第 7 章 GNL モデルにおける集計ルールの導出 121
7.4 GNL モデルにおける集計ルールの導出
本節では,まず 1 回の集計を行なうブランド選択モデルにおいて,1) ネストの集計,2) 選択 肢の集計,それぞれの場合について集計ルールを示し,1)の拡張として,出発地,目的地計2 回 の集計を行なう,3)交通機関選択モデルにおけるネストの集計について集計ルールを示す.なお,
ここから先は,すべて消費者を表わす上添字h が付くため,これを省略する.
7.4.1 ブランド選択モデル 1 :ネストの集計
ここでは集計例と同様に,まずネストとして商品構成要素j を選択し,次に商品 kを選択する ものとする.ネスト(商品構成要素)をj ∈Jという表現を用いよう.ここで j は統合前のネス ト,J は統合後のネストを意味している.
ここで求めるべき集計ルールとは,V˜J,VJ′,VJ k に関しての条件を指す.条件2 をネストj に 適用し,GNL モデルの選択確率式(2.47)に代入することにより,
exp
(V˜J+VJ′ )
=∑
j∈J
exp
(V˜j+Vj′ )
(7.5) を得る.ここで,条件 1 より
VJ′ = ln∑
j∈J
expVj′ ∀j (7.6)
であるため,式(7.5)は,
exp
(V˜J+VJ′ )
=∑
j∈J
exp
(V˜j+VJ′ )
(7.7) と書き直せる.ここで,式(7.7)より V˜J に関する部分を消去し,
V˜J = ln∑
j∈J
exp ˜Vj (7.8)
を得る.式(7.8)を式(7.7) に代入し,これを整理することにより,
VJ′ = ln∑
j∈J
exp
(V˜j+Vj′
)−ln∑
j∈J
exp ˜Vj (7.9)
127 を得る.さらに条件2 を結合確率Qˆk(j),Qˆk(J) について適用する:
∑
j∈J
Qˆk(j) = ˆQk(J). (7.10)
ここで,結合確率Qˆk(j),Qˆk(J) は,
Qˆk(j) :=PjPk|j, (7.11)
Qˆk(J) :=PJPk|J (7.12)
なる確率である.読者は,IvanovaのNL モデルへの適用例を見て,
Qˆk(j) :=
NJ
∑
J=1
∑
j∈J
PjPk|j, (7.13)
Qˆk(J) :=
NJ
∑
J=1
PJPk|J (7.14)
として条件2 が適用されるのではないかと考えるかもしれない.しかし,このような適用の場合,
VJ k に関する条件を明示的には求めることができなくなる.
ここで条件 2 が適用されるのは,本質的には Pk|j,Pk|J に関してであり,j → k という「選 択経路」ごとに集計ルールが適用されるべきである.データとしてj が観測可能か否かに限らず,
集計ルールとして「選択経路」ごとの整合性が必要である.集計前の選択肢においてPˆj は計算さ れており,これと整合的に PJ も計算される.つまり,Qk について整合的であるルールは,Pj, PJ とPk|j,Pk|J がマルコフ性を有するため,残りの Pk|j,Pk|J に関して整合的である必要があ る.これはブランド選択モデルだけではなく,交通機関選択モデルの出発地側も同様である.
式(7.10)は PJPk|J =∑
j∈J
PjPk|j ⇐⇒Pk|J =
∑
j∈JPjPk|j
∑
j′∈JPj′
(7.15) と修正される.式(7.15)は
Pk|J = (
γkJexp (
VJ k+ ˆVk ))1/µJ
∑
k′∈NJ
(
γk′Jexp (
VJ k′ + ˆVk
))1/µJ = (
γkJexp (
VJ k+ ˆVk ))1/µJ
(expVJ′)1/µJ
=
∑
j∈JPjPk|j
∑
j′∈JPj′
(7.16)
と等価である.式(7.16)について対数を取り,1/µJ で除すことにより,
VJ k =VJ′ −Vˆk+µJln ( ∑
j∈JPjPk|j γ1/µkJ J∑
j′∈JPj′
)
(7.17) を得る.最後に条件3 を式(7.17)に代入し,
VJ k =VJ′−Vˆk+ Υ, (7.18)
Υ :=µJln
∑
j∈JPjPk|j (∑
j∈Jγkj
)1/µJ∑
j′∈JPj′
(7.19)
となる.
これらの式のうち,式(7.8),(7.9),(7.18)が,GNL モデルにおけるネストを集計した場合の 満たすべき集計ルールとなる.ここで注意すべきは,γkJ と異なり,µJ に関するルールは導出さ れないという点である.これは,ネストごとの類似度パラメータが同一(µJ =µj :=µ ∀j, J)で ない限り,集計後に新たに最尤推定もしくはその他の方法,ルールでパラメータ設定をしなけれ ばならないことを意味している.
7.4.2 ブランド選択モデル 2 :選択肢の集計
次に,ネストを構成する商品構成要素を集計するのではなく,選択肢であるブランドを集計す る場合を考える.ネストの集計と同様に,選択肢(ブランド)を k ∈K という表現を用いよう.
ここで kは統合前の選択肢,K は統合後の選択肢を意味している.
ネストを集計した場合は,V˜J,VJ′,VˆJ k に関しての条件三つが必要であったが,今回は VˆjK, VˆK に関しての二つとなる.条件2 をPˆk|j,PˆK|jに適用することにより,
(
γKjexp (
VjK+ ˆVK ))1/µj
= ∑
k∈K
( γkjexp
(
Vjk+ ˆVk ))1/µj
(7.20) を得る.ここで,条件 1 より,
(
γKjexp (
VjK+ ˆVK ))1/µj
= ∑
k∈K
( γkjexp
(
VjK+ ˆVk ))1/µj
(7.21)
となる.式(7.21) をVˆK について解くと,
VˆK =µjln 1 γKj
(∑
k∈K
(
γkjexp ˆVk
)1/µj)
(7.22)
129 を得る.ちなみに式(7.22)の条件は,Pˆj′ に条件1を適用しても同様に得られる.次に,式(7.22)
を式(7.20)に代入し,整理すると,次の条件を得る:
VjK =µjln (
1 γKj
∑
k∈K
(γkjexpVjk)1/µj )
−µjln (
1 γKj
∑
k∈K
(
γkjexp ˆVk )1/µj
)
. (7.23) これらの式のうち,式(7.22),(7.23)が,GNLモデルにおけるブランド選択モデルでネストを 集計した場合の満たすべき集計ルールとなる.選択肢を集計化した場合には,ネストを集計化し た場合のようなアロケーション・パラメータに関するルールは存在しない.そのため,集計化に 伴なう新たなパラメータ推定を行なうことを避ける意味において,説明変数により構造化した構 造化GNL モデル[99] のような形で,アロケーション・パラメータを集計前に推定することが望 ましい.
7.4.3 交通機関選択モデル
ここでは,まずネストとして目的地のゾーンdを選択し,次に交通機関kを選択するモデルを 考える.交通計画分野に精通していない方にとっては,この選択構造(順番)は奇異に映るかも しれないが,四段階推計法 (例えば[35])のステップに準拠したものである.当然,各交通機関の 効用にはその交通機関により行くことが出来る目的地の効用が説明変数として加わることとなる.
交通機関選択モデルの場合,集計化された選択人数は出発地のゾーンo,目的地のゾーン dを 用い,
Hko=HoQok=Ho
Nd
∑
d′=1
exp
(V˜do′ +Vd′o′ )
Nd
∑
d′′=1
exp
(V˜do′′+Vd′o′′
) (
γkd′exp (
Vdo′k+ ˆVko ))1/µd′
∑
k′∈Nd′
(
γk′d′exp (
Vdo′k′+ ˆVko′
))1/µd′
(7.24)
と修正される.ここで,Hko はゾーン oにおいて交通機関kを利用する人数,Ho はゾーンo を 出発地とする人数,Qok はゾーンoにおける交通機関kの選択確率であり,式(7.3)–(7.10)と対応 する部分についても上添字o がつく.式(7.24)の意味するところは,交通機関選択モデルにおい ては,選択確率における選択肢だけではなく,ゾーンの人数Ho についても集計化されるというこ とである.つまり,ブランド選択モデルで示した集計ルールはそのまま適用することができない.
前節までと同様に,ゾーンの集計化を o∈O,d∈Dという表現を用いよう.ここでo, d はネ ストを統合前,O, D はネスト統合後のゾーンであり,それぞれo, dはO, Dに統合(集計)され ることを意味している.
さて,我々は,式(7.24)と同様の
HkO=HI
ND
∑
D′=1
exp
(V˜DO′+VD′O′ )
N∑D
D′′=1
exp
(V˜DO′′+VD′O′′
) (
γkD′exp (
VDO′k+ ˆVkO
))1/µD′
∑
k′∈KD′
(
γk′D′exp (
VDO′k′ + ˆVkO′
))1/µD′
(7.25)
に関して集計化された場合のO, Dにおける確定的効用(VDO, VD′O, VDkO) に関する集計ルールを見 つけたい.ここで,VD′O は以下の式で表される効用である:
VD′O:=µDln ∑
k′∈KD
(
γk′Dexp (
VDkO′ + ˆVkO′
))1/µD
. (7.26)
Ivanovaと同様に,まず 目的地dについてのみ集計化しよう.目的地側の集計ルールは,ブラ
ンド選択モデルにおいてネストを集計した場合と同様に,
V˜Do = ln∑
d∈D
exp ˆVdo, (7.27)
VD′o= ln∑
d∈D
exp
(Vˆdo+ ˆVd′o
)−ln∑
d∈D
exp ˆVdo, (7.28)
VDko =VD′o−Vˆko+µDln
( ∑
d∈DPdoPko|d (∑
d∈Dγkd)1/µD∑
d′∈DPdo′ )
(7.29) となる.ここでブランド選択モデルとの違いは,添字o がつく点以外には存在しない.
次に出発地側の満たすべき集計ルールを示そう.条件1 をV˜Do,VD′o に適用し,
exp
(V˜DO+VD′O )
=∑
o∈O
Ho HO exp
(V˜Do +VD′o )
=∑
i∈I
Ho HO exp
(V˜DO+VD′O )
(7.30) を得る.ここから目的地側と同様に,
V˜DO= ln∑
o∈O
(Ho
HOexp ˜VDo )
, (7.31)
VD′O= ln∑
o∈O
(Ho
HOexp
(V˜Do +VD′o
))−ln∑
o∈O
(Ho
HOexp ˜VDo )
(7.32) を得る.さらに,標本抽出理論を条件付き確率PkO|D に適用すると,
PkO|D = QˆOk(D) PdO =
∑
o∈O Ho
HO
Qˆok(D)
∑
o∈O Ho
HOPDo (7.33)
と書き表わされる.これは,目的地側と同様に,
PkO|D = (
γkDexp (
VDkO + ˆVkO ))1/µD
∑
k′∈KD
(
γk′Dexp (
VDkO′ + ˆVkO′ ))1/µD
131
= (
γkDexp (
VDkO + ˆVkO ))1/µD (expVD′O)1/µD =
∑
o∈OHoQˆok(D)
∑
o∈OHoPDo (7.34)
と等価である.式(7.34)について対数を取り,1/µDで除すことにより,
VDkO =VD′O−VˆkO+µDln
( ∑
o∈OHoQˆok(D) (∑
d∈Dγkd
)1/µD∑
o′∈OHo′PDo′ )
(7.35) を得る.これらの式のうち,式(7.29),(7.31),(7.34)が,GNL モデルにおける出発地側の満た すべき集計ルールとなる.
出発地,目的地あわせ,式(7.27)–(7.29),(7.31),(7.32),(7.35)が全体として満たすべき集計 ルールである.