第 6 章 心理的効果の GNL モデルによる表現 94
6.3 心理的効果の再定義
99
Attribute 2 B
C D
Attribute 1
A
図6.1: 妥協効果,魅力効果が生起する状況
定義 6.3.1 弱妥協効果2属性空間において,互いに支配的でない選択肢 A,Bが存在し,その中 間に選択肢Cが存在するとしよう:
XA1 > XC1> XB1, (6.11)
XB2 > XC2> XA2. (6.12)
ここで,XA1 は選択肢 A の属性 1 の属性値を表わす.このとき,各選択肢集合における各選択 確率が以下の条件を満たす場合,弱妥協効果CW が生起しているという:
QhC|{A,B,C}
QhC|{A,B,C}+QhA|{A,B,C} > QhC|{A,C}, (6.13) QhC|{A,B,C}
QhC|{A,B,C}+QhB|{A,B,C} > QhC|{B,C}. (6.14) ここで,QhC|{A,B,C} は選択肢集合A,B,Cが提示されている場合に選択肢Cを選択する確率を表 わす.上式は,新たな選択肢を加えることにより,選択肢C が極端な選択肢ではなくなり,相対 的確率が上昇することを意味している.弱妥協効果は,Simonson,Simonson and Tversky (1992) [113],Tversky and Simonson (1993) [125],Wernerfelt (1995) [131],Kivetz et al. (2004a) [63], Kivetz et al. (2004b) [64]で用いられている定義に相当する.なお,式(6.13),(6.14)いずれかし か満たしていない場合は,ポラリゼーションと呼び,妥協効果と区別するものとする.
定義 6.3.2 弱妥協効果の大きさ 弱妥協効果の大きさ SC は,式(6.13),(6.14)それぞれの左辺 から右辺を引いたものの最小値とする:
SC := min
( QhC|{A,B,C}
QhC|{A,B,C}+QhA|{A,B,C} −QhC|{A,C}, QhC|{A,B,C}
QhC|{A,B,C}+QhB|{A,B,C} −QhC|{B,C} )
.(6.15) つまり,SC >0 ならば弱妥協効果が成立していることとなる.
一方,Roe et al. (2001) [105]では,相対的ではなく,絶対的確率に基づく妥協効果の定義をし ている.ただし,これらの選択肢集合の提示順序については特に定めてはいない.
定義 6.3.3 強妥協効果 2 属性以上の空間において,互いに支配的でない選択肢A,Bが存在 し,その中間に選択肢Cが存在するとき,各選択肢集合における各選択確率は以下の条件を満た すとき強妥協効果CS が生起しているという:
QhA|{A,B}=QhA|{A,C} =QhB|{B,C}= 1
2, (6.16)
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QhC|{A,B,C}> QhA|{A,B,C}, (6.17)
QhC|{A,B,C}> QhB|{A,B,C}. (6.18)
強妥協効果は,Roe et al. (2001) [105],Busmeyer et al. (2007) [20]で用いられている定義に 相当する.Roe et al. (2001) とは条件(6.16)が異なる.この点については,付録6.A.1に示す.
補題 6.3.1 弱妥協効果は強妥協効果を包含する:
CS=⇒ CW. (6.19)
証明 6.3.1 式(6.17),式(6.18)を足し合わせることにより,
QhC|{A,B,C}> 1 2
(
QhA|{A,B,C}+QhB|{A,B,C} )
= 1 2
(
1−QhC|{A,B,C} )
=⇒QhC|{A,B,C} > 1 3
(6.20) が導かれる.式(6.17),式(6.20)より,QA|{A,B,C} <1/3 であるため,式(6.16),式(6.20)より,
QhC|{A,B,C}
QhC|{A,B,C}+QhA|{A,B,C} > 1
2 = 1−QhA|{A,C}=QhC|{A,C} (6.21) となり,式(6.13)を満たす.選択肢Bについても式(6.16), (6.18), (6.20)より式(6.14)を満たす ことが同様に示せる.また,CS ̸⇔ CW であることは自明である. 2
6.3.2 魅力効果の再定義
魅力効果についても,条件の強弱により弱魅力効果,強魅力効果二つの定義を行なう.魅力効 果を言葉で書き表わすならば,二つの属性による属性空間において A,Bいずれの選択肢も支配 的でない状況で選択肢 A に類似しているが,魅力的ではない選択肢 Dを加えた場合,新たな選 択肢D に類似している選択肢 A の選択確率が高くなるというものである(図6.1).魅力効果を 最初に定義したHuber et al.(1982)では,これは選択公理における Regularityを犯す現象として 定義している.しかし,Hagerty(1983), Ratneshwar et al.(1987), Rooderkerk et al.(2011) では,
絶対的選択確率が増すという定義をより広く捉え,相対的選択確率が増すという場合も含むよう 定義している.
定義 6.3.4 弱魅力効果 2 属性の空間において,互いに支配的でない選択肢 A,Bが存在し,選 択肢Aに属性は類似し,選択肢A に支配されている(選択肢Bには支配されない)選択肢 Dが 存在するとしよう:
XA1 > XD1 > XB1, (6.22)
XB2 > XA2 > XD2. (6.23)
このとき,各選択肢集合における各選択確率が以下の条件を満たす場合,弱魅力効果 AW が生起 しているという:
QhA|{A,B,D}
QhA|{A,B,D}+QhB|{A,B,D} > QhA|{A,B}. (6.24)
式(6.24)は,新たな選択肢 Dを加えることにより,選択肢Dに近い属性を持つ選択肢 Aが魅力
的になり,相対的確率が上昇することを意味している.
定義 6.3.5 弱魅力効果の大きさ 弱魅力効果の大きさSA は,式(6.24)の左辺から右辺を引いた ものとする:
SA := QhA|{A,B,D}
QhA|{A,B,D}+QhB|{A,B,D} −QhA|{A,B}. (6.25) つまり,SA >0 ならば魅力効果が成立していることとなる.
定義 6.3.6 強魅力効果 2 属性の空間において,互いに支配的でない選択肢 A,Bが存在し,選 択肢Aに属性は類似し,選択肢A に支配されている(選択肢Bには支配されない)選択肢 Dが 存在するとしよう:
XA1 > XD1 > XB1, (6.26)
XB2 > XA2 > XD2. (6.27)
このとき,各選択肢集合における各選択確率が以下の条件を満たす場合,強魅力効果 AS が生起 しているという:
QhA|{A,B,D} > QhA|{A,B}. (6.28)
上式は,新たな選択肢Dを加えることにより,選択肢Dに近い属性を持つ選択肢A が魅力的に なり,絶対的確率が上昇することを意味している.
103 補題 6.3.2 弱魅力効果は強魅力効果を包含する:
AS =⇒ AW. (6.29)
証明 6.3.2 QhA|{A,B,D},QhB|{A,B,D}は確率であるため,
QhA|{A,B,D}+QhB|{A,B,D}≤1 (6.30)
である.従がって,
QhA|{A,B,D}
QhA|{A,B,D}+QhB|{A,B,D} ≥QhA|{A,B,D}> QhA|{A,B} (6.31) となり,式(6.28)は(6.24)を満たしている.また,AS ̸⇔ AW であることは自明である. 2