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経済産業省平成19年度政策評価調査事業.doc

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経済産業省 平成19年度 政策評価調査事業

フランスの行財政改革と業績予算の

実態に関する調査

平成

20 年 3 月

新日本監査法人

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2 目次 エグゼクティブ・サマリー... 3 1 はじめに... 6 1.1 調査研究の背景・目的... 6 1.2 調査研究の方法... 7 2 LOLF 改革の全体像 ... 9 2.1 LOLF 改革の背景と成立過程 ... 9 2.2 LOLF 改革の目的と概要 ... 12 2.3 LOLF に関係する主要組織... 19 3 予算制度の枠組みと実施状況... 26 3.1 制度の特徴... 26 3.2 予算の構造... 40 3.3 予算編成プロセス... 42 3.4 予算執行体制と運用... 45 4 業績評価制度の枠組みと実施状況... 51 4.1 業績評価制度の概要... 51 4.2 業績指標の設定基準と業績管理プロセス... 54 4.3 年次業績計画書(PAP)と年次業績報告書(RAP)の導入 ... 57 4.4 業績評価の仕組みとその運用... 64 5 LOLF 施行に向けた諸準備... 69 5.1 4 年間の準備プロセス... 69 5.2 仏中央政府会計基準の策定とその導入にかかる準備... 71 5.3 LOLF の導入及び定着のための体制整備... 77 5.4 IT システムに関する準備 ... 86 6 LOLF 施行後の行財政改革の進展... 90 6.1 LOLF 改革に対する評価 ... 90 6.2 LOLF 改革と並行して実施されている行財政改革 ... 98 7 分析の総括と我が国への示唆... 106 7.1 制度の実施状況と課題... 106 7.2 我が国への示唆... 109 参照文献... 135 用語集... 139

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エグゼクティブ・サマリー

本報告書は、7章で構成される。 第1章「はじめに」 第1章では調査研究の背景・目的、及び調査研究の方法について述べる。 フランスのLOLFは、2001年8月1日に成立した予算組織法である。LOLFの導入により、 NPM(新公共経営)の考え方に基づいた、予算制度改革、公会計制度改革、業績評価・ マネジメント制度改革を一体的に進める包括的な取組みが進められている。本調査は LOLFが行政内の政策立案・運営・執行等のマネジメントに与える影響や、現状の課題 を明らかにすることで、我が国へのアウトカム・マネジメントの導入に有益な示唆を得 ることを目的とする。 調査は研究書・専門書や政府刊行物等についての文献調査および経済財政産業省等に 対する現地訪問調査、及び本調査に専門的な知見を有する有識者へのヒアリング調査に より行った。 第2章「LOLF改革の全体像」 第2章ではLOLF改革の背景及び成立過程、目的と概要、LOLFに関係する主要組織に ついて述べる。 マーストリヒト条約による財政健全化の要求や、英米等からのNPMの影響や国民へ の直接的な説明責任への必要性の高まり等を背景に、議会による予算の実質化と業績に 基づく行政マネジメント手法の導入を目的に、LOLFが導入された。LOLFの導入に主導 的な役割を果たしたのは国会議員であった。 LOLFは予算制度、会計制度、業績評価制度の三本の柱から構成される。予算制度の 特徴は、予算が政策目的別の構造になったこと、及び施策実施の責任者(プログラム責 任者)の予算執行の裁量権が拡大したことである。会計制度は、予算会計、財務会計、 コスト分析会計の三種の会計から構成される。このうち、財務会計には、発生主義に基 づく、企業と同様の新しい会計基準が導入された。一方、予算会計には現金主義が適用 される「二重システム」が採用された。業績評価は、年次業績計画書と年次業績報告書 という2種の書類により行われる。

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4 第3章「予算制度の枠組みと実施状況」 第3章では予算制度の特徴、構造、予算編成プロセス、予算執行の体制と運用につい て述べる。 予算構造は、政策目的ごとにミッシオン・プログラム・アクシオンという三階層によ る体系をとることとなった。また、予算の執行においては、プログラム責任者の権限が 拡大し、費目間の流用や繰越の拡大が実現した。その一方、予算執行における責任の明 確化が図られた。また、予算編成・審議においては「1ユーロの証明」という議会に対 して予算積算根拠を説明する仕組みが導入された。これにより、議会による予算審議の 実質化が実現した。 第4章「業績評価制度の枠組みと実施状況」 第4章では業績評価制度の仕組み、業績指標の設定と管理、業績評価制度の運用につ いて述べる。 業績評価は、業績指標により行われる他、コスト分析会計により成果とコストの比較 による評価も試みられている。業績の管理及び報告ツールとして、プログラムごとに年 次業績計画書及び年次業績報告書の作成がなされ、一般にも公表される。 第5章「LOLF施行に向けた諸準備」 第5章では、LOLF導入のために行われた準備作業や、会計基準の策定と導入に係る準 備、LOLFの導入及び定着のための準備について述べる。 LOLFの導入において約4年間の準備期間が置かれ、予算・会計・業績評価制度導入の 準備が進められた。会計制度については、企業会計基準や国際公会計基準等を参照した 新しい仏中央政府会計基準が策定された。この会計基準による最初の決算である2006 年度決算は仏会計検査院の保証型監査の対象であるが、内部統制の構築や網羅的な資産 の把握等に課題があったため、仏会計検査院により留保付適正意見が述べられた。 LOLFの制度を実現するために重要な役割を果たすのがITシステムである。LOLFに合 せた新システムが導入される計画であったが、実現せず、現在、2010年の完成を目指し たシステムを開発中である。 第6章「LOLF施行後の行財政改革の進展」 第6章ではLOLFに対する様々な立場からの評価と、LOLF改革と並行して実施されて いる行財政改革について述べる。

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5 公務員は行財政改革について市民サービスの向上のために必要と認識する一方、自ら の地位等について不安を感じている。有識者等は、LOLF改革を諸外国の取組みと比較 して理論的に整った制度であると評価している。一方、実際にLOLFの制度で業務を行 なう行政機関は、様々な実務上の課題を指摘している。 LOLF施行後には、LOLFを推進するために実施された内部監査や、LOLF改革を背景 に新たな行政改革の取組みが行なわれている。近代化監査やRGPPの取組みがこれにあ たる。また、LOLFを契機に人事改革の必要性が認識されている。 第7章「分析の総括と我が国への示唆」 最終章である第7章は、「我が国への示唆」である。 LOLFの特徴を、予算・会計・行政評価の一体的改革に関する論点、PDCAマネジメ ントサイクルに則った行政経営に関する論点、政府・行政の統治の構造変化の三点に整 理し、そこから我が国の行政改革、公会計制度、予算制度、業績評価制度、マネジメン ト、ガバナンス等に対する留意点等を検討した。

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1 はじめに

1.1 調査研究の背景・目的

1980年代以降、NPM(New Public Management:ニュー・パブリック・マネジメ ント)の理論を応用した行財政システムの改革は、アングロサクソン諸国での実 践に端を発し、その後世界的な潮流を形成するに至っている。具体的には、市場 化テストやPFIに代表される政府業務への市場規律・活力の導入、顧客志向や説明 責任を重視する行政運営の強調、結果・成果志向の行政運営を担保する政策評価 制度の導入等が重要な取組みとして実践されている。とりわけ、行政運営の効率 性や施策の費用対効果の改善の観点では、「業績・成果の評価」と「予算による 資源配分」との一体的運営の重要性は、特に広く認識されているところである。 評価と予算の連動に関する実際の取組みについては、アメリカ、イギリス、オ ーストラリア、それにフランス等、各国ごとにさまざまな試行がなされている。 我が国においても、平成20年度予算から、政策の体系と予算・決算の体系の整合 を図ることで、アウトカム・マネジメントの実現、強化が進められているところ である。 フランスにおけるNPM的なマネジメントは、2001年8月に予算組織法(LOLF: Loi organique n。2001-692 du 1er aout 2001 relative aux lois de finances. LOLF)が成立

し、約4年の準備期間を経て、2006年より正式に導入されたことにより実現した。 LOLF改革は、予算制度改革、公会計制度改革、業績管理・政策評価改革を同時平 行的に進めようという、極めて大規模かつ野心的な行財政制度改革であり、他国 のNPM的な諸改革にインスピレーションを受けて行われた。 この新制度が、行政府内の政策立案・運営・執行等のマネジメントにどのよう に影響を与えているか、具体的には改革の思想、制度設計、導入のプロセスおよ び現時点での課題等について明らかにすることは、我が国における業績予算の活 用によるアウトカム・マネジメントの今後に、大きな示唆を与えると考えられる。 以上の背景に鑑み、本調査は、フランスのLOLF法改革による新しい業績予算制 度等の実態と、それが行政府内のマネジメントに与えた影響や今後の課題につい て実証的に把握することにより、以って我が国における業績予算の活用によるア ウトカム・マネジメントを一層強化していくための施策検討に資することを目的 として実施するものである。

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1.2 調査研究の方法

(1) 文献及びインターネット情報等の収集・分析 我が国において刊行されている専門誌、専門書のほか、各国政府および研究者 が作成した公表資料・部内文書、年次報告書、財務関係資料や各種研究資料等、本 調査のテーマに関連する文献およびインターネット情報を収集し、分析を行った。 (2) 現地訪問調査 予算・公会計・公職省(旧経済財政産業省)、仏会計検査院、省庁間プログラ ム監査委員会(CIAP)、欧州経済開発機構、新聞社(Les Echos社)、(財)自治 体国際化協会パリ支局、コンサルタント(Ernst&Young社)を訪問し、担当者に 対して対面式のインタビューを実施し、実務上の運用や現状の課題等を中心に情 報および知見の収集を行った。 現地調査の概要は以下の通りである。 調査担当者 新日本監査法人公会計部 高岡華之・岡本拓 調査日程・訪問先・ヒアリング対象者 日付 訪問先 ヒアリング対象者 (財)自治体国際化協会パリ支局 酒巻浩氏 3 月 3 日 予算・公会計・公職省 公会計総局 Ernst&Young パリ事務所 Mr. Francois Tanguy Mr. Jean-Francois Berthier Les Echos 社 Mr. Pierre Cabin

3 月 4 日

省 庁 間 プ ロ グ ラ ム 監 査 委 員 会 (CIAP)

Mr. Pierre Lubek (Inspecteur general des Finances, President)

仏会計検査院第二部 Mr Jean-Lou Arnaud (Conseiller maitre) 3 月 5 日

欧州経済開発機構(OECD) Dr. Peter Jarrett, Dr. Isabelle Joumard (Country Studies 1 Economics Department) Dr. Elsa Pilichowski (Division Gestion et

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Performance du Secteur Public

Direction de la Gouvernance publique et du developpement territorial(GOV)

予算・公会計・公職省予算局 予算・公会計・公職省公会計局

Ms. Isabelle Veillet (Chargee de Mission Mission Performance de l’Action publique,)

Ms.Benedict Valantin ( Central and Eastern Countries International Cooperation Mission) 予算・公会計・公職省予算局 Ms. Patrica Laplaud, Mr. Quentin Munier (Charge

de Mission Garanties de l’Etat et Commerce exterieur,

3 月 6 日

予算・公会計・公職省国家近代化総 局

Mr. Gilles Viger (Controleur de gestion au service Modernisation de la gestion

Publique) エコロジー・持続可能開発省エネル

ギー・鉱物担当部署)

Mr. Claude Bazile, Mr. Philippe Marne

(Sub-directorate for Policy coordination & International Strategy)

3 月 7 日

Ernst & Young Arnauld Bertrand (Partner) Valerie Laine (Sr. Manager)

(3) 有識者へのヒアリング調査 本調査のテーマについて専門的な知見を有する有識者に対し、情報を提供して 頂くこと、および調査の問題意識・方向性、ならびに課題や解決策についてコメ ントを頂くことを目的に、ヒアリング調査を実施した。 有識者へのヒアリング調査の概要は以下の通りである。 調査日程・ヒアリング対象者・所属機関 ヒアリング対象者 所属機関 田中秀明 准教授 一橋大学 経済研究所 木村琢麿 教授 千葉大学大学院 専門法務研究科

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2 LOLF改革の全体像

フランスでは、1990年代後半から公的支出を管理することによって財政を再建 するため、予算および政策評価制度の改革が議論されてきた。その結果成立した のが、予算組織法(La loi organaique relative aux lois de finances,LOLF)である。 同法は、結果志向、各省の目標へのコミットメント(施策の目標と成果の明示、 結果の説明責任)、施策管理者の責任の明確化などが主な内容として盛り込まれ、 約4年間の準備期間の後、2006年度より施行された。 本章では、このLOLF改革が成立に至る背景や過程について説明するとともに、 LOLFの概要を示す。また、LOLFには様々な組織が関係しているため、主要な組 織についても説明を行う。

2.1 LOLF改革の背景と成立過程

2.1.1

仏政府をとりまく環境の変化 LOLF改革が起こった背景としては、仏政府を取り巻く環境が大きく変化してい たことが挙げられる。以下では、外部環境と内部環境に分けて説明を行う。 (1) 外部環境の変化 フランスでLOLF改革が実施された大きな要因としては、欧州連合(EU)のユ ーロ導入による財政再建圧力の高まりが考えられる。1992年のマーストリヒト条 約では加盟国が財政の健全性を維持することが求められ、①国・地方・社会保障 基金の財政赤字はGDPの3%以内、②グロスの債務残高がGDPの60%を超えないこ とが求められた。加えて、加盟国は、財政安定化プログラムを策定し、5年間の主 要経済見通しと共に、中期的な財政均衡又は黒字目標と、そのための財政赤字の 対GDP比の推移を策定、提出することが求められた1。このような、マーストリヒ ト条約の規定は、仏政府に対して財政再建をせまる大きな圧力であった。 一方で、LOLFに理念や手法の面で影響を与えたのは、NPM(New Public Management, 新公共経営)と呼ばれるイギリスやニュージーランド等アングロサ クソン諸国を中心として導入が進められた行政経営の手法である。従来フランス では、成果主義文化の希薄さや中央集権国家の伝統などからNPMがなかなか受け 1 財政制度等審議会(2003a)

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10 入れられなかった2。特に政策評価の導入はアメリカ等、アングロサクソン諸国に 比べ遅かった。しかし、1980年代以降の一連の行政改革や上記のユーロの導入に 伴う財政再建圧力の高まりから、徐々にNPMの考え方がフランスに取り入れられ ていった。 (2) 内部環境の変化 LOLF改革の実行に関して、影響を与えた内部環境要因としては、①1980年代の 一連の行政改革、②説明責任への要求の高まり、③予算審議の形骸化の3点と考え られる。 ①1980年代の一連の行政改革とは、1986年以降の保守系のシラク首相や1989年 のロカール首相による改革を指す。シラクは、国家介入主義を見直し、市場原理 の導入による行政の効率化、公務員削減や省庁再編、行政事務の迅速化、地方分 権等の取組みを行なった。ロカールは、「公共サービスの再生」というスローガ ンを掲げて公の役割の意義を強調するため、政策評価を推進した。 ②説明責任への要求の高まりは、元来フランスでは議会を通じて間接的に果た されることで十分であるとされてきたことに対する変化である。しかし、NPMの 浸透とともに、国民に直接説明することの必要性が重視されるようになった。そ のため、予算の必要性や有効性について、議会における審議だけではなく、国民 に対して直接に説明できるようにすることが求められるようになった。 ③予算審議の形骸化とは、従来は国会の予算審議が十分に行われていなかった ことを指す。国会審議の対象は、全予算の6%程度でしかない新規事業が中心であ り、残り94%を占める既存の支出はほとんど審議をされないままに一回で議決さ れていた。そのような背景から、予算制度改革を行い国会の予算審議を充実させ 本来の意思決定機能を十分に果たせるようにする必要があった。

2.1.2

フランスの行政改革の歴史 フランスにNPMによる手法が本格的に取り入れられるのは1990年代以降であ るが、それ以前にも行革の取組みは行われていた。古くは、アメリカのPPBS (Planning Programming Budgeting System , 企画計画予算方式)をモデルにしたフ ランスの予算編成合理化の取組みである。この取組みでは、目標が設定され、そ の達成手段が選定されると、計画の評価を費用便益の観点から行い、その結果に

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11 基づき予算を作成するという流れになっている。しかし、この取組みは、フラン スでは必ずしも成功しなかったといわれる3。 予算統制以外の目的でも、1980年代以降、政策評価推進機関による政策評価、 行政機関等による評価、計画契約等、様々な政策評価が実践された。政策評価推 進機関による政策評価の例としては、1998年に設立された国家評価評議会

(Counseil national d’evaluation)による政策評価がある。国家評価評議会は省庁を 横断した政策評価の計画立案及びその実施等を行った。行政機関等による評価は、 各分野ごとに個別法や通達により実施方法が定められた。例えば、運輸行政にお いては1980年代より一定以上の金額の公共事業で事前・事後評価を行うことが定 められた。計画契約とは、国と州の間で国土開発計画の実施に関して締結される もので、契約という形で州の計画実施に対する財政的援助を行なうものである。 この契約の中で政策評価の実施が求められた4 1990年代初頭からは法的、制度的な面を変更しない範囲で、予算編成の改善が 図られてきた5。財政の赤字の拡大の中で、予算編成手続きにおいて、戦略的な複 数年度のプログラム手法の欠如、重要な予算措置について議論する時間の不足が 認識されるようになっていたことがその原因として挙げられる。 以上のように、LOLF以前から行われた様々な改革がLOLF導入への流れを形づ くっていったのである。

2.1.3

LOLF の成立過程 LOLF改革の発端は1996年に国民議会議長のフィリップ・セガンが、公的政策の 評価の更なる活用を構想したことに端を発している。1998年には、後継者の国民 議会議員のローラン・ファビウスが、行政の効率性のチェックや国会による予算 統制の可能性を検討した。そして、1999年には、元老院議員のリディエ・ミゴー とアラン・ランベール6が予算に関する情報委員会を設立し本格的に予算制度改革 法案が検討されるようになった。しかし、当初は政府側の抵抗に合い、順調には 進まなかった。 3 木村(2002a)pp.5-6 4 木村(2002a)p.18 5 栗原(2005)pp.219-221 6 両氏はLOLF成立への貢献から「LOLFの父」と呼ばれている

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12 政府側の抵抗姿勢を大きく変えたのが、経済財政産業大臣の人事である。2000 年にローラン・ファビウスが経済財政産業大臣に任命され、議会から政府へと活 躍の場を移し、首相に対して予算改革の必要性を説得するようになった。これを 機に政府はLOLFの推進の方向に転じた。その結果、LOLFの制度化検討が進展し、 2001年8月1日に、元老院・国民議会ともに与野党両方が一致(投票を棄権した共 産党を除く)してLOLFが成立した。

2.2 LOLF改革の目的と概要

2.2.1

LOLF 改革の目的 本項では、LOLF改革が行われた直接の目的を説明する。LOLFの主な目的は、 「議会による予算審議の実質化」及び、「業績に基づく行政マネジメント手法の 導入」である。 「議会による予算審議の実質化」とは、議会が予算を実質的に審議できる体制 を整えることである。LOLF以前は1959年1月2日オルドナンスによって予算制度が 定められていた。同法制度では大統領・政府の権限が強く、その正当化の理由と して専門知識のない議会には財政上の統制能力が欠けていることが挙げられてき た7。そのため、議会が実質的に審議、決定できる予算は全体のごく一部である新 規予算に限られていた。また、予算の執行は議会による承認の下で行うことが定 められているが、実際は政府が自らの判断に基づき補正予算を利用して予算カッ トを行うことができた。なぜならば、補正予算に対し、議会は承認する権限しか 認められていなかったためである。よって、実質的には予算の優先順位は政府が 決定してきたといえる8 この状況に対して、行政運営が民主的ではないという批判が高まり、議会が「ど の予算が、何のために使用され、その根拠はどこにあるのか」を「最初の1ユー ロ」から審議し、決定できる仕組みが求められることとなった。 一方、予算は組織別・費目別に策定され、理解しにくく、透明性が低いという 批判があった。これに対して、国会議員が審議可能な程度に分かりやすい、政策 目的別の予算構成を採用することで、結果的に国民にとっても理解しやすい予算 の実現が図られた。 7 木村(2002b)p.59 8 World Bank(2004)p.3

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13 「業績に基づく行政マネジメント手法の導入」が図られたのは、従前の行政運 営が予算管理による事前統制に偏っていたことを反省し、事後統制の機能向上の 必要性が認識されたためである。 LOLF以前の予算は組織ごとに費目別に編成されていたため、各省・各局でまず 予算を確保しその範囲で遂行可能な政策を実施するという方法がとられていた。 これを木村は「手段重視の予算」9と呼んでいる。

これに対し、LOLFの下では年次業績計画書(Projet annuel de performance, PAP) の中で結果(目標)をまず設定し、その実現のための予算を編成するという「結 果重視の予算」への転換が図られた。その予算の成果は、議会の決算審議におい て、発生主義に基づく財務諸表と、当該年度の業績を取りまとめた年次業績報告 書(Rapport annuel de performances, RAP)を検討することで評価される。このよう に、目標に対する成果を検証する仕組みを入れることで、予算編成方法のみなら ず、行政運営や財政管理にNPM的な発想である業績や合理性の概念が導入され た。加えて、決算が承認されない限り、次年度の予算審議を行わないという制度 を導入することで、結果の検証を行う事後統制を強化した。 つまり、LOLFにより行政運営の根幹をなす考え方が「手段の原理」から「結果 の原理」に転換したといえる10。LOLFでは、政策目標に対する手段(予算)の適 切性、投入された資源(予算)とその成果を比較することによる効率性、目標に 対する成果の達成度を測る有効性が政策ごとに検証されることになった。この考 え方を図示したものが下記の図表である。 図表 1 LOLF における主要概念の関係 (出典)予算・公会計・公職省提供資料より新日本監査法人が作成 9 木村(2004a)p.22 10 木村(2004a)p.22

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14 なお、「業績に基づく行政マネジメント」は、米国や英国をはじめとする小さ な政府を志向するアングロ・サクソン諸国で、LOLF以前から導入され、定着して きた手法であるが、それら諸国とは異なり、中央集権的色彩が強いフランスにお いても、そのような業績に基づく行政マネジメント手法が定着していくかどうか、 注目されるところである。

2.2.2

LOLF の概要 「結果の原理」の実践のため、LOLFでは、目標の設定→施策(計画)の策定→ 予算編成→計画の実行→成果の検証→次期の政策や予算への反映、という一連の 流れに沿って行政運営がなされることが予定されている。いわゆるPDCA (Plan-Do-Chack-Action、計画-実施-検証-改善)サイクルの導入である。また、 計画及び検証の段階で、議会による統制がかかるように設計されている。この具 体的な仕組みについて、LOLFの主要な改革論点である会計制度、予算制度、業績 評価制度の概要を紹介することで説明する。 (1) 会計制度の概要 LOLF第5章で規定される新しい会計制度では、国の歳入歳出を管理するために 現金主義により作成される予算会計、国の資産負債及び収入支出の状況を把握す るために発生主義により作成される財務会計、財務会計で把握されたコストをア クシオン11ごとに計上するコスト分析会計の三会計が設定されている。LOLF第5 章「国の会計」の概要は下記の図表の通りである。 図表 2 LOLF 第 5 章の主要な条文の概要 NO 項目 概要 第27条 三会計の作成 【予算会計】歳入歳出及び執行の全体を管理する会計を 作成する。 【財務会計】資産及び財務状況を正確に反映する会計を 定期的に作成する。 【コスト分析会計】アクシオンの支出を分析するための 会計を作成する。 第28条 予算会計の原則 歳入歳出は出納官が徴収または支払を行った年度に帰属 させる。(現金主義の採用) 期末日後20日以内の出納整理期間を設けることができ る。 11 アクシオンとはプログラムを具現化する単位。詳細は3章を参照のこと。

(15)

15 第30条 財務会計の原則 財務会計は権利義務の承認に基づき執行され、記帳され る。(発生主義の採用) 財務会計に適用される会計原則は、国の活動の特殊性に よる場合を除き、企業会計と同様である。 第31条 出納官の役割 出納官は第27条から30条の規則及び原則を遵守する 出納官は手続及び会計の規則の誠実性を確保する。 三会計の特徴と役割は以下の通りである。 ①予算会計の役割と特徴 予算の執行管理を行う予算会計は、現金主義により歳入と歳出を記録するこ と、出納整理期間を期末日後20日間設定できることがLOLF第28条で定められて いる。現金主義が採用される理由として、木村(2003a)12 は、実際に国庫に収め られた金額(歳入)を上限として現金の支払額を決めることで、実際に入金さ れていない収入を計上するといった発生主義にともなう不確実性を排除できる こと、会計年度の独立を確保することで財政規律を確実にできることを指摘し ている。また、IFAC(2003)13は、議会や予算管理者が予算の執行状況を把握す るためには現金主義による方が分かりやすいことを挙げている。 ②財務会計の役割と特徴 財務会計は、発生主義に基づき記帳することが、LOLF第30条により定められ ている。これにより、現金の収受に関わらず権利と義務の確定日を基準とした 国の資産と負債の状況を把握することができ、LOLF第27条で定める「国の資産 及び財務状況を正確に把握する」ことが可能になる。発生主義の会計基準が採 用されたことによる利点として、第一に国の資産と負債を正確に把握すること ができること、第二に中長期に亘る国の財政構造を把握できること、第三に減 価償却費のように現金の支出を伴わない費用額も計上されるため、政策実現の ための総コストを把握できることが挙げられる。第二で掲げた中長期間の財政 状況の把握は、貸借対照表を作成し、将来の費用発生額が負債として認識され るため、単年度の収支の状況と比較し、将来の財政状況を見越した財政運営が 可能になることを意味する。また、第三で掲げた総コストの把握が実現するこ とで、政策実現のために投入された全ての資源の有効性の検証を行なうことが 可能になる。 12 木村(2003a) p.93 13 IFAC(2003) p.18

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16 財務会計は、2004年に定められた「仏中央政府会計基準」によることが定め られている。同会計基準は、原則として、フランスの企業や地方公共団体等と、 同様の会計原則が適用されている。従って、中央政府の会計処理の考え方・手 法や財務諸表の様式は、企業のそれとほぼ同様である。そのため、企業の会計 基準を理解している者であれば、中央政府の財務諸表を理解することが可能で あり、国の財務状況に対する国民の理解可能性が高まったといえる。 仏中央政府会計基準で定められる財務諸表の体系は、下記の図表の通りであ る。 図表 3 財務諸表の体系 貸借対照表 資産、負債、及びその差額である純資産を表示する。 純費用等計算書 純費用計算書(業務費用、介入費用、財務費用の純額を表 示したもの)、主権的収入計算書(税、罰金等の収入の純 額を表示したもの)、当期差額計算書(純費用と主権的収 入の差額を表示したもの)の三表からなる。 キャッシュ・フロー計算書 業務活動、投資活動、財務活動に区分してキャッシュフロ ーを表示する。 附属明細 資産の明細、負債の明細、費用の明細等がある。 (出典)MINEFI(2004a)より新日本監査法人が作成14 これらの財務諸表は仏会計検査院の監査対象である。2006年度決算より、仏 会計検査院は、監査報告書で監査対象の財務諸表に重要な虚偽記載がないこと を保証することを目的とする、保証型監査を実施している。2006年度決算につ いては、監査不能な部分の存在や、内部統制の構築が不十分といった理由から、 限定付適正意見が監査報告書において述べられた。 監査済みの財務諸表について決算審議を行うことで、議会による統制が図ら れている。この統制を実質化するために、LOLF第41条には「年度の予算法案は、 議会が同予算法案の審議を行う年度の前年度の決算法案を第一読会(first resding)において採決する前には、同議会の審議に付すことはできない。」と いう定めがあり、決算審議の可決を翌年度の予算審議開始の条件としている。 14 計算書類の訳語については木村(2004a)を参照した。

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17 このように決算監査や決算審議による、事後統制が重視されるようになった ことはLOLFで定められる会計制度の特徴の一つである。これについて、木村 (2004a)15は、これまで予算制度の補完的な存在であった「決算制度の復権」 と表現している。 ③コスト分析会計の特徴と役割 コスト分析会計は、LOLF第27条により、財務会計で把握された費用額をアク シオンごとに集計することで作成される。コスト分析会計では直接経費、間接 経費、人件費を全て含む、総コストが集計される。

予算改革局16(Direction de la reforme budgetaire, DRB)の研修資料17によると

コスト分析会計の役割には①各政策のコストを算定し、結果を分析し、予測を 修正すること、②業績評価と予算の正当化に必要な要素を明確化すること、③ 行政運営者の意思決定を支援することが挙げられる。つまり、コスト分析会計 を作成することで「この政策の遂行のためにかかった費用はいくらか」「この 市民サービスの提供のためにかかった費用はいくらか」といった、予算会計や 財務会計のみでは得られない情報を得られる。また、コスト分析の結果は年次 業績報告書に記載されるため、成果と費用を対比させ、分析することが可能と なった。 (2) 予算制度の概要 次に予算制度の説明として、予算の構造、予算管理の方法、予算編成の概要に ついて述べる。 予算構造の特徴として、従前の組織別・費目別の予算構造から、ミッシオン・ プログラム・アクシオンという政策目的別の構造に変更されたことが挙げられる。 ミッシオンは省単位程度の大きな枠組みで定められ、その下に我が国における「施 策」に相当するプログラムが置かれる。予算はミッシオンごとに議決される。 15 木村(2004a)p.22 16 LOLF施行に伴い予算局から分離して設置されたLOLF改革を推進する組織。2006年のLOLF完全施行に伴い、現在は 再び予算局に統合されている。 17 MINEFI(2005d)

(18)

18 予算管理の特徴として、予算単位であるプログラムごとにプログラム責任者が 置かれたことが挙げられる。プログラム責任者には、プログラムに認められた予 算や、政策の具体的な実行方法については大幅な裁量が与えられた。また、プロ グラムを事業単位に分割し、事業単位ごとに責任者を配置する権限も与えられて いる。また、人件費を例外としてアクシオン間の予算を流用することも可能であ る。このように、できるだけ現場に予算執行の権限を委譲することで、効率的で 実情に応じた業務運営がなされることが期待される一方、次に述べる業績評価制 度を導入することで、プログラム責任者の成果に対する責任を明確にできる仕組 みになっている。 予算編成の特徴として、「最初の1ユーロからの証明」という考え方・手法が導 入されたことが挙げられる。これは議会に対して、毎年度、すべての予算項目に ついて積算の根拠の説明をすることが求められる制度である。これについては次 項で説明する。 (3) 業績評価制度の概要 業績評価は、国会における予算の添付書類としてミッシオンごとに作成される 年次業績計画書(PAP)と、決算の添付書類である年次業績報告書(RAP)によ り行われる。PAPにはプログラムごとの計画と業績指標が記載される。この指標 により、事業年度終了後に、計画の達成度が測られ、RAPに記載される。 PAPとRAPによる業績評価を行うことで、①プログラム責任者の成果の明確化、 ②国民への説明責任の履行、③成果を重視したマネジメントの導入、④予算の妥 当性の検証可能性の向上、⑤コスト分析会計による費用対効果の評価の実現が期 待される。 ①プログラム責任者の成果の明確化と③成果を重視したマネジメントの導入 は、互いに関連している。業績評価はプログラムごとに行われるため、その実施 に責任を持つプログラム責任者の成果も明らかになる。従って、プログラム責任 者も③の成果を重視したマネジメントを行う必要に迫られ、合理化が促され、資 源の有効活用が図られることが期待される18 18 大場(2007)p.2

(19)

19 また、議会による事前統制として、予算審議において、プログラムを実施する ための予算の根拠を、1ユーロから説明することが求められること(これが「最初 の1ユーロからの証明」である)が、④予算の妥当性の検証可能性の向上に寄与し ている。 ⑤コスト分析会計による費用対効果の評価は、決算時の業績評価の際に資源の 有効活用という視点からプログラムごとのコスト分析が行われることを指す。 なお、PAP・RAPは国会で参照されるのみではなく、ウェブ上19で公開されてい るため、国民も直接その詳細を知ることができる。これにより、国民に対する説 明責任の履行にも役立っているといえる。

2.3 LOLFに関係する主要組織

LOLFに関係する組織について説明を行う前に、その前提となるフランスの統治 構造について、自治体国際化協会(2002)20を参照し、説明を行う。 フランスの現在の体制である第五共和制は、大統領制と議員内閣制が共存して いることから、「半大統領制」と呼ばれる。 大統領は、政府に対して、首相及び閣僚の任免、閣議の主宰、オルドナンス(後 述)及びデクレ21への署名、国防・外交を担当する幹部官僚の任命、軍隊の統帥、 大使の信任状の受領、条約の交渉及び批准等の権限を有する。また、国会への権 限としては、国民議会の解散、法律の審署及び再審議請求、憲法評議会への法律 の審査請求、法律案についての国民投票の実施、臨時国会の召集等がある。大統 領は国民による直接選挙によって選出される。 首相は、大統領に対して各大臣の任免や臨時国会の開催等の提案をする権限を 持つ。また、各大臣の行政事務を統括し、デクレの制定権、国務指揮権、一定の 19 http://www.performance-publique.gouv.fr/ 20 (財)自治体国際化協会(2002)pp.4-10 21 命令事項について固有の行政立法、もしくは、法律の施行令として制定されるものである。

(20)

20 幹部官僚の任命権等を有する。国会に対しては、政府法案を提出する任務を負っ ている。首相は大統領により任命される。 国会は日本と同様に二院制になっており、国民議会(下院)と、元老院(上院) で構成されている。国民議会議員は直接選挙による小選挙区選挙で選出され、元 老院議員は国民議会議員、州議会及び県議会議員の全員並びにコミューン議会の 代表で構成される選挙人による間接選挙で選出される。 憲法評議会は、憲法により設置が規定された機関であり、国会可決後で大統領 が審署する前の法律、及び批准前の条約の合憲性と、国政選挙及び国民投票の適 法性に対して審査等を行う。憲法評議会により、これら法律等に対して違憲の裁 決が下されると、その法律等を発効することはできない。憲法評議会は、大統領 経験者(終身評議員)と、任命制評議員(大統領、両院議長により各三名ずつ選 出される)により構成される。 これらのフランスの統治構造は下記図表に整理できる。

(21)

21 図表 4 フランスの統治機構 フランス国民(本土、海外県 、海外領土) 下院議員 コミューン 議会議員 県議会 議員 州議会議員 (国会) 元老院 議席数331 国民議会 議席数557 憲法評議会(9名) (政府) 首相 各大臣 共和国大統領 オルドナンスの制定 普通選挙 普通選挙 間接選挙 法案の往復 普通選挙 普通選挙 普通選挙 普通選挙 委員の1/3を指名 委員の1/3を指名 委員の1/3を指名 ・大臣の任免(提案) ・行政事務の統括 法案の 提出 国民議会の解散 ・選挙権の適法性審査 ・法律の合憲性審査等 ・デクレの制定 ・法の執行 ・一定の幹部 官僚の任免 ・閣議の主宰 ・首相及び大臣の任命 ・政策の決定・実現 ・行政機関・軍隊の掌握 ・オルドナンス・デクレへの署名 ・軍隊の統師 ・条約の交渉及び批准等 委任 (出典)自治体国際化協会(2002)より新日本監査法人作成 LOLF改革には上記で説明した統治機構の組織の中で様々な機関が関わってい る。既に述べたように国会はLOLFの発案、及び法成立を主導的に進め、LOLF改 革の中心的役割を果たした。政府側では、経済財政産業省(Ministre de l'Economie, des Finances et de l'Industrie, MINEFI、現予算・公会計・公職省)がLOLF改革推進 の役割を担い、LOLF改革を実施するための、新しい会計基準の整備や、実務的な 指針や報告書類の体系を整理するとともに、これらの普及に尽力した。

(22)

22 また、LOLF改革に伴い新たな役割を担うこととなった組織や、新たに設立され た組織もある。仏会計検査院は、LOLFに伴い新たに国の財務書類を保証するとい う役割を担うこととなった。またCIAP(省庁間プログラム監査委員会)が設置さ れ、政府の実施する業績評価及び予算支出の有効性を監査することとなった。 これらのLOLFの組織を整理したものが下記の図である。 図表 5 LOLF に関係する主要組織 検査の実施 (国会) (政府) MINEFI ・予算局 ・公会計総局 ・国家近代化総局 各省庁 CIAP (独立機関) 仏会計検査院 プログラム 監査の実施 予算・決算法の審議と議決 (出典)MINEFI(2004b)より新日本監査法人作成 以下では、これらの組織について説明を行う。

2.3.1

国会 国会は前述の通り二院制になっており、国民議会(下院)と、元老院(上院) で構成されている。 国会は、憲法に列挙された法律事項の立法権を有しているが、特定の事項に関 し、機関を限定して授権法の形で立法権を委任することができる。この委任に基 づく命令はオルドナンス(ordonnance)と呼ばれる。オルドナンスは公布と同時に 発効し、政府は授権法の定める期間内に、承認法案を議会に提出しなければなら ないが、議会が否認しない限り効力は続行する。LOLF以前の予算制度は、1959 年にオルドナンスとして制定されたものであった。

(23)

23

2.3.2

経済財政産業省(MINEFI)22 経済財政産業省は、日本の省庁で言えば財務省と経済産業省が担当する政策及 び政府内の所管事務と相当する業務を担当している。以下、その主要な機能と部 署に関する説明を行う。 (1)財務及び会計に係る役割

経済財政産業省の財務統制は、公会計総局(La direction générale de la

Comptabilité publique, DGCP)の職員が、各省庁に会計担当として派遣されること により行われている。すなわち、日本では各省庁の会計課が担っている業務を経 済財政産業省の職員が担っているのである。彼らは、出向ではなく経済財政産業 省の所属のままで、各省庁の予算管理や会計情報の統括の業務に従事する。以下、 フランスにおける独特な財務統制システムについて詳しく説明する23。 省庁の財務統制は支出命令官(オルドナトゥール)、財務統制官、出納官によ り行われる。支出命令官とは予算の執行権限を有しており、各省庁の大臣もしく は大臣により支払命令権限を委任されたものを指す。財務統制官と出納官は、共 に経済財政産業省の職員であり、各省庁に派遣されて常駐する。つまり、フラン スでは各省庁は自らの業務を推進し政策目的を達成すること、及びその推進に係 る管理を担っており、予算執行の管理は、財務統制官と出納官を通じて経済財政 産業省が担っているということになる。このような仕組みがとられる理由は、省 庁から完全に独立した財務統制官や出納官が、予算管理や会計情報の統括を行う ことによって、財政の均衡、整合性、合規性、品質の担保を行うことができると いう考え方によるものである。 財務統制官は、財政活動の検査、省庁活動の監視、予算限度額の管理等の役割 を担う。具体的には、予算執行の前に、財務統制官は財務法令への準拠性や予算 の範囲内の執行であることの確認や歳出削減努力の観点から予算執行の必要性の 確認を行っている。 出納官は、支出命令官の決定に従いながら、支出・収納行為を行う役割を担っ ている。出納官は、命じられた支出・収納行為が会計法に違反している場合には 22 経済財政産業省は、現在は、予算・公会計・公職省と経済・財政・雇用省に分離されており、LOLF推進の取組みは 予算・公会計・公職省が継承している。 23 詳しくは三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(2007)p.79

(24)

24 出納を拒否する権限を持っている。一方で、適正な認可や法的根拠に欠いた支出 が行なわれた場合には、出納官はその責任が問われる。 (2)経済財政産業省内の LOLF に係る主要部局 ①予算局(Direction du Budget) 予算局は日本の主計局と同様の役割を担っており、政府予算について、中心的 な役割を担う。LOLF施行以後、予算局はLOLF改革を実行する責任を担っており、 予算編成・執行のみならず新しい公会計基準の策定や、LOLF実施に伴うガイドラ インの策定や教育・研修等広範囲に活動している。

②公会計総局(Direction générale de la Comptabilité publique, DGCP)

公会計総局は、全ての歳入歳出を管理する役割を持つ。その管理の範囲には、 中央省庁のみならず地方自治体の財政管理までが含まれる。LOLF改革では、新し い公会計基準の策定や、各省内部の内部統制の構築に貢献した。また、2005年に は、各省ごとに、財政統制官や出納官を統括する予算会計統制部(Service de contrôle budgétaire et comptable ministériel, SCBCM)を設置し、各省庁の管理を強化 した。

③国家近代化総局(Direction générale de la Modernisation de l'Etat, DGME)

国家近代化総局は、省庁間の公会計や公共サービスに関する調整・指示を担っ ている。国家の近代化とは、行政経営の改革を意味した言葉であり、行政の業績 向上を目的としている。そのために、同局は、政府組織において、業務プロセス の見直しや行政事務の簡素化、電子政府化等を推進している。各省庁の近代化支 援のために、リソースの集中、専門家の活用、グッドプラクティスの共有、経験 の集約等を行うことも同局の役割である。

2.3.3

仏会計検査院(Cour des Comptes , CDC)

仏会計検査院は、行政裁判所としての性格を有し、議会や大統領府から独立し た機関である。公会計に関する審判、国の機関又は国以外の公法人に対する会計 検査、公企業(entreprises publiques)の会計及び業務の検査を担っている。これら の検査は行政の品質や効率性、有効性の管理、収入支出の管理が法に従って行な われていることの確認といった観点から行なわれる。

(25)

25

LOLFでは、仏会計検査院に国の財務会計(La comptabilité générale de l'État, CGE24)の保証という新たな役割が与えられた。フランスの会計検査院で特徴的な

ことは議会への補佐の機能を担っていることであり、議会に検査報告書を提出す る以外に、財政状態及び予算政策に関する報告書等を提出することや、議会の委 員会からの質疑への対応を行っている。

2.3.4

省庁間プログラム監査委員会(CIAP)

省庁間プログラム監査委員会(Comité interministériel d'audit des programmes, CIAP)は、省庁間委員会(Comité de pilotage interministériel)の下に設立された、 LOLF改革によるプログラムの評価を行う省庁間組織である。CIAPは、各大臣が 任命する16名の監査官により構成され、予算・決算について議会への提出の前に、 各省の予算積算方法や業績評価について監査を行い、成果の信頼性と分析の客観 性を検討する25。CIAPの役割はあくまで勧告や助言を行うことで、命令権は持た ない。 24 発生主義による貸借対照表や純費用計算書、キャッシュフロー計算書からなる。 25(財)農林水産奨励会農林水産政策情報センター(2007)pp.12-13

(26)

26

3 予算制度の枠組みと実施状況

3.1 制度の特徴

LOLFは、1959年オルドナンスに代わるものとして2001年8月1日に成立した現行 の予算組織法である。仏憲法が「財務法は、組織法(loi organique)の定める条件 にしたがって、国の歳出・歳入を決定する26」、「国会は組織法の定める条件に したがって、財務法案を議決する27」と規定していることから、予算組織法を指 して“財政憲法”と呼ぶこともある。 この予算組織法が定める基本原理にもとづいて、フランスでは毎年の予算は、 法律(予算法)として規定される。 以下では、LOLFにおける予算制度の特徴について、制度設計面、予算執行面お よび予算編成面のそれぞれから、分析を行う。

3.1.1

制度設計面の特徴 LOLF改革の大きな目的の一つとして、「議会における予算審議の形骸性を改善 し、実質的な審議を行える体制を整えること」があった。この目的を達成するた め、LOLF改革において導入された制度面の特徴は、(1)財政の透明性の向上、 (2)予算の理解可能性の向上、(3)議会による統制の強化の三点に集約され る。 (1)財政の透明性の向上 LOLFでは、財政の透明性の向上を実現させるために、「国の経済社会財政の現 状と展望報告書」、「国民負担とその展望報告書」、「国民経済と公的財政の進 展に関する報告書」といった報告書類が新たに作成及び提出され、情報公開が図 られている。 26 憲法34条5段 27 憲法47条1段

(27)

27 これら報告書類により、歳入・歳出・公的部門全体の収支、法令の施行が財政 に与える影響、経済の進展の分析等の情報が、議会に対して十分に提供されるよ うになった。その結果として、議会は予算や経済財政に係る政策について深く議 論できるようになった。 (2)予算の理解可能性の向上 政策目的別予算を旧来の細目別予算に代わって導入したことにより、予算の理 解可能性の向上が実現した。政策目的別予算とは、予算を、予め決定された政策 に対して整合的に配分した予算のことを指す。 従前の1959年オルドナンスでは、予算は組織と費目で管理されていたため、政 策と予算の紐付けがわかりにくく、理解可能性に乏しいものであった。 しかし、LOLFにおいては、組織の概念ではなく、予算組織構造の最上位からミ ッシオン・プログラム・アクシオンと、政策と整合的に構造化された体系で管理 されるため、どの政策に対して、どの様な名目でいくら使用したかということを 明確化することが可能になった。これにより、予算の理解可能性が向上した。 新たに構造化されたプログラム型業績予算の構造および体系上のミッシオン、 プログラム、アクシオンの各概念の定義および機能は、下図表の通りである。 図表 6 フランスのプログラム型業績予算の構造 アクシオン アクシオン アクシオン プログラム ミッシオン 【ミッシオン】 ・予算の議決単位。主要な政策分野に一致 ・戦略と柔軟性を確保した枠組 ・特定の公共政策に資するプログラム全体を包括するも のであり、1つないし複数の行政部局(省)に属 するもの (LOLF第7条より) 【アクシオン】 ・歳出計画・コスト分析会計がなされる詳細な単位 ・予算の参考情報としての位置付け アクシオン アクシオン アクシオン プログラム アクシオン アクシオン アクシオン プログラム アクシオン アクシオン アクシオン プログラム 【プログラム】 上限規制を受ける予算配分単位 ・政策実施に権限を有するプログラム責任者に対して 委任 ・戦略、業績目標、業績指標によって特徴付けられる 目標と関連付けられた1つの活動ないし関連した活動全 体を実施するための歳出をグループ化したもの (LOLF第7条より) (出典)MINEFI(2007f)より新日本監査法人が編集

(28)

28 フランスのプログラム型業績予算は、先述の通り、三段階の構造を持っている。 最上段のミッシオンは、予算の議決単位であり、主要な政策単位と一致してい る。ミッシオンは、「特定の公共政策に資するプログラム全体を包括するもので あり、1つないし複数の行政部局(省)に属するもの28」と定義されている。ミッ シオンには、二種類ある。ひとつは、単一省庁が管理する省庁ミッシオン(missions ministérielle)であり、もうひとつは、複数省庁が共同管理をする省庁間ミッシオ ン(missions interministérielle)である。 次の段のプログラムは、予算の配分単位として機能すると同時に予算執行の単 位となる。プログラムは、「目標と関連付けられた1つの活動ないし関連した活動 全体を実施するための歳出をグループ化するもの29」と定義されている。プログ ラムは、省庁の組織上の単位とは一致していない場合もあるが、単一省庁が管理 を行うものである。 下段のアクシオンは、予算の参考情報として利用され、歳出の計画を策定する 際や、コスト分析会計に基づいた分析を行う際に利用される。アクシオンは、プ ログラムの内容を、さらに細分化した項目で定義される。 図表 7 プログラム型業績予算の例示 ミッシオン:エコロジー・持続可能な開発 プログラム170:気象 アクシオン01:観測と天気予報 アクシオン02:気象分野の研究 プログラム173:鉄道の負債 アクシオン01:RFFの負債 アクシオン02:SNCFの負債 プログラム174:エネルギーと原材料 アクシオン01:… … … 28 LOLF第7条より 29 LOLF第7条より

(29)

29 次に、LOLFの予算構造の特徴を、下図表で、旧来の1959年オルドナンスと新構 造であるLOLFとを対比することで説明する。予算の旧構造と新構造を、①予算構 造、②議決単位及び管理方法、③業績管理方法の3つの観点で比較している。 図表 8 フランスの予算構造の新旧比較 ・プログラムで資源を配賦し、業績を評価する ・予算が効率的かつ効果的に使われたかを検証する ことが困難(説明責任の欠如) 業績管理方法 ・ミッシオン単位で議決するが、実質的にはプログラムで管 理 ・省・章単位で議決するが、実質的には項で管理 議 決 単位及 び 管理方法 ・ミッシオン(70程度)とプログラム(120程度)からなる「目的 別予算」 ・848の項に細分化された「細目別予算」 ・項は目レベルの組織別経費と性格別経費の組合せ 予算構造 新しい構造(2006年度予算より適用) LOLF 旧構造 1959年オルドナンス ・プログラムで資源を配賦し、業績を評価する ・予算が効率的かつ効果的に使われたかを検証する ことが困難(説明責任の欠如) 業績管理方法 ・ミッシオン単位で議決するが、実質的にはプログラムで管 理 ・省・章単位で議決するが、実質的には項で管理 議 決 単位及 び 管理方法 ・ミッシオン(70程度)とプログラム(120程度)からなる「目的 別予算」 ・848の項に細分化された「細目別予算」 ・項は目レベルの組織別経費と性格別経費の組合せ 予算構造 新しい構造(2006年度予算より適用) LOLF 旧構造 1959年オルドナンス 省(ministere~) 章(titres~ ) 部(parties~) 項(chapitres~) ※ 補助金、投資等7つの章に分類 ※ 例「補助金」の章は7つの部に分類 ※4桁のコードで分類 (更に目・細目にブレークダウン) 省(ministere~) 章(titres~ ) 部(parties~) 項(chapitres~) ※ 補助金、投資等7つの章に分類 ※ 例「補助金」の章は7つの部に分類 ※4桁のコードで分類 (更に目・細目にブレークダウン) ミッシオン プログラム 章(アクシオン) ※ 人件費、経常経費、債務負担経費、投資的経費、 介入的経費等、7つに分類 ミッシオン プログラム 章(アクシオン) ※ 人件費、経常経費、債務負担経費、投資的経費、 介入的経費等、7つに分類 (出典)田中(2005)より新日本監査法人が編集 ① 予算構造の変化 予算構造について、旧構造では、組織別と費目別の組合せで管理されており、 省・章・部・項の構造になっている「細目別予算」であった。これに対し、新構 造では、ミッシオン・プログラム・章(アクシオン)で管理される「政策目的別 予算」へと変更された。 ② 議決単位及び管理の変化 議決単位について、旧構造では、省・章単位であったが、新構造では、ミッシ オン単位となった。管理方法について、旧構造では、項単位で管理をしていたが、 新構造では、プログラム単位で管理をしている。 ③ 業績管理への影響 業績管理への影響について、旧構造では、予算は項単位で管理されることから、 業績と予算を関連づけて管理を行うことが困難であった。しかし、新構造では、 プログラム単位で予算を配賦することで、政策目的別に予算の執行状況を管理す

(30)

30 ることができるようになり、業績と予算を関連づけて評価することが可能になっ た。 次にLOLF導入により、予算構造が項単位からプログラム単位へ変化した具体例 を、司法省の事例を用いて下図表で提示する。なお、司法省はミッシオンの単位 が省の構成と一致している。 図表 9 項からプログラムへの変化の例 従来: 30 項 3項 – 役務費 現役職員-給与 退職職員 – 年金・手当て 現役・退職職員の社会福祉コスト 庁費 補助金 雑費 4項 – 政治的介入 政治的・行政的介入 社会施策 – 援助・連帯 5項 – 国家的投資 運営費その他の機能 6項 – 投資的補助金 文化的・社会的設備 現在: 6 プログラム 刑務所・矯正施設の運営 司法政策・関連機関の支援 司法システム 裁判所の管理運営 青少年の法的保護 司法・法的支援に対するアクセス (出典)予算・公会計・公職省ウェブサイト30より新日本監査法人が編集 旧構造では、予算は役務費(現役職員の給与、庁費等)や政治的介入(政治的・ 行政的介入、社会施策‐援助・連帯)といった項の区分で管理されていたため、 各政策目標別の予算配賦を理解することは困難であった。新構造では、裁判所の 管理運営、司法システムといったプログラムの区分で管理されるようになったた め、予算が政策目的にあわせて配賦され、予算の理解可能性が高まった。 30 http://www.minefi.gouv.fr/lolf/16_1_1.htm

(31)

31 (3)議会による統制の強化 LOLF導入により、議会は予算を修正する権利を獲得すると共に、審議と議決に 対して影響力を持つことができるようになった。 LOLF以前は、議会は予算法に対して修正を行う権限を持っていなかったが、 LOLF導入以後は、これが可能になり、財政に対して主体的に関わることができる ようになった。具体的には、LOLF第47条により、議会は予算を部分的に増額修正 する権利を得て、これによりミッシオンの枠内で、プログラムを新設することが できるようになった。また、議会は、一定の枠内という条件付きで、プログラム 間の支出許容費31の分配を行うことができるようになった。 予算審議については、LOLF以前は、前年以前より継続している既定費と、新規 事業に対する新規経費に完全に分けて行われていた。新規経費については個別に 審議を行っていたが、既定費については、まとめて一回の議決で支出決定を行っ ていた。すなわち、94%の予算が一回の議決で支出決定をされていた。そのため、 既定費に関してはほとんど審議が行われていなかった。 しかし、LOLF導入以後は、議決はミッシオンごとに行われるため、全ての予算 が審議の対象となった。2006年1月時点では全47ミッシオンが審議され、議決され た。 このような変化により、議会は予算の修正や審議に強い影響力を持つようにな った。下図表は、LOLF前後の予算の議決の変化を示したものである。 図表 10 LOLF 前後の予算の議決の変化 2006年1月より 2005年まで 47ミッシオン 47議決 既定費は、 1議決で行う 新規経費は 個別に議決 を行う (出典)MINEFI(出版年不明)より新日本監査法人が作成 31 Credit de Paiment, CP 単年度の支出の上限額を設定する。

(32)

32

3.1.2

予算執行面の特徴 LOLFによる予算執行面の改革の特徴には、(1)歳出決定に関する権限委譲、 (2)新しく作られた責務の連鎖、(3)複数年度予算的機能の導入の三点があ る。 (1)歳出決定に関する権限委譲 LOLF以前は、予算は項の単位(例として、役務費、国家的投資費用等)で管理 され、執行に関しても厳しい制限があった。また、執行権限は大臣にあった。 それに対して、LOLF導入以後は、予算はプログラムの単位で管理されるように なった。加えて、新たに置かれたプログラム責任者が歳出の権限と責任を持つこ とで、大臣からの権限委譲が実現した。また、同一プログラム内における、章間 (アクシオン間)の歳出予算の流用32は、原則的にはプログラム責任者の判断で 実施できるようになった。 (2)新しく作られた責務の連鎖 上記のように、LOLFにより、プログラムごとにプログラム責任者が配置された ことで、従来、大臣が保有していた予算執行に係る権限と責任がプログラム責任 者に委譲された。この体制の下では、プログラム責任者は設定された目標に対し てコミットメントを求められ、予算執行の結果に対する説明責任も負う。

さらに、プログラム責任者も、地方のBOP責任者(responsables de BOP)33やUO

責任者(responsables de UO)34に対して、権限と責任を委譲している。BOP責任

者やUO責任者は、プログラム責任者と同様に、予算執行に係る裁量を所有すると ともに、プログラム責任者に対する成果報告の義務を負っている。 このように権限と責任が連鎖する体制は、「新しく作られた責務の連鎖35」と 表現される。 32 本稿では、プログラム内の章間で予算を移動することを流用とし、プログラム間で予算を移動することを移用とする。 33 budget operationnel de programme の責任者のこと。BOPとはプログラム予算単位の意。

34 Unité Opérationnelleの責任者のこと。UOとは事業単位の意。 35 guide pratique de la LOLFより

(33)

33

(3)複数年度予算的機能の導入

1959年オルドナンスでは、債務負担行為(Autoriastion de engament, AE)は投 資的支出にのみ認められていたが、LOLF改革により、すべての支出について認め られるようになった。債務負担行為は複数年度にわたる支出金額の上限を設定す るものであることから、単年度としての予算の制約は緩和されることとなり、支 出の自由度が高まった。これを通じて、結果として、LOLFにより複数年度に亘る 予算編成が実質的に実施できる仕組みとなった。 政策実務上、複数年度で運営される政策が多数存在するが、これらの政策に対 して、厳密な予算の単年度主義が適用されると、政策の運営が阻害されることが ある。しかしLOLF改革により、複数年度に亘る予算編成を実質的に実現できる機 能が導入されたことで、政策運営の自由度が高まった。

3.1.3

予算編成面の特徴 LOLFによる予算編成面の改革の特徴としてあげられるのは、「最初の1ユーロ からの証明」である。この概念について、以下で説明を行う。 (1)最初の1ユーロからの証明 「最初の1ユーロからの証明」とは、前年度予算の予算配分結果にとらわれず、 必要額や優先順位などについて、予断なく「ゼロ」から検討する方法である。こ の方法は、一般的にはゼロベース予算と言われる。LOLFでは、「最初の1ユーロ からの証明」は、予算の支出の予測と執行の両方の観点で、議会に対して議論の ベースとなる情報を提供するための重要な手法とされている36。LOLFにおいて、 最初の1ユーロからの証明という表現を用いるのは、その予算編成手法がゼロベ ース予算の方法であるということを内外に対し明確に示すためである。 「最初の1ユーロからの証明」の目的は、すべての予算案において、その予算 額が適切であることを証明することである。そのため、予算額の見積りは、その 積算根拠となる詳細情報をもとにして、積算で計算及び説明される必要がある。 以下で、「最初の1ユーロからの証明」の実際の運用について説明する。実務 的には、前年度予算の実績を一部考慮して実施されていることが分かる。 36 http://www.performance-publique.gouv.fr/le-budget-et-les-comptes-de-letat/

(34)

34 ① 人件費の算定方法 例として「最初の1ユーロからの証明」で定める人件費の算出プロセスを説明 する。人件費は、4段階を経て算出される。下図表はその4段階を一覧で示したも のである。 図表 11 予算編成の 4 ステップ

+/-

+/-

=

n年の実績or見積 基準値の修正 年換算 人員の変化老化、専門性の変化 n+1年の予算 【ステップ1】: 予算の基準値の設定 【ステップ2】: 基準値の修正 【ステップ3】: 年をまたがるFTEの調整 【ステップ4】: 給与総額の増加要因の整理 【ステップ1】 【ステップ2】 【ステップ3,4】 (出典)MINEFI(2005d)より新日本監査法人が翻訳 以下で各ステップを説明する。 1) ステップ1:予算の基準値の設定 次年度の予算策定を実施するにあたり、本年度の予算の実績または本年度の 予算の見積りに基づいて次年度予算の基準値を設定する。 2)ステップ2:基準値の修正 本年度予算で支払った給与のうち、前年度分の未払分(本来、前年度に払わ れるべきであったが、事情により本年度に支払われたもの)を、次年度予算の 基準値から差引く。 当年度の給与の未払分(本来、本年度に払われるべきであったが、ストライ キ等の理由で支払われなかったもの)は、次年度の基準値に計上される。下図 表は、基準値の修正ルールを図示したものである。

図表   59  「企業に対する援助の適正性」に関する近代化監査  対象省庁  経済財政産業省  監査対象事業に 関連するプログ ラム ・  物品と役務に関する規制と安全な取引の確保 ・  産業発展  ・  技術に関するリスクの管理と防止、及び産業の発展  ・  鉱山に関する負債  問題意識  経済的・社会的な成果が明確にされないまま、長期間に亘り、企業 の発展のために国や地方自治体から企業に補助金が出されている。 補助金に関する包括的な調査がないため、補助事業の効率性を測る ことができない。成果の測定には

参照

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