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既存の消費者異質性を考慮したモデル

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第 5 章 GNL モデルの拡張:消費者異質性の導入 74

5.2 既存の消費者異質性を考慮したモデル

本節では,既存の消費者異質性を考慮したモデルについてレビューし,それぞれの問題点を指 摘する.

5.2.1 消費者異質性を考慮したモデル

一般的に消費者は異質であると考えられるが,これをスキャン・パネル・データから直接推定 することは難しいため,潜在的なクラスを考え,そこに消費者が潜在的に所属すると仮定する潜

図5.1: 既存の潜在クラス・ロジット・モデルの構造

在クラス・モデルというものが広く用いられている.消費者の異質性を考慮する潜在クラス・モ デルには大きく分け,LCL(例えば[59])とLatent Class Probit (LPL)(例えば[31])の各モデ ルが存在する.前者は効用関数の誤差項に一般化極値分布を,後者は正規分布を仮定したもので ある.後者については,選択確率の算出に多重積分が必要となり,多数の選択肢がある場合( 5選 択肢以上)には事実上計算が不可能である.そのため,LCL モデルに絞ってレビューを行なう.

LCLモデルの代表的な研究としては,次に示す研究が挙げられる.これらのモデルの選択構造 を図5.1に示す.

Kamakura and Russell (1989) [59]では消費者に潜在的な異質性を仮定し,潜在クラスに確率 的に所属するものとしている.そして消費者の潜在クラスへの所属確率(セグメント・サイズ) の 説明変数はλ と定数としている.これを拡張した研究がGupta and Chintagunta (1994) [45] で あり,消費者の年齢,世帯人数といったデモグラフィック変数によりこの λを説明(構造化)し ている.ただし,現実的にはデモグラフィック変数は通常スキャン・パネル・データには含まれず,

含まれている場合もデータ更新がほとんどされないといった問題がある.

これらに対し,Kamakura et al. (1996) [58], Moriguchi (2003) [93]では,Gupta and

Chinta-77

gunta (1994) [45]や一般的な消費者セグメントとは異なり,外生的に商品が持つ属性によりセグ

メントを行なっていることが特徴である.Kamakura et al. (1996) [58] はこの潜在クラスの構造 自体を拡張し,ネスティングされた異質性 (Structured Heterogeneity [60]) を仮定している.消 費者はブランド優先か,商品の形状優先か,無差別かという外生的な潜在クラスを選択し,その 下に存在する商品を選択するとしている.また,Moriguchi (2003) [93] は特定のブランドにロイ ヤルティを感じるロイヤル・セグメントという外生的な潜在クラスの規定を導入している.ただ

し,Moriguchi (2003) [93]では,あるブランドにロイヤルティを感じるセグメントに属していて

も,それ以外のブランドの商品も含め,すべての商品の選択が可能である.

5.2.2 既存の消費者異質性を考慮したモデルの問題点

既存の潜在クラス・ロジット・モデルの特徴は,以下に示す二点である.

1. ある種,各潜在クラスへの所属確率を効用と独立に決定している,従がって(ランダム)効 用最大化行動と整合的ではない.

2. 潜在クラスを外生的に決定し,いかなる潜在クラスに所属している場合でもすべての商品が 選択可能である.

前者については,(ランダム)効用最大化行動と整合的なモデルである場合,店舗選択モデル,購 買生起モデルといった,さらなるモデルの拡張を容易に行なうことが可能となる.また,店舗間競 争といったゲーム論的状況についても,ミクロ経済学と整合的にモデルの拡張が可能となる.消 費者の行動が明確に記述できない場合には,こういったシステマティックな拡張は行なえず,モデ ル拡張時に新たな拡張部との接続方法,その意味解釈がその都度必要となる.

後者については,パラメータ推定時に,各クラスの意味解釈が行なえない可能性がある.例え ば,Kamakura and Russell (1989) [59]では,重回帰分析において符号条件が一致しないような 確定的効用関数パラメータが推定される可能性が大いにある.これは,あまり消費者に異質性が 存在しない場合,平行的に消費者の潜在クラスを情報量を最大化するように内生的に定めるため,

多重共線性に類似した問題が生起していると捉えることができる.例えば,後の適用において出 てくる数値例のように,あるセグメントにおいて価格パラメータが負になってしまう可能性があ る.これは,価格が高いほど効用が高いことを意味し,そのようなセグメントはコーラ等の一般 消費財においてはありえない.また,ブランド・ロイヤルティにより外生的にセグメント分けし

図5.2: LGNL モデルの構造例

ているMoriguchi (2003) [93] では,あるブランドにロイヤルティを感じる潜在クラスにおいても

結果として,そのブランドの選択割合が低くなってしまう可能性がある.こういったことは,セ グメント分けの失敗だけではなくモデル自体の説明力不足に繋がるため,極力避けるべきである.

CNL,GNLモデルをそのまま,ブランド選択ではなく,Stock Keeping Unit (SKU)レベルの 商品選択モデルへ適用した場合,つまり3章を考えよう.例えば対象商品としてパソコンを考えた 場合,HDD何GB,メモリー何GB,ディスプレイ何インチという具体的な商品構成要素により ネスティングされ,次に具体的商品を選択することとなる.しかし,商品選択行動において,我々 は一般的に,まずHDD で選ぶ,ディスプレイで選ぶという構成要素を選択し,次に何GB,何 インチという具体的要素を選択するという 2段階の事前選択行動をしていると考えられる.これ はElimination by Aspects (EBA)モデル [124]における商品構成要素とそのカット・オフ値に相 当する.したがって,CNL,GNLモデルを拡張し,消費者が辿るような詳細な商品選択行動を表 現するには,上記の商品選択とあわせ計 3 段階の選択行動を構造的に表現する必要がある.

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