第2章 東北地方太平洋沖地震津波の概要と被害状況の整理
2.2. 検討対象地域(気仙沼市鹿折地区)の被災概要
2.2.1.
津波被害 の概要本節では,甚大 な浸水 被害が生じた 気仙沼市 鹿折地区の津 波痕跡水 位と浸 水範囲につい て整理を 行った.地震発 生から 津波浸水 の時 系列につ いても 整 理した.
図 2.6 は国 土 地理 院 が公 表し てい る 浸水 図 にな る. この 公 表資 料 に基づ き本研究で 算 定した鹿 折地区の浸水 面積は ,
1.23km
(気 仙沼市全 体 で218.65 km
2)であり平地部 に おけるほとん どの市街 地で浸水被害 が生じて いる.
図
2.6 気仙沼市鹿折 地区の 浸水範 囲
16 )図 2.7は津波合同調 査(
2011
)16)より整理 した気仙沼市 鹿折地区 における痕 跡水位となる .痕跡津 波は平均で 約T.P.+ 6.2m,最大で T.P.+ 9.4m(地点 2)
であったこと が確認さ れた.また, これらの 結果から ,津 波高 は沿 岸ほど高く 内陸ほど津波 痕跡値が 小さくなる傾 向が確認 できる.
対象地域:気仙沼市鹿折地区
図
2.7 気仙沼市鹿折 地区の痕跡津 波高
津波来襲状況 について は,気仙沼市に 設置し ているライブ 映像を基 に作成し た資料 19)が気仙 沼市 で取りまとめ ている .表 2.2は地震発生 後 から津波来襲 , 来襲後の被害 状況に整 理されている .この結 果から,地震 発生後
41
分までは 魚町2
丁目 周辺(地 点A)で引波が 確認で き,ほぼ同時刻 の地震 発生後 43
分 で魚市場(B 地点 )に 津波の第一波 が来襲し ,陸上遡 上が開始 し52
分後には 魚町(C地点)で 浸水 被害が発生し ていた.これらの結果 を踏まえ ると,鹿折 地区では,地震発生 か ら40
分程度で は周辺 で引波が発生 しており ,その後40
分から50
分に かけて 陸上遡上が開 始したと 考えられる.8.47 9.40 6.92 7.52 7.64 9.25 6.90 7.26 8.07 6.59 8.03 8.76 6.40 6.79 6.37 4.11 4.58 5.02 5.12 5.24 5.23 5.41 5.52 5.61 5.57 5.80 5.76 5.87 5.82 5.86 5.85 6.05 6.11 6.29 6.29 6.39 6.80 7.08 7.12 7.36 3.63 4.07 4.76 1.37 3.95
0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 1
3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45
痕跡水位(m)
測量地点
痕跡水位(m)
沿岸から背後にかけて津波高が減少
表 2.2 地震発生から 津波到達まで の時系 列 19)
15
時27
分(地震発生 から41
分後) 引波が確認さ れる(地 点A)
15
時29
分(地震発生 から43
分後) 第一波到達( 地点B)
15
時38
分(地震発生 から52
分後) 陸上遡上(地 点B)
15
時38
分(地震発生 から52
分後) 陸上で浸水被 害(地 点C)
15
時43
分(地震発生 から57
分後) 陸上で浸水被 害(地 点D)
地点の詳細
地 点A
地 点B 地 点C
地 点D
2.2.2.
建物の被災状況気仙沼市鹿折 地区の平 地部では,ほ とんど浸 水被害が発生 し,建物 も損傷 を受けた .図
2.8
に気仙沼市鹿折地 区の建物 の構造種別 と 被災区分 を示す.なお,データ は国土交 通省都市 局 7)より提 供 頂いたものと なる.
また,表
2.3
と図2.9
に気仙沼市鹿 折地区 の構造種別ご との被災 区分数を示す.こ の結果か ら ,気仙沼市 では大部 分 が木造家屋で あり
RC
造やS
造 の割合は少な い .また ,木造家 屋の大部 分が 全壊(流 失)している のに対し て,RC造 やS
造は 全 壊(流失 )に 至ったも のは少ない こ とがわか った.こ の結果から,当然のこ とながら,木 造と比較 して鉄骨造や コンクリ ート造が 津波に対して ある程度 の耐力を保有 し,津波 来襲時におい ても抵抗 となった こと,また逆 に,流出 した木造住宅 はほとん ど流れの抵抗 にならな かったこ とが考えられ る.本研究は,建 物被害区 分を残存と流 出で再区 分を行った.再区分を 行った 図を図
2.10
に示す.図 2.8 気仙沼市鹿折 地区の建物構 造と被災 区分
RC造 S造 木造 その他
【凡例】 構造種別
全壊(流失)
全壊 全壊(一階浸水)
大規模半壊 半壊 一部損壊 被災なし
【凡例】 被災区分
表 2.3 構造種別ごと の被災区分数 被災家屋数 鉄筋コンク
リート造
鉄骨造 木造 その他
被災なし
0 0 0 74
一部損壊
0 0 10 11
半壊
1 0 37 27
大規模半壊
12 3 123 36
全壊(1階 浸水)
10 10 13 40
全壊
8 4 279 75
全壊(流出)
0 1 1152 176
図 2.9 気仙沼市鹿折 地区の構造種 別と被災 区分数 0
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800
RC S W other
Number of structures
structure classification 全壊(流出)
全壊
全壊(一階浸水)
大規模半壊 半壊 一部損壊 被災なし
図 2.10 建物被 害の 再区分
全壊(流失)
全壊
全壊(一階浸水)
大規模半壊 半壊 一部損壊 被災なし
【凡例】 被災区分
倒壊・流失 残存
【凡例】 倒壊区分
2.2.3.
漂流物被害東北地方太平 洋沖地震 津波によって ,多 くの 車両や船舶が 漂流した .図 2.11 は気仙沼市鹿 折地区の 内陸に打ち上 げられた 漁船・大型船 舶である .港湾空港 技術研究所の 研究チー ムの報告によ れば「波 が到達したよ り高い場 所でも建物 が大きく損 壊してお り 、船舶など の漂流物 に よって破壊 されたと 予 想される」
との報告事例 もあるこ とから,津波 被害を想 定する際には ,漂流物 の影響を考 慮することは 重要であ ると考えられ る.し か しながら,津波によ る ,浸水被害 や火災等の被 災状況は 整理されてい るものの ,漂流物の 軌跡・集積 箇所,衝突 被害などの報 告事例は 少ない.
図 2.11 気仙沼 市街 地に漂着した 大型船 舶 20)
そこで本研究 では震災 後の空中写真 の判読に より,比較的重 量があ り衝突時 に建物やイン フラに損 傷させる可能 性がある 車,船舶等の漂 流物の 最終漂着位
置を整理 した. 空中写 真は 国土 交通省 国土地 理院応用 地理部 21)撮 影時期が 震 災直後(平成
23
年3
月13
日)のもの を用 いた.図2.12
に空中 写真より整理 した車両・船舶の最 終 漂着位置を示 す.ま た ,図中には 浸水範囲 を 赤線で示し ている.こ の結果か ら ,船舶は鹿 折川や ,鹿 折地区の魚町 周辺に集 積している こと,車両に ついては ,津波先端部 で集積し ている傾向が 確認され た.図 2.12 空中判 読よ り整理した車 両・船舶 の最終位置
Cars Ships Final positon
2.2.4.
災害がれきの発生状況気仙沼市では,沿岸部 の住宅や工場 などが津 波による直接 浸水被害 に加えて , 海 洋 に 流 出 し た 重 油 や 散 乱 し た が れ き に 引 火 す る こ と で 火 災 に よ る 被 害 も 発 生した.また ,市街地 に 散乱した災害 がれきは ,早期の 救助や復 旧の 妨げになっ た.
図 2.13 に宮城県で公 表されている ,気仙沼 市街地で発生 したと算 定された 災害がれきの 構成と総 量を示したも のである .災害が れきの内 訳は ,可燃物( 木 くず,廃プラス チック ,紙等)や不燃物(コ ンクリートが ら,金属 くず等)が 混 ざ っ た 混 合 廃 棄 物 と , 津 波 に よ っ て 海 底 か ら 打 ち 上 げ ら れ た 土 砂 が 主 体 と なっている .総計は 気 仙沼市全体 で
172
万 トンとされて おり,鹿 折地区では,浸水面積割合 で計算す ると,11.3 万トン (
172×1.23km
2/18.65 km
2)発生し ている事にな る.図 2.13 気仙沼 市に おける災害が れきの発 生状況 2 2)
次に,鹿折地区 におけ る災害がれき の集積状 況を航空測量 データよ り算定を 試みた.図 2.14は,震災前の航空 測量デー タ(地盤高デ ータ)と ,震災後の 航空測量デ ータ(が れ きの集積し た高さを 含 む)の差分 を示した も のである.
図中には,残存した 建 物の形状も合 わせて示 している.また,これ らの結果を
参考にがれき の集積度 合いを区分わ けした結 果を 図
2.15
に示す( レベル0
で 集積なし,レベ ル1
で10~ 30%程度の軽 微な集積,レベ ル 2
で50%前後の集
積,レベ ル3
で大 部分 が集積).この 結果か ら,気仙 沼市街地 の鹿 折地区にお ける災害がれ きの集積 は,地区全体 的に集積 しているもの の,津波 先端部や残 存した建物の 背後に集 積している傾 向が確認 できる.津波先端部に おける集 積は,津波の押 し波に よりがれきが 先端部に 運ばれ集 積したと考え られる .また,建物 の背 後地 に ついては,津波の引 波 時に残存し た 建 物 が 引 波 の 阻 害 と な る こ と で 災 害 が れ き が 集 積 し や す く な っ た の で は な いかと考えら れる.
図 2.14 気仙沼 市街 地における災 害がれき の発生状況
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 DSM difference before and after (m)
図 2.15 気仙沼 市街 地における災 害がれき の発生状況( レベル区 分)
level 0 level 1 level 2 level 3 Quantity of disaster debris