第 2 章 波形整形器とその時間空間結合作用 44
2.3 AOPDF (Acoustic optic phase dispersion filter)
2.3.3 AOPDF のデバイス特性
光の取り出し 効率
AOPDFで光パルスを整形するためには ,光パルスが音響波とタイミング良く相互作用する必
要がある.つまり,AOPDFの波形整形の繰り返し 動作周波数は音響波を発生できる繰り返し 周 期によって決まる .最大繰り返し 動作周波数は音響波が結晶中に入射してから反対側の端に到 達する時間の逆数で与えられる,即ち結晶長によって決まるが ,実際には音響波発生ド ライバに よって制限を受ける.また ,音響波は結晶中に定在的に存在するわけではなく,光の入射方向と 逆に伝搬するので ,光パルスとタイミングを取ることも重要になる.一般的な Ti:sapphireのオ シレータの繰り返し 周期,76 MHz程度に対して ,AOPDF の最大動作周波数は 17 kHzである.
仮にAOPDFを1 KHzで動作させた場合には ,76,000パルスに1回光パルスをピックアップす
第2章 波形整形器とその時間空間結合作用 83 る必要がある.タイミングチャートをFig. 2.28に示す.光パルスのピックアップは AOPDF前
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Fig.2.28 AOPDF timings. (a) Input pulse train to the AOPDF. (b) Diffracted pulse train from the AOPDF. (c) Single pulse is picked up to get correct shaped pulse.
後ど ちらで行なってもかまわないが ,AOPDF後にピックアップする場合では ,AOPDFからの 出射パルスには設計通りに変調が加わっていないものが含まれる.それは音響波の一部しか結晶 に入っていないタイミングで結晶を透過した光パルスである.こうしたタイミングで入射したパ ルスを取り除く.繰り返し周期の高いオシレータの光を用いてもAOPDF 後のパルスの繰り返し
がAOPDFの動作周波数で決定してしまうために ,パワー効率は非常に低いと言える.但し 1パ
ルスのみに注目した場合には ,AOPDFの回折効率は最大60%程度得られる.光の回折効率は音 響波の振幅および 光との相互作用長に依存する.そのため音響波の時間幅が短い場合においても 高い回折効率を得るためには ,強い振幅の音響波を入力する必要がある.そのためど のような音 響波を用いた場合にでも ,回折効率を一定に保つためには音響波の振幅を波形毎に調整する必要 があるが ,一般に 2次分散を大きく加えた場合の音響波と同じ 回折効率を音響波が短いフーリエ 限界パルス付近で得ようとすると音響波の振幅が大きくなりすぎ 回折効率も飽和し ,正しい波形 が得られないことがある.そのためには音響波振幅を小さくする必要があり,結局回折効率は位 相変調にも依存する.
ジッター計測
AOPDFでは ,変調はアクティブに加えているので ,整形パルスのパルス間隔のタイミングジッ
ターは元の光パルスのジッターに音響波のジッターが加わったものになる.音響波のジッターの 存在を確認するために ,Fig. 2.29のセットアップ を構築した .本セットアップでは ,ジッター の存在を測定するためにSIを用いる.リファレンス光には時間遅延τ をつけている .リファレ
第2章 波形整形器とその時間空間結合作用 84
AOPDF
PC SI Divider
PD
τ
76 MHz 1 kHz
Fig.2.29 AOPDF jitter measurement. PC: Pockels cell; SI: Spectral Interferometer.
The input pulse train is 76 MHz repetition rate. The AOPDF and the Pockels cell are operated with 1 kHz. Time delay τ is added to the reference pulse. The timing jitter of the laser source (76 MHz), Divider, and the PC is cancelled out with this setup, and the timing jitter of the AOPDF can be obtained as a fringe instability acquired with the SI spectrometer.
ンス光の光路長の揺らぎを最小限に抑えるために光路はなるべく短く保ち,更に空気の揺れを最 小にとど めるために覆いを施した .光源 ,Divider及びポッケルスセルによるジッターはリファ レンス光とシグナル光の両方に均等に加わるためにキャンセルされ ,本セットアップを用いれば
AOPDFの整形パルスのジッターのみを観測することが可能である.SIで得られるフリンジは ,
I(ω) =|F{eref(t−τ) exp(φref) +eshaped(t−τ) exp(φshaped +δ)}|2 (2.45a)
=A(ω) +Eref(ω)Eshaped(ω) cos{Φref(ω)−Φshaped(ω) +ωτ + (ωτ+δ)} (2.45b) で表される.Eq. (2.45a)のτおよび δはそれぞれ ,整形パルスの電界包絡線のタイミングジッ ター及び ,包絡線に対する位相オフセットである包絡線位相(Carrier Envelope Phase: CEP) を 示している.本来キャリアに対して包絡線の遅延がずれることによってCEPがずれるので ,τと δは本質的には同じであるが ,簡単のため分けて考える.Eq. (2.45b)によれば ,整形パルスの包 絡線のタイミングジッターは参照光の時間遅延が変化しないのでフリンジの周期に ,CEPのジッ ターはフリンジのオフセットとして現れることがわかる.Fig. 2.29のセットアップを用いて ,フ リンジを測定した結果を Fig. 2.30に示す .フリンジ間隔には大きな変化が無いものの ,測定毎 にフリンジが左右に大きく揺れる事がわかる.数周期以内の範囲でフリンジが左右に揺れており,
つまりδが存在している事を示している .フリンジの1周期は位相に換算すると2π radであり,
波長800 nmの場合には ,時間域に直すと2.7 fsの揺れであるので ,最低でも2.7 fs 以上のタイ ミングジッターがAOPDFには存在することがわかる.本ジッターの存在は ,AOPDFの整形波 形を応用に用いる際に問題になるばかりではなく,波形評価に SI等のCEPにセンシティブな計 測法を用いることが困難になることを示している.AOPDFによって整形された波形は CEPに
第2章 波形整形器とその時間空間結合作用 85
Fig.2.30 Fringe instability. Single-shot measured spectral fringes are shown with re-spect to the acquisition number. One fringe corresponds to a 2π slip, where a 2π slip corresponds to a 2.7-fs timing jitter in time domain.
敏感でないFROG等の測定法を用いるか ,SIを用いるのであれば ワンショットベースで測定す る必要がある.パルス毎のジッターが存在する場合にフリンジ波形を数パルスに渡って平均化し たのでは ,フリンジのコントラストが失われてしまうためにSNが低下する.AOPDFによる整 形波形を干渉計測する場合にはSIで用いるCCDの電子シャッター時間をパルスピッカーと同期 させてシングルショットベースで測定する必要がある.