図 59: POSIXベースシステム内のAUTOSARプロセス
このユースケースでは、関連するMICROSAR モジュールをPOSIX システムに接続するのに必要なインターフェイスモジュールが用意されてい ます。その他のモジュールはいずれも手を加えずに使用でき、関連する設定ツールも同じくそのまま使用できます。そのため、このユースケースの 移行や組込に要する手間は最小限に抑えられるうえ、リリース済みのコンポーネントを使用することでPOSIX ECUのバス互換性も保証されます。
26.2.1.1 ランタイム環境
AUTOSARベーシックソフトウェアを組み込んだPOSIX環境の扱いは、ランタイム環境にAUTOSAR OSを使用できれば難しくありません。ただ し、main関数の呼出しのみが必要なベーシックソフトウェアモジュールの場合は、POSIX OSのpThreadをそれに合わせてセットアップするだ けで済みます。一方、RTEをはじめとする一部のコンポーネントではAUTOSARオペレーティングシステムとの結合がこれより強く、それらを置き 換えるのは困難です。
それに対処するため、MICROSARにはオペレーティングシステムのバリアントである「Guest OS」が用意されており、これをLinux下のプロセス として統合することで、ベーシックソフトウェアモジュールにAUTOSARランタイム環境を提供できるようになっています。アラームからスケジュール テーブルに至るすべてのメカニズムがサポートされますが、このオペレーティングシステムは Linux から提供されるタイムスロット内でのみ動作す るため、リアルタイム動作は限られています。
Green Hills INTEGRITYにはすでにAUTOSAR OSへのインターフェイスが用意されているので、これを使用する場合はMICROSAR Guest OSは不要です。
26.2.1.2 ドライバーインターフェイス
LinuxにはEthernet用のネイティブのドライバーとTCP/IPスタックが用意されており、純粋なデータ送信と診断接続(DoIP)にはこれらで十分 に対応できます。この際、MICROSARプロトコルスタックはBSDソケットを利用します。サービス品質(QoS)または時間同期(TSyn)も必要な場 合は、カーネルのハードウェアコンポーネントにより近い、低レベルの接続を実装する必要があります。
その他に、Linuxを介してCAN通信を行うためのSocketCANドライバーも用意されています。
Green Hills INTEGRITY下では、OSカーネルのインターフェイスに合わせて調整されたMICROSARドライバーが使用されます。
26.2.2 分散診断
MICROSAR には各社固有の診断モジュールとワークフローが用意されており、すべての自動車メーカーがカバーされています。MICROSAR POSIXソリューションを使用すれば、これらのモジュールもPOSIXオペレーティングシステム下で使用できます。
POSIXベースのアプリケーションを搭載したECUでは、2つのコントローラーからなるアーキテクチャーがしばしば使用されます。いずれからも診 断用のデータとサービスが提供されますが、テスターが把握できるのは、全体としてのECU のみです。通常、POSIXコントローラーはテスターに 診断インターフェイスを提供し、2 番目のコントローラーまたはコアに診断メッセージをルーティングします。この2 番目のコントローラーには、診断
マスターをはじめとする従来のAUTOSARシステムが含まれています。どちらのシステムも、Diagnostic Event Synchronizer (vDes) モジュー ルを追加して拡張されています。vDesはローカルな診断イベントを収集し、それらをDEMマスターにルーティングします。コントローラー間通信の トラフィックを必要最小限に減らすため、条件を満たした診断イベントのみがルーティングされます。
図 60: POSIXシステムでの分散診断
26.2.3 異なるオペレーティングシステム間のデータ交換を目的としたプロセス間通信(IPC)
コントローラーやコアを2つ搭載したECU、あるいはそれより複雑なSoC (System-on-a-Chip) では異なるオペレーティングシステムが実行さ れますが、それらにはデータを転送するための内部的なシステムのメカニズムがありません。MICROSAR には、CAN やEthernet などのバス システムを使用してコストを増やさずに済むよう、このためのIPCソリューションが用意されています。このソリューションは、届いたデータをSPIや UART などのシリアルインターフェイスから、CAN プロトコルスタックを介して転送します。マルチコアアーキテクチャーの場合、転送は共有メモリ ーを介して行われます。
CAN転送を模したアプローチには、既存の設定ツールと手法が使用できるというメリットがあり、これによって既存のPDUのルーティングが大きく 簡素化します。
このIPCソリューションには、前提条件としてAUTOSARランタイム環境とCANプロトコルスタックが必要です。また、IPC固有のインターフェイ スと必要なハードウェアドライバーを追加して、これらのモジュールを補完します。
26.2.4 POSIXオペレーティングシステム用フラッシュブートローダー
AUTOSAR準拠のECUに対応するベクターの実績あるフラッシュブートローダーは、適切な拡張機能を用いることで、LinuxなどのPOSIX互換 オペレーティングシステムでも使用できます。このフラッシュツールとの通信は、自動車メーカー固有のダウンロード仕様に従い、ISO 13400-2 (DoIP) に準拠したEthernetを介して行われます。
フラッシュブートローダーはLinux ランタイム環境に基づいており、アドレスベースのソフトウェアのダウンロードだけでなく、ファイルベースのソフト ウェアのダウンロードにも対応します。これによって、開発、量産、車両サービス中に行われる、ソフトウェアの個別のセクションも含めたソフトウェ アの更新プロセスが大幅に効率化されます。また、追加で提供されているセキュリティーオプションにより、機密性の高い車両データが格納された ECUを効果的に保護できます。
ベクターでは、すべての主要な自動車メーカーと、自動車業界で使用されている組込 Linux システムに対応したフラッシュブートローダーを提供し ています。必要に応じて、ベーシックソフトウェアはその他のPOSIX互換オペレーティングシステムにも使用できます。
ベクターのフラッシュブートローダーについて詳しくは、ベクターまでお問い合わせください。
26.3 設定
設定には、簡単で便利なツールDaVinci Configurator Proのご利用を推奨します。詳しくは、ベクターまでお問い合わせください。