第 13章
19.2 Feynman 規則
表3 電弱標準理論における18種類の基本相互作用
相互作用項 相互作用の種類 結節点因子
LBBI W†W Z igcosθW{gαβ(k1−k2)γ+gβγ(k2−k3)α+gγα(k3−k1)β} W†W A ie{gαβ(k1−k2)γ+gβγ(k2−k3)α+gγα(k3−k1)β} W†W Z2 ig2cos2θW(gαδgβγ+gαγgβδ−2gαβgγδ) W†W A2 ie2(gαδgβγ+gαγgβδ−2gαβgγδ) W†W AZ iegcosθW(gαδgβγ+gαγgβδ−2gαβgγδ)
(W†W)2 ig2(2gαγgβδ−gαβgγδ−gαδgβγ)
LHHI σ4 −6iλ
σ3 −6iλv
LHBI W†W σ (ivg2/2)gαβ
W†W σ2 (ig2/2)gαβ
Z2σ (ivg2/2 cos2θW)gαβ Z2σ2 (ig2/2 cos2θW)gαβ
LLBI ¯llA ieγα
¯
νllW+ h.c. (−ig/2√
2)γα(1−γ5)
¯
νlνlZ (−ig/4 cosθW)γα(1−γ5)
¯llZ (−igγα/4 cosθW)(1−4 sin2θW−γ5)
LHLI ¯llσ (−i/v)ml
¯
νlνlσ (−i/v)mνl
と略記してある.[ここにはQEDの基本結節点(因子ieγα)も含まれている.h.c.はHermite共役を意味し ている.本稿では図24を除き,結節点因子における運動量やLorentz添字を定義する結節点のダイヤグラム を示していない.]
電弱理論の結節点に関する新たな注意事項を以下にまとめる.
1. 組合せ因子
結節点因子の導出はQEDの場合と同様に行うことができる.
結果的にQEDに関しては,結節点因子を簡単に推定するには,
S行列展開の1次の項S(1)=i∫
d4xLIにおける
iLI =ieψ¯Aψ/ から場を取り除いてieγαとすれば良い.
これに対して例えば電弱理論における相互作用項 vg2 4 cos2θW
gαβZαZβσ は同種の場Zαを2つ含んでおり,
結節点に接続する2本のZ0ボゾン線に2つの場Zαを充てる方法は2!通りある.
このため結節点因子は 4 cosivg22θ
Wgαβではなく,これに組合せ因子2!をかけた ivg2
2 cos2θWgαβ となる.
2. テンソル添字の順序
例えばW†W Z2相互作用項
g2cos2θW(WαWβ†ZαZβ−WβWβ†ZαZα) の結節点因子が
ig2cos2θW(gαδgβγ+gαγgβδ−2gαβgγδ)
となるのは,各ボゾン線に付随するテンソル添字を図24のように定義したときである.
すなわち例えばボゾン線を外線と見なす場合,
テンソル添字αを付したZ0ボゾン線には偏極ベクトルεrα(k)を充てる.
3. 微分に由来する運動量因子
W†W ZとW†W Aの項は場の微分を含んでいるため,運動量因子を生じる.
例えばW†W Z相互作用項
igcosθW{(Wα†Wβ−Wβ†Wα)∂αZβ+ (∂αWβ−∂βWα)Wβ†Zα−(∂αWβ†−∂βWα†)WβZα} は,図24のように各運動量を結節点に向かう向きに定義したとき,結節点因子
igcosθW{gαβ(k1−k2)γ+gβγ(k2−k3)α+gγα(k3−k1)β} を生じる.
4. (W†W)2相互作用項
1
2g2Wα†Wβ(Wα†Wβ−WαWβ†) の結節点因子が
ig2(2gαγgβδ−gαβgγδ−gαδgβγ)
となるのは,図24のように運動量の向きとテンソル添字を定義したときである.
19.2 について
■Higgsボゾン線の修正に対する組合せ因子(p.510)について 14.4節において,グルーオンの自己エネル
ギーグラフ(図14.9(a)(p.385))に関して同様の説明が成されている.Feynman規則に従うと(3!)2 通りの 場の組合せを考えることになるけれど,正しい組合せの総数はその1/2倍であるため,対称性因子として
S= 1/2を掛けなければならないことが説明された.
■「したがって,この結節点因子はW± 電荷が結節点に入射する向きを持つか出射する向きを持つかに依存 する」(p.514,l.2,3)について W±ボゾン運動量の向きは「それぞれの電荷の向きでもあ」(p.512,l.10)り,
これを入れ換えることは「W+とW−を入れ換える」(p.513下から6行目)ことに対応するので,結節点の ダイヤグラム(B.6)(p.543)におけるLorentz添字を入れ換えることに相当すると考えられる.
図24 W†W Z,W†W Z2,(W†W)2相互作用を表す結節点