第5章 災害がれき移動被害予測モデルの検討
5.2. 災害がれきの諸元の取り扱い方法
図 5.4 流速と移動形 態の概念図
表
5.1 がれき諸量・ 水理諸量の 状 態別にお ける移動形態 の模式図
パ タ ー ン 状 態 図 条 件 1
( 浸 水 有 無 )
条 件2
( 水 の 密 度 と が れ き の 密 度 )
条 件3
( 喫 水 深 と 浸 水 深 )
条 件4
( 流 体 力 と 抗 力 ) 移 動 形 態
0
浸水なし - - - 移動なし
1
浸水あり 水 の 密 度 > が れ きの密度
浸水深>喫水 深 漂 流 中 の 摩 擦 等 の抗力なし
漂流移動
2
喫水深>浸水 深
※ 浸 水 深 に 応 じ て浮力が作用
津 波 流 体 力 > 摩 擦力,重力
底面移動
3
摩 擦 力 , 重 力 > 津波流体力
移動なし
4 が れ き の 密 度 >
水の密度
喫水深なし
※ 浸 水 深 に 応 じ て浮力が作用
津 波 流 体 力 > 摩 擦力,重力
底面移動
5
摩 擦 力 , 重 力 > 津波流体力
移動なし 津波
がれき
津波
がれき
喫水深
がれき
喫水深 流
体 力
摩擦等の抵抗力
がれき
摩擦等の抵抗力
流 体 力
従 来 の 漂 流 計 算 お よ び 津 波 石 移 動 計 算 な ど の 移 動 予 測 計 算 で は , 面 積 ・ 体 積・密度は没水 状態あ るいは完全水 没状態の 仮定に基づき 一定値と して取り扱 われる.例えば漂 流移 動計算では ,あら かじ め漂流物の喫 水深を算 定しておき , 没水部分にお ける面積 や体積から流 体力の計 算を行ってい る 8), 10).また,底 面 移 動 の み を 扱 っ た 津 波 石 移 動 モ デ ル で は 物 体 が 完 全 水 没 し た 状 態 を 仮 定 し 流体力 の計 算を行 って いる 11).ただ し, 津 波の非 定常 な現象 を完 全に取 扱っ ているわけで はない.先に示した通 り水理条 件や災害がれ きの密度 等の条件に よっては様々 な移動形 態を示す.例 えば,災 害がれきの密 度が水の 密度より小 さい場合かつ 浸水深が 喫水深より小 さい場合 において,底面 摩擦や 重力が流体 力を上回れば 移動しな い(図
5.5,表 5.2
のパ ターン3
の状態)こと が考えられ
る.浸水深が 増大すれ ば浮力が大き くなり,底面摩擦や重 力の影響 が次第に小 さくなり底面 移動が生 じると考えら れる(図5.5,表 5.2
のパターン2
の状態).さらに浸水深 が増大し ,喫水深を上 回れば ,がれきは浮き 上がり漂 流移動とな
る(図
5.5,表 5.2
のパターン1
の状態 ).本研究では ,この様 な 災害がれき の複数の 移 動形態の包 括的な取 り 扱いや,
移動形態の連 続的な遷 移を取り扱う ため,が れきの面積・体積 は浸 水深や喫水 深に応じて作 用高さと した.また ,面積・体 積を浸水深に 応じて変 動させるに ともない見か けの密度 を導入した .見かけ の 密度は次式
(5.11)で算 定を行って
いる.ρ
deb=ρ
org(H/H
t)
(5.11)
ここで,ρorgは元のが れき の密度,H はが れきの 高さ,
Ht
はがれきに 作用す る浸水深ある いは喫水 深 を示す.表
5.2
は実際の移動状 態と計算上の 取り扱い の一例を示し たもので ある.図 中の左側が実 際の現象 における移動 状態を示 しており,右側 が計算 における各 移動状態にお けるがれ き諸元の取り 扱いの概 要を示してい る.水よ りも密度が 小さく,浸水深が 喫水 深 以上の場合(パ ター ン1
)は ,がれ きの津 波作用高さ は喫水深とな り,計 算 上の面積・体積は没 水 部分となる .この場 合 がれきの密度 は 水 の 密 度 と し て 取 り 扱 う (
ρ
deb=ρ). ま た , が れ き の 密 度 が 水 の 密 度 よ り
小さいかつ浸 水深が喫 水深に達して いない場 合(パターン2)
は,計 算上のがれ きの面積・体積は没 水 部分に応じた 値とする .さらに ,がれき 密度 が水の密度 より大きな場 合(パタ ーン4)
では,元 のが れきの高さを 上限値に 非水没・完全 水没状態にお ける津波 作用高さに応 じた面積・体 積を計算 上で取り 扱う.前述 した2つの底 面移動形 態(パター ン2,4)では,底面摩擦 力や重力 成分の影響
を考慮するが ,底 面摩 擦力や重力成 分の 式(5.2), (5.3)
は水と見か けの密度と の相対値で算 定してい る.すなわ ち,浸水 深 が増大す れば 式(5.11)によりがれ きの見かけの 密度が小 さくなり底面 摩擦力の 影響は小さく なる.こ れは物理的 には浮力を考 慮してい ることを示し ている.さららがれき の密度が 水の密度よ り小さいかつ 浸水深が 喫水深に達し ていない 場合(パターン 2)の場合,浸水深
が増大し喫水 深以上と なると式(5.2),式(5.3)は 0
となり底面 摩擦力 や重力成分 の影響はゼロ となり,漂流移動状態 を表現で きる.このよ うにがれ きの諸元で ある面積や体 積を変動 として取り扱 う事で,底面移動形態(喫水深 未満の浸水 深の場合)から漂流 移 動形態(喫 水深以上 の 浸水深の場 合 )を連 続 的に取り扱 うことを可能 としてい る.また ,同モデ ルで は,がれき の影響を 流 れの抵抗と しての相互 干渉を考 慮 して質量力 および抗 力 を流体の運 動方程式(3.2),(3.3)
に 付加している .𝑭𝑑
=
[Vdebdu
fdt +(C
M-1)V
deb(du
fdt - du
debdt
)+ 1
2 C
DA
deb(uf-u
deb)|uf-u
deb|]⁄dxdy
(5.12)
ここで,Fdは 流体に作用 するがれきの 抵抗 力を 示す.表 5.2 実現象と計算 上の 災害がれ き の諸元 の扱い
パ タ ー ン 実 現 象 計 算 上
1 (漂流移動)
2
(底面移動・
非水没)
4 (底面移動・完
全水没)
津波
がれき
喫水深
H:がれきの高さ
津波
がれき
H
t:計算上の がれき高さ=喫水深
がれき
喫水深 流
体 力
摩擦等の抵抗力
H:がれきの高さ
がれき
喫水深 流
体 力
摩擦等の抵抗力
H
t:計算上の がれき高さがれき
摩擦等の抵抗力
流 体 力
H:がれきの高さ
摩擦等の抵抗力
流 体 力