• 検索結果がありません。

LC-SLM を用いた位相変調による増幅器前置き型波形整形

ドキュメント内 高精度波形整形に関する研究 (ページ 120-124)

第 4 章 増幅器前置き型波形整形 105

4.4 増幅器前置き型波形整形実験

4.4.2 LC-SLM を用いた位相変調による増幅器前置き型波形整形

オープンループ増幅器前置き型波形整形

ここでは閉ループを構築せずに ,計算機上で求めた理論的なスペクトル位相マスクを増幅器の 前に設置した波形整形器に加えたときの実験結果を示す.

増幅器からのパルス波形は§ 5.2で示すPG-FROGで測定した .LC-SLMに位相変調をかけな い場合の増幅器からの出力波形をコンプレッサーのグレーティングの距離を調整することによっ て最適化する.Eq. (4.2)に従うと ,グレーティングの距離を変化させると ,2次分散及び 3次分 散の量を変化させることができる.一方,グレーティングへの入射角度を変化させることによっ て ,2次分散と3次分散の大きさの比を変化させることができる.しかしながら ,2次分散と3次 分散量の両方を最適化する16)ことは簡単ではない .再生増幅器では光が共振器を何回往復するか によって加わる正の 2次分散量が大きく変化する.共振器を何回往復させるかはポンプ光の光強 度,ポンプ光のビームプロファイル ,共振器のアライメントなどによって変化するために ,毎回 ストレッチャーとコンプレッサーのグレーティングを調整して ,3次分散まで最適化することは簡 単ではない.

本実験で用いたCPA後のFROGで測定した時間波形はFig. 4.5に示したが ,サイド パルスの 存在から明らかなように3次の分散が完全には取り除けていない .コンプレッサーのグレーティ ングの間隔を調整して ,CPA後のパルスを最も短くするためのアライメントには ,CPA後の光 を空気中で集光しその集光点でプラズマを発生させ (エアーブレーク)その強度を最大化する事に よって行なった .最終的にはEq. (5.1)で表わされる FROG画像を観測しつつグレーティング間 の距離を微調整した.Fig. 4.5の状態から ,更に3次分散を取り除くためには ,グレーティングの 角度を変化させる必要があるが ,Eq. 4.2に従えばグレーティングへの入射角度を変化させると 2 次分散値も変化する .従って入射角度を変化させた場合には再びグレーティング間の距離を再調 整する必要があり,2次及び 3次分散を同時に補償するためには角度調整と距離調整を繰り返し 行なう必要があるので作業が複雑化する .また ,コンプレッサーでは 2対のグレーティングが存 在するが ,それらの角度は正確に平行である必要がある.そのことも3次分散を調整するための ,

第4章 増幅器前置き型波形整形 114

0 1

-2 0 2 4 6 8 10 12

-300 -150 0 150 300

Time (fs)

Fig.4.5 The reconstructed temporal waveform from acquired FROG trace when the dispersion of the CPA is compensated only with the grating distance in the compressor.

Third order dispersion is inherent in this waveform.

グレーティングの角度を調整するアライメントを難しくする.グレーティング対が平行でないと , コンプレッサー後のパルスに空間チャープが加わりパルスの集光性が極端に悪化する18)

そこで ,本章での増幅器のアライメントの状態はほとんど の場合 Fig. 4.5の状態で終えた .再 生増幅器ではポンプ光レーザや増幅器共振器のわずかなズレによって ,実験毎に共振器内の光パ ルスの往復回数が変化する.こうしたことから多くの CPAシステムでは必ずしも3次分散は調 整されていない.更には ,4次分散の存在がCPA後のパルスのコントラストを低下する事が報告 されている16).そこで ,Fig. 4.5の状態でCPAを動作させた時にも,精度の良い出力波形を得る ことが必要である.

LC-SLMにM 系列マスクを加えた結果Fig. 4.6の時間波形を得た .M系列マスクはパルス列

を生成するマスクとして知られている10).理論的に得られるパルスと比較すると ,各パルスの幅 がかなり広がっていることがわかる.このパルス幅の広がりは増幅器の高次分散効果に主に起因 しており ,高次分散が補償されていないレーザシステムに理論的な整形マスクを加えたのみでは , 目的波形が得られないことがわかった .そこでオープンループ 型の増幅器前置き型波形整形シス テムでは ,あらかじめ増幅器の分散を補償しておく必要がある.レーザシステムの高次分散を補償 するためにLC-SLMを用いて5次分散まで手動で調整した.分散補償はFROG画像をモニター し ,FROG画像のピーク強度が最も強くなるように手動で調整した .最終的に得られた FROG

第4章 増幅器前置き型波形整形 115

0 1

-30 -20 -10 0 10 20

-600 -400 -200 0 200 400 600

Time (fs)

Theoretical pulse Shaped pulse

Phase (rad)

Intensity (a.u.)

Fig.4.6 Solid line represents the calculated temporal waveform of the M sequence mask pulse. Dashed line represents the measured pulse, when an M sequence mask is added on the LC-SLM. The second order dispersion is compensated with the compres-sor. The FROG error was 1.2 % for this experimental result.

画像をFROG 再構築アルゴ リズムを用いて波形再構築するとFig. 4.7で示される時間波形を得 た .得られたパルス幅は47 fs (FWHM)であり,ほぼフーリエ限界パルスが得られている.

この分散補償したマスク上にさらに目的波形の理論的なマスクを印加すると ,増幅器の分散を 補償しつつ,波形整形が行える.

理論的なマスクは § 3.4で示したSAアルゴ リズムを用いて ,計算機上で設計した .プロトタ イプとして300 fsのダブルパルスをターゲットとしてマスクを設計した .さらにデモンストレー ションとして三角波形をターゲットとし た波形のマスクも設計し た .計算機上で計算されたマ スクを実際に LC-SLMに加えた .その結果を Fig. 4.8に示す .Fig. 4.8 (a)のダブルパル スで は ,ピーク強度の非対称性やピークの位置のズレが観測される.ターゲット 波形から誤差を生じ る原因は ,実験室内での誤差及び増幅器が入力に依存する非線形伝達関数を持っているためであ る.そのために分散補償マスク上にターゲット マスクを加えたのみでは不十分である.実験室で の誤差は波形整形器のLC-SLMのピ クセルと波長の対応関係を調べる際のカリブレーション誤 差 ,FROG測定の際の時間軸と波長軸の関係を調べる際の誤差がある .このケースでの FROG

エラーは 0.7 %程度であった .増幅器の伝達関数が 入力に依存するのは ,増幅器に存在する非

線形光学効果の影響であり ,それが Fig. 4.8でのターゲット 波形からの誤差に最も大きく影響

第4章 増幅器前置き型波形整形 116

0 1

-1 0 1 2

-150 -100 -50 0 50 100 150

Time (fs)

Fig.4.7 Reconstructed temporal waveform from FROG trace after compensating high order dispersion with the LC-SLM. It gives almost Fourier transform limited pulse.

0 1

-10 -5 0 5 10

-300 -150 0 150 300

Time (fs)

Shaped pulse Theoretical pulse

0 1

-20 -10 0 10 20

-300 -150 0 150 300

Time (fs)

Shaped pulse Theoretical pulse

(a) (b)

Fig.4.8 (a) Shaped double pulse after the CPA by applying ideal mask function to the LC-SLM. Solid line represents the calculated pulse shape and the dotted line the measured shaped pulse. (b) Shaped triangle pulse after the CPA by applying ideal mask function to the LC-SLM.

第4章 増幅器前置き型波形整形 117 を与えていると考えられる .非線形光学効果の中で最も重要な効果は自己位相変調 (Self Phase Modulation: SPM)であるが ,SPMはEq. (4.3)に示すように時間波形の立ち上がり,立ち下が りに依存した位相変調が加わる.

∆ω(t) =−∂

∂t∆φ(t)

=2πn2l λ

∂t|E(t)|2 (4.3)

ここで n2は非線形屈折率である.SPMが存在するために本手法を用いたのみでは正確な波形を 増幅器後に得ることはできない .但しそれでも,Fig. 4.8においてある程度の波形が再現される 理由はストレッチャーで大きな 2次分散を加えているために再生増幅器内でのパルス波形はスペ クトルが時間域にマッピングされるからである.波形整形器で加える位相変調は増幅器内ではパ ルス時間波形には摂動として現れるのみであるので ,オープンループ 型の増幅器前置き型波形整 形システムにおいてもある程度の波形が再現される.実際に増幅器前に設置した 4f 波形整形器 に 2次分散と中心波長付近で0, π の位相ステップを加えた位相マスクを印可した .波形整形器 を通過した光をシグナル光,波形整形器を迂回した光をリファレンス光とし ,増幅器前と増幅器 後のスペクトル位相差をそれぞれ ,§ 6.2.1 (p. 151)で述べるSIを用いて測定した .その結果を

Fig. 4.9に示す.シグナル光とリファレンス光の位相差を測定するので ,増幅器が持つ分散は打ち

消され ,SIを用いると波形整形器で加えた位相の変調成分のみを測定することができる.さらに SIで測定した増幅器前後の位相を比較する事によって ,信号光と参照光の波形の差に起因する増 幅器の非線形な変調を知ることができる.なめらかな位相変化と1カ所の急峻なπの位相ステッ プが比較的良く再現されている事から ,位相マスクの変調がなめらかでそれほど 複雑な構造を持 たない時に限っては ,SPM等の非線形性によって起る位相変調はそれほど 大きくはなくオープン ループ 波形整形システムを用いても位相変調のみによる波形整形はある程度の精度で整形可能で ある.しかし ,位相変調がより複雑な場合にはその限りでは無いことが予想され ,高精度波形整 形システムを実現するためには閉ループ制御を構築する必要がある.

ここでオープンループによる波形整形がどの程度の精度で波形を整形できるのかを明らかにし , 後に Fig. 6.10と比較検討するために ,Fig. 4.8 (a)で整形した300 fsのダブルパルスを§ 6.3.2 に示す手法によってスペクトルグラム表示して Eq. (6.6)で定義する2 乗誤差画像を算出する . その結果をFig. 4.10に示す.Fig. 4.10(a),(b)はそれぞれターゲット 波形と整形波形のスペク トルグラム表示であり,Fig. 4.10(c)はそれらの画像の2乗誤差である.また ,Fig. 4.10(c)を全 ピクセルにわたって積算した整形誤差を表わす指標はC = 2.05×101であった .

ドキュメント内 高精度波形整形に関する研究 (ページ 120-124)