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魅力効果 GNL モデルにおける生起

ドキュメント内 Generalized Nested Logit (ページ 122-126)

第 6 章 心理的効果の GNL モデルによる表現 94

6.5 魅力効果 GNL モデルにおける生起

6.5.1 弱魅力効果の数値例

魅力効果についても妥協効果と同様に数値例を用いて生起することを示そう.対象商品を妥協 効果と同様に乗用車とし,属性についても走行性能と燃費の二つとする.そして,消費者の効用 関数の確定項Vkh も式(6.19)に示すものと同様とする.そして,GNL モデルのネスト数Nj を3 とし,それぞれに全ての選択肢 A,B,Dがネスティングされるものとする.具体的な構造を図 6.7に示す.

以上の仮定のもと,表6.4に示すパラメータを用い,選択肢 Dの追加前後の選択確率を計算す

113 ると,

QhA|{A,B}=0.508, QhB|{A,B} = 0.492, (6.55)

QhA|{A,B,D}=0.409, QhB|{A,B,D} = 0.392, (6.56)

QhD|{A,B,D}=0.198 (6.57)

となる.式(6.55)–(6.57)は式(6.24)を満たしており,GNL モデルにおいて弱魅力効果が生起して いることがわかる.表6.4に示すパラメータは,条件(6.36)–(6.39)と同様の仮定を満たしている.

弱魅力効果が生起するこの GNL モデルの構造について,弱妥協効果と同様に意味解釈をする ことは難しい.これは,弱妥協効果と異なり,類似度という尺度だけではなく,効用値の優劣関 係を加えないと,その効果を定義できないためである.表 6.4に示すパラメータは,弱妥協効果 に類似した,次の条件を満たしている.

VA=VB > VC, (6.58)

γA1 > γD1 > γB1, γB3> γD3> γA3, (6.59)

γA1 > γA2> γA3, γB3> γB2 > γB1, (6.60)

γD2 > γD1, γD2 > γD3. (6.61)

これらの条件について,個々に意味解釈を行なうことは可能であるが,これらが弱魅力効果の定 義に沿うものかという点については,議論の余地があるだろう.特に,類似性効果との違いにつ いて考える必要がある.ここでは類似度パラメータ,アロケーション・パラメータに一応の制約

(6.58)–(6.61)を設けているが,これらのパラメータがどういう意味を持つのかという点で,意味

解釈が異なるであろう.特に,類似度パラメータについて,これが類似度を表していると解釈す るのか,Rooderkerk et al. (2011)のように単に心理的な効果を表わすダミー変数パラメータと捉 えるのかということである.

さて,弱魅力効果は NL モデルで表現できるだろうか.NL モデルでは一般的に,属性が近い 選択肢を同じネストに配置する.

補題 6.5.1 NLモデルにおいてネスティング時にオーバラップを許さず,属性によるネスティン

グを行なった場合,弱魅力効果を表現することはできない.

(IV)

A C B

1 2 Nest

Alternative

図6.8: NL モデルによる選択肢{A,B,D} のネスティング

証明 6.5.1 条件を満たす NL モデルの構造は図6.8のみとなる.このとき,A と Bは違うネス トに属し,I.I.Aを満たすため,

SA:= QhA|{A,B,D}

QhA|{A,B,D}+QhB|{A,B,D} −QhA|{A,B} = 0  (6.62) となる.式(6.62)は(6.24)を満たさないため,弱魅力効果は生起しない. 2 弱魅力効果についても,弱妥協効果と同様に,GNLモデルを用いて表現可能な上限が存在する.

補題 6.5.2 選択肢数,ネスト数ともに3 のGNLモデルにおいて,効用関数が線形の場合,弱魅 力効果の大きさ SA には上限が存在し,その大きさは,

SA= 0.7414 (6.63)

となる.ここで,SA は弱魅力効果の最大値を表わす.ただし,この最大値は,式(6.58)–(6.61)の 仮定のもとでの値である.

証明 6.5.2 弱妥協効果の場合の証明とほぼ同様であるため,省略. 2

Ratneshwar (1987)[101]では,表 6.5に示す二つのカテゴリーで,選択肢ABをそれぞれター ゲットとして設定し,条件を変え,それぞれ魅力効果の大きさを示している1.それぞれについて,

表現可能か,不可能かを表6.5に示す.ここでは,全ての場合において,GNL モデルにおいて表 現可能であることが判る.したがって,魅力効果についても,直ちに効用最大化と矛盾する現象 の生起とは決めつけられないだろう.

1 正確には強妥協効果についてである.ただし,Huber et al. (1982)と異なり,全ての選択肢の選択確率が示され ているため,弱妥協効果の大きさについても計算可能である.

115 表6.5: 弱魅力効果の大きさと再現可能性

Category maxδA minδA Our model

TV sets (Original) 0.389 0.052 possible

TV sets (Elaborated) 0.245 0.068 possible

Orange Juice (Original) 0.367 0.129 possible

Orange Juice (Elaborated) 0.182 0.086 possible

6.5.2 強魅力効果と GNL モデル

強魅力効果は,強妥協効果とは異なり,GNLモデルを用いて表現することはできない.これは,

GNL モデルがRUM モデルの一種であり,Regularityを犯していないことから自明である.

補題 6.5.3 GNLモデルにおいて強魅力効果を表現することはできない.

証明 6.5.3 選択肢集合K の部分集合 K ⊂ K を考えよう.各々の集合の下での任意の選択肢 k∈ K の選択確率の差,すなわち強妥協効果の大きさは,

Qk|K−Qk|K =

Nj

j=1







( ∑

k∈Kj′

(γkjeVk′)1/µj′

)µj′

Nj

j′′=1

( ∑

k∈Kj′′

(γkj′′eVk′)1/µj′′)µj′′

(γkjeVk)1/µj′

k∈Kj′

(γkjeVk′)1/µj′







Nj

j=1







 ∑

k∈Kj′

(γkjeVk′)1/µj′

µj′

Nj

j′′=1

 ∑

k∈Kj′′

(γkj′′eVk′)1/µj′′

µj′′

(γkjeVk)1/µj′

k∈Kj′

(γkjeVk′)1/µj′







(6.64)

となる.ここで,Nj は部分集合K ⊂ K のもとでのネスト数を表わし,KjK ⊂ K のもとで のネストj に属する選択肢集合を表わす.このとき,式(6.64)の各項の関係は,

(γkjeVk)1/µj

k∈Kj

(γkjeVk′)1/µj <

(γkjeVk)1/µj

k∈Kj

(γkjeVk′)1/µj (k, j), (6.65)

( ∑

k∈Kj

(γkjeVk′)1/µj

)µj

Nj

j=1

( ∑

k∈Kj′

(γkjeVk′)1/µj′

)µj′ <

 ∑

k∈Kj

(γkjeVk′)1/µj

µj

Nj

j=1

 ∑

k∈Kj′

(γkjeVk′)1/µj′

µj′ (k, j) (6.66)

である.したがって,Qk|K−Qk|K <0 であり,GNL モデルは Regularity を満たす.したがっ

て,強魅力効果を表現することはできない. 2

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