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心理的効果の表現に関する既存モデルとの比較

ドキュメント内 Generalized Nested Logit (ページ 126-131)

第 6 章 心理的効果の GNL モデルによる表現 94

6.6 心理的効果の表現に関する既存モデルとの比較

( ∑

k∈Kj

(γkjeVk′)1/µj

)µj

Nj

j=1

( ∑

k∈Kj′

(γkjeVk′)1/µj′

)µj′ <

 ∑

k∈Kj

(γkjeVk′)1/µj

µj

Nj

j=1

 ∑

k∈Kj′

(γkjeVk′)1/µj′

µj′ (k, j) (6.66)

である.したがって,Qk|K−Qk|K <0 であり,GNL モデルは Regularity を満たす.したがっ

て,強魅力効果を表現することはできない. 2

117 モナリティー・ファクターという確定的効用項を設定し,これを減ずることにより類似性効果を 表現している.しかし,この研究に対しては,羽藤(2002)[48] で「アドホック」であるとの指摘 がなされている.筆者は,誤差項との多重共線性や,余剰の計算が難しく,選択肢集合が異なる 際に比較する際の基準が存在しない相対的効用モデルで効果を表現することに,理論的な意味を 見いだすことができないと考えている.

6.7 6 章のまとめ

本研究では,まず数理的に曖昧さや混同のある心理的効果について,数式を用いた定義を行なっ た.まず,複数の定義がある妥協効果について,二つの定義,弱妥協効果,強妥協効果を定義し,

強妥協効果は弱妥協効果に内包されることを示した.同様に魅力効果について,二つの定義,弱 魅力効果,強魅力効果を定義し,強魅力効果は弱魅力効果に内包されることを示した.

次に効用最大化行動と矛盾するとされ,NL モデルでは表現することが不可能であったこれらの 効果について,効用最大化と整合的なランダム効用モデルであるGNL モデルにおいて生起するこ とを示した.妥協効果については,弱妥協効果,強妥協効果双方が同じネスティング構造を持つ GNL モデルで表現可能であることが分かった.また,このうち弱妥協効果については,GNL モ デルにおいて表現可能な大きさの範囲を示し,実際の実験結果と比較することにより,おおよそ 実測に用いることができることが可能となった.特にこの効果の生起については,擬似的な選択 肢間の相関係数により解釈することができ,そのためにネスト数が 3 つ必要であることが分かっ た.魅力効果については,弱魅力効果についてのみ,妥協効果と同じ構造を持つ GNL モデルで 表現可能であることが分かった.ただし,この表現可能な構造の意味解釈は,類似性効果との兼 ね合いから議論の余地があるだろう.

GNLモデルは NL モデルを内包するため,GNL モデルでは,同じネスティング構造で,類似 性効果,妥協効果,魅力効果全ての心理的効果を表現可能である.このことから,規範的なモデ ルといえる GNL モデルが,心理的効果を全て表現できるという記述的側面からも,妥当である ということがいえるだろう.GNLモデルは非集計モデルであり,対数尤度最大化により,容易に 実際のPOSデータからパラメータ推定が可能である.この事実は,ほとんど従来不可能であった 実際の購買データからの心理的効果の測定が技術的に可能になったことを意味する.従来研究の 結果はそのほとんどがアンケートによるものであり,過度に抽象化された環境のもとでの結果で

あると筆者は考えている.

今後の課題としては,今回取り上げることがなかった,幻効果等のその他の心理的効果の効用 最大化と整合的な表現,非集計モデルにおける表現が挙げられる.また,今回開発した非集計的 な側面を活用した,POSデータ上での実際のミクロなマーケット・データからの心理的効果の検 証も必要となるだろう.これらは別の機会に報告したい

6.A 6 章の付録

6.A.1 Roe et al. (2001) における妥協効果の定義

Roe et al. (2001) [105]では,式(6.16)を

QhA|{A,B} =QhA|{A,C}=QhB|{B,C} := ˇQh (6.67) のみとして,妥協効果を定義している.しかし,この定義では,Qˇh = 0.3<0.5 のような場合も 許容している.このような場合について式(6.17),(6.18)と併せて考えてみると,単に選択肢 C が他の選択枝A,Bと比較し魅力的であることを述べていることとなる.つまり,提示された選択 肢集合とは何ら関係がなくなっており,これはもはや妥協効果とは呼べない.そのため,本研究 では,強妥協効果の定義として Roe et al. (2001) [105]での定義を用いていない.

6.A.2 弱妥協効果最大化の一階条件

証明6.4.2 と同様に確定的効用関数の仮定及び弱妥協効果の選択肢 A,Bに関する対称性より,

expVAh = expVBh= expVCh:=Yh を得る.すると,弱妥協効果の大きさは,

SC =

3 j=1

 ( ∑

k∈Kj

γkjYh )µj1

(γCjYh)1/µj

3 j=1

 ( ∑

k∈Kj

γkYh )µj1

CjYh)1/µj + ( ∑

k∈Kj

γkjY )µj1

CjYh)1/µj

3 j=1







( ∑

k∈Kj

(γkjYh)1/µj

)µj

3 j=1

( ∑

k∈Kj′

(γkjYh)1/µj′

)µj′

(γCjYh)1/µj

3 j=1

(γkjYh)1/µj′







(6.68)

119 表6.6: 弱妥協効果が最大となるパラメータ

Variable Variable

Allocation Parameter

γ1 0.5

Similarity Parameter

µ 0+ 2

γ2 0.0 µ2 不定3

γC 1.0

ここで対称性より,

γA1 =γB3 :=γ1, (6.69)

γA2 =γB2 :=γ2, (6.70)

γA3 =γB1 :=γ3 = 1−γ1−γ2, (6.71)

γC1=γC3:=γC, (6.72)

γC2= 1C, (6.73)

µ1 =µ3:=µ (6.74)

とする.ここで,制約条件(2.35)–(2.37)を考慮したラグランジアンΛ を以下のようにたてる:

Λ(γ1, γ2, γC, µ, µ2, λj1, λj2, λkj) :=SC1, γ2, γC, µ, µ2)

3 j=1

λj1µj

3 j=1

λj2j1)

3 j=1

kj

λkjγkj (6.75) ここで,λj1λj2λkj はそれぞれ制約条件(2.35)の下限,上限,(2.37)に対応するラグランジェ 乗数である.なお,式(2.36)については考慮済であるため含めない.また,GEVモデルの定義よ り,絶対的な確定的効用の値は選択確率に影響を及ぼさないため,Y は変数とならない.ここで,

式(6.75)の KKT 条件より,最大値SC を求める.すると,表 6.6に示すパラメータのとき,最

大値

SC = 1

6 (6.76)

2 0ではない,0に最も近い正の実数を表わす.

3 今回はγ2 = 0.0γC= 1.0であるため,ネスト2に所属する選択肢がCのみであり,不定となる.

が求まる.

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