計算値 の空間的 な適合度を示 す指 標 36)であ るK
およびκ
も 合わせて 示 しているが ,一般的 にK , κ
は0.95 < K < 1.05, κ < 1.45
であると計算 値が津波 痕跡高とよく 対応して いることを表 しており ,K
が1.0
に近いほど ,κの値 が 小さいほど再 現性は高 い.これら の結果か ら ,いずれの ケ ー ス も κ の 条 件 は 満 た し て い る も の の ,K
を 満 足 さ せ て い る の は ケ ー ス3
のみである. このこと からも ,全体 的な再現 率はケース3
が最も 高いことが わかる.しか しながら ,沿岸部だ け に着目す るとケー ス3
はケ ー ス2
より 過 少評価してい ることか ら,ケー ス2,ケ ース 3
の中間的な 条件で計 算をする必 要があると考 えられる .以上のことか ら,正 確 な津波浸水・被害予 測 には建物の形 状を考慮 し,さら に建物の倒壊 を考慮す る必要がある と考えら れる.
(a)
ケース1
:粗 度モ デル(b)
ケース2:震 災前 の建物
(c)
ケース3:震災 後 の建物
図 3.31 各ケー スの 最大津波水位 の平面分 布結果 の比較
■:Building
■:Building
-2.0 7.0
6.0
5.0
4.0
3.0 8.0
2.0
1.0
0.0
-1.0 Water Level (m)
図 3.32 気仙沼 市街 地における痕 跡比較箇 所
図 3.33 痕跡水 位と 計算水位の比 較結果
出典:東北地方太平洋沖地震津波情報,http://www.coastal.jp/ttjt/
0 2 4 6 8 10 12 14
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
water Level(m)
Distance form coast(m)
Cal Measured Case1:K=0.93, κ=1.37
沿岸部 背後地
0 2 4 6 8 10 12 14
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
water Level(m)
Distance from coast(m)
Cal Measured Case2:K=1.18, κ=1.33
沿岸部 背後地
0 2 4 6 8 10 12 14
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
water Level(m)
Dsitance from coast(m)
Cal Measured Case3:K=1.01, κ=1.27
沿岸部 背後地
3.5. 本章のまとめ
本章では,従来の津 波 浸水シミュレ ーション(粗度モデ ル)に よっ て気仙沼 市街地におけ る再現計 算を実施した .また,建物を地形と して取扱 った場合に ついて再現性 と各ケー スの違いにつ いて検討 した.その結 果,いず れのケース においても浸 水範囲は 概ね一致して いるもの の,遡上中や最 大津波 高の平面的 な分布が異な る傾向を 示すことを明 らかにし た.
痕跡値と比較 した結果 ,痕跡値が沿岸 から背 後地にかけて 小さくな るのに対 して,従 来手法の 粗度 モデル( ケース1 )で は,沿岸 から背後 にか けてほぼフ ラットとなり,また若 干ではあるが 沿岸より 背後の方が津 波高が大 きくなるな ど,実績 とは異な る傾 向を示した .一方 ,建 物を地形とし て取扱っ た場合,沿 岸 か ら 背 後 地 に か け て 水 位 が 小 さ く な る と い う 傾 向 は 実 績 値 と 良 好 に 一 致 し た.しかし ながら ,震 災前の建物条 件だ と ,沿岸域におけ る抵抗が 大きすぎる ため,背後地 を過少評 価し,震災後 の建物条 件だと背後地 は良好に 再現できる が,沿岸域で より過少 評価となる.
これらの結果 から,建 物の影響を動 的に扱う ことでより精 度の高い 津波浸水 シミュレーシ ョン予測 ができると考 えられる .建物倒壊を考 慮した 津波浸水モ デルの検討を 次章で行 う.