5.4.1 ITシステムに関する取組みの概要
LOLFでは、発生主義会計やコスト分析会計等の新しい会計制度が導入された。
また、ミッシオン・プログラム・アクシオンに基づく予算制度や業績評価制度等、
新しいマネジメント方法が導入された。これらの新しいマネジメント方法を実行 するためにITシステムを対応させる必要が生じた。そこで、Accord284と呼ばれる 新しいITシステムの導入が試みられた。
しかし、2004年5月、Accord2は導入が見送られることとなった。Accord2の導入 支援を委託するITシステム会社を選定する際に、契約手続きに瑕疵があったため 契約手続きの中止を余儀なくされたことが原因である85。
その結果、ITシステムについて計画が大幅に見直され、LOLFに対応する取組み を二つの段階に分けることが計画された。2006年のLOLFの完全施行に間に合わせ るため、第一段階では既存のシステムを改修する方法が採用された。具体的には、
予算、支出、収入、会計に関する既存のシステムを、LOLFの新しいマネジメント 方法が実現できるように改修した。この段階のシステム構成を総称してPalier2006 形態と呼んでいる。Palierとは日本語で“踊り場”を意味する言葉であり、Palier2006 形態が一時的な対応であることを示している。
新システム導入の第二段階が、Chorusと呼ばれる新しいITシステムの導入であ る。Chorusは、現時点では個別に管理されている予算、支出、収入、会計に関す る既存のシステムを全て集約する新しいシステムであり、LOLFの新しいマネジメ ント方法を完全に反映できるよう設計されている。調査時点では開発中であり、
2010年の完全導入を予定している。
5.4.2 現状のITシステム
現時点で運用されているPalier2006形態は、Accordと呼ばれるシステムを中心に 構成されている。2006年にはこのAccordが改修され、Accord LOLFとして新しい 会計基準や予算制度の概念に適用できるようになった。しかし、それでもLOLF への対応という点ではPalier2006形態時点では不十分であった。第一に、利用者は 中央省庁の職員の一部に限られ、地方部局に勤務する職員は利用することが出来
84 Application coordonnee de la comptabilisation, d'ordonnancement et de reglement de la depense de l'Etat
85 現地調査におけるErnst&Young社へのヒアリングによる。
87
ない。第二に、財政情報の全てを管理できるわけではなく、下記のように機能ご とに複数のシステムが存在している状況が続いている。
図表 51 現在の財務情報システムの状況「Palier2006形態」
利用 システム
機能 歳入管理
(税金以外)
固定資産と
資本の管理 会計処理 分析
予算作成
Accord LOLF
Farandole N
D
C India
NDL
各省庁で保有している財務会計システム
C G L
T C C STGPE
(Serveur du tableau général des propriétés de l’État)
REP 歳出管理(賃金以外)
(出典)MINEFI(2006a)より新日本監査法人が作成
Palier2006形態を構築する際に新たに開発したシステムがIndiaである。既存のシ
ステムでは、LOLFの新しいマネジメント方法を実行するために必要なデータを抽 出することができなかったため、Indiaによって各システムのデータを抽出・統合 し分析できるようにしたのである。Indiaは、Palier2006形態で管理する各システム の情報を集約し、歳出、財務会計、コスト分析会計等の機能ごとに分析を行い、
結果を出力することが出来る。以下は、Indiaの概念図である。この機能はChorus においても引き継がれる予定になっている。
図表 52 INDIAシステム
India I Indiandia
歳出 財務 会 計 歳入
(CGE)
コスト分 析 会 計
各財務会計情報システム 各財務会計情報システム
REPREP REP TCCTCC
NDC TCC NDC NDL NDC
NDL NDL PAY
ETR PAY PAY ETR Accord ETR
LOLF Accord Accord
LOLFLOLF STGPESTGPESTGPE
CGLCGL CGL
情報を加工し抽出する 情報を加工し抽出する
(出典)MINEFI(2005a)より新日本監査法人が作成
88
5.4.3 新しいシステムの概要と導入の見通し
2010年施行に向けて開発中のChorusの導入目的は、以下の4点である。
図表 53 Chorusの導入目的
・ LOLFのすべてを実装すること
・ 行政運営を改善させること
・ 財務会計プロセスの単純化に貢献すること
・ 国家の財政情報の追跡可能性と監査可能性を補強すること
(出典)MINEFI(2006a)より新日本監査法人が作成
第一の「LOLFのすべてを実装すること」は、ChorusをLOLFの実現手段として 位置づけることを意味している。第二の「行政運営を改善させること」及び第三 の「財務プロセスの単純化に貢献すること」は、LOLF改革が目指す行政の効率化 に資するシステムであることを意味する。第四の目的である「国家の財政情報の 追跡可能性と検査可能性を補強すること」は、財政の透明化の基礎として統制可 能な環境の構築を実現することを指す。
Chorusは、税金収入と負債管理を除くすべての財務会計情報を一元管理するこ とを目指している。Chorusの稼動により、予算作成を除くすべての財務会計情報 を一つのシステムで一元的に管理できるようになる。(下図参照)
図表 54 Chorus導入後の財務会計システム
利用
システム Farandole Chorus
機能 歳入管理
(税金以外)
固定資産と
資本の管理 会計処理 分析
予算作成 歳出管理(賃金以外)
(出典)MINEFI(2006a)より新日本監査法人が作成
89
Chorusの導入スケジュールは以下の4段階に分けられている。本調査実施時点の
2007年は、“設計”段階に位置しており、必要な機能の検討や各システムとの統 合方法などを検討している。
図表 55 Chorusの導入スケジュール
1-3月
2006年
4-6月 7-9月 10-12月 1-3月
2007年
4-6月 7-9月 10-12月 1-3月
2008年
4-6月 7-9月 10-12月 1-3月
2009年
4-6月 7-9月 10-12月 1-3月 2010年 1-3月
2006年
4-6月 7-9月 10-12月 1-3月
2007年
4-6月 7-9月 10-12月 1-3月
2008年
4-6月 7-9月 10-12月 1-3月
2009年
4-6月 7-9月 10-12月 1-3月 2010年
設計準備 設計 施行 施行
(出典)MINEFI(2006a)より新日本監査法人作成
現在のChorusの導入スケジュールでは、完全に導入される時期は2010年となっ ている。LOLF成立が2001年であることから、LOLFの枠組を完全に反映したシス テムが導入されるまでに実に約10年の年月がかかる見込みということになる。コ ーラスには開発費で5億ユーロ、運用には年間1億ユーロの費用が必要86であり、
非常に長い年月とコストが費やされている。
86 IGF(2006)
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