第 6 章 心理的効果の GNL モデルによる表現 94
6.4 妥協効果の GNL モデルにおける生起
6.4.1 弱妥協効果の数値例
103 補題 6.3.2 弱魅力効果は強魅力効果を包含する:
AS =⇒ AW. (6.29)
証明 6.3.2 QhA|{A,B,D},QhB|{A,B,D}は確率であるため,
QhA|{A,B,D}+QhB|{A,B,D}≤1 (6.30)
である.従がって,
QhA|{A,B,D}
QhA|{A,B,D}+QhB|{A,B,D} ≥QhA|{A,B,D}> QhA|{A,B} (6.31) となり,式(6.28)は(6.24)を満たしている.また,AS ̸⇔ AW であることは自明である. 2
表6.1: 弱妥協効果の生起例パラメータ
Variable Variable
Attribute Value
X1A 3.0 Similarity Parameter µ3 0.9
X1B 1.0
Allocation Parameter
γA1 0.7
X1C 2.0 γA2 0.2
X2A 1.0 γA3 0.1
X2B 3.0 γB1 0.2
X2C 2.0 γB2 0.6
Definite Utility Parameter
α1 1.0 γB3 0.2
α2 1.0 γC1 0.1
Similarity Parameter
µ1 0.9 γC2 0.2
µ2 0.7 γC3 0.7
A C B
1 2 3 Nests
Alternatives
図6.2: 弱妥協効果が生起するGNLモデルの構造
QhC|{A,B,C} = 0.336, (6.35)
となる.式(6.33)–(6.35)は式(6.13),式(6.14)を満たしており,GNLモデルにおいて弱妥協効果 が生起していることがわかる.ただし,強妥協効果については,QA|{A,C} =QB|{B,C}̸= 0.5 であ るため,この数値例では生起していない.
妥協効果が生起するこの GNL モデルの構造についての意味解釈をしよう.既存の適用分野で ある交通機関選択や経路選択において,GNLモデルのネスティングは交通機関や経路の重なりあ いを表現している.単に GNL モデルという場合にはその構造について意味し,そのネスティン グの意味解釈には何らかの客観的基準が求められる.ここでは,意味解釈を容易にするため次に
105 示す仮定を置く:
γA1 > γC1> γB1, γB3> γC3> γA3, (6.36)
γC2> γA2, γC2> γB2, (6.37)
γA1 > γA2> γA3, γB3> γB2 > γB1, (6.38)
γC2> γC1, γC2> γC3. (6.39)
式(6.36)は,ネスト1,3への所属割合がネスト1 ではA,C,Bの順に高く,ネスト3では逆であ ることを意味している.同様に式(6.37)は,ネスト2への所属割合はCがA,Bより高いことを 示している.また,式(6.38)は選択肢A,Bの所属割合が選択肢Aでは1,2,3の順に高く,選択 肢Bでは逆であることを意味している.最後に式(6.39)は,選択肢Cの所属割合が2 が1,3 よ り高いことを示している.
この仮定より,このモデルの構造は,ネスト1,3は極端な属性を持つ選択肢を好むクラス,ネ スト 2は中庸な属性を持つ選択肢を好むクラスといえる.ここでは,ネスト1 は走行性能が高い 選択肢を好むクラス,ネスト3は燃費がよい選択肢を好むクラス,そしてネスト 2は両者のバラ ンスを重視するクラスと解釈できる.そして,消費者はこれらの潜在的なクラスを選択し,次に 各クラスに属する選択肢を選択するという意思決定過程をたどっていると解釈できる.表 6.1に 示すパラメータは明らかに式(6.35)–(6.39)を満たしており,この意思決定過程をたどる場合,弱 妥協効果が生起することがあるといえる.
補題 6.4.1 NLモデルにおいてネスティング時にオーバラップを許さない場合,弱妥協効果を表
現することはできない.
証明 6.4.1 NL モデルにおいて選択肢A, B, Cをオーバーラップせずにネスティングする方法は 図6.3 に示す3 とおりである.このうち(I), (II)は対称であるため,(I), (III) の二つのついて考 えればよい.まず(I)の場合を考えよう.選択肢A,Bの対称性より,VAh=VBh:=Vh である.弱 妥協効果の大きさは,
SC = min
expVCh1/µ1((
expVh)1/µ1
+(
expVCh)1/µ1)µ1−1
expVh+ expVCh1/µ1 (
(expVh)1/µ1 +(
expVCh)1/µ1)µ1−1 − expVCh expVh+ expVCh,
A C B (I)
A C B
(II)
A C B
(III)
1 2 1 2 1 2 Nest
Alternative
図6.3: NLモデルによる選択肢 {A,B,C} のネスティング
(expVCh)1/µ1
(expVh)1/µ1 +(
expVCh)1/µ1 −
(expVCh)1/µ1
(expVh)1/µ1 +(
expVCh)1/µ1
}
(6.40) となり,SC = 0 となる.次に(III)の場合を考える.この場合はA,Bの配置についても対称であ るため演算子min がなくなり,弱妥協効果の大きさは,
SC = expVCh
1 2
(
(2 expVh)1/µ1 )µ1
+ expVCh
− expVCh
expVh+ expVCh (6.41)
となり,SC = 0 となる. 2