第4章 建物倒壊を考慮した津波解析モデルの検討
4.1. 建物倒壊を考慮した津波解析モデルの構築
因する動圧も 考慮する 必要がある.
本研究では ,建物に 作 用する波力 を倒壊の し きい値と し て設定す る .また,
倒壊に至った しきい値 については,3 章で実 施した再現計 算の結果 から建物に 作用した波力 を整理し ,推定作用波 力と被害 率について整 理を行い ,構造種別 毎に建物倒壊 に 至る波 力を整理した .
4.1.2.
建物に作用する波力算定式の選定建物倒壊の判 定を行う にしきい値の 設定を行 う必要がある.建物の 倒壊基準 として,国土交通 省都 市局「東 日本大震 災に よる被災現況 調査結果 について(第
2
次報告)」では,2011年東北地方 太平洋沖 地震津波によ って被災 した建物と 浸水深の関係 を整理し ている (下図 参照 ).図 4.1 建物被害と浸 水深の関係 (国土 交通 省都市局、 2011)7)
浸水深と建物 被害の関 係を整理した 報告例は 多くあるが,建 物に作 用する力 , すなわち流体 力は,浸 水深に基づく 静水圧の みならず,流 速に基づ く動圧も考
慮するべきで ある.し かしながら,実際のと ころ津波来襲 時に流速 が観測され た事例は極め て少なく 浸水深・流速 と建物被 害を関係づけ ることは 難しい.そ こで本研究で は,数値 計算 から得ら れる 浸水 深と流速 から 波力を算 定し,建物 被害と波力の 関係の整 理を行うこと とした.
波圧算定式に ついては ,これまでの 多くの 手 法が提案され てきてい るが,対 象と する 構造 物の 違 い や, 用い る津 波諸 量 に よっ て異 なる . 表
4.1
にこれ ま で代表的な 津波波圧 算 定式を示す .代表的 な 式として, 進行波( 構 造物なし)を対 象と した 朝倉ら 4 0)の 算定 式が 挙げ られ るが ,同 式は 浸水 深に 水深 係数を 乗じた形で静 水圧を算 定する式とな っている .水深係数は,実験で 複数のケー スを実施し浸 水深と最 大波圧の包絡 線から決 定している.すなわち ,いかなる 流速の場合で も,ある 浸水深におけ る最大波 圧を算定する 式となる .そのた め,
流速がほとん どない場 合は ,生じる 力は静水 圧のみとなり ,朝倉ら の式は過大 評価となりや すい.
実際の津波 波力 は, 浸 水深におけ る静水圧 と 流速に起因 する動圧 か らなる.
動圧として評 価できる ようにするた め 近年で は,浸水深のみ ならず 流速にも着 目した波圧算 定式(有 光ら 41),高畠・ 木原 ら 42))が提案さ れて きている.
表 4.1 代表的な波力 算定式の概要
波 圧 式 対 象 構 造 物
算 定 に 用 い る 水 理 諸 量
陸 上 構 造 物 の 有 無
備 考
朝 倉 ら(2000) 40) 2次 元 構 造 物 最 大 浸 水 深 無 し ソ リ ト ン 分 裂 考 慮
飯 塚 ・ 松 富(2000) 3次 元 構 造 物 浸 水 深 有 り
Asakura et al.
(2002)
2 次 元 ・3 次 元 構 造 物
最 大 浸 水 深 ・ 流 速
無 し
内 閣 府(2005) 3次 元 構 造 物 最 大 浸 水 深 無 し
榊 山(2012) 2次 元 構 造 物 最 大 浸 水 深 ・ 流 速
無 し
有 光 ら(2012) 41) 2 次 元 ・3 次 元 構 造 物
浸 水 深 ・ 流 速 の 経 時 変 化
有 り
国 交 省(2012) 3次 元 構 造 物 最 大 浸 水 深 無 し
高 畠 ・ 木 原 ら (2013) 42)
3次 元 構 造 物 浸 水 深 ・ 流 速 の 経 時 変 化
有 り
本研究では ,建物(構 造物)を 配置した 状態 で波力を算定 すること から,波 力 算定 式 と して 高 畠 ・ 木 原ら
(2013)
42)の 式 を 採用 し た .式(4.1), 式 (4.2)に 算
定式を示す .同式は ,流入境界から 構造物前 面までの区間 で,比 エ ネルギーが 保存されると 仮定して ,ベルヌーイ の式か ら 導出されたも のとなる .p
i= ρg(α
iℎ𝑖𝑛𝑢𝑛- z
b) (4.1)
α
i=1+ 1
2 Fr
i2(4.2)
ここで,pi:津波に よる 任意の高さに おける 波 圧
(N/m
2), h
inun:浸水深 (m), z
b:
地盤高からの 高さ(m)となる.同式は建築 物の任 意の 高さにおけ る 波圧 算定 式のため, 地盤高 面
(z
b=0)から
波 圧 作 用 高 さ (z
b=α
ih
inun) ま で 鉛 直 方 向 に 積 分 を 行 い 単 位 幅 当 た り の 式(4.3)
として結果を 整理した .f
p= 1
2 ρgh
inun2(1+Fr
2
+1/4Fr
4) (4.3)
ここで,
f
p:単位幅あた りの波力(N/m), ρ
:水の 密度(kg/m
3), g
:重力加 速度(m/s2),
h
inun:浸水深(m),F
r:フルード数で ある.既往の研究に おける 波 力算定式は, 通過波を 対象としたも のが多 い .しかし ながら先述し た通り,高畠・木原ら 42)の 式 は建物を配置 した状態 で適用するこ とが可能であ る. ただ し適用条件と して ,建 物による 反射 の影響が 小さい上流 側の浸水深と 流速を 用 いる必要があ る .高畠 ・木原らの報 告による と浸水深の
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倍程度上流 側の浸水 深と流速を用 いれば, 建物による反 射の影響 が小さく,精度よく波力 を算定で きると示して いる.そ こで本研究で は,対象 とする気仙 沼市に来襲し た津波高 さ(浸水深:数
m)や市街地におけ る計算メ ッシュ幅 2m
を考慮して ,建物か ら3~5
メッシ ュ程度 上流側で波力 の算定を 行った.図4.2
は波力算定位 置の一例 を示したもの である. ただし実際に は,沿岸 域周辺の建 物では適用可 能である ものの,背後 地の建物 が密集する地 点では建 物の反射の 影響は避ける ことがで きない.今後 ,背後地 の波力算定方 法につい ては3
次元 計算で直接算 定するな どの検討が必 要である と考えられる .図 4.2 波力算定位置 の一例
【凡例】
建物メッシュ 建物の線形