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数値計算上における建物倒壊の取り扱い方法

ドキュメント内 著者 小園 裕司 (ページ 106-118)

第4章 建物倒壊を考慮した津波解析モデルの検討

4.3. 建物倒壊を考慮した津波シミュレーションの実施

4.3.1. 数値計算上における建物倒壊の取り扱い方法

建物倒壊後の メッシュ の境界から前 後3メッ シュの範囲を 対象に 平 滑化すれ ば安定して計 算 できる ことが 明らか になった .図 4.9に平滑化処理 を考慮し た計算の概念 ・ 手順を 示す.青枠内 は倒壊直 後,緑枠が平 滑化処理 中,赤枠 内が最終的な 水面形を 示している. 平滑化の 処理方法は建 物メッシ ュの境界 から前後

3

メッシュを 対象に隣接す るメッシ ュ同士の全水 深の平均 値を与え ている(緑枠 の処理 ).さらに上記 の処理( 緑枠内の処理 )を

3

回繰り返す 事によって建 物倒壊後 のメッシュに 平滑化し た水位を与え ている. なお本手 法は ,

2m

メッシ ュで 検討 した もの であ り , 粗い メッ シュ 等に つ い ては 別途 検討する必要 がある. 一般的には, メッシュ サイズが大き くなるほ ど,同じ 水位であって も水面勾 配は小さくな る傾向に あるため平滑 化範囲は 小さくな るものと考え られる.

図 4.9 倒壊後の数値 計算上の処理 の概念

平滑化範囲 平滑化範囲

建物倒壊後の水面形

x z

津波高

地盤高

平滑化範囲 平滑化範囲

平滑化範囲内の隣接するメッシュ同士の全 水深の平均値を与える

x z

津波高

地盤高

平滑化範囲 平滑化範囲

x z

津波高

地盤高

平滑化範囲 平滑化範囲

倒壊建物メッシュと隣接するメッシュ間で平滑化

x 津波高

地盤高

上図と同様に平滑化範囲(建物倒壊メッ シュから3メッシュ)の全水深も平滑化処理

緑枠内の処理を3回ループして建物倒壊 メッシュ内の平滑化を行う

平滑化処理

平滑化処理後の水面形

4.3.2.

解析条件

表 4.3 に計算条件 一 覧を示す .基本的 には 再現計算と同 様である が,気 仙沼市鹿折地 区の 地形 条件は ,震災 前の建物 の形状を考慮 した地形 (3章 再現計算のケ ース2と 同様) とした .また, 建物の影響を 地形とし て表現 しているため ,粗度係 数について は

0.025

と した.

表 4.3 計算条件一覧

(

3章 の 再 現 計 算 と 同 様 の 条 件

)

項 目 条 件

計 算 手 法 基 礎 式 非 線 形 長 波 理 論 式

差 分 ス キ ー ム 【 空 間 差 分 】 ス タ ッ ガ ー ド 格 子 法

【 時 間 差 分 】 リ ー プ ・ フ ロ ッ グ 法

越 流 公 式 本 間 公 式

計 算 条 件 計 算 領 域 3章 の 再 現 計 算 と 同 様 の 条 件

計 算 格 子 間 隔 1350m→450m→150m→50m→10m→2m 計 算 領 域 数 Domain 1(1350mメ ッ シ ュ )

Domain 2(450mメ ッ シ ュ ) Domain 3(150mメ ッ シ ュ ) Domain 4(50mメ ッ シ ュ ) Domain 5(10mメ ッ シ ュ ) Domain 6(2mメ ッ シ ュ )

※ 震 災 前 (3 章 の 再 現 計 算 ケ ー ス 2 ) の 地 形 条 件

波 源( 断 層 )モ デ ル 藤 井 ・ 佐 竹 モ デ ル ver.8.0

初 期 潮 位 T.P.0.5m( 第 一 波 到 達 時 刻 の 天 文 潮 位 ) 粗 度 係 数 市 街 地 :0.025

そ の 他 の 土 地 利 用 形 態 :0.025~0.04 陸 域 境 界 Domain 1~4は 完 全 反 射

Domain 5~6は 遡 上 境 界 計 算 間 隔 dt=0.05s(CFL条 件 は 満 足 す る)

4.3.3.

検討ケース

建物倒壊を考 慮したシ ミュレーショ ンでは,今回対象とし ている気 仙沼市 は大部分が木 造家屋で 占められてい ることや ,震災前後の結 果間で 推定単位 幅あたりの波 力(77~126kN/m)にばらつきが あるため ,木造家 屋を 対象に複 数 の 倒 壊 条 件

(ケ ー ス 4-a

~4-f)を 設 定 し た(3 章 の 再 現 ケ ー ス と 区 別 する ためケ ース4 とす る

).ケー ス設定 にお いて は,上 下限に 幅を もた せ,50~

130kN/m

のうち,感度 分析も含め て

16kN/m

ずつ変化させた.建 物の倒壊・

流失を考慮し た場合に 用いた建物の 倒壊・流 失条件を 表 4.4 に示す

4.4 建物倒壊を考 慮した計算ケ ース

ケース

建物倒壊の単位幅当たりの波力(kN/m)

RC 造 S 造 木造 その他

4-a

110 165

50

110

4-b 66

4-c 82

4-d 98

4-e 114

4-f 130

4.3.4.

シミュレーション結果

(1) 建物倒壊予測

図 4.10 に本解析結果 より得られた ケース

-a~ f

における木造建 物 の倒壊ま た は 残 存し た 建 物 の 再 現 率

(=(倒 壊 ま た は 残 存 が 計 算と 実 績 で 一 致 し た 建 物 の

数)/対象とした建 物数 ×100)を示す.こ れら の結果から, ケース

4-a,b

の順 で再現率が向 上し,し きい値を

82kN/m

に したケー ス

4-c

が最も 良好な結果を 示した.そ れ以降に つ いては,シ ミュレー シ ョンの倒壊率 が上がる ため,再現 率は低下する 傾向が見 られた .

図 4.10 各ケー スの 建物倒壊 およ び残存 再 現率

図 4.11に 本解析結果 より得られた 各ケース の倒壊・流失 および残 存した建 物の平面分布 の比較を 示す.また,実 績と計 算の相関分布 の結果も 合わせて 示 す.これら の結果か ら いずれのケ ースも 建 物 倒壊 は同様 の傾向を 示 しており,

沿岸域で倒壊 が大きく なり,木造家 屋の倒壊 条件を倒壊し にくい条 件( ケース

4-a

からケース

4-f)になるに従い 背後地の 残存が増えて いること が確認でき

る.また,各ケース の 計算結果と実 績の相関 値は再現率と 同様に,ケース

4-a,

b,c

の順で相関が 高 くなり ,それ 以上は相 関値が下がる 結果とな った.

82.8

84.0

86.0

85.2

83.3

78.7

76 78 80 82 84 86 88 90

case4-a (50kN/m)

case4-b (66kN/m)

case4-c (82kN/m)

case4-d (98kN/m)

case4-e

114kN/m

case4-f

130kN/m

matching ratio of washed away(%)

CaseNo.

(threshold of wooden building)

(a) case4-a (b) case4-b (c) case4-c

(d) case4-d (e) case4-e (f) case4-f

各ケースの相関値

case4-a case4-b case4-c 0.62 0.64 0.67 case4-d case4-e case4-f

0.65 0.63 0.58

(g)実績

図 4.11 建物倒壊予測 結果( 上 2 段 :計算, 下段:実績 )

倒壊・流失 残存

【凡例】 倒壊区分

計算(Case4-a)

倒壊・流失 残存

【凡例】 倒壊区分

計算(Case4-b

倒壊・流失 残存

【凡例】 倒壊区分

計算(Case4-c)

倒壊・流失 残存

【凡例】 倒壊区分

計算(Case4-d)

倒壊・流失 残存

【凡例】 倒壊区分

計算(Case4-e)

倒壊・流失 残存

【凡例】 倒壊区分

計算(Case4-f)

倒壊・流失 残存

【凡例】 倒壊区分

実績

次に,図 4.12 に示す 地区区分ごと に相関係 数の算定を行 った .地 区区分は 気仙沼市の横 断する鹿 折川と ,鹿折 地区を横 断する国道で 境界とな る

4

区分 とした.地 区区分ご と の相関係数 を表 4.5 に示す.表 中は相関 が 高いケース に青色を低い ケースを 赤色で着色し ている.これらの結果 より,地 区1ではい づれのケース もほとん ど変わらず,地区

2

で はケース

4-c

が高い.しかしなが ら,背後地の 地 区

3,4

では倒壊条件 によって 相関が極端に 低下する 等の傾向が 確認された .また,地 区

4

では

case4-d

が 最 も高く ,地 区ごとに 分 析すると良 好に再現でき る倒壊条 件は異なるこ とが確認 された.

図 4.12 相関係 数算 出用の地区区 分

表 4.5 地区ごとの相 関係数

case4-a case4-b case4-c case4-d case4-e case4-f

地 区 1 0.56 0.56 0.56 0.57 0.56 0.53

地 区 2 0.68 0.67 0.77 0.69 0.67 0.61

地 区 3 0.59 0.62 0.63 0.58 0.37 0.16

地 区 4 0.29 0.40 0.50 0.52 0.32 0.25

地区 4

地区 2 地区 1

地区 3

本検討で は,建物の倒 壊被害につい て 検討を 行い 建物の残 存・倒壊 率で 評 価を行った. その結果 ,木造家屋の 倒壊しき い値 を

82kN/m

とすることで

86%の再現率 を示し ,相関も高いケ ースとな った.た だし ,地区ご とに分析

した結果,沿 岸部と背 後地で相関が 逆転する などが確認さ れた.

(2) 浸水プロセス および 痕 跡水位の比較

図 4.13に,本解析 よ り得られた 最 大津波水 位の平面分布 の結果を 示す.3 章で実施した 再現計算 の結果もあわ せて示す .建物倒壊を考 慮した 津波浸水予 測モデルの結 果は,建 物を震災前後 の地形と したケー ス

2,3

と中間的な結果と なっているこ とが確認 された.建物 倒壊を考 慮することで ,沿岸お よび背後地 のどちらかに 水位分布 が偏ることが なくなっ ている.

また,図

4.14

に計算 水位と痕跡水 位の比較 した結果を示 す.こち らも従来

手法による再 現計算結 果をあわせて 示す.建 物を考慮した 計算結果 は,最大津 波水位と比較 して同様 の傾向となっ ており, ケース

2

3

の中間 的な結果と なっている. ただし, ケース

2

より も沿岸 では過少評価 となって おり,再現 性 の 向 上 に は 建 物 倒 壊 の 条 件 や 災 害 が れ き の 影 響 等 を 考 慮 す る 必 要 が あ る と 考えられる.

(a)

ケース1(粗度 モ デル)

倒壊なし

(b)

ケース2:震 災前 の地形 倒壊なし

(c)

ケース3: 震災 後 の地形 倒壊なし

(d)

ケース4

-c:震災 前の地形

倒壊有り

図 4.13 各ケー スの 最大津波水位 の比較

■:Building

-2.0 7.0

6.0

5.0

4.0

3.0 8.0

2.0

1.0

0.0

-1.0 Water Level (m)

■:Building ■:Building

(a)

従来手法

(b)

震災前の地形 ,倒 壊なし

(c)

震災後の地形, 倒 壊なし

(d)震災前の地 形,倒 壊あり(本解 析結果)

図 4.14 痕跡水 位と 計算水位の比 較 0

2 4 6 8 10 12 14

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

water Level(m)

Distance form coast(m)

Cal Measured Case1:K=0.93, κ=1.37

沿岸部 背後地

0 2 4 6 8 10 12 14

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

water Level(m)

Distance from coast(m)

Cal Measured Case2:K=1.18, κ=1.33

沿岸部 背後地

0 2 4 6 8 10 12 14

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

water Level(m)

Dsitance from coast(m)

Cal Measured Case3:K=1.01, κ=1.27

沿岸部 背後地

0 2 4 6 8 10 12 14

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

waterLevel(m)

Distance from coast(m)

Cal Measured Case4-c:K=1.00, κ=1.27

沿岸部 背後地

ドキュメント内 著者 小園 裕司 (ページ 106-118)