第 8 章 結論 138
8.2 今後の展望
前節に示したように,本研究では,様々な方面から GNL モデルについてその性質や意味づけ を研究した.しかし,なお若干の理論的課題,技術的課題と,様々な場面での実証が必要である.
理論的課題として,確率的顕示選好の弱公理と強公理の明確な対応を示し,GNLモデルの弱公 理的な意味合いを示すことである.また,Aditive Utility Theoryとの近似性についても理論的解 明が期待される.近年,Fosgerau et al. (2010) [39]が示しているように,GNL モデルの構造と ある種のモデルのクラスとの関係性が明らかになりつつあり,今後の発展が期待される.
マーケティングにおけるブランド選択モデルにおける課題は,本研究では行なわれていないPOS データからの心理的効果の実証が挙げられる.ただし,単なる最尤推定では,選択肢集合の違い による心理的効果を十分推定することは難しいと考えられ,重み付け等の手法が必要となるだろ う.また,現在,心理的効果を考えずに,ヒューリスティクスに行なわれているライン拡張 [36]
が行なわれた際のデータでの効果の検証も実務に適用する際には必要となるだろう.
技術的課題としては,ブランド選択モデルにおけるGNL モデルのパラメータ推定方法の改良が 挙げられる.これは,GNLモデルの同時最尤推定を行なう際の対数尤度関数が凸とならず,安定 的にパラメータ推定ができないこと[134]を克服しようとするものである.この問題に対し,メタ
141 ヒューリスティクスを活用したパラメータ推定方法[106, 37, 66]が GNL モデル以外の離散選択 モデルで提案されている.その多くが実数値Genetic Algorithm(例えば Davis, 1991 [30]) を 用いたものであるが,筆者は特に,複数の NL モデルの線形和的に構築されるGNL モデルの構 造を考えると,Particle Swarm Optimization (PSO) [61] が有力な方法論の基本となると考えて いる.また,推定対象のパラメータ数を減らし,凸性を減少させ,計算不可を低減する上では,パ ラメータをデモグラフィック要因や商品の構成要素に起因する要因で説明する,パラメータの構造 化(例えば,Prashker and S. Bekhor, 1998 [98]; Adachi et al., 2011 [2])が有力な手法となり得 るだろう.
変数表
次に本研究で用いた変数をまとめる.
変数 定義
Γ Γ(x) :=x/(1 +12x) なる関数
∆ :={δ∈RNk|δk≥0 and ∑
kδk= 1}
Θ :=
Nk
∑
k=1
exp(Vkh′ −Vk) Λ ラグランジアン
Λ:集計レベルの等価エントロピー・モデルのラグランジアン
Λˆ1:非集計レベルの[step1]における等価エントロピー・モデルのラグランジアン Λˆ2:非集計レベルの[step2]における等価エントロピー・モデルのラグランジアン Ξ :={ϵh s.t. Vkh+ϵhk > Vkh′ +ϵhk′ ∀k′ ̸=k}
Υ := ln
(P 1
j∈Jγkj
(P
j∈JPk|jPj
P
j′∈JPj′
)µj)
Φ GNL モデルの選択確率式各項 Φ1:=
( ∑
k′∈Kj
(γk′jexpVkh′
)1/µj
)µj
Φ2:=
Nj
∑
j′=1
( ∑
k′∈Kj′
(γk′j′expVk′)1/µj′
)µj′
Φ3:=(
γkjexpVkh)1/µj
Φ4:= ∑
k′∈Kj
(γk′jexpVkh′)1/µj
Φ5:= ∑
k′∈Kj
((γk′jexpVkh′)1/µj
Xk′m
) Ψ :=∑Nh
h′=1ln Φ4
Ω 分散共分散行列
142
143
変数 定義
α 効用関数パラメータ
α1:価格に関するパラメータ
α2, α3, . . .:その他の属性に関するパラメータ α0k:固有選好度(選択肢k固有のパラメータ)
αil:潜在クラス iの l番目属性に関するパラメータ
α0ik:潜在クラスiの固有選好度(潜在クラスi,選択肢k固有のパラメータ)
β 効用関数の単調変換パラメータ γ アロケーション・パラメータ
γkj:選択肢k,ネストj のアロケーション・パラメータ δ 選択結果を表わす二値変数
δk:選択肢k を選択した場合1,その他0
δj,kh :ネストj,選択肢k を選択した場合1,その他0
δi,j,kh :潜在クラスi,サブ潜在クラスj,選択肢 kを選択した場合1,その他0
ϵ 確率的効用,誤差項
ϵhk:消費者h の選択肢k の確率的効用 ˆ
ϵhk:GNL モデルにおける選択肢 k のみに依存する確率的効用 ϵhjk :=ϵhk−ˆϵhk
ζ 社会的余剰の積分経路
η サブ潜在クラスの類似度パラメータ(5章)
ηj:サブ潜在クラスj の類似度パラメータ θ 汎用パラメータ
θm:[CCM], [NCCM], [LAM] におけるm番目属性のパラメータ θ1,θ:[RAM] におけるパラメータ
ι セグメント・サイズ
κ ω とともに一次同次の凹関数であり r に関して非減少である関数(2章)
変数 定義
λ ラグランジェ乗数
λ:集計レベルにおける確率としての制約条件に対応するラグランジェ乗数 λh:Λˆ2 における確率としての制約条件に対応するラグランジェ乗数 λhj:Λˆ1 における確率としての制約条件に対応するラグランジェ乗数 λk:∂L1/∂α0k に対応するラグランジェ乗数
λkˆ:∂L1/∂γkj に対応するラグランジェ乗数 λj:∂L2/∂µj に対応するラグランジェ乗数 λm:∂L1/∂αm に対応するラグランジェ乗数 µ 類似度パラメータ
µj:ネストjの類似度パラメータ µi:潜在クラスiの類似度パラメータ ν νk:= ˜UI(p−qk,r,wk; ˜U)
ξ 観測された選択肢の属性を特定する写像 π 選択確率関数:πk(QB,r,wB,s) :=Q(k|B,s)
ρ 相関係数
ρkk′:選択肢k, k′ の選択確率間の相関係数
σ 確率測度
τ セグメント・サイズ
ϕ ϕk:= ∑
j′∈Ji′
( ∑
k′∈Kj′
(γkjYkh′
)1/ηj
)ηj′/µi′
χ χk:= ∑
k′∈Kj
(γk′jYkh′)1/ηj
ψ ψl:= (γljYlh)
ω κとともに一次同次の凹関数であり rに関して非減少である関数(2章)
145
変数 定義
α 効用関数パラメータ・ベクトル δ 選択結果ベクトル
ϵ 誤差項集合 θ パラメータ集合
θ∗:最尤推定されたパラメータ集合 θA:集計された場合のパラメータ集合 λ ラグランジェ乗数集合
ω Z3 の要素表示
変数 定義
B 予算(確定的な財の消費数の組み)
C 選択ルール
D 集計された(束ねられた)目的地ゾーン(7章)
E 弾力性
E(k):選択肢kの価格弾力性
E(k, k′):選択肢k,k′間の交差弾力性 F 累積確率密度関数
FB:予算集合B の下での,確率密度関数 G 社会的余剰関数
H 人数
Hko:ゾーンo を交通機関k を用いて出発する人数 Ho:ゾーンo を出発する人数
J 集計された(束ねられた)ネスト(7章)
K 集計された(束ねられた)選択肢(7章)
L 尤度関数
M 属性空間の中央値(6章)
変数 定義
N 数
Nk:選択肢数 Nj:ネスト数 Ni:潜在クラス数 Nm:効用関数属性数 Nt:試行回数
Nk:=∑Nh
h′=1
∑Nj
j′=1 δkh′|j′
µj′
Nkj :=∑Nh
h′=1
∑Nj
j′=1 δk|j′h′ µj′γkj′
O 集計された(束ねられた)出発地ゾーン(7章)
P 選択確率
Pjh:消費者h のネスト j の選択確率
PjA:集計された集団 Aのネスト j の選択割合 Pjkh:消費者h のネストj,選択肢k の同時選択確率
Pijkh :消費者 h の潜在クラスi,サブ潜在クラスj,選択肢k の同時選択確率 Pkh|j:消費者 h がネストj が選択された状況で,選択肢kを選択する確率 PkA|j:集計された集団 Aがネスト j が選択された状況で,選択肢k の選択確率 Pkh|i,j:消費者hが潜在クラスi,サブ潜在クラスjに所属した上で選択肢kの選択確率
Q 選択確率
Qhk:消費者h の選択肢 k選択確率
QAk :集計された集団Aの選択肢 kの選択割合 Qˆk(j) :=PjPk|j:結合確率
R 参照点を表わす添え字 S 心理的効果の大きさ
ZC:弱妥協効果の大きさ ZA:弱魅力効果の大きさ T Tとして行列の転置
147
変数 定義
U 直接効用関数
Ukh:選択肢kの消費者h にとっての効用
Ui,j,kh :潜在クラスi,サブ潜在クラスjに消費者h が所属するときの選択肢k の効用
UI:間接効用関数 V 確定的効用関数=確定項
Vkh:選択肢kの消費者 h にとっての確定的効用
V˜jh:ネストj のみに依存する消費者 h にとっての確定的効用
Vjkh:選択肢k,ネストj 両方に依存する消費者 h にとっての確定的効用 Vj′ :=µjln∑
k′∈Kj
(
γk′jexp(Vjkh′+ ˆVkh) )1/µj
:ログサム Vˆkh :=Vkh−V˜jh−Vjkh
Vi,kh:潜在クラスiに属する消費者h の選択肢k の確定的効用
X 属性値
Xkm:選択肢kのm 番目属性値 Xkmj :=∑Nj
j′=1
∑Nk
k′=1
δhk′|j′Xk′m
µj′
Y := expV Ykh = expVkh
Z 集計的等価エントロピー・モデルのラグラジアン各項 Z1 :=−∑Nj
j′=1
∑Nk
k′=1PjA′k′VkA′
Z2 :=∑Nj
j′=1
∑Nk
k′=1µAj′PjA′k′ln P
j′Ak′
γA
k′j′
1/µA
j′
Z3 :=∑Nj
j′=1
{(
1−µAj′) (∑Nk
k′=1PjA′k′
)
ln(∑Nk
k′=1PjA′k′
)}
変数 定義
A 魅力効果
B 予算集合の元(ユニバース)
C 妥協効果
D 離散的選択肢の需要関数 D(k|B,s; ˜U) :=−
∂U˜I∗
∂qk
∂UI∗˜
∂p
E エントロピー・最大化問題 E1:= infPh
k|j∀h,j,k
∑Nh
h′=1
∑Nj
j′=1
∑Nk
k′=1
[
Pkh′′|j′lnPkh′′|j′ ] E2:= infPh
j∀h,j
∑Nh
h′=1
∑Nj
j′=1
[
Pjh′′lnPjh′′
¯¯¯¯E1∗
]
G GEV 母関数,Gk :=∂G/∂Ykhより高次偏微分についても同様 H :=∇2Z3
I 間接効用関数を表わす添え字 J サブ潜在クラス集合
K 選択肢集合
Kj:ネストj に所属する選択肢集合 L 対数尤度最大化問題
L1 := max αm∀m
α0k∀k γkj∀(k,j)
∑Nh
h′=1
∑Nj
j′=1
∑
k′∈Kj′δkh′′lnPkh′′|j′(αm′, α0k′, γk′j′) L2 := maxµ
j∀j{∑Nh
h′=1
∑Nj
j′=1δhj′′lnPjh′′(µj′)|L∗1} L′ := sup αm∀m
α0k∀k γkj∀(k,j)
µj∀j
∑Nh
h′=1
∑Nj
j′=1
∑
k′∈Kj′δjh′′,k′
(
lnPjh′′ + lnPkh′′|j′ )
M B の部分集合
N B の部分集合,ただし,M ⊂ N R k×j の集合
S 強効果を表わす添え字 T ネスト集合
Ti:潜在クラスiに属するサブ潜在クラス集合 U U(k|B,s) =−∂q∂
k max
k∈B[−qk−κ(r,wk, k; ˜U)]
W 弱効果を表わす添え字
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変数 定義
A 集計された集団という意味を表わす添え字
B 予算集合
C 汎用集合
D 離散的選択肢の需要数(0,1)(2章)
K 選択肢の(添え字)集合
M 可測集合
S 消費者の属性ユニバース V 確定的効用ベクトル
W 観測された選択肢の属性ユニバース X 属性値集合ユニバース
Z 可分財の消費量ユニバース
変数 定義
a 汎用定数
b 汎用定数
c 汎用定数
d 目的地ゾーン(7章)
e –
f (同時)確率密度関数
fB:予算集合B の下での,確率密度関数 h 消費者を表わす添え字
i 潜在クラスを表わす添え字(5章)
j ネストを表わす添え字 k 選択肢を表わす添え字 l 汎用添え字
m 効用関数の属性を表わす添え字 n 汎用添え字
o 出発地ゾーン(7章)
p 収入
q 離散的選択肢の価格(費用)(2章)
t 試行(購買機会)を表わす添え字 v 部分的確定的効用
vhmk:選択肢k のm 番目属性の部分的確定的効用 vKmh:m 番目属性の部分的確定的効用のK 内の最低値 vKmh:m 番目属性の部分的確定的効用のK 内の最高値 vKmRh:m 番目属性のの部分的確定的効用のK 内の参照点 w 効用差を表わす変数
wk:=Uk−U1
x 汎用変数
y 汎用変数
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変数 定義
r 可分財の価格ベクトル s 個別消費者の属性集合
w 観測された(単独の)選択肢の属性ベクトル x 属性ベクトル
xk:選択肢k の持つ属性ベクトル z 可分財の消費量ベクトル
謝辞
本論文は,著者が早稲田大学大学院創造理工学研究科経営システム工学専攻に在学中の研究をま とめたものであります.また,この研究の一部は,科学研究費 若手(B) 研究課題番号:23730415 の支援を受けたものです.本論文作成にあたり,数多くの方々のご理解,ご助力を賜りましたこ とを,ここに深く感謝いたします.
指導教員である早稲田大学創造理工学部経営システム工学科 大野髙裕教授には,研究全般に渡 りご指導,ご助言を頂きました.突然の訪問から4年,自由な研究環境を与えてくださり,温か く見守って頂きました.深く感謝し,厚く御礼申し上げます.副査を務めて頂きました早稲田大 学創造理工学部経営システム工学科 高橋真吾教授,後藤正幸教授には,検討会や審査会を通して,
ご専門の立場から数多くのご助言を頂きました.深く感謝し,御礼申し上げます.
早稲田大学創造理工学部経営システム工学科 大野研究室の諸氏とは,ゼミなどを通して有意義 な議論をすることができました.特に,Stochastic & Dynamic Control Groupのメンバとは,報 告会をはじめ様々な場面で時には大いに脱線しつつも,様々な議論をすることができました.深 く感謝します.
最後に,社会人から一学生に戻るのに何も言わず,著者を支えてくれた妻詩織に,心から感謝 します.
2013年2月 高橋 啓
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