第 3 章 適応制御波形整形 91
3.4 焼きなまし法による波形整形
第3章 適応制御波形整形 98
3.4 焼きなまし法による波形整形
第3章 適応制御波形整形 99 テム温度はゆっくりと冷ましていく.逆に液状の金属を急冷(焼きいれ)することによってこの状 態よりも少しエネルギー状態の高い多結晶質または非結晶の状態に陥ることも可能である5).SA ではこれはシステム温度を急冷することによって ,局所的極小解に陥っている状態に対応する.
Fig. 3.7にSAを模式的に示した.GAとの大きな違いは ,GAは世代内で最も良いコストを得
Iteration number
local minimum (LM)
Cost
global minimum (GM) current cost
System temperature
escape from LM
Fig.3.7 Schematic image of SA algorithm.
られたマスクを選択することによって最適解を求めていく(前の世代との比較はしない)のに対し て ,SAではコストの前回からの変化分を評価する点である.GAでは ,始め解空間の中からラン ダムに個体数だけのポイントを選び ,その中で選択刷るのに対して ,SAは ,解空間のある点を始 点として ,そこからFig. 3.7で概念的に示した解空間の曲線を移動していくことによって最適解 を発見する.このときに ,システム温度を設定することで局所的極小点に陥らないように工夫し ている.システム温度がまだ高い場合,多少コストが悪化した場合でもある確率でその変化を受 け入れ ,最適化が進むにつれてシステム温を低下させ ,受け入れ確率を低減させる.
より広い解空間を効率的に調査するためには ,Fig. 3.7で示す曲線状の1 iteration毎の移動距 離を(特にiterationを開始した直後では)十分に大きく取る必要がある.そこで ,本研究ではSA にさらに多少の改良を加えた.n番目のループにおいて変化させるマスクのピクセル数fnは1回 目のループでは全ピクセル数f(max)の半分の数(f(max) = 128 pixの場合 f1 = 64 pix)とする.
コストが目的に近づいた場合,次のループにおいては ,
fn+1= fn+1+ 1 (if fn < f(max)) (3.2)
の数のピ クセルを変化させる.一方変化の結果コストが目的から遠ざかった場合には次のループ では
fn+1= fn+1−1 (if fn >0) (3.3)
第3章 適応制御波形整形 100 の数のピクセルを変化させる.このことにより ,コストが目的に近づいた場合には ,移動をより 早めることによってより幅広く効率的に解を調査することができるので ,解の収束が早まること が期待される.
3.4.2 計算条件
波形整形器のパラメータは§2.2に示した.マスクの(量子化)グレーレベルG= 2π/64 radと した .また ,初期マスクはフーリエ限界パルスとした .また ,ピクセルを変化させる際には ,前 回の値の情報は用いずに 0 ∼ 2πまでランダ ムに値を選択できるものとした .そのアルゴ リズム の方が経験的に収束が速いからである.
3.4.3 計算結果
理想的な場合
アルゴ リズムには以下のパラ メータを与えた .初期温度Tini = 5.0×10−6,温度の冷却係数 η = 9.95×10−1の条件で計算をおこなった .
3000回後に得られた最適パルスをFig. 3.8 (a)に示す.またこのときのコスト関数の減少の様 子をFig. 3.8 (c)に示す.Fig. 3.8 (a)をGAによる整形波形Fig. 3.3 (a)と比較すると波形の振
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-1000 -500 0 500 1000
Time (fs)
Target pulse
Shaped pulse
-5 0 5 10 15 20 25 30
0 32 64 96 128
Pixel #
0x100 5x10-5 1x10-4 1.5x10-4 2x10-4 2.5x10-4 3x10-4 3.5x10-4
0 1x10-6 2x10-6 3x10-6 4x10-6 5x10-6
0 1000 2000 3000
Iteration #
(a) (b) (c)
Temperature
Cost
Fig.3.8 (a) Shaped pulse with SA algorithm. The shaped pulse and the target pulse are shown. (b) Optimized phase mask function. (c) Cost function in respect of iteration number.
幅の凹凸が低減されている.Fig. 3.8 (b)及び Fig. 3.3 (b)のマスク関数を比較するとSAによる 最適化の方がマスク関数がスムーズになっており ,これが強度の凹凸を低減させている .このよ うにマスクがスムーズに得られるのは ,SAはピクセル毎に少しずつ値を変化させ ,きめの細かい 制御を行なっているからである.Fig. 3.8 (c)のコストの値もGAの場合と比較すると大きく改善 されている.
次に ,他の条件は保ちつつ ,シ ステム温度パラ メータを変化させて計算を行なった .初期温
第3章 適応制御波形整形 101 度Tini = 5.0×10−5,温度の冷却係数η = 9.995×10−1 とし た .このときの ,コスト 関数が Fig. 3.9 (a)に示されている.Fig. 3.9 (a)を見て明らかなようにコストが全く改善しない .この
1.4x10-4 1.6x10-4 1.8x10-4 2x10-4 2.2x10-4 2.4x10-4 2.6x10-4
1x10-5 2x10-5 3x10-5 4x10-5 5x10-5
0 1000 2000 3000
Iteration #
0 500 1000 1500
0 1000 2000 3000
regular reject accept
Iteration #
0 500 1000 1500
0 1000 2000 3000
regular reject accept
Iteration #
(a) (b) (c)
Cost Temperature
Fig.3.9 (a) Cost function in respect of iteration number with different system tem-perature parameters. (b) Number of rejected, regular, and accepted masks in respect of iteration number. (c) Same as (b) of Fig. 3.8.
ときのregular, reject, acceptのiteration毎の変化をFig. 3.9 (b)に示す.3000回に近づいた頃 にようやく少し rejectが増えるものの ,acceptが多い.即ち,Fig. 3.9 (a)で最適化が行えない のは ,システム温度が高すぎ るために ,アルゴ リズムがiterationを重ねても解を絞れないからで ある.実際にFig. 3.8で示した実験のregular,reject,acceptの発展の様子をFig. 3.9 (c)に示 すが ,1500程度のiterationですでに温度が冷え切りacceptが増加していかないことが見て取れ る.このように ,regular,reject,acceptのiteration毎の変化をモニターすることによってSA の温度パラメータが適切に設定されているかを知ることができる.
SAは ,GAの様にプログラマが自由にアルゴ リズムを設定できる自由度は無いものの ,システ ム温度の調整が非常に重要であり,アルゴ リズムを目的の動作をさせるためには ,ターゲットに 応じてシステム温度をきめ細かく調整する必要がある.
ノイズが存在する場合
次に ,Fig. 3.4に示すノ イズをモデルに取り入れる .GAの場合と同様にコ ストに 標準偏差
2.88 %の揺らぎを加える.SAを用いて最適化を行なった結果を Fig. 3.10に示す.このときの
温度パラメータは ,初期温度Tini = 5.0×10−5,温度の冷却係数η= 9.97×10−1とした.
Fig. 3.9で示したようにSAは非常にパラメータに鋭敏であるので ,GAの場合とは異なり,ノ
イズを加えた場合には異なる最適パラ メータを探してあげ る必要がある.経験的にノイズを加え ると ,この最適パラメータの範囲がより狭くなることがわかった .わずかなパラ メータの差でも 最適化に大きな差が出てくる.
Fig. 3.10 (c)でわかるように今回加えた信号の揺らぎ の大きさでは ,GAで最適化した場合の
方がコストが若干良かった.また ,GAでは SAほどパラメータに鋭敏ではなかったので ,使い勝
第3章 適応制御波形整形 102
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-1000 -500 0 500 1000
Time (fs)
Target pulse
Shaped pulse
-10 -5 0 5 10 15 20
0 32 64 96 128
Pixel #
8x10-5 1x10-4 1.2x10-4 1.4x10-4 1.6x10-4 1.8x10-4 2x10-4 2.2x10-4 2.4x10-4
0 1x10-5 2x10-5 3x10-5 4x10-5 5x10-5
0 1000 2000 3000
Iteration #
(a) (b) (c)
Temperature
Cost
Fig.3.10 (a) Shaped pulse with SA algorithm when noise is added to the signal. The shaped pulse and the target pulse are shown. (b) Optimized phase mask function. (c) Cost function in respect to iteration number.
手が良い .