第 5 章 GNL モデルの拡張:消費者異質性の導入 74
5.4 LGNL モデルの適用
5.4.3 既存モデルとの比較,検証
異質性の有無によるモデル適合度を比較するため,異質性をまったく仮定しないモデル[MNL], 消費者の異質性を仮定するモデル[LCL] (通常の潜在クラス・ロジット・モデル),商品の類似性 を仮定するモデル [GNL],そして両者を仮定するモデル [LGNL]の4つのモデルを比較すること とする.ただし,[LCL] については潜在クラス数を[LGNL]と揃えるため,3クラスとする.
統計量の比較
4つのモデルの統計量の比較を表5.1に示す.消費者,商品に異質性を考慮している[LGNL]は,
¯
ρ2 が0.2230と0.2を上回る値を示しており,十分な再現性を有しているといえる.4つのモデル
の比較においても,対数尤度,AIC,BIC,的中率すべてにおいて,[LGNL]がまさっており,両
表 5.1: 統計量の比較(LGNL vs. MNL, LCL, GNL) [MNL] [LCL] [GNL] [LGNL]
L −3,006 −2,859 −2,844 −2,825 AIC 6,022 5,752 5,738 5,722
¯
ρ2 0.1781 0.2162 0.2194 0.2230 Hit Ratio 0.4042 0.4076 0.4173 0.4218
者の異質性を考慮することが再現性を向上しているといえる.また,[LCL],[GNL] を比較した場
合,[GNL] の方がまさっていることから,今回の対象商品であるコーラにおいては,消費者の異
質性を考慮するよりも商品の異質性を考慮するほうが重要であることが分かる.これは,[MNL]
と [LCL],[GNL] を比較しても,その各統計量の改善度より確認できる.このような結果となっ
た理由としては,コーラが比較的安価な商品であり,自動車やパソコンといった高額商品に存在 する予算制約がなく,消費者の異質性があまり存在しないことが考えられる.本研究で取り扱っ たコーラより異質性があると考えられる商品や異質性が的確に把握できる状況,パソコン,家電 製品のオンライン・ショップ等にLGNLモデルを適用した場合は,また違った結果が得られると 考えられる.
パラメータの比較
4つのモデルの主要パラメータを表5.2, 5.3, 5.4に示す.また,確定的効用関数パラメータを金 銭換算したものを表5.5に示す.
表5.2より,各モデルの確定的効用関数パラメータは概ね99%で統計的有意といえる.ただし,
価格,容量については,[LCL],[LGNL]については有意水準を満たさないパラメータが存在する.
これは,価格と容量の間に強いマイナスの相関があるためであると考えられる.また,[LCL] の セグメント3 の前回購買ダミーについても,有意水準が低くなっている.このセグメントではこ の2 つのパラメータの大きさが突出しており,ノンシュガーを避け,前回購買した商品とは異な る商品を選好するセグメントと位置付けられる.しかし,このようなセグメントが実際に 16.3%
も存在するということは現実には考えられないため,この位置づけの解釈は妥当とはいえず,5.1 節で述べた潜在クラス・ロジット・モデルの欠点を如実に示している.これは,セグメント・サ
87 イズを単なる τ という定数により説明しており,比較的サイズの小さなセグメントでは極端なパ ラメータが推定されやすいためであると考えられる.一方,[LGNL]の各セグメントへの所属確率 より,消費者は20.5%がブランド優位,39.6%が内容量優位,39.9%が内容物優位で購買してい ることが推計される.この結果については,確定的効用関数のパラメータが極端にはなっておら ず,セグメント・サイズも偏りがないため妥当であるといえる.また,表5.5より i= 3 内容物優 位セグメントのα4/α1 が他のセグメントと比較し小さいことから,内容物優位で購買生起してい る消費者はノンシュガーに対し比較的不効用を感じず,選択しやすいことが分かる.同様に,や や意外ではあるが,i= 2 内容量優位セグメントのα2/α1 が他のセグメントと比較し大きいこと から,内容量優位で購買生起している消費者はコカコーラというブランドに対し大きなロイヤル ティをもっているといえる.
表5.3より,商品類似性に加え消費者異質性を導入することにより,一部のネストにおいて商品 類似性が緩和されていることが分かる.これは,特にη5 で顕著である.このパラメータの相違は,
次のように説明される.表5.5に示すように[LGNL],i= 2 内容量優位セグメントのコカコーラ・
ダミーの値が[GNL] のそれと比較し大きい.これにより商品の異質性がむしろ消費者の異質性と して表現されたためであると考えられる.他方では,µ1 は逆に[LGNL]の方がより商品異質性が 大きいという結果となっている.
表5.4より,[LGNL]においてはアロケーション・パラメータγ11,γ55 がそれぞれ0 であるこ とから,図5.3で示された選択行動は縮小され,それぞれ,コカコーラ1.5l はブランド優位選択,
ペプシコーラ 1.5l は内容物優位選択はされていないことが分かる.消費者異質性を考慮しない
[GNL] でもそれぞれのアロケーション・パラメータの値は0もしくは比較的小さいことから,こ
の結果は妥当であるといえる.
表5.6 は,検証用データの集計量の比較結果を示している.各統計量が劣っている,[MNL], [LCL],[GNL],[LGNL]の順に平均二乗誤差(MSE)が小さくなっていることがわかる.ただし,
[MNL]-[LCL]間,[MNL]-[GNL]間の MSEの減少幅を比較すると,選択肢間の類似性による誤差 への影響と比較し,消費者の異質性を考慮することによる誤差への影響はわずかであるといえる.
この理由として,対象商品がコーラという比較的低価格のカテゴリーであり,消費者の異質性が 小さかったことが考えられる.
表5.2: 確定的効用関数パラメータ及びセグメント・サイズの比較(LGNL vs. MNL, LCL, GNL)
[MNL]
[LCL]
[GNL]
[LGNL]
i= 1 = 2 = 3 i= 1 = 2 = 3
α1
−0.020 −0.036 −0.023 −0.024 −0.011 −0.006 −0.006 −0.028
Fixed ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗
α2
0.446 0.778 0.304 1.877 0.041 0.0911 0.487 0.262
∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗
α3
0.003 0.043 0.002 0.003 0.002 0.0014 0.001 0.004
∗ ∗∗ ∗ ∗ ∗∗ ∗∗ ∗
α4
−0.000 −0.041 −0.426 −14.477 −0.208 −0.819 −1.045 −0.410
∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗
α5
1.362 2.376 1.458 −14.410 0.569 0.254 0.364 1.673
∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗∗ ∗ ∗∗
Segment
– 0.438 0.399 0.163 – 0.205 0.396 0.399
Size
t検定において∗∗99%有意,∗95%有意