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時間特性

ドキュメント内 高精度波形整形に関する研究 (ページ 53-57)

第 2 章 波形整形器とその時間空間結合作用 44

2.2.1 時間特性

ここでは波形整形器によって整形される光パルスの時間特性を定式化する .同時にグレーティ ングの高次分散の影響も考える.近年フェムト秒レーザの短パルス化が進み ,使用可能な光の帯 域が拡大してきた .こうした光を扱う広帯域な波形整形器を構築する場合には波形整形器で用い るグレーティングの高次分散の影響を考える必要が出てくる.高次分散の時間波形に及ぼす影響

はすでに H. Wang等によって示されているが5),ここでは高次分散をどのように取り扱うのが適

切であるかを更に詳細に議論する.

グレーティング-レンズによる時間フーリエ変換作用

波形整形器の時間特性のみを考える場合には幾何光学的に扱えば十分である.グレーティング は時間と空間を結合する素子として知られる.グレーティングに入射した光の 1次回折光の回折

第2章 波形整形器とその時間空間結合作用 47 角は

λ=d{sinθi+ sinθd(λ)} (2.1)

で与えられる.ここで λは波長,dは回折格子のグルーブ 間隔,θiθdは各々グレーティングへ の入射角と回折角である.

グレーティングとレンズはレンズの焦点距離f だけ離れた位置に配置されるので ,レンズの表 面において ,各角周波数成分の中心角周波数ω0からの距離のずれxは空間分散または横分散とよ ばれ

x(ω) =ftan[θd(ω)−θd0)] (2.2)

で与えられる.幾何光学ではレンズは光を平行にコリメートする作用をするので ,レンズの後ろ 焦点面,即ちマスクが配置されるフーリエ面においてもその空間分散はEq. (2.2)と同じ形式で表 される.マスクに入射するスペクトル成分を計算するためにはEq. (2.1)及び(2.2)の2式が基本 式となる.

角周波数・波長域解析

Eq. (2.2)の左辺を角周波数ωの関数で表示することを試みる.入射パルスの時間フーリエ変換

像がマスク面上で結像することを示すためには ,Eq. (2.2)の左辺が時間tのフーリエ変換の基底 であるω の線形関数になっている事を示せば よい .そこでEq. (2.2)を角周波数ω = ω0でマク ローリン展開する.すると ,

x(ω) =x(ω0) + 1

1!x0)(ω−ω0) + 1

2!x0)(ω−ω0)2+· · ·

=f

∂θd

∂ω

ω=ω0

−ω0) + 1 2

2θd

∂ω2

ω=ω0

−ω0)2+· · ·

(2.3)

となる.Eq. (2.1)とλ = 2πc/ωの関係式より,

∂θd

∂ω = 2πc

ω2dcos (θd(ω)) (2.4)

である.ただし cは光速である.Eq. (2.3)の1次の項に対して2次の項が十分小さく無視できる とき,Eq. (2.3)は

x(ω) =− 2πcf

ω02dcos(θd0))(ω−ω0)≡α(ω−ω0) (2.5) と書き換えられる.Eq. (2.5)はグレーティングとレンズによって光がフーリエ変換され ,入射し た光が角周波数毎に異なる空間分散を受けレンズの後ろ焦点面において入射光電界の時間フーリ エ変換像が投影されることを示している.本表式がW. WefersとK. Nelsonによるオリジナルな

第2章 波形整形器とその時間空間結合作用 48 表式9)である .マスクを通過した光は再びレンズとグレーティング対によって逆の作用を受ける ことを勘案すれば ,波形整形器後の光は

Eout(ω) =Ein(Ω)M(αΩ) (2.6)

で表されることがわかる.ここで ,Ω = ω−ω0M(αΩ)はマスク関数であり,αはマスク面上 の空間xを変換する定数である.

次に波形整形器のマスク面に等波長で光が分散され るとし た場合の表示を試みる .すなわち Eq. (2.2)を ,波長λの関数として表示する.Eq. (2.3)と全く同様の手順によって ,λ =λ0を中 心としてマクローリン展開する.ここでλ0は中心波長である.今度は角周波数ではなく,波長を 基底としてマクローリン展開するので ,1次の項に着目すれば空間分散が波長の線形関数として表 されることになり,Eq. (2.5)は ,

x(λ) = f

dcosθd0)(λ−λ0) (2.7)

となる.

グレーティングの高次分散の影響

Eq. (2.5)やEq. (2.7)などの近似式は入射パルスのスペクトル幅が広くなってくるとマクロー

リン近似の 2次以上の項が無視できなくなる.この角周波数や波長に対して非線形な項をグレー ティングの高次分散と呼ぶ .広帯域の光を扱う場合には ,入射パルスのどの波長成分がスペクト ル面のど の空間座標にマッピングするかをより正確に記述する必要がある .そこで ,Eq. (2.1), Eq. (2.2)にλ = 2πc/ωの関係を使うことによって近似を使わない形式

x(ω) =ftan

arcsin 2πc

sinθi

−θd0)

. (2.8)

が導出できる.

高次分散の影響を考察するために ,本研究で用いた波形整形器について角周波数の1次近似や 波長の1次近次であるEq. (2.5)やEq. (2.7)を用いた場合と,近似を使わない形式Eq. (2.8)を用 いた場合で比較した.波長λとフーリエ面での空間座標の関係をFig. 2.2に示す.当然Eq. (2.8) の曲線が 誤差の無い正確な位置を与える関数であるが ,中心波長からずれ るほど 近似を用いた Eq. (2.5)やEq. (2.7)はその誤差が大きくなることがわかる.特にEq. (2.5)の角周波数を基底 として展開した近似式の場合ではその誤差は無視できないほどに大きい .これらの近似による誤 差が実際にど の程度波形に影響を及ぼすかを調べるために ,それぞれの近似条件を用いてパルス を設計し 比較した .その結果を Fig. 2.3に示す.波形整形器のパラメータには§ 2.2(p. 45)で示 したものを適用した .位相マスクには ,交代位相マスク(0, π,0, π, . . .) を加えた .入射パルスに はガウス型スペクトルのスペクトル幅45 nm (FWHM)を持つフーリエ限界パルスを仮定した.

第2章 波形整形器とその時間空間結合作用 49

-30 -20 -10 0 10 20 30

600 650 700 750 800 850 900 950 1000

Wavelength (nm)

eq. (2.8) (no approximation) eq. (2.7) (wavelength)

eq. (2.5) (angular frequency)

Fig.2.2 Spatial coordinates of the incident pulse frequency at the spectral plane are shown in respect to the wavelength.

W. WefersとK. Nelsonの表式に従い ,ωによるマクローリン近似を用いた場合には ,Eq. (2.5) より直感的に時間tのフーリエ像がマスク面上に得られることが理解できる利点があるものの ,

Fig. 2.2よりその近似条件はスペクトル帯域が非常に狭い範囲でしか成り立たないことがわかる.

実際にFig. 2.3では ,パルス幅実際よりも長く計算されてしまう.一方,等波長で分散されると

近似したEq. (2.7)の場合では ,Fig. 2.3の結果は近似を用いない表式で計算したパルス幅より多

少狭くはなるもののそれほどの差は現れない.

これらの結果より,波形整形器の計算を行なう際にはマスク面に入射パルスが等周波数に分散 されると近似するのではなく,等波長に分散される波形整形器のモデルを採用して計算を行なう べきであることがわかる.理論的なマスクを計算機上で設計してそのマスクを実際に波形整形器 に印可するような場合では ,ここでの計算誤差は実験で得られる波形の誤差に直接結びつくため に高次分散の影響を正しく取り扱うことは重要である.

今回の実験で用いた光源のスペクトル帯域ではEq. (2.7)の近似でも十分ではあるが ,波長帯域 がさらに拡大した場合にはグレーティングの高次分散の影響はやはり無視できなくなるはずであ るので ,本研究では Eq. (2.8)の近似を用いない式で波形整形器を表し マスクを設計することに した .

本論文では 特に 断りのない 限り LC-SLM 上で の 空間座標を 求め る際には 近似を 使わない Eq. (2.8)の変換式を採用している.

第2章 波形整形器とその時間空間結合作用 50

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

-2000 -1000 0 1000 2000

eq. (2.5) angular frequency eq. (2.7) wavelength eq. (2.8) no approximation

Time (fs)

Fig.2.3 Calculated double pulses with various approximations when alternate phase mask is applied to the LC-SLM. Solid line represents the ideal shaped waveform, where dotted line represents calculation results with various approximations, which is described in the text.

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