第 6 章 高精度増幅器前置き型波形整形 (TADPOLE 参照補正 ) 150
6.4 AOPDF を用いた振幅位相補正による閉ループ波形整形システム
6.4.2 実験結果及び考察
シード 光の振幅変調・位相変調の及ぼす影響
はじ めに 増幅器前置き型波形整形シ ステムの位相変調及び 振幅変調の及ぼ す影響に ついて 考察するために以下の実験を行なった .今ターゲット スペクトル波形を Fig. 6.12 (a)に示す .
Fig. 6.12 (b)にターゲット スペクトル波形の時間波形を示す.はじめにこのターゲット 波形のス
ペクトル振幅のみを取り出して波形整形器に加えた.その結果がFig. 6.12 (c),(d)である.振幅 のみを波形整形器に加えているので理想的には位相はフラットのまま変化しないはずである.実
際にはAM-PM変換による位相変調が観測され ,その量は中心波長付近では ,0.3 rad程度,スペ
クトルの裾では 0.4 radから0.5 radの大きさである.一方Fig. 6.12 (e),(f)に示すのが位相の みを波形整形器に加えた際の増幅器後に得られるスペクトル強度及び時間波形である.スペクト ル振幅に変調が加わるのは波形整形器の有限の時間窓の影響による .スペクトル位相には 2π 不 定性は観測されるものの ,位相の急峻な変化が良く再現されている.
Fig. 6.12 (c),(d)に示す結果は増幅器前置き型波形整形システムにおいて AM-PM変換が起き
第6章 高精度増幅器前置き型波形整形(TADPOLE参照補正) 165
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15
-400 -200 0 200 400 Time (fs)
D
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
760 780 800 820 840
Wavelength (nm)
E
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
-400 -200 0 200 400 Time (fs)
F
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
760 780 800 820 840
Wavelength (nm)
G
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15
-400 -200 0 200 400 Time (fs)
H C
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
760 780 800 820 840
Wavelength (nm)
Fig.6.12 Phase modulation only and amplitude modulation only experiments to an-alyze the CPA transmission function by measuring the output pulse. (a) Target spec-trum; (b) Target waveform; (c) Shaped spectrum when only the amplitude is compen-sated for; (d) Temporal waveform of (c); (e) Shaped spectrum when only the phase is compensated for; (f) Temporal waveform of (e).
るもののその量は位相を0.3 rad 変調する程度である.そのことからも ,振幅位相の補正スキー ムが目的に添った動作をすることが期待される.
300 fsダブルパルス設計
振幅と位相の両方を整形することによって 300 fsのダブ ルパル スを設計し た .実験結果を Fig. 6.13に示す .わずか 2回マスクを書き換えるのみで Fig. 6.13の波形が得られた .位相の みのフィード バック制御と比較しても書き換え数はほとんど 変化ない .それはAM-PM変換が
Fig. 6.12 (c),(d)で示されるようにそれほど 大きくないことと ,その位相変調は位相の線形補正
によって補正されるからであると考えられる.AM-PM変換による位相のズレは 2回目のループ においてかなり精度良く補正される.
再生増幅器利得狭窄化が補償された300 fsダブルパルス設計
振幅変調を加える利点の一つにはFig. 5.25に示したように ,シード 光のスペクトル振幅を整形 することによって ,増幅器の利得狭窄化の補償をおこなえる点がある.そこで ,本実験では利得 狭窄化の補償を行ないつつ ,同時に波形整形を試みる .整形結果を Fig. 6.14に示す .細線で示 しているのは ,スペクトルの狭窄化の補償を行なわない時の整形波形である.スペクトルの狭窄
第6章 高精度増幅器前置き型波形整形(TADPOLE参照補正) 166
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-10 -5 0 5 10 15 20
-300 -150 0 150 300
Time (fs)
Fig.6.13 Double pulse shaping experiment by modulating both amplitude and phase at the pulse shaper. The error in the shaped pulse from the target pulse is corrected by the scheme described in the text. Thin line represents the target pulse. Thick line represents the shaped pulse. Pulses are shaped in two loops.
化の補償を行なっていないパルスと比較するとダブルパルスの各パルスのパルス幅が短くなって いることがわかる.ピーク強度の非対称性はスペクトル振幅が左右非対称に広がったためであり,
そのフーリエ変換であるダブルパルスの時間強度波形が非対称に得られた.Fig. 6.15にダブルパ ルス実験のターゲット 波形及びマスク関数を表示する .Fig. 6.13の波形のターゲット スペクト ル振幅及び位相が Fig. 6.15 (a)に示されており ,その波形を得るためにAOPDFで加えた振幅 及び位相マスクがFig. 6.15 (b)である.Fig. 6.15 (c)には CPAの利得狭窄化を補償するときの ターゲットスペクトル振幅及び位相,Fig. 6.15 (d)にはFig. 6.14が得られたときのマスク関数を
使命sている.Fig. 6.15 (d)のマスク関数から波形整形器が ,ダブルパルスを整形すると同時に ,
シード 光の中心波長付近の透過率を低下させることによって ,再生増器の利得狭窄化を補償して いることがわかる .本補正ループ スキームによって ,振幅位相の両方が効率的に整形可能である ことが示された.
第6章 高精度増幅器前置き型波形整形(TADPOLE参照補正) 167
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20
-300 -150 0 150 300
Time (fs)
Fig.6.14 A 300 fs double pulse shaping with amplitude and phase modulation. The thick line represents the shaped double pulse with gain narrowing compensated. The thin line represents a shaped pulse with a normal bandwidth as in Fig. 6.13. The pulse width (FWHM) of the left and right hand side pulse of the thin line are, 39.1 fs and 56.7 fs respectively, wile the pulse width (FWHM) of the thick line are 33.2 fs for left and 30.2 fs for right pulse.
2波長300 fsダブルパルス設計
次に中心波長の異なるダブルパルスの設計を示す .直感的に理解しやすいようにスペクトルグ ラム表示する.ターゲット波形をFig. 6.16 (a)に ,整形波形をFig. 6.16 (b)に示す.中心波長の 異なるダブルパルスが精度良く得られる.Fig. 5.23と比較して ,ピーク強度の比が若干正確に得 られていることがわかる.しかし ,それでもなお,非対称性が観測されるのは ,スペクトル振幅を 変調すると ,増幅器の非線形性が大きく ,左右のスペクトルの広がりがターゲット波形からずれ るからである.一般にスペクトル振幅を複雑に変調した場合には ,本補正スキームを用いたた場 合でも,スペクトル振幅の非対称性によって ,時間強度波形に非対称性が観測されるようになる.
第6章 高精度増幅器前置き型波形整形(TADPOLE参照補正) 168
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-100 -50 0 50 100
760 780 800 820 840
Wavelength (nm)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-10 -5 0 5 10 15 20
760 780 800 820 840
Wavelength (nm)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-40 -20 0 20 40 60 80
760 780 800 820 840
Wavelength (nm)
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
-20 0 20 40 60 80 100
760 780 800 820 840
Wavelength (nm)
(a)
(b)
(c)
(d)
Amplitude (a.u.)Amplitude (a.u.) Amplitude (a.u.)Amplitude (a.u.)
Fig.6.15 (a) The amplitude and phase mask function of the target pulse. Target pulse is a ordinal double pulse; (b) Mask function applied to the AOPDF after two iterations corresponding to (a); (c) The amplitude and phase mask function of the target pulse.
Target pulse is a broad bandwidth double pulse; (d) Mask function applied to the AOPDF after two iterations corresponding to (c).
コヒーレント 制御応用に向けた再生増幅器前置き型振幅位相高精度波形整形実験
ここでは ,本システムを用いた高精度波形整形システムの実行例を示すため ,波長域及び時間 域で複数のピークを持ち,その両方の軸に細かい構造を持つ複雑なターゲット 波形の設計例を示 す .実験結果をFig. 6.17に示す.スペクトルの細かい構造まで綺麗に再現されることがわかる.
こうした複雑なターゲット 波形が設計できるのは ,振幅及び位相の両方を任意に整形可能である
第6章 高精度増幅器前置き型波形整形(TADPOLE参照補正) 169
(a) (b)
Fig.6.16 (a) and (b) are spectrograms of the target and shaped pulses. The center wavelength differs by 10 nm and the pulse interval is 300 fs. The shaped pulse was obtained in two loops.
からである.Fig. 6.17 (c),(d)は数psのパルス幅を持ち,振幅は∼100 fsで振動している.こ れは本研究で求めているシステム性能の∼ 10 fs間では到達しないものの ,これまでの波形整形 実験中で最も複雑な波形整形例である.本システムは ,時間周波数積の大きい複雑なターゲット 波形を増幅器後に高精度に再現する能力を有していることが本実験結果から言える.